
今日は、トヨタの販売店の近くに行く予定でしたので、あらかじめ免許証とメガネを持って行きました。期待通りプリウスが置いてあり、試乗がかないました。
プリウスの歴史
先史
プリウスは当初、筒内噴射ガソリンエンジンとCVTを搭載した、コンパクトで燃費が(当時としては良い)車として企画されたそうです。目標燃費は20km/リットルだったようです。しかし、当時の社長から「まだ甘い」と言われ、ガソリンエンジンとモーターのハイブリッドシステムを採用し、発売したとのことです。
初代前期(NHW10)
1997年に発売されました。今日のプリウスにも共通する、遊星歯車機構とエンジン、発電/変速用モーター、駆動/発電用モーターを組み合わせた方式を採用していました。
エンジンは、1NZ-FXEエンジンで、確か42馬力程度であったと記憶しています。カメ型の出力低下警告灯が用意されており、少しでも活発に走るとすぐに出力低下警告灯が点灯し、軽自動車よりも遅くなるような有様でした。
ハイブリッドバッテリーも、後席背面とトランクルームの間を要していました。ブレーキも、横滑り防止装置を利用した、「ブレーキオイル戻し」によって制動力を解除、摩擦ブレーキを弱める方式の回生ブレーキ併用システムでした。
当時は、未来的とされながらも「少し変わった人が選ぶ車」と陰口を叩かれ、いつの時代にも必ずいる、新しいもの好きの方に好まれていました。当時発売されたゲーム「グランツーリスモ2」に採用されたのも、面白いことでした。
初代後期(NHW11)
2000年に発売されました。エンジンは、確か58馬力程度にパワーアップされました。それでいて燃費は良くなるのですから、「エンジン出力は向上を目指すべきか」、と、感じさせられたものです。
ハイブリッドバッテリーも、丸型ケースから角形ケースへと変更、電池の電圧も上げられてモーターの出力も向上しました。スペース効率の上でも大幅に進化し、セダンモデルのままにトランクスルーが可能になりました。
走りの性能の上でも著しく向上し、前述のカメ型警告灯もほとんど点灯することがなくなったと聞いています。
スタイルの上でも、前期型のややバランスを欠く印象から、安定感を感じさせる、トヨタの標準的なセダンスタイルになったものでした。
二代目
2003年に登場しました。スタイルの上では、5ドアハッチバックに変わったことが特徴です。既にコンパクトカーブームがあり、ヴィッツ、フィット、マーチ、そしてやや大きなクラスでも初代アクセラが売れており、日本人の「5ドアアレルギー」は一体どこに行ったのか、と感じさせられました。
エンジンは1NZ-FXEのままに確か70馬力程度まで向上させられました。バッテリーは角形のままに搭載個数が削減されて電池電圧は低下、代わりに直流コンバーターによって電圧を制御できるようになり、駆動電圧は最高500Vまで向上しました。
ブレーキ系統も、液圧を高圧にして蓄圧し、前輪は人間のブレーキペダル踏力を介助、後輪は蓄えておいた高圧ブレーキフルードを電子制御の上、流入させる方式になりました。このペダル感覚が劣悪で、踏んでも踏み応えはないわ、ブレーキペダルから足を離してもペダルが戻ってこないわで、ゲームセンターのゲーム並みのひどさでした。
人気が急上昇するのは、原油価格が高騰した2005年?2007年頃からですが、ようやく1500cc級のガソリンエンジンAT車と同等に走れるようになり、「新しいだけの車」から「使える車」になってきました。
この車には、前期型、後期の前期型、後期の後期型がありますが、システムの上では大きな違いはありません。特筆すべき点として、3代目プリウス発売以降アクア登場前でも、プリウスEXとして、法人や個人ユーザーの一部の安価なハイブリッド車を求める需要に答えました。それほど当時はオイルショック的な雰囲気だったのです。
三代目
2009年に登場しました。二代目の後期からすでに一般の人にも「ハイブリッド自動車は燃費が良い」とのことが知られていたために、大人気となりました。また、当時は「環境のためなら死んでも良い」とでもいうべき雰囲気がありました。
環境という面では、車はまさに悪、「環境のために運転免許を取らない」と、平気で言えるような風潮がありました。「ロハサー」という人たちもいましたね。
