
この日は、袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された、ピストン西沢氏が主催する「みんなのモーターショー」に行ってまいりました。本コースの一部では、各メーカーの新型車に乗れるコーナーも用意されていました。
最後の回でしか乗れなかったために、各車ある中でホンダのフィットRSにしか乗れなかったことが残念です。しかし、なかなか試乗車がない上に貴重なRSグレードです。短距離、短時間ではありますが、しっかり味わってきました。このRS、おとなしい外観に少し速いエンジンという組み合わせで、欲しいクルマの一台です。
フィットの中でのRSの位置づけ
フィットは過去三代にわたって発売されています。その前にはハッチバックの「ロゴ」と、背高ワゴンの「キャパ」がありましたが、統合するかたちでフィットとなりました。
ロゴは、不景気時代を映してか、安価な車として登場しました。しかし、「安物」との評価を受けてしまったのです。後期モデルでは「走りのホンダ」らしく、「スポルティックTS」という、少しパワーが高いD15B SOHC4バルブエンジン車を追加しました。
初代フィットは、1300ccの2WDと4WDで発売されました。大人気となり、程なく「1.5T」という、SOHC4バルブエンジンを搭載、MTも設定されたモデルを追加しました。
二代目フィットでは、1.5Tをツーリングモデルとして位置づけ、「RS(ロードセーリング)」としてロングツアラー仕立てにして当初から発売しました。ところが、ライバルとは言えなかったスイフトのスポーツグレードが人気になった上、フィットでロングツーリングをする人はいない、という事態になりました。
そこで後期型では、あらためて「RS(ロードスポーツ)」としてスポーツモデルとしての性格を与えました。4WDを落とす一方で、ハイブリッドモデルも追加、MTのハイブリッドモデルすら選べました。
三代目フィットでは、ハイブリッドシステムの変更に伴ってハイブリッドRSが落ちてしまい、ガソリンモデルのみになりました。二代目後期ではやや派手な外観を伴っていましたが、基準車のフィットがやや派手になったからか、少し地味に感じられるモデルになりました。
エンジン
1500ccのDOHC筒内噴射ガソリンエンジンを搭載しています。132馬力を発揮し、街乗りではパワフル、サーキットで乗るのには扱いやすいパワーです。ホンダの直噴ガソリンエンジンとしては2代目になるエンジンですが、他社のエンジンと同様、ガサガサ、カラカラという機関音やインジェクターの作動音は聞こえません。また、以前のホンダL型エンジンにつきものであった、チリチリ、ザラザラとした、ギリギリまでノッキングに近づけたような印象もうすくなっています。ホンダのL型エンジンは、DOHC化されてまた進化しました。となると、当初のSOHC2バルブエンジンが一番良くなく、「2バルブによるダウンスピーディング、位相をずらした点火方式」は、一体何の役に立ったのでしょうか?
エンジンは、アクセルペダルが浅い領域の空吹かしでも、4気筒の活発なエンジンらしい、獰猛な音を発します。これだけでエンジン派の人は陶酔してしまうことでしょう。もはや「旧き良き」ではありますが、スポーティーハッチバック車として評価できるエンジンです。なめらかな回転フィーリングなのに音は獰猛で、気持ちが良いです。
発車すると、パワーはおとなしく感じられます。数年に一回サーキット走行を楽しんだり、山道をちょっと速く走って楽しむのには、この位のパワーの方が全開に出来る時間ができて、そこそこの腕の人にはむしろ楽しめることでしょう。レッドゾーンの回転までエンジン回転を上げ、シフトアップすることでスピードを上げるのは快感です。
空吹かし時よりも、実際に車速を上げた方が静かに感じられます。
トランスミッション
CR-Zで登場した、6速MTを搭載しています。6速MTは、公道走行時に4速にするか5速にするか迷う場面が多いために、私は5速MTの方が使いやすく感じます。今回は4速まで使用しましたが、同じことを感じました。
シフトフィーリングは、CR-Zにて採用された時よりも悪化しているようで、シフト操作時に引っかかる印象が強かったです。床に振動が伝わるようなゴリゴリとした触感こそないものの、特にシフト完了直前での引っ掛かり感は、シフト操作の度に不快感を覚えました。
ケーブル式ですので、引っ掛かりはシフト・セレクト機構部で発生していると考えられます。早急に改善を望みます。
ステアリング
