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2022年08月27日

ST170は「フォーカスにしてフォーカスに非ず」

ST170は「フォーカスにしてフォーカスに非ず」 今月訪問したFLC四日市店さんでいただいたフォーカスST170のセールスマニュアルをご紹介しましょう(今回も掲載ビジュアルが多めです)。
ページを開いてまず驚かされるのが、表紙以外はまるで往年の「ガリ版刷り」みたいで、使われているフォントの選択や印刷の仕上がりなどはほとんど素人作成といった印象ですが、そこで記されている内容は、フォーカスST170の持てるポイントを平易かつ的確に表していて、この車を理解する上で必要にして十分な情報の質と量であるように感じます。

まず冒頭には「フォーカスST170は従来のフォーカスとは異なる性格を持つ商品」と明示されていて、実はこのことがフォーカスST170という存在の妙味を表す大切なポイントであるように思うのですが、それについては後述します。



フォーカスST170の国内版カタログをご覧になったことがある方ならばおわかりと思いますが、あのカタログは一つの読み物としても実に充実した内容でした。フォードのモータースポーツとの関わりに始まって、エンジン・サスペンション・ブレーキ等々の個別の要素から、フォーカスST170の特徴が詳細に示されていましたが、それがこのマニュアル冒頭に記されたように、顧客の車に対する深い知識や関心へ響くような販売の方針に正当に基づくものだったことを再認識できます。




フォーカスST170の基礎的な商品特徴は、まさにここで大きく3点へ集約されていることに尽きると思います。ところでこのページでは初代フォーカスRSについても言及されていて、「実用性や扱いやすさと高性能を両立させたSTのブランドとは異なる性格を持つ、限られたマニアのための車」など、短い紹介枠の中で「限られた」「限定」といったフレーズが繰り返し数度にわたって現れていることに、フォーカスRSをあくまでも特殊な存在として位置付け、国内市場への導入は度外視していた当時のFJLの姿勢がうかがえます。




テクニカルな解説としては、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ブレーキ、デザインと続きますが、特にサスペンションに関して、興味深いことに「専用チューニングは最低限に抑えられている」といった、商品カタログではまずお目にかかれない表現が用いられています。ベースとなる標準型フォーカスの足回りがそもそも優れた素性ゆえ、それを大きく改変せずともファインチューニングに徹することが可能であったことを表していますが、セールス的には「専用チューンをフルに加えた」といった物言いの方が効果的かもしれないところを、暗に素のフォーカス自体の優秀さを示唆するような控えめな言い方であるのが、かえってニヤリとさせられますね。






私自身、自動車の機構に詳しくないため今までよく理解できずにいたフォーカスST170のツインレイシャフト設計のMTのメリットというものが、少し理解できた気がしました。
エンジンに関してはベースとなる標準フォーカスのエンジンがZetecなので、ST170はDuratecを名乗るから別なエンジンベースかと思っていました。しかしやはりフォーカスのZetecをベースに大幅に手が加えられたことで、ネーミングをDuratecに改めたものだとわかりました。
このあたりはカタログでは言及されていなかった部分で、まずは販売現場に対して商品特徴をわかりやすく伝えようとしていたのですね。


最後の方のページでは、フォーカスST170の開発を担ったSVEのヨースト・キャピト氏を筆頭に、主要なメンバー紹介があり(キャピト氏の写真の姿が若いこと!)いかにもエンスーなバックグラウンドを持つ車であることが強調されています。




フォーカスという車が日本でもその優れたパッケージングと動的性能で一定の評価を得ていた中で、特に後者のアドバンテージをさらに伸長させたことで、イメージリーダーとしてフォーカスのブランド力の向上を図れる-フォーカスST170という存在が、フォーカスにもう一段のスポーツ性能を求めるユーザーだけでなく、FJL自身の思惑に応えるだけの商材であったことが、このセールスマニュアルの全編から十分に伝わってきます。

