
八ッ場ダムの建設中止を棚上げする、というニュースが先日流れました。中止を中止する、ではなく、中止前提では地元の方々と話も出来ないから、棚上げにして、話し合いの席に付いてもらろう、ということなのか・・・今ひとつ不明瞭なのですが・・・・
八ッ場ダム建設予定地である吾妻渓谷は
数回通過したことがあります。一度は紅葉のシーズンで、知らずに入り込んだ渓谷の細道は、狭い駐車場から溢れた観光バスやらで、排ガスの濃厚な渓谷となっていました。車を止め少し散策をしたくても、狭い谷には駐車場も見つけられませんでした。そしてそこを過ぎると現れる巨大な構造物・・・国道を高い位置に付け替えるための橋梁のようです。(上の写真(のモト))
先日のテレビで高台の、湖が出来ればそれを眺望出来る新しい居住地に移住された方が、「ここから湖面を見て、この先はのんびり暮らそうと決心したのに・・・」と。
そういう地元の方々の長期に渡るご苦労を考えると後ろ髪を引かれるのですが、でも、あえて、やはり八ッ場ダムは建設を中止すべきだと思います。
大きな人造湖が出来、快適で広い道路が出来る。湖畔にPA的な場所が出来、観光収入も地元での雇用も見込まれる・・・等々、未来の構想を語った役人達がいたことでしょうが、それはきっと嘘です。日本中を見渡しても急峻な山間部にある人造湖で、観光地になっている場所は皆無です。緩やかな湖畔を持つ自然湖(人造湖であっても、例えば野反湖など)であれば、自然と人は湖畔に集い遊びますが、岸が急な、道路が湖畔の遙か上を走るような湖は、物好きの釣り師が妄想に取り憑かれ、決死の思いでずり落ちながら、たどり着くだけです。
そして、その釣り師ですら、その不毛さ嘆くでしょう・・・目の前に対岸まで数百メートルもある広い湖面があっても、魚がいるのは急な湖岸の際、数mだけ・・・まるで砂漠のように、生命感の乏しいただ膨大なボリュームの水があるだけです。
そんな湖はいりません。
それよりも、私は妄想するのですが、ダムは中止し、その他の整備は続ければ良いのではないかと思います。道路も生活も谷の上に移動し、谷そのものは人の住まない場所にしてしまえば、吾妻渓谷はやがて日本中探しても見つからない、車も人の生活も無い、真に自然の美しい渓谷となっていくのではないでしょうか。
山がちの国土を持つ日本では、道路も生活空間も川に沿って山奥に伸びています。ですから渓谷が美しくても、そこは観光渋滞の阿鼻叫喚になりがちです。でも素晴らしいことに吾妻渓谷はダムに水没する予定だった場所が、そのまま時を経るに従い、どんどん自然に戻っていくのです。そんな谷は日本ではなかなかありません。
高台の国道脇には快適なPAを作って、どんどん車を止めればいい。高速道路並みのアクセスでやってきて、そこに車を置いて、例えば観光用に谷に下るケーブルカーなどを整備し、地元の方が慣れ親しんだ渓谷や、かつての生活の跡をガイドするツアーを組んだらどうか?ダムや人造湖という巨大な「箱モノ」を作るのではなく、ツアーや体験を出来る場となるよう整備したらどうでしょうか。もちろんそのツアーでは、八ッ場ダム計画に翻弄された谷の記憶が語られるべきでしょう。
で、そのツアーの最大の目玉は、かつての点在した温泉旅館の跡にある温泉露天風呂(笑)
建物は撤去されて、かつての内風呂もみんな露天風呂になった、とか・・・冬には野ザル達もやってきたりして。入山料ではなく入谷料やガイド料、ツアー代金、そういうものを徴収しても良いのではないかと・・・時間が谷を自然に戻していく、という事を見てみたい、と思います。
以上、八ッ場ダムを中止したら、こういう妄想も出来る、というお話しでした。
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▽徒然に車以外の話 | 旅行/地域
Posted at
2010/11/11 00:46:52