サーキットのような、きれいでよくグリップする平坦な路面では、真の評価はできません。今回の範囲内では、電動パワーステアリングの不自然な操作感(軽すぎ、先走って転舵させすぎ)といったものはなく、気持ちよく操作をすることができました。
ステアリングホイールの取り付け角度はもう少し検討が必要で、私にはもう少し立った(ステアリングホイールが、路面に直角方向になった)方が扱いやすいように感じました。チルト機構の可変角度を増して欲しいものです。
ブレーキ
ホンダ車の美点です。しっかりした硬い踏み応えと、制動力を踏み込み力で調整出来る、完成度が高いブレーキです。サーキットとは言え急制動は試せませんでしたが、標準状態でも気持ちよく使えるブレーキでした。
サスペンション
これもまた、きれいなサーキットでの走行ゆえに、正確なことはわかりません。特に、突起などに乗り上げた際の、いわゆる乗り心地は全くわかりませんでした。
一方で、コーナーリング時のことはよくわかりました。ロールは自然に起こりました。ロールスピードが適切なので、コーナーをそこそこの速度で走行しても、恐怖感はありませんでした。ロールはある程度の角度で強制的に抑えられる印象です。その時の感覚は、バンプラバーに当たっているというよりは、スタビライザーの効果によってロール角が決まっている印象でした。ノーマル状態のバランスが高く、サスペンションを固くしてしまうと、市街地走行も含めてかえって楽しめなくなるような印象です。ショックアブソーバーか、スタビライザー程度の変更にされるとよいでしょう。
操舵に対する車両の反応は穏やかで、危険な挙動は起こしづらくなっています。コンパクトスポーティーカーらしいキビキビと反応する印象ではありませんでしたが、扱いやすい特性だと思います。
ボデー
スポーティー感が全面に出されているスイフトスポーツやノートニスモ、マーチニスモと比較すると大人で、モータースポーツベース感がやや貧弱に映るデミオと比較すると、ちょうど良いように感じます。少し地味な印象が、かえって長く所有させることにつながることでしょう。昔の、SLグレードのような佇まいに、好ましさを感じます。
室内の色使いが黒一色で、やや寂しいことは否めません。内装は、一時メッキ過多でギラギラしていた時期と比較すると、最近のホンダ車は控えめになっています。
まとめ
良さそうだと思っていたこの車は、乗ってみてやはり良かったです。各社とも、スポーツグレードとなると妙な気負いをするのか、派手なエアロパーツや色差しをしてしまうものですが、この車はおとなしい印象が良いです。
個人的には、兄弟車であるグレイスにこの仕様があればすぐにでも購入してしまいそうなのですが、残念ながらありません。
とはいえ、この「ほどほど」がこの車を引き立てていますので、手頃なスポーティな車を探している、という人には充分勧められます。
参照して欲しい記事
トヨタ
オーリス(前期型RS)
ヴィッツ(標準車、前期型)
ヴィッツ(標準車、後期型)
カローラアクシオ(ガソリンエンジン、後期型)
ラクティス(前期型、1300ccエンジン)
ラクティス(前期型、1500ccエンジン)
パッソ(初期型、+HANA)
アクア(初期型)
日産
シルフィ
ノート(DIG-S スーパーチャージャーエンジン車、初期型)
ノート(ニスモ仕様、MT)
マーチ(標準車、初期型)
マーチ(ニスモ仕様、MT)
ホンダ
フィット(初代、1300ccエンジン搭載車)
フィット(二代目、前期型、1300ccエンジン搭載車)
フィット(二代目、後期型、乗車のみ)
フィット(二代目後期型、比較試乗)
フィット(ハイブリッド、現行初期型、短距離)
フィット(ハイブリッド、現行初期型、長距離)
フィット(1300cc)
グレイス(ハイブリッド)
CR-Z(初期型、CVT)
CR-Z(初期型、MT)
CR-Z(初期型、MT・CVT比較試乗)
マツダ
デミオ(旧型標準車、初期型)
デミオ(旧型、スカイアクティブエンジン搭載後期型)
デミオ(現行、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン車比較試乗)
デミオ(現行、1300ccガソリンエンジン、中距離)
CX3(ディーゼルエンジン、6速AT)
三菱
コルト(1300cc)
スズキ
スイフト(現行、初期型)
スイフト(現行、デュアルジェットエンジン)
VW
UP!
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試乗 | クルマ
Posted at
2015/12/19 21:48:52