(標準型)フォーカスとは明確に異なる存在である一方で、成り立ちとしてはもともとのフォーカスが備える各々の要素の高いレベルの上にあって、決してそこから切り離された存在ではない。フォーカスST170をそういう車として売りたかったのが当時のFJLの姿勢であって、そこに固有の難しさもあったように、今となってはセールスの成果からも読み取ることができます。
私もフォーカスST170を愉しんでいた一人ですが、実は国内標準フォーカスのGHIAやGLXなどには乗ったことがないんです(もう一台乗ったフォーカスはUS仕様だったので・・)。だから私にとってのフォーカスといえばST170が基準になっていて、おそらくST170に、フォーカスという存在の全体像の解像度の高みを、自ら見出しています。



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Posted at 2022/08/27 12:53:31

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この記事へのコメント

2022年8月27日 17:22
ST170のセールスマニュアルの紹介、ありがとうございますm(_ _)m
もはや涙なくしては読めません(ウソですw)。
知っている話も知らない話もありましたが、好きものディーラーマン達との会話が懐かしく思い出されます(奴らはトレンドに乗ってました)。
おそらく、いつまでも私の中の基準車であり続けるであろうST170は、個人的には不世出の名車です。
3ドア+オバフェンなしのスリークなデザインも、ニューエッヂの一つの到達点だと思ってます。
色は、PBMが好きな方には申し訳ないけど、私自身の所有車だったIBMが、哀愁があってサイコーです!
コメントへの返答
2022年8月27日 19:23
Naoさんに同じく、私にもST170は不世出な名車です。乗っていた頃にはこれが上がりのクルマでもいいかな?と思ったこともしばしば。

私は中古車だったからカラーが選べませんでしたが、好みでいえばインペリアルブルーでしたね。蒼いフォードにはやはり特別な輝きが感じられます。でも本当は、欧州で設定のあったシルバーがこのクルマには合っていたと感じていました。

こういう車種を台数限定とはいえ、カタログモデルとして市場導入したことは、今にしてみれば英断でしたよね。
2022年8月27日 19:48
アップお待ちしておりました。
予想通り、やはり濃い内容でしたね。
標準、ST170とも知っている人としての視点+事後的に見るとニヤリと頷けることばかりでしたが、このマニアックな違いを2003〜4年当時にお客さんへ説明し、納得してもらうのはかなり難しかったのではないかと…

実際走らせてみると標準車に対して繊細にイイモノ感を高めたのがST170(渋みの増してるのが未だに憧れです、素2.0で物足りなかった動力性能が上がっていたところも理想)、RSは手作り感強く同じフォーカスmk1でも別世界という印象です。
TRENDもサスチューンありというのは知りませんでした。現存個体があれば乗ってみたいものです。

ムーンダストシルバーが似合うというのは同意しますし、うちにあったフォーカスでもそういう方向を勝手に目指していました^_^
コメントへの返答
2022年8月28日 10:12
ST170は不思議な車で、それほど強烈な印象を残すわけではないけれど、いい車っていうのはああいうものを指すのではないか・・という確かな感興が得られるんです。
まさにヨーストさんが仰る「渋み」を覚える感じですね。
私にとって今でも「いい車」の基準です。

TRENDは欧州市場で同名で展開されていたグレードの実質フル装備版とみてよく、サスペンションにもスポーツチューンが採用されていました。2002年に限定100台を導入後にカタログモデルへ昇格された頃、ST170が導入されたわけだから、実は当時のフォーカスはけっこう色々なグレードを選択できたわけですね。個人的にはST170の対極といえた1600GLX(オーディオレス+14インチのフルホイールキャップ装備!)などはぜひ味わってみたかったです。