エンジンは、出力を向上させるために新世代の「2ZR-FXE」エンジンへと換装されました。出力向上と熱効率向上が目的であったようです。1NZ-FXEエンジンでは、高速走行時にエンジン回転が上がってしまい、うるさいだけではなく、「なんとなく余裕がない車に乗っている」感じがしたものです。
何しろ、少し加速をしようとすると、それまで2000回転程度であったエンジンがあたかもシフトダウンをしたかのように、すぐに4000回転まで回転が上がってしまうのですから、低排気量エンジン車の雰囲気そのものでした。
バッテリー電圧はそのままに、直流コンバーターやインバーターの性能を向上、最高電圧を650Vまで上げました。モーターも小型高速型へと変更し、さらに減速機構も組み込みました。
車体も3ナンバー幅へと拡幅されました。それまでやや長細いスタイルであったものが、安定感あるスタイルへと変わりました。内装は近未来調で、センターコンソールが運転席と助手席を分けるように存在し、運転手が手を横に動かすとすぐにモード切替レバー(いわゆるシフトレバー)が来るようになっていました。
当然、大人気となりました。カローラ系やプレミオ・アリオン系の市場も大きく侵食することになり、トヨタのラインナップを大きく変える、とすら言われました。トヨタ自身にも「プリウスがあれば安泰」と、どこか慢心したような空気が流れていました。その証拠に、アクアもプリウスC、その他ハイブリッド車もプリウスの名前で販売しよう、とすら雑誌に掲載されていたものです。
走りの点では、当初雑誌は高く買っていました。私はすぐにレンタカーでドライブをしました、サスペンションは低速域でストロークを拒み、大きなうねりでは減衰力は出ない有様でした。ステアリングは、Lグレードは操舵力は軽いものの、摩擦が大きい印象、S・Gグレードのものは重すぎて無感覚で疲れるものでした。
ざらついた路面では、特にボデー後半部分がブルブル、ミシミシと変形し、新車なのにまるでポンコツ車に乗っているような印象でした。私がブログに書いてから、しばらくしてようやくこのことが雑誌に書かれるようになったものです。
三代目の時期に、ハイブリッド車のラインナップが急速に拡大されました。トヨタ自身もそうですし、ホンダも車種を増大、その他のメーカーも、マイルドハイブリッドからストロングハイブリッドまで、もはやハイブリッドシステムは常識になりつつあります。そんな時代にあって、この市場の元祖であるプリウスは、モデルチェンジにかなり力を入れたことでしょう。幸い、アクアやカローラが発売されていますので、価格の点でプリウスはやや自由になれました。
エンジン+モーター
エンジンは、3代目の2ZR-FXEエンジンを改良して搭載しています。説明等によると、EGR流量を増大し、低下した着火性を改善するために、吸気ポートをより吸気の渦が発生するような構造にしています。その他策などを含め、エンジンの熱効率を40%まで向上させているとのことです。
モーターは、より小型高速回転化が進んでいる模様です。インバーターは小型かつ高効率化が進められ、インバーター素子の電気抵抗が低減され、損失電力が削減されています。
ハイブリッドバッテリーは、量販グレードの2WD Sグレードと4WDにはニッケル水素バッテリーが、その他のグレードにはリチウムイオンバッテリーが使用されており、アクア同様に後席座面下に搭載されています。
発車すると、最初はモーターによる動力で加速が行われます。時速20km程度でエンジンが始動されますが、旧来のモデルと異なって、「ブオン」とばかりに、あたかもアクセルを踏みながらエンジンを始動したかのようなかかり方をします。おそらく、スロットルボデーの汚損に対して、エンジンが始動不能となることを防ぐ策、ないしは、始動時燃料噴射量を削減するためのものと考えられます。なお、勢いよくエンジンがかかるからといっても、その時の振動が大きいとは感じません。むしろ、旧型までの車で感じられた、やや後方に引きずられるかのような、エンジンが走行抵抗になるかのような印象がなくなっています。
