
私の虎の巻である「
忘れられた軍用機 大内 建二(光人社文庫)」という本で「おそらく第二次大戦に参加した戦闘機で最も知られていない」と紹介されていたオーストラリア空軍のCA-13「ブーメラン」がロールアウトしました。(ホントは先週完成していましたが、暑くてブログUPが遅れました。)
ギャラリーもどうぞ。
この機体はオーストラリアで開発された唯一の戦闘機です(もっと広くオセアニアで開発された唯一の戦闘機とも言えます。)。オーストラリアと太平洋戦争に違和感を覚える方もいらっしゃるかも知れませんが、豪州は歴然とした連合国、連合軍艦隊に参加した豪海軍の艦船が日本軍と交戦しましたし、ポートダーウィンなど豪州本土は日本軍の爆撃も受けています。ですが本来イギリス連邦の農業国であった豪州が戦闘機を急遽開発した背景には、日本の南方侵略の緊張と、英国本土近海での(Uボートを中心にした)独軍の通商破壊戦争の熾烈さがありました。
英国から海路はるばる運ばれる軍用機だけに頼ることに不安を覚えた豪空軍は、F2A「
バッファロー」装備の2個中隊しかなかった戦闘機部隊を急遽増強すべく、当時国内で唯一軍用機の生産を行っていたコモンウエルス社に戦闘機の開発を命じます。それをうけたコモンウエルス社は一からの開発ではなく、ライセンス生産していたアメリカのノースアメリカンAT6高等練習機(後の名機
T-6テキサン)「ワイラウエイ」の基本構造をそのまま応用し、たった半年で初飛行までこぎつけるという驚異的なスピードで開発されたのが、この「ブーメラン」と名付けられた戦闘機です。
ノースアメリカン社もAT-6の戦闘機化を行っており(後に
P-64として数機採用)その内容を参考にしたそうですが、エンジン出力を大きくするなど独自の部分も多く、何よりも半年で初飛行、1年で部隊配備というスピードには驚きます。機体自体は、構造をそのまま利用した主翼に原型のAT6の面影を残しますが、全体的には愛嬌のある機体、コンパクトにまとまったなかなか格好可愛い(?)ですね。
さて、豪州で急造されたブーメランの戦闘機としての活躍はどうだったか?ですが・・・結果から言うと「
敵機を1機も撃墜せず、また1機も敵機に撃墜されなかった」という実戦に配備された戦闘機としては希有な記録を残しています。実際の所、日本軍戦闘機には性能的に及ばないという認識があり、低空での抜群の操縦性と20mm×2+7.7mm×2という重武装を活かし陸軍を支援する対地攻撃、偵察などに専念したそうです。
航空機の開発は一国の技術水準がそのまま現れます。短期間で開発され、地味ながら堅実な運用が出来た「ブーメラン」はオーストラリアにとって一つの記念碑的な航空機でしょう・・・実際今でもいくつかの記念館、博物館に誇りを持って展示されており、またフライアブルな機体も数機あるそうです。
Posted at 2007/08/14 17:32:08 | |
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