今期テレビドラマの中に、「トクサツガガガ」という漫画原作の作品があり、NHK総合金曜日午後10時に放送されています。大人になっても戦隊ヒーローものが好きな登場人物の日常模様を描いたもので、内容はちょっと薄いのですが、出演者の生き生きとした表情が印象的です。
そんなドラマがあるからか、あるいは東映の戦隊ヒーローもの作品が交代の時期を迎えるからか、2週間ほど前の朝日新聞では、戦隊ヒーローものについて特集記事を組んでいました。
戦隊ヒーローものは、1975年に放送された「秘密戦隊ゴレンジャー」を祖としております。途中、スポンサーの都合で放送局を東京12チャンネルにし、「スパイダーマン」になったことがあります。今でも続くアメリカオリジナル版とは異なり、スパイダーマンが「レオパルドン」という巨大ロボットに乗って戦います。そのことが、当時の子供たちにも、スポンサーにもヒットしました。以後、放送局が再びテレビ朝日に戻っても巨大ロボットは継承されました。
余談ですが、その作品は1979年放送の「バトルフィーバーJ」で、その枠の前身番組「闘将ダイモス」は視聴率不振となり、急遽巨大ロボットアニメが東京12チャンネルに、実写ヒーローものがテレビ朝日に変わったのでした。
その急な変更からロボット着ぐるみの製作が間に合わず、脚本家が「それなら、ロボットは製造中ということにして、設計図を奪い合う脚本にしよう。」と、柔軟かつ物語が面白くなる変更をしていたのでした。
また、1981年に放送された「太陽戦隊サンバルカン」は、主人公を3人とし、なおかつ女性戦士を「司令員」に変更しました。当時の女児には応援対象がなくなったと不評だったとのことです。私には、弱くて足手まとい(に見えた)女性戦士がいなくなり、「すっきりして強くなった」と感じていました。
しかし、私がこの番組を見ていた様子を父が見て、
「主人公たちが女性に使われているじゃないか。女性がいなくなったんじゃなくて、出世したんだよ。偉い人は、現場に出ないの。」
と言うのでした。
話が横道にそれました。新聞記事のインタビュー対象には慶応大学の先生も含まれており、ちょっと興味をひかれる内容でした。
2018年度に放送された現シリーズでは、男性戦士が敵にやられると、女性先輩戦士が飛んできて男性を助け、敵を撃ちに行く描写があるのだそうです。
現代の女性戦士
その一方で、1982年度に放送された「ゴーグルV」では、ゴーグルピンクがやられると男性戦士が飛んできてこれを助け、敵を撃ちに行く描写だったのだそうです。
ゴーグルピンク
すなわち、1982年は「女性は男性を引き立てるためのやられ役」であり、2018年は「女性と男性は対等に描かれている」と、働く女性に対する社会の受容性が進んだと、先生は学校で教えているのだとか。
この記事を読んで、面白い考察だと思う一方で、「本当にそうだったかなあ?」という疑問を覚えました。
先に書いたように、1981年は女性戦士がいなく、1980年の「電子戦隊デンジマン」に遡ります。デンジマンのデンジピンクを演じる人も、それ以前の戦隊ものの女性も、当時の女性としては体格がしっかりした方を選んでいます。
デンジピンク
デンジピンクの方は身長167cm、共演の男性は男性俳優としてはやや低めの、170cm前後の身長で、並ぶと5人そろったように見えました。なんでも、戦隊をスーツ着てアクションをする方は、身軽で小柄な方の方が多いということがその理由のようです。
ところが、「ゴーグルピンク」を演じる方は、放送決定直後に都合で変更、当初予定されていた方より小柄な、158cmの方が選ばれました。まあ、普通の女性の方です。アイドルブームの時代だったからか、それ以前とは違った、かわいらしい雰囲気の方でした。
これがなんとも弱々しく、実際も男性戦士の足手まといになっていたような記憶があります。ただ、当時の大学生には小柄でアイドル歌手並みのルックスの好評のようでした。
1982年には弱々しい女性が好まれ、それ以前は割と強い印象の女性がいて、もっと前の時期はどうだったか、改めて調べてみました。すると、戦隊ものに限らず、1970年代前半までは女性が強く描かれた作品もありました。
後に長渕剛氏と結婚することになった「志穂美悦子」さんは、1973年に「キカイダー01」で本格的なアクションを演じていました。その後も継続的に女性忍者を演じました。また、当時の女性としては体格がよかったと思います。
ビジンダー
それより前の1971年には、女性ヒーローの祖となった「好き!すき!!魔女先生」の「アンドロ仮面」がありました。これを演じた「菊容子」さんという方も、女性忍者などをのちに演じています。
アンドロ仮面
以上をまとめると、1960年代後半から1970年代前半は、「ウーマンリブ運動」の影響を受けて「強い女性」を歓迎するムードがありました。ただし、実際に女性の社会進出が出来たかどうかは別です。
そして1975年前後にこの風潮をすべて打ち消す何らかの出来事があり、1980年頃には「女性は小柄でおとなしくて、男性にとって「かばってあげたい」気にさせる子が良い」という風潮になったようです。ただ、今のところその出来事はわかっていません。ただし、第一次オイルショックとこれに伴う不景気があり、高度経済成長期頃に良いとされたことが、全否定されていた模様です。同時に、茶髪、ベルボトムで股上が浅いデニム、小さめのTシャツ、ホットパンツ、ミニスカート、目を強調する化粧、男性の長髪なども廃れています。
なお、女性に対するこの風潮は1985年には転調し、「毎度おさわがせします」では、中山美穂氏演じる「まどか」が、当時でいうところの「男言葉」で、元気の良さをアピールしたものでした。
先日、「常識はねつ造される」と書きましたが、このように「思い込み」によって作られてしまうのです。
ブログ一覧 |
過去のテレビ番組 | 音楽/映画/テレビ
Posted at
2019/02/23 21:02:56