発車からアクセルペダルをさらに踏み込んで速度を他車に合わせようとしますが、エンジンの回転は1500-2000回転程度に固定されたままで加速が行われます。エンジンは、負荷に負けずに回れれば、可能な限り回転数を上げずに低い状態で使った方が高効率で使えます。おそらく、発電/変速モーターにて目いっぱい発電をし、起こった電力で駆動/発電モーターで加速をしているものと考えられます。
この点は、先に登場しているアクセラハイブリッドとはかなり異なる印象です。アクセラハイブリッドは、あたかもエンジン車であるかのように、車速と連動してエンジン回転数が上がります。アクセラセダンは、今回のプリウスの発売を危機ととらえてディーゼルエンジンモデルを追加していますが、まだまだ存在意義があります。
市街地での試乗ゆえ、時速40kmを超えることはできませんでしたが、上記の特性は全く変わりませんでした。本来は、山岳路や高速道路も試さなくてはなりませんが、この走行特性はこれまでのプリウスと同様であることがわかりました。
また、今回のモデルでもモーターのみで走行するEVモードスイッチ、EVかハイブリッドかは問わず、パワー優先のパワーモード、ノーマルモード、出力が制限されるエコモードスイッチがあります。EVモードは試せませんでしたが、この切替スイッチの位置が非常に悪いです。インストルメントパネル中央下部にあり、手が届きづらいです。それこそ、ラジオやエアコンよりも操作しづらくなっています。走行中に操作をしようとすると体を曲げる必要が生じ、姿勢や視線を著しく変えなければなりません。
アンケートなどにより、プリウスユーザーの多くが、このモードスイッチを切り替えないという結果でもあったのでしょうね。こういうスイッチは、ステアリングホイールスイッチ、コラムスイッチ、パドルスイッチなど、いくらでも方法があります。早急な改善を望みます。
さて、ノーマルモードは一番バランスが良く設定されています。エコモードは、発車時の出力こそエコモードと同等ですが、市街地制限速度程度から出力が制限される印象です。なんとなく「糞詰まり」のような印象となりますが、私は悪くないと感じました。おそらく、しょっちゅうアクセルペダルを踏んだり戻したりする癖がある人には苦痛でしょう。少し修行をしましょう。
パワーモードは、エンジンも素早く始動されて2500回転程度が保持されるようです。加速はやはりモーター主体で、アクセルペダルをほんの少し操作しただけでグイグイと加速しようとします。まさしくモーターの本領発揮、というところでしょうが、率直に言ってこれはやりすぎで、コントロール性は良くありません。アクセルペダルをゲーム機のように操作しているかのような印象です。
ディーゼルエンジン車と良い勝負ですが、それほど音も高まらずに高出力を発揮することが印象的でした。
トランスミッション
トランスミッションは、これまでのTHS(トヨタハイブリッドシステム)と同様の、遊星歯車を組み合わせた方式です。今回は、駆動/発電用?モーター出力軸が、ヘリカルギヤから平歯車へと変更され、摩擦抵抗が軽減されたとのことです。平歯車になると音が発生しますが、そんな様子はありませんでした。
それ以外の点は変更がない模様ですが、シフトレバーが2代目プリウスやプリウスαのように、インストルメントパネルに付くようになりました。3代目プリウスは、まさにデザイナーの意見がそのまま通ったかのような、未来感覚たっぷりのコンソールボックスでした。シフトレバーは、運転士がステアリングホイールを握るその手を左へ移すと、自然に来る位置にありました。そのために運転席と助手席を隔てる内装材が大きくスペースを取ることになりました。操作性をとるか、室内の広々感をとるか、ですが、今回のモデルのシフトレバーの位置は、非常に操作しづらいです。
シフトレバーは、R,N,D,Bレンジがありますが、触ってくれるな、ということであるようです。Bレンジはエンジンブレーキレンジですが、エンジンブレーキを使用するとその分だけ発電(回生)ブレーキに使用出来る動力が減少します。Bレンジはあくまでも緊急用で、この車ではフットブレーキを踏んだ方がエネルギー的に効率良い走行が可能です。以前は、高速道路や降坂走行時にフットブレーキを多用すると「下手くそ」と言われたものですが、常識が変わっています。
