『昭和16年12月1日午後5時すぎ、大本営はDC3型旅客機「上海号」が行方不明になったとの報告を受けて、大恐慌に陥った。機内には12月8日開戦を指令した極秘命令書が積まれており、空路から判断して敵地中国に不時着遭難した可能性が強い。もし、その命令書が敵軍に渡れば、国運を賭した一大奇襲作戦が水泡に帰する。太平洋戦争前夜、大本営を震撼させた、緊迫のドキュメント』
(裏書きより)
え~~、本日を遡ること67年前の12月8日、以前ご紹介した
映画「トラトラトラ!」の真珠湾攻撃に戦端を開いた対米英蘭開戦の日です。
この日より、日本は約3年8ヶ月に及ぶ連合国との総力戦を戦い、2発の原子爆弾の洗礼を受けたのち、無条件降伏という形で終戦を迎えます。
この間、日本だけでなくアジア太平洋地域を激しい戦渦に巻き込んで余りにも多くの人命を犠牲にして戦争は終わりました。
長い間タブー視されてきたこの戦争も、
現役空自幕僚長(発表当時)がこんな論文を発表することが出来るまでに歴史認識が変わってきたと言うことでしょうか。
ご紹介する吉村昭著「大本営が震えた日」は、昭和16年12月1日に皇居で開かれた御前会議にて対米英蘭開戦を決定してから12月8日開戦に至るまでの、日本軍実戦部隊の動きを詳細に描いた作品です。
「奇襲による以外に勝算のおぼつかない大作戦を、ハワイからマレー半島にいたる太平洋の各地域で同時進行させるためには、長い準備期間と慎重敏速なスケジュールの消化が要求される。それぞれの現場でときに発生する齟齬(そご)を埋めていくためには、個々の人間の命などは、虫けらのように見棄てられてゆく。ばかばかしいほどのエネルギーを結集して進行してゆくこの歴史のドラマの結末が、日本の敗戦で終わることはすでに歴史上の事実となっているだけに、そのむなしさと徒労感が読者の上に重苦しい圧力となって覆いかぶさってくる。」(解説より)
日本側がこれだけ極秘に進めた作戦も、実は米側に「筒抜け」だったことを後世の私たちは知っていますが、歴史の結果を知っていればこそ、当時の米国と日本の国力差を冷静に分析できる(当時でも百戦百敗なのは分かっていたようですが)、後世に生きる者としてこの一週間いやそれ以前から開戦に向けて費やされた膨大なエネルギーとその結果として厳然と横たわる事実を、今一度しずかに読んでみようかと・・・(^^;
こちらもオススメの「吉村昭作品」♪
一冊だけ日露戦争時のものが入っていますが(笑)、自国の国力、戦力を冷静に分析し、外交手段を駆使して幕引きを想定して挑んだ日露戦争と違い、緒戦の作戦立案のみに腐心し、以後の戦局の予想も対応案も立てずに、いわんや幕引きなど考えずに始めてしまった太平洋戦争との対比を、同じ著者の視点と筆致で読めるのは、幕末を舞台にした一連の司馬遼太郎作品にも通じるところがあり読み応えたっぷりです♪
なかでもオススメは、以前にもどこかで書いたかも知れませんが「戦艦武蔵」ですね。あの巨大な船を作り上げる智恵と努力と技術の結集が、なんの意味もなく多くの命を道連れに沈んでいく悲しさと虚しさには、吉田満著「戦艦大和の最期」とは別の感情を呼び起こされます。
Posted at 2008/12/08 14:20:00 | |
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