今回は久しぶりに世界のホンダさんから行きます。
ホンダのFF、ライトウエイトスポーツの嚆矢となったこの車をご紹介。
【HONDA BALLADE SPORTS CR-X】
「ホンダ バラードスポーツ CR-X」です。
俗に言う「バラスポCR-X」ですね。
まず、ベースになったホンダ バラードとは?

初代バラード

二代目バラード
シビックをベースにした4ドアセダンで、部品はほぼ共用されており、当時のトヨタのカローラや日産のサニーあたりの対抗馬でした・・・が、日本では不人気で初代と二代目で生産販売を終了してしまいました。海外ではわりと長く生産されていたんですけどね。現在も一部アジアでは生き残っている車名です。個人的には二代目は結構好きなんですが(そのうちに)。
この二代目バラードをベースにして、2ドアハッチバックの切り詰めたボディを与えられ、基本的には2シータークーペとして生産されたのが。

バラードスポーツ CR-Xです。
まず、スペック
水冷直列4気筒SOHC12バルブエンジン、排気量1488cc、最高出力110馬力です。
あれ?、DOHCの16バルブじゃないの?と言われそうですが、1983年のデビュー時は1300ccと1500ccのSOHCで二本立てのグレード構成でした。
そしてお気づきですか?「4気筒で12バルブ」だということに。そう、1気筒あたり吸気側が2バルブ、排気側1バルブの3バルブなんです。
1.3はキャブレター式で80馬力ほど、1.5iの燃調にはあの「PGM-FI」(プログラムド フューエル インジェクション)が採用されていました。
実は、このバラスポCR-Xこそがホンダ四輪初の電子制御燃料噴射装置であるPGM-FI搭載車なのです。でも、燃料電子制御噴射装置の搭載はバイクの方が先だったんですけどね(CX-500ターボはインジェクションでした)。

このリヤをストンと切り落としたようなスタイル、イタリアのカロッツェリア的表現で言えばコーダ トロンカ(イタリア語で「尻尾を切り落とす」という意味合い)なスタイル、このスタイルはアルファロメオやザガートなんかが好んで使っていましたが。ちなみに英語では「カムテール」と申します。
利点は短い車体で空力を稼ぐ事ができます。1980年代としてはかなり攻めたデザインだと思われますが。

一応、リヤシートもありますが、あくまでエマージェンシー的な物でホンダ自身が「1マイルシート」と表現するレベルなので居住性はお察し。車検証での乗車定員は4人ですが、基本的に2シーターとわりきる必要があります。
ヘッドライトはセミリトラクタブルで点灯時は上側が少し開きますよ。
110馬力は非力に感じるかもですが、800kg(1.5iで、1.3は730kg)というかなり軽量な乾燥重量で走りはキビキビで、更にホイールベースの長さは2200mmと現在の軽自動車よりも短く、非常にクイックな回頭性を与えられていて、当時のジムカーナ競技でこの排気量クラスでは敵無しだったとか。
試作車の段階ではあまりにもハンドリングがクイックになりすぎたので、これは危険だと市販の段階では若干ハンドルの遊びを増やしたという実話があるぐらいです。
この車体の軽さは、フロントフェンダー、ノーズコーン、サイドプロテクター、ヘッドランプカバーにH・P・アロイを採用することで軽量化と耐チッピング性、防錆を実現しています。ポリカーボネイトを素材にした、つまりプラスチック部品を多用しているのです。それにより軽い車体を実現しています。そしてバンパー類も樹脂製を採用しています。
また、このバラスポCR-Xにはフロント側のサスペンションに面白い機構が採用されていまして。

こちらはごく一般的なフロントサスペンションであるストラット式、アブソーバーがあってスプリングがあってというよく見るタイプ。

これが、バラスポCR-Xのフロントサスペンションの図解ですが、あれ?、何かが無いぞ?、サスペンションなのにバネ(スプリング)が見当たりません。
アブソーバー(いわゆる油気圧の黒い筒)はあるんですがスプリング(つまりバネだね)はどこへ行った?。
実は後方へ伸びているアーム(トーションバー)のような物がスプリングの代わりなのです。
これは「トーションバーストラット式フロントサスペンション」という物で、ストラット高を低くするためにスプリングの代わりにトーションバーを採用しています
これによりダンパーからコイルスプリングが除去されていて、大幅に下げたダンパーマウント位置が可能で低いボンネット周りを実現、また、ダンパーハウジングを小型化することにより小型の車体でも広いエンジンルームを確保することができるというメリットがあるそうです。
このサスペンションにより、回頭性の高いハンドリングが実現したそうです、それこそカミソリのようなレスポンスだとか。ある意味リジットサスみたいですよねこれは。
そして、翌年1984年に真打ちが登場します。