なお、4WDはまだ試乗しておりませんが、後輪は別立てのインバーターと誘導?モーターで構成されているそうです。記事等では誘導モーターと記述され、モーターショーの説明員は同期モーターと言い、情報が錯綜しています。誘導モーターの方が引きずり発電抵抗が少ないために、誘導モーター説の方が有力です。
サスペンション
今回の「TNGAボデー」採用により、しっかりと動くサスペンションになっています。マンホール蓋乗り越え時にもサスペンションが素早く動き、「タンタン」と音がするのみで車体の上下動はほんの少しです。突起乗り越え時にも、硬さや揺れは最小限に抑えられています。
特に、後輪が突起に乗った際の振動の少なさは特筆ものです。3代目プリウスは、特に初期モデルは後部の車体剛性が低く、突起乗り越えの度に「ミシミシ、ブルブル」と、不快な振動が発生していたものです。また、車体がねじれているような、位相遅れも感じました。ところが、新型ではそのような低級な振動が完全に無くなり、一体感あるボデーになりました。
独立懸架による効果も絶大です。これまでのトーションアクスル方式では、例えば左後輪が突起に乗り上げると、車輪のキャンバー角変化により、車体が左に向きを変えるかのような、ヨーイングが発生していました。そのヨーイングのために車体が横揺れを起こしていましたが、その横揺れもなくなりました。
一方、同じような乗り心地の良さは、
日産キューブでも体験しています。市街地走行では好印象であった乗り心地が、山岳路ではロールが過大であり、車酔いやカーブでの走行性の悪さを感じたものです。このプリウスも同様の乗り心地であり、ステアリングホイールを軽く左右に揺すった場合にも、かなり速いロールを感じました。ロールスピードが速すぎます。
もう少しスタビライザーを強化するか、ショックアブソーバーの伸び、ないしは縮みの減衰力を上げるか、採用していなければリバンドスプリング内蔵ショックアブソーバーを採用しても良いでしょう。少々、山岳路での走行性が心配になる乗り心地でした。
ステアリング
3代目では、Lグレードでは軽いものの手応えは薄く、Gグレードでは重くて手応えが薄い、というものでした。今回のモデルでは、適度なアシスト力になりました。手応えは相変わらず薄いのですが、パワーステアリングの効きがちょうど良くなったことは良いことです。
操舵に対する追従性は、微小な舵角では適度に鈍い、安心して操作できるものでした。やや操舵角を大きくすると、かなりクイックに車は向きを変えようとします。前述のサスペンションの柔らかさから、車体はグラッと傾きます。そして反対側に操舵すると、車体は完全に無駄な動きをしてしまい、うわ屋根の重さを感じるようなグラつく動きになります。
低重心車体なのにこの動き具合ということは、やはりサスペンションの設定に少々未完成な領域がある、ということです。
また、ステアリングホイールは、これまでの楕円式が廃止され、普通の円形になりました。曲がり角等での操舵性は、明らかに改善されました。
ブレーキ
これもかなり改善されました。アクセラハイブリッドにそっくりな効き方です。踏み込んだ時のペダルの踏み応えがしっかりし、制動力の調整がしやすいです。ブレーキペダルから力を抜いた際の感じも、これまではブレーキペダルか足にガムでもついているかのように、ベッタリとした帰り方をしていました。そのために、ブレーキペダルを調整しながら、滑らかに減速したり停車したりすることが困難なブレーキでしたが、ようやく改善されました。
急制動等は試していませんが、「トヨタセーフティーセンスC」と称する、衝突軽減ブレーキが装着されましたので、この点でもようやく近代化されました。
ボデー
今回のフルモデルチェンジの最大の注目店が、このボデーです。事前の発表では、ヘッドライトやテールライトの形状について色々言われたものです。確かに無駄な線が多く、これまでの車の歴史を無視するかのような形状ですが、そういう方には今やカローラがあります。そちらをどうぞ、とばかりに、冒険した形状になっています。
まあ、テールランプについては、初代カリーナのセダン系や、1995年発売の、二代目クラウンマジェスタを思えば、まあ、理解できなくもない形状です。
