ポルシェ911。
今なお現行モデルとして生産されている車ではありますが、初代(901)の 生産車が登場したのは1964年であり、その歴史は 既に半世紀を優に超えています。
今回のブログは、その911の 実質的に初めてのモデルチェンジとなった 964についてのお話です。
911の 前時代的な
RRレイアウト や
空冷エンジン が時代にそぐわなくなってきた為、ポルシェAGは 911に代わる 新世代のポルシェとして
ポルシェ928 を開発した事を
前回のブログで書きました。
しかし、ユーザーは 928 を 911の後継車とは認めなかったのです。
そこで、遂にポルシェAGは 911のモデルチェンジを行う事を決断したのでした。
なお、930型を、901型に続く2代目と考えると、既にモデルチェンジを行っていると考える事も出来るのですが、そもそも 930 というのは “ターボ”の開発コードであり、本来のモデルチェンジではありません。
また、外観の変更点である アメリカの安全基準による5マイルバンパーも、どちらかというと安全基準に適合させる為のマイナーチェンジと言うべきものでした。
つまり、今日のテーマ「911のモデルチェンジ」は、911初のモデルチェンジと言って良いものなのです。
ポルシェ911(964型)
1989年、遂に
“新しい911” が登場しました。
964型911 はパッと見、今までの911、つまり 930型と変わっていない様に見えますが、完全新設計の928が顧客に受け入れられなかった事から、あえて 従来の911と同じ外観にしているのです。(実際には 80%のパーツが新設計となっています)
技術的にも、
“空冷”、“水平対向”、“RRレイアウト” を踏襲しており、どこから見ても 911そのものでした。
もちろん、新たな技術は取り入れられており、変わっていない様に見えるボディも、空力的には完全に見直されており、空気抗力係数(Cd値)は0.32と、当時のトップクラスの空力性能を誇りました。
また、エンジンも3.6ℓまで拡大され、サスペンションもトーションバースプリングから現代的なコイルスプリングに変更されています。
そして、この964から、グループB仕様の ポルシェ959由来の4WDを採用した カレラ4も登場しています。
「911のモデルチェンジ」
964型へのモデルチェンジで、保守的なまでに“911である事”に拘ったポルシェ。
その狙いは功を奏し、ポルシェの顧客たちは964型911を受け入れました。
この事によって、ポルシェ911は その後もモデルチェンジを重ねながら現在も生産し続けられる事になっていったのです。
ただ、結構 この結果は際どいものだったんですよね。
当時のポルシェAGは方向性を見失っていた時期で、924、928のFRポルシェだけではなく、RRのポルシェでも搭載エンジンで“911らしからぬ”モデルを計画していました。
それが 開発コード
“965” として1984年から開発されていた車です。
「ポルシェ959じゃん!」って思った人いませんか?
違います。
この車は、先進技術を詰め込んだ959とは全く別のクルマで、何とリアにV8エンジンを搭載していました。
一応、アウディのV8エンジンで開発は進められていましたが、インディカー用のV8エンジンをディチューンして積むなんて案もあったようです。
結局、コストが高くなり過ぎるという理由で開発はキャンセルされ、今は開発途上のプロトタイプがポルシェミュージアムの倉庫に眠っています。
964の上位モデルとして登場する筈だった965。
残念な思いがある反面、もしこの車が世に出ていたら、911は964で終わっていたかもしれません。(あるいは、迷走していたポルシェAGが、964の方を「旧態依然」と判断して開発キャンセルしていた可能性も…)
そう思うと、965の開発がキャンセルされて良かったと言えるのでしょうね。
「911のモデルチェンジ」で 964が出てきてくれて、本当に良かったです。
-つづく-
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Posted at
2022/02/04 06:51:16