
インターネットが飽和して2週間、その間、世界中の関連機関、関連企業、研究機関はただ手をこまねいていたわけではない。一体何が起こっているのかを知るために、ありとあらゆるアプローチを試みていた。今日夕方のニュースである技術者が解説していた。
「普通インターネットは、あるサーバーやPCからのリクエストに対し、目的のサーバーがデータを送り返します・・・ネットのサイトがあなたのPC画面に表示される、にはこういった手順が踏まれているんですね。」
「本来、ネットのトラフィックが混雑する、という場合、実際は回線が混雑するのではなく、リクエストが殺到したサーバーがデータを送り返す事が出来なくなる、という状態になっています。」
「しかし、今回の状況は不思議なことに回線自体にデータが溢れている状態になっていて、データを送り出したサーバーがあるわけではありません。・・・正確に言うと、そういうサーバーがあるという兆候は今のところ全くありません。」
「まるで回路に・・・それは電線であれ、光り回線であれ、回路自体に突然データが大量に現れるように見えるんです。」
と技術者は解説し、一瞬の躊躇の後、事前打ち合わせにはなかった一言を付け加えた。
「・・・誰も叫んでいないのに、山彦だけがかえってくる、という感じです」と。
山彦?上手いこと言うじゃないか。
古いトロール船を改造した船の住居兼研究室であるキャビンでカールはテレビに注目した。
「・・・で実際にネットワーク回線に流れているデータはこんな風に聞こえます。」
そして、テレビから流れた音・・・ネット回線に溢れている音は、ホワイトノイズ、そのものだった。カールがテレビから視線を手元の本に戻そうとした瞬間、そのノイズにかすかな変化があった。ほんの少しの音程の変化。だが、変化はそれだけでそのまま単調なノイズが続くだけだった。
・・・カールは椅子の背に身体を預け大きくのけぞった。両手を頭の後ろに組み、目を閉じる。
これは、聴いたことがある。
「・・・このようにほとんど変化のないノイズような音です。時々・・・だいたい20分位で音程が変わることがありますが、今のところこのノイズが何なのかは全く分かっていません。」
20分?
急ぎすぎなのだ。とカールは苦笑いを浮かべた。だいたい人間はせっかちすぎる。急いで答えを得ようとし、瞬間的に成り立つコミュニケーションに慣れすぎた・・・そう、それはインターネットそのものだ。
カールはオープンリールデッキのPlayボタンを押す。
流れ出る音を目を閉じて聴く・・・鯨の歌は時にワンフレーズが20分を超えることある。もしもこのフレーズに意味があるとすれば(その意味を知るのが彼のライフワークなのだが)、鯨たちは実にゆっくりとコミュニケーションをとっていることになる。
インターネットに溢れるホワイトノイズも早回しで再生すればもっと違って聞こえるのではないかと、彼は直感的に確信し電話を手に取った・・・さて、誰に電話すれば良いのだろう?
ため息を一つついて、カールは分厚い電話帳を取り出し、10分かかって目的の番号を探し出し、テレビ局に電話をした。
「・・・はい、バンクーバーで鯨の生態を研究しているカール・セーガンと申しますが、先ほどの番組について気が付いたことがあるのですが・・・」
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Posted at
2010/05/01 22:41:28