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時は二十代になりたての頃。
仲間でパーティー。
夜が明けても宴は続くも、やがて誰もが用事があるとかで、一人、一人と帰って行った。
偶然にもオイラともう一人の女性は、偶然にもその日の夕方からスケジュールが空いていた。
「時間がある事だし、どこかブラッと行こうか?」
「OK!」
暇つぶしと言われればそれまでだけど、「時間があるなら楽しく過ごそう」くらいにしか考えておらず、クルマバカはドライブしか知らない。
カーオーディオから流れていたのはNobody。
元々お互い顔見知り。
彼女はスローな口調で少々ハスキーな声の持ち主。
有名人で言うと桃井かおりサンのような話し方をする。
「アイツら出来てるンじゃね?」と普通は疑うだろうが、それが誰も疑わない。
何しろオレら二人もそんな気は無かった!?
例えオレがおふざけレベルのアプローチをしたところでマジ顔で斬られるような関係だったし。
「だいたいあんな美人にこんなブサイクな男が似合うか?」といえば誰もが頷いている(苦笑)。
いくら恋愛感情持ったところで、彼女からソッポ向かれるのは確実と。
それでもオレなりに気を使っていたんだな。
人前じゃ、こんなオレじゃ恥ずかしいだろうからと…
同じ時間を過ごしてくれるのは彼女の優しさだけだと…
ただ妙に不思議だった。
逆にカッコつける必要が無い。
男女の関係になれない前提だったし。
カフェレストランでの食事はコースやセットを選ばず定食だった。
「ねぇ、二人になっちゃってるけれど普通この場合、周りはカップルに見えるよねぇ。」
「だろうね。だけど実際は違うじゃない。周りの勝手な思い込みだよ。」
「別にそうでもいいんだけどね。」
「は!?」
「いや、なんでもない。」
それ、本気だったのか?
それともいつものような冗談だったのか?
「何でバラードが流れてくるの?」
「いや、入っている順番が…。」←CDチェンジャー
「泣けてくるじゃない。」
「ええええええ!?」
どうした三枚目。
この空気がどうしても読めないぜ。
会話崩壊。
何を話せばよいのかまったくわからない。
「なぁ、帰るか。なんだかんだ、箱根まで来てしまったし。」
「うん。」
流れる景色を見ながらその風景の感想を言うしかない。
彼女もそれに答えていた。
「じゃあね。」
家に送り届けると複雑な心境がモヤモヤと。
時は流れ数年後、職場の忘年会で「恋バナ」の話題になった。
年上の女性の先輩にこの話をしたことがある。
「それ多分、君に恋してたよ。勿体なかったねぇ。」と。
「どうだったんだろうね?今思うとオレも好きだったのかもね。だけど何なのかわかんないままでしまっておくのも良いかな。」と応えた。
時は流れ、彼女はプロサッカー選手と一緒になったと聞いた。
不思議と寂しくも何とも思わなかった。
最初のくだりにあった、キッカケのパーティー仲間の一人のところへ行く用事があった。
思い出話に花が咲く。
彼女の話題になった。
「あのコなぁ。別に悪いトコなんて何も無かったよ。ただ、男と女とかというハナシになると変わってきてサ。そうなると何か違うんだよ。自分でもよくわかんないんだけどさ。」
ヤツは言った。
「オマエ、それいつからそう思ってた!?」
「オレら一緒にいた頃からずっと。」
アイツは何か知っているようだった。
んな事言ったって、「わかんないまましまっておくのもいい」って本気で言ってんだけどなぁ。
今更だし。
Posted at 2023/08/10 16:24:03 | |
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