私が違和感を感じていたのは、以下の点です。
まず、フロントバンパーはバンパー上部が最も突き出ていて、下部が奥に引っ込んでいます。
現行クラウンロイヤルサルーンシリーズの前期型もそうでしたが、唇だけが出て、顎が引っ込んだスタイルに過ぎます。
リヤバンパーも、フロントほどではありませんが、中位部が出っ張っています。
ボデーを前後から見た場合にも、中位置が最も張り出していて、下部に行くほど引っ込んでいます。
サイドから見たスタイルも、メーカーでは「二代目プリウス同様、空力性能を優先したために、、最も全高が高い位置を前方に動かした。」とのことですが、全体に細長く、安定感に欠くスタイルに見えてしまいました。
ところが、この日乗った「モデリスタ製エアロパーツ装着モデル」は、その痩せた印象が払拭されて、安定感あるスタイルに見えます。同日に見た素のモデルには、相変わらず安定感不足を感じましたので、エアロパーツの効果は絶大であると感じました。まあ、これは好みですので、それぞれの方が感じることでしょう。
TNGAの効果は非常に高いです。この種の骨格構造の見直しは、十数年に一回行われるようです。
最初は昭和40年代後半の、「アコーディオンボデー構造」の頃です。車室部の強度を増した上で、その前後を潰れやすくした構造です。
1995年頃は、衝突安全基準が定められたことで、各社ともボデー剛性を向上させました。トヨタでは、CIAS(サイアス)と呼んでいました。さらに1990年代末期の、衝突安全論争後は「GOA」なる構造を採用し、さらに衝突安全に配慮しました。この頃になると、コンピューターによる解析や予測がさらに高度になったようです。他車では、おそらく色々試して丸棒すらピラーに内蔵させていたものを、次のモデルでは合理的に強度部材を配置、車重の軽減をしたこともあります。
そして今回、TNGAなるボデー構造の名称が定められました。おそらく、5ドア構造を前提とした骨格構造を取り、超高張力鋼板を多数採用することで、無駄な補強を減らせるようにしていると考えられます。
フードレッジ(フロントフェンダーの内部骨格)とAピラー、Aピラー根元の柱の関係などに改善が見られます。これまでは3本の棒が同じ位置で交わっていました。フードレッジは、アコーディオンボデー構造のために、やや貧弱になっています。
今回のボデーでは、Aピラーの付け根が前進し、フードレッジと先に交わります。衝突時の衝撃をルーフ骨格にも分配しています。また、サスペンションからの入力もルーフ骨格部にも分配させ、まさにモノコックボデーとして、入力を車体全体で受けるようにしています。結合部の断面積も大きくなり、形状もシンプルな形状にしています。
その他、レーザーウエルディングによる溶接スポット増しや、構造用接着剤によるボデーダンピング性能向上もあって、余計な振動が少ない、優れたボデーになっています。
心配な点として、Aピラーが前進していることにより、自ずからキャビンフォワードスタイルしか出来ないような感じではあります。
車内は、このグレードでは白色パネル部分が少なくなっています。上級グレードでは、色の取合せにやや不自然な印象を持ったものですが、Sグレードでは適度であると感じました。もう少しメッキ加飾があっても良いように感じます。
視界は、前方視界は良好です。シートの位置を上げると、フードパネルが見えます。といって先端の見切りが出来るわけではありませんが、フードパネルが見える車は久しぶりです。斜め前方の視界も良いようです。
後方の視界は、相変わらずテールゲートに横梁があるために、追走している車のヘッドライトを隠します。そのため、街中や街道でチンタラ走る車が増えると考えられます。
斜め後方の視界は、良くありません。ようやく車体サイドの後部が持ち上がる、「Jライン」スタイルがなくなったためにかなり改善されましたが、今度はルーフサイドがかなり垂れ下がってきています。後席ドアの三角窓の小ささは、かつての「WILL VS」を思わせるものです。なお、「WILL VS」のデザイナーは、日産自動車に転職してGT-Rをデザインしたそうです。その再来でしょうか??
