
航空機の開発物語を読むと、耐荷重性能(構造の強さ)と軽量化のせめぎ合いに苦心する場面に良く出会います。空中での機動によって機体各部にかかる荷重を事前に予測し、安全率を見込んだ数値で構造を設計し、試作機を作ります。一般的に試作0号機で荷重テストを(当時はオモリを裏返した機体や主翼に乗せて)行いました。その際、設計荷重より軽い負荷で壊れるのは論外ですが、逆に設計荷重を大幅に越えても壊れないのも、
下手な設計だと言われました。つまり要求性能以上のモノを作ってしまう=無駄に重い、ということだったようです。
で、「
IIHSの安全性評価…スバル全5車種が選出、トヨタはリスト落ち」という多分に挑発的なタイトルのニュースについて・・・このニュース、他のソースも辿ると、「トヨタの11車は落選」という部分は「3車種のみが新しい横転ロールテスト項目を受け、イマイチの成績。その他8車種はテストを受けていないので、今回の選定からは一旦外れた」ということのようのが正しい認識のようです。
逆にスバル車が全車種で横転ロール事故(を模したテスト)に充分な構造を採用していた、ということですから、メーカーとして何らかの基準に沿った設計がなされていた、ということかと思います。つまりそういう「要求性能」を選定していたか、あるいは要求性能を越えた過剰な設計をしていた、という見方も出来ます。
そういう観点で見ると、テストを受けたトヨタの3車種については決して「品質性能」が劣っていたわけではなく、ただ単に「要求性能」がなされていなかっただけだ、という見方も出来ますし、
要求性能を越えた時点で壊れる設計はコストと重量を削減する事とあわせると
上手な設計であるとも言えます。
ただし、そもそも高いレベルの要求性能を実現した、あるいは、コストがかかっても過剰で下手くそな設計をしていた(笑)メーカーが、奇しくも、コストパフォーマンスを極めた上手な設計のメーカーにハッキリと優位性を示すことが出来た、という点で関係者としては溜飲を下げる結果となったのではないでしょうか?
トヨタが、変にごねる事なく、得意の
カイゼンですぐベストピックに復帰する事を期待したいと思います。
そして、実直に過剰な(?)要求性能を実現していたスバルというメーカーに、心から喝采を送りたいと思います。
ちなみに、2006年度のIIHSのテストに関する記事は
こちらです。別に衝突安全性能が急に良くなったわけではなく、何年もかかって勝ち得たものだということもお分かり頂けると思います。
Posted at 2009/11/20 23:44:42 | |
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