時代の波

数十年来お世話になっていた機械工具屋さんが、

年内いっぱいで店を畳むと挨拶に来られた。



景気の低迷なのか産業の空洞化のせいなのか地元の町工場は減る一方だ。

我が家業も周辺に押し寄せる宅地化の波に呑み込まれ、

去年、四半世紀以上操業を続けた工場を移転せざるを得なくなった。

地域密着型の中小工具店にとって、

地域に顧客が居なくなれば経営が苦しくなるのは目に見えている。



しかし、原因はそうした地域工業の衰退だけではあるまい。

今では大抵の工具や部品はみなネットで買えてしまうし、

大きなホムセンに行けば揃ってしまう。

そんな、新しく大きく、容赦ない時代の波が押し寄せているのを、

こんな話を聞くと、残念だが実感する。

ここは、そんな新しい時代の波にうまく乗れなかったのか。



時代の波とは言え、対面販売で色んな話ができる専門店が無くなるのは、

製造業に携わる人を育てるという意味では決して良いことではないと思いつつも、

結局は我が身可愛さに負け、便利さと目先の安さにつられてネット通販やホムセンを

利用することで、大袈裟なようではあるが結果的にこうした中小工具屋を苦境に追い込むことに、

自分も何処かで加担してしまったかも知れない。

(/_;)