
かねてから、ごく一部(笑)から熱いリクエストのあった四発大型機を初紹介です。ドイツ本土戦略爆撃の主力であり、特殊な爆撃ミッションにも活躍した、英国空軍アブロ「ランカスター」です。(どうもイマイチですが
ギャラリーもどうぞ)
ええと、でも今回は1/72ではなく1/144です。だって駐機場が一杯なんですもんw
ご存じのように大戦後期には日本は
戦略爆撃という「敵国の国力、生産力の壊滅」を目指した爆撃の対象になり、B-29を初めとする大型爆撃機の執拗で徹底的な爆撃を受けました。国内主要都市はほとんどが焼き尽くされ民間人の被害も恐るべきものだった事をご存じかと思います。日本に投下された爆弾は(原爆は含まず)約15万5千トンだったそうです。
・・・が、しかし、ドイツ国内に投下された爆弾の総数は、なんと
165万トン以上、227kg爆弾に換算するとドイツの
全国土に1平方km当たり約18発・・・55㎡毎に1発という計算になります。(ちょっと大股で10歩ほど歩いて下さい、それを一辺とする四角の中に1発の爆弾が落ちたという計算になります。)
最も壮絶だったとされる(たいした戦略目標もなく、それまで爆撃されたことがなかったため難民も流入していた)ドイツの古都
ドレスデン市への1945年2月の爆撃では、市街地に対して英軍夜間爆撃二波870機、米軍昼間一波311機で約5.5㎡毎に1発という密度で爆撃が行われたそうです。(ちなみに畳3帖半で5.6㎡です)その爆弾の雨の下に約60万人~80万人がいたそうで、ドレスデン市への爆撃の死者行方不明者は正確な算定は不可能で諸説があるようですが、13万人を越えると結論されたと。
このような大戦後期の夜間都市無差別爆撃に最も貢献したのがこの「ランカスター」という機体です。バトルオブブリテンの頃から、小手調べ的に英軍は独本土への昼間爆撃を試みていたのですが、(未帰還率が10%を越えるような)その被害の大きさに、やがて夜間爆撃を中心とした戦略に変更を余儀なくされます。また当初の爆撃機は双発機が中心で爆弾の搭載量、航続距離、高度、速度、防御火力いずれをとっても「効果に対する被害」が割に合わない・・・すなわち「戦略爆撃」というコンセプトには4発以上の爆撃機が必要だとの認識が広がりました。
このアブロ「ランカスター」も当初大出力のエンジンとして期待された「バルチャー」エンジン(詳しくは「
タイフーン」をご参照下さい)を搭載した「
マンチェスター」という双発爆撃機として開発が行われました。しかし、「バルチャー」エンジンの不具合による喪失が相次いだため、取り急ぎ胴体などはそのままで主翼を再設計し実績のある「マーリン」エンジンを4機搭載した形に変更されました。これが
スピットファイア、
モスキートと共に英軍の名機と並び称される「ランカスター」の誕生です。
同時期にはショート「
スターリング」、ハンドレページ「
ハリファックス」という4発爆撃機も運用が始まり、この三機種によって英国の戦略爆撃構想は実施可能となりました。同時に四発大型機が三機種も開発されるのは、さすがに英国の底力と言うべきなのでしょうが、これらの中でも「ランカスター」の搭載能力、運用のしやすさは一歩抜きんでていたため、主力として終戦まで配備数は増え続けます。
一回の出撃で1000機以上で集中的に爆撃を行い、目標地域の消火、救助活動をも不可能にするという「飽和爆撃」というコンセプトが確立するのもこの頃で、前述したドレスデン爆撃でも第一波爆撃の二時間後に第二波の爆撃を行っています。つまり第一波の爆撃に対する消火、救護活動中にタイミングを合わせて爆撃を行うという極めて非情な戦略を行いました。
非情さが目立つ夜間都市無差別爆撃の立役者である「ランカスター」ですが、逆に(喝采を送りたくなる)いくつかの特殊なミッションのエピソードも残っています。
その1 ルール地方のダム破壊爆撃・・・1943年5月、満月の夜、ルール地方の産業の基盤となる水を供給するダムを、
巨大なドラム缶状の特殊爆弾で破壊するミッション。夜間超低空で独国内深くに侵入したランカスターは、激しい対空砲火の中ダム湖上18mという超低空から時速380kmでバックスピン(回転)をかけた5トン爆弾を投下。水切り石のように水面を跳ねながら(魚雷防御ネットも飛び越え)ダム壁面に達した爆弾は、回転しながら水中に潜り込み爆発。巨大な爆発力によってダムを破壊しました。19機中8機の犠牲を出しましたが、伝説的なミッションとして有名です。(THE DAM BUSTERS(暁の出撃)という映画にもなっています。)
その2 テルピッツ撃沈・・・フィヨルドに隠れ、度重なる英国空海軍の攻撃にも耐えた独の戦艦テルピッツに引導を渡すため、30機のランカスターが高空から5.4tの「
トールボーイ」爆弾を投下。数発の直撃弾と多数の至近弾によって約8分で撃沈。
その3 津波爆撃・・・ノルマンディー上陸作戦時、独軍魚雷艇が集結中のル・アーブル港に対し15発の「トールボーイ」を投下。海底深くに潜り込んだ爆弾の巨大な爆発によって、6m以上の津波を発生させ一挙に艦艇を破壊。
その後巨大爆弾の威力を知った英空軍は10t爆弾「
グランドスラム(地震爆弾)」を開発し、強固なコンクリート構造物やトンネル、橋梁、Uボートブンカー等を爆撃し破壊・・・当時この爆弾を運べるのは世界でもランカスターだけだったそうです。
戦略爆撃機の宿命として、都市無差別爆撃の主力をになった「ランカスター」ですが、語り継がれるほどの非常に特殊で難しいミッションも、書ききれないぐらい多く成功させています。スマートさは皆無、美しくもない機体ですが、記憶されるべき機体ですね。
※次回は独側の主力爆撃機をご紹介する予定です~。
※7/8 miko1035さんの
「Big Bird」シリーズ・アブロ ランカスター にTBさせて頂きました。
Posted at 2008/01/06 14:36:03 | |
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