排気量1600ccのDOHC 16バルブエンジンを搭載したグレードである「CR-X Si」の登場です。
外観の違いはリヤトランクエンド上に配置された

ウレタン製のリヤウイング(黒い部分ですね)

そしてボンネット左側上にあるこの膨らみ、いわゆるパワーバルジがあります。
これはDOHC化によるカムプーリーのスペースを確保するための物、更にエンジンの冷却のためにオイルクーラーも装着されています。
尚、このSiではアルミホイールは標準ですが、ステアリングのパワーアシストは無し!、つまりパワー!(力が必要な)ステアリングですねw。いわゆるノンパワステというヤツです。更にエアコンやオーディオも「オプション」だったそうで・・・はい、とても硬派なグレードだったんですよ。
尚、変態オプションとして

ルーフ上からフレッシュエアを取り入れて。

車内に導入する開閉式ダクトがオプションで用意されていたり・・・ラリーカーかな?w。
乾燥重量は860kgに増加してはいますが、馬力は25馬力アップの135馬力になっていて、また、こういう小型リッタークラスのエンジンとしては珍しく、比較的にロングストロークのツインカムでして。中低速のトルクもあり軽量な車体と相まって加速は非常に良い車に仕上がっています。
って・・・あの・・・ホンダさん?、当初この車のキャッチフレーズは「デュエット・クルーザー」でしたよね?w。つまりコンセプト的には「若いお二人様の為のデートカー」でしたよね?w。
それが・・・・・・

それは無駄口叩くな牟田口叩け。

我々はこれで戦争に勝つ(byレ(ピー)ル将軍)

脚なんて飾りです!、偉い人にはそれがわからんのです!。
それが・・・どうしてこんなカリっカリかつバリバリの「コンパクトロケット」になっちゃったんですか!、また開発が暴走してやらかしただろこれ!ww。
おかげで欧州やアメリカなどの海外でも販売されましたが、「ローラースケートGT」と呼ばれ安価な価格と相まって、走り好きな若者達に大歓迎される始末・・・w。
尚、海外では「シビックCR-X」の名前で販売されていましたけどね。
だいたいSiグレードは当時の国産スポーツ車の中で、フェアレディZ(Z31)やシルビアに次いで0~100kmの加速時間が第三位っておかしいだろ!、完全に上のクラスのスポーツ車を峠の下りなら喰える上級イーターですやん!「某豆腐屋のアレ」かよ!w。
まあ、この初代であるバラスポから既にCR-Xという車は「峠の下りで後ろに着かれたくない車」になっていったわけですが。
そして、各地の峠や某大都市の環状とかで「よく壁に刺さっている車」だとも・・・ww。
モータースポーツでは、上記の通りジムカーナのウエポンとして引く手あまたとなり

また、ラリーカーとしても使用されています。LMディッシュホイールが渋いな!。
セダンであるバラード(二代目)は1986年に生産終了しましたが、バラスポCR-Xは生産が継続されて翌年の1987年まで販売されて、次のサイバーCR-Xへとバトンを渡しました。
さて、中古市場ですが。
実は・・・二代目で人気も高いサイバーCR-Xより高額だったりします。
サイバーが150万円あたりからあるのに(それでも人気はあるから高めですけど)、走行18万キロ越えのバリバリ過走行なバラスポが200万円から!となっております。
尚、乗り続けているオーナー様曰く、軒並み純正部品は欠品で、維持の為には主治医と部品取りにもう一台必要、細かい部分ではワイパー部にマメなグリスアップが必要だったりと結構手がかかる子なんだそうです。
どうしても無い部品は・・・3Dプリンターで複製してそれをベースに手作りで作成しているとか・・・強者だ!。

ホンダは2人にはXがいるとか、デュエット・クルーザーなんて軟派なイメージで押し通す(言い訳?w)つもりでしたが、蓋を開けたら峠やジムカーナや某環状線で上級スポーツをカモれる2シーターロケットと化してしまい。海外でも理想的なライトウエイトFF2シータースポーツと評価され人気だった車、それがこのホンダ バラードスポーツCR-Xです。
所有するなら?、やはりSiですね。

プラモデルの箱絵ですがw、この無限のCR-X PRO仕様にしたい所。
前後のブリスターフェンダーが素敵過ぎます。顔も精悍さが増していて良いエアロキットです。
尚、CR-X PROはSOHCの1.5iがベースなのでボンネットにパワーバルジは着いていません、これをSiでやりたいですね。

こんな感じで・・・やはりLMディッシュホイールは似合うな。

それか、ある意味お宝ホイールである「無限CF-48」も捨てがたいですけど。
めっきり見かけなくなりましたが、80年代のホンダ旧車には良く似合うホイールです。冷却フィンの馬糞雲丹感が素敵ですw。
そして、峠のダウンヒルで溝落としを!・・・しませんからw。
まあ、ある意味FFのハチロク(AEね)的な車になりつつあるんじゃないかな~と思われます。