『大学』(三十三)

(安岡正篤－「人物を創る」より)





「是の故に財聚（あつま）れば則ち民散（さん）じ、財散ずれば則ち民聚る。是の故に言（げん）悖（もと）って出ずる者は、亦(また)悖（もと）って入る。貨（か）悖って入る者は、亦悖って出ず。」

是故財聚則民散。財散則民聚。是故言悖而出者、亦悖而入、貨悖而入者、亦悖而出。



この故に、お上が財を収奪してむやみに国庫に蓄積すれば、人心は離反する。反対に、財を散じて天下の隅々に行き渡らせれば、翕然（きゅうぜん）として人心が集まるのである。こういうわけだから、為政者が道理に悖（もと）った無理な政令を発すれば、人民からも無理な要求がはね返ってくる。財も同様で、無理に国庫に取り込めば、人民もまた無理に政府から奪おうとするであろう。

日本がどうだ。神武以来の好景気だといっておるうちに（※）、いっぺんに神武以来の不景気におちてしまう。悖って入るものは悖って出づ。この言葉のとおりである。



※16nights注　昭和38年前後当時のお話しですが、バブル景気とその後の今に至る世相と全く一緒であります。科学やら生活水準は進歩したかもしれないが、人間そのものはなんの進歩もしていない。





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