TRENDは自宅からわりと近い場所に一台現役車がいます。それが私の知る限り自ら目にできる最後の初代フォーカスになっており、なるべく長く維持されてほしいと願っています。
2022年8月28日 12:07
ST170が発売された後に群サイで開催されたフォード100周年記念イベントではST170でサーキット同乗体験させていただいたことを思い出しました。
プロドライバー氏曰く脚は素晴らしい!しかし立ち上がりのパワーがもうちょっと、とのことでしたがなるほどサーキットをかっ飛ばすのは正にRSの方でSTは成り立ちからサーキットを照準に合わせたセッティングではなく公道でのパフォーマンスを目指したことがこのセールスbookでよくわかりました。

話は変わりますがこの動画、レクサスis500の開発主管のお話をフォードに例えるとレスサスF=フォードRS、Fperformance=ST、Fsports=STlineではないかな?と。
Fperformance=STの立ち位置がよくわかる動画です。
https://youtu.be/1GyPClIhzzw
コメントへの返答
2022年8月28日 14:57
私事ですが、ST170に乗って3年ほどが経った頃に初代フォーカスRS(ドイツ仕様車)の出物があり、試乗と見積もりも取りました。ST170を下取りで購入契約寸前まで行ったのを、その直後に彗星のごとく?現れたUSフォーカスSEセダンに心奪われ・・

あの時は「お前はそっち(RS=パフォーマンス至上)へ行く必要はない、それよりフォードの本懐を知れ」という、ブルーオーバルの神様のご託宣だったのだと思っています。速く走ることを突き詰めれば上はキリがないから、それよりは本来の下駄車としてのフォードをもっと深く体験してみたくなったんですよね。

私にはST170はまさしく『高性能で快適な下駄』でした。
2022年8月28日 12:25
貴重な資料ありがとうございます。
ベース車両の初代FOCUSに感動して後輩に買わせましたが(笑)私のエピソードとして…
昔、全日本ジムカーナ選手権を観戦しに行った帰りに、とあるメーカーのタイヤサービスのメカのクルマが初代FOCUSの普通のドノーマル車両でした。
私が「いいクルマ乗ってるな!」と伝えたら「DC2(インテタイプR)峠下りなら追い回せるよ」と言ってたのが忘れられない。それくらい自信が持てるベース脚でしたね。
コメントへの返答
2022年8月28日 15:07
コメントをありがとうございます。初代フォーカスの脚の良さを象徴するエピソードですね。登場時にはずいぶん多くのメーカー(国内外問わず)が研究したと聞きます。ただ脚周りが優れているだけでなく、居住性や実用性も高く、それらがトータルパッケージとしてフォーカスという車に結実していたことが、研究を通じて理解されたならば、なお意義深いことでしたね。
2022年9月3日 19:53
ステアリングのセンターフィールがとても良いのが印象的でしたね。いつも乗っていると当たり前ですが、他車に乗ると殆ど見劣りするものばかり。この点は高額スポーツカーにも全然負けてない!
コメントへの返答
2022年9月3日 21:00
欧州フォード車に馴染んでいて当たり前に感じること・・特別な意識をすることなく自然に運転席に座り、いつも当然な姿勢でごく普通に運転ができる。その時には何らストレスを覚えることがない。「無理をせず自然体で走らせたいように走らせられる」のが欧州フォードのデフォルトです。

しかしこれらが実は、当たり前でない輸入車(もちろん国産車も)が意外に多いらしいことがだんだんわかってきました。
ヨーロッパフォードは、普通以上の特別感は無くても、余計なことを意識せずに確かなコンタクトを得られる。それだけで充分な存在意義ですよね。

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「@@fiestaさん、シロッコは基本は洒落たクーペなのに、どこか生真面目さを漂わせているのが、やはりドイツ車だなあと思わされます。小粋さと実直さの塩梅はさすがジュージャーロの手腕ですよね。」
何シテル?   05/20 22:25
自然体で、気兼ねも気負いもなく付き合えて、けれど愉しいクルマ。Fordを30年以上にわたって乗り継いでいます。2016年をもってFordは日本から事業撤退しまし...
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