内装材は、高級感を増しました。柔らかい部分や光沢部分が増え、見栄えが良くなっています。シボのデザインも深く、立体感豊かな常識的なものになりました。
シートの生地はジャージーです。ジャージーは、新しいうちは光沢があってきれいなのですが、摩擦に弱く、なんとなくカジュアルすぎるような印象でもあります。織物生地のシートは、もはやリサイクルの点で難しいのでしょうかね??なお、ハイブリッドバッテリーは後席座面下へと移動しました。座面には骨格があり、バッテリースペースが確保されています。なんとなく潰れしろが少ないような気もしますが、普通の車と概ね同様の座り心地です。
なお、ルーフの内装も光沢ある生地のようになっていました。しかし、織物ではないようです。余談ですが、掃除がしやすそうな印象でした。
トランクは、底の位置が下がりました。より多くの荷物を詰めそうですが、前述のとおり、ルーフパネルが緩やかに降りてきています。実際には、荷物満載でこの車に乗る人は少ないでしょうが、「荷物を積む人はαをどうぞ!」とするために、αとの差別化を図ったように感じます。
運転姿勢は、確かに座面の位置が下がったように感じます。もっとも、2代目プリウスの頃から、セダンにもミニバン的な運転姿勢を取らせるような方針を多くの車が唱えていました。E120型のカローラ、ティーダなどがそうです。ようやく普通に戻った、とも言えそうです。
まとめ
「アスリートになった」「エロい」などの宣伝文句が先走りをしているような感じがします。TNGAボデーが非常に良いと感じましたが、サスペンションの設計が追いついていないような印象でした。動力性能の点では、ある評論家が言ったように、マイナーチェンジレベルにあるように感じます。
これまでのプリウスが、「ザ、エコカー」とでも言うような精進料理的な一面があったものですが、確かに無駄な一面を見せて車としての魅力を出しつつあります。
プリウスを一度買った人が、次は大排気量車やターボ車、ディーゼル車を購入している例もあると聞きます。また、カムリやカローラのような、従来の乗用車的な一面がある車も十分に売れています。同様のことは、初代カムリ/ビスタと二代目カムリ/ビスタの関係にも見られましたが、やはりクルマという商品には、持つ喜びが必要であることに気づいたようです。また、提携企業になったマツダの考えも取り入れたようで、操縦性が向上していることも魅力的です。
一方で、ハイブリッド自動車が普通の車になり、先進性は薄れたような気がします。個人的には、THSシステムをフルモデルチェンジするような気がしていたのですが、改善に留められました。個人的には、ホンダ車の軽快な操縦性が魅力的ですが、ハイブリッドシステムの軽量化や配置の変更で、随分と良くなってきました。
やはり、社長が変わると製品は変わるものです。「部下に任せて結果を信用する。」「部下に目標を定めさせ、自身は出来たかどうかチェックするだけ。」「
高い目標を発表し、技術者を二階に上げて梯子を外す」という、ビジネス書が好きそうな組織論は、全くダメだった、ということがよくわかります。やはり、社長自身が具体的な指令を出さなきゃね。
ということで、トヨタのハイブリッド車嫌いの私も、かなり魅力的な車に感じられるようになってきました。これも、モデリスタのエアロパーツの効果が大きいです。
ということで、予約済みの方も含めて、ぜひ試乗してみることをおすすめします。その他のメーカーが危機感を感じるような仕上がりでした。なお、アクセラハイブリッドにも試乗されることをおすすめします。そんな気持ちになった試乗でした。
参照して欲しい記事
トヨタ
初代プリウス(NHW10)
2代目プリウス(前期型)
2代目プリウス(後期型)
3代目プリウス(L、初期型)
3代目プリウス(G、初期型)
3代目プリウス(CR-Zとの比較長距離)
プリウスα
アクア(初期型)
カムリ(初期型)
SAI(初期型)
アルファードハイブリッド(初代)
エスティマハイブリッド(二代目)
クルーガーハイブリッド
オーリス(RS、6速MT)
トヨタハイブリッドシステムのブレーキについて
日産
フーガハイブリッド
スカイラインハイブリッド
エクストレイルハイブリッド
セレナ(Sハイブリッド)
リーフ
ホンダ
インサイト(二代目)
CR-Z(CVTとMT)
CR-Z(MT長距離)
フィットハイブリッド(短距離)
フィットハイブリッド(長距離)
グレイス(ハイブリッド)
フリードハイブリッド
アコード
シビックハイブリッド(長距離)
フィットシャトルハイブリッド
フィットハイブリッド(旧型)
マツダ
アクセラハイブリッド(短距離)
アクセラハイブリッド(長距離)
スバル
XVハイブリッド