
CATVで「ガニー軍曹のミリタリー大百科」というシリーズ番組が始まり、時々見ていたのですが、「で、ガニー軍曹って誰よ?」という妻の問いに思い出して買ってきました「フルメタル・ジャケット」。ご存じスタンリー・キューブリックの名作です(正確に言うとキューブリックという名監督が撮った、まずまずの作品、ですw)。
この作品は、海兵隊の新兵をしごき倒すハートマン軍曹の、熟練した芸術的な罵詈雑言で有名ですが、この役を演じたリー・アーメイは元海兵隊員。この映画には当初「演技指導」として参加していたものの、あまりに見事な罵詈雑言ぶりに、この重要な役に抜擢されました。
ちなみに、元々その役の予定だったのが↑に貼った、物語後半に登場する、イカレたヘリの機銃手です・・・本人はこの交代に大変不満だったそうですが、個人的にはこちらの役の方が実はキャラクターが活き活きしていて好きです(画像をクリックしてセリフを読んで下さいね)。
キューブリックの作品は、イカレた人物がイカレたままで動き回り、なんの説明も後悔も言い訳もなく、イカレたままで終わってしまう、という所が戦慄を感じる理由ではないかと思いました。見ている方は、イカレた人物がそうなってしまった、何らかの理由を求めてしまうのですがそれが無いのがゾッとするのではないかと。その際たるものはハートマン軍曹。あれだけの強烈なキャラクターなのに、なんの説明も無く唐突に殺されて、余韻もない、というのが恐い映画です。
一般的にハートマン軍曹の出てくる前半の評価が高く、後半の戦闘シーンの評価が低いのですが、ミリタリーおたくとしては、後半もそれなりの出来だと。少なくとも、All Cinema On Lineの映画「おたく」が、「狙撃手一人に対して手間取りすぎだ、嘘っぽい」という評価は全く的はずれ。姿の見えない狙撃手に右往左往するのは「人命尊重」の米軍らしさ満開の描写です。
個人的には航空支援を呼んで、目の前をナパームで焼き尽くし、焼け出されたたった一人の狙撃手を最後に・・・という筋書きなら、もっと良かったのにとは思いますが。(いや、この演出はコップラ的過ぎるかな?w)
ちなみに、これは反戦映画ではありません。反人間(ヒューマニティ)映画、とか、人間性へのちょっとしたシニカルな皮肉映画、という感じですね。
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2010/06/29 22:55:16