久しぶりの3回目、お付き合い願いますm(。_。)m。
今回の変わったエンジンは、【焼玉エンジン】です。
なんですかそれ?になるかと、現在ではほぼ絶滅したエンジンですからね。
読み方は「やきたま」、「やぎだま」と呼称することもあります。
かなり原始的なエンジンですが、基本的な部分ではディーゼルエンジンに近いです。
その歴史は古く、イギリスのハーバート・アクロイド・スチュアートが原理を考案、1886年に焼玉エンジンの試作機を製作、1890年にその特許を申請。1892年にイギリスのリチャード・ホーンスビー・アンド・サンズ社がスチュアートの特許により初めて商品化、このエンジンは、特許出願者と製造者の名前を採りホーンスビー・アクロイド式機関と呼ばれました。
さて、その原理とは?、まずはカットモデルの図解を。

基本的な部分はディーゼルエンジンに酷似していますが、シリンダーヘッド部分にご注目。
「焼玉」と書いてありますよね、簡単に言えば、バーナーなどで焼いた鋳物の玉(だから焼玉)に、燃料を直接噴霧して着火させて、爆発工程を起こすわけです。ディーゼルエンジンなら空気を圧縮し、高熱化させて燃料と一緒にシリンダー内部に噴霧して爆発工程なんですけどね。
つまり、自然発火で点火するわけです。ディーゼルの始動時の予熱はグロープラグで電熱でやるわけですが、焼玉エンジンはその鋳物の玉を焚き火やバーナーなどで直接炙るのです。
では、焼玉部分の拡大図を。

赤い部分が焼玉、始動時にはこれを取り出して直接火で炙って加熱するのです。
焼玉はボルト数本を外せば、簡単に取り出せるようになっています。
では、焼玉エンジンの始動方法を。
①シリンダー上部から焼き玉を取り出します、焼き玉はネジ2~3本程度で閉じられた蓋の中に収められています。
②取り出した焼き玉を、たき火等の中に入れたり、バーナーなどで、真っ赤になるまで焼く必要はないのですが、始動性を良くする為じっくりと焼きます。
③シリンダーヘッドに焼玉を入れて蓋を閉じて、エンジンをクランキングします。デコンプレバーを引いて、圧縮がかからないようにしてクランクを回転させ、フライホイールの回転が上がったところでデコンプレバーを元に戻してエンジン始動です。
尚、始動できない場合は再び①からやり直しとなります・・・。
エンジン停止はデコンプレバーを引いて停止させます。
寒冷地では始動性はかなり悪く、①~③を何度も繰り返す事になるわけですが、よって、荒業でエンジンブロックの下から焚き火などで直接炙るという、乱暴極まりないやり方で始動させていたそうです。
そこで、次の画像のようなタイプも存在しました。

これ、焼玉の代わりに炭火を使っているのです。これなら比較的に安定した温度を得る事ができますね。
尚、焼玉エンジンにも4サイクル、2サイクルが存在します。ディーゼルと同じですね。
利点は粗悪な燃料でも使えること、昔の漁船などいわゆる「ポンポン船」が使っていたのは重油でした、後は構造が単純で整備しやすい事、比較的安価に作れるなどですが、欠点の方が多いですね。
排ガスは当然真っ黒なので環境配慮?、なにそれ美味しいの?状態、高回転なんて出来ません、効率は限りなく悪いので100馬力も出せない、古くなると排気だけでなく混合気も駄々漏れなどなどキリがありません(´д`|||)。
昔は、船だけでなく工場の動力や汽車やバイクにまで使われていたというね・・・。
1950年代には、ディーゼルエンジンにとって変わられ、実用エンジンとしてはほぼ死滅しました。
現在では一部の機械マニアが保有している焼玉エンジンを時々イベントとして始動させるぐらいです。
こんなエンジンですが、大昔は産業を、漁業を、交通を支えたエンジンだったのです。
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2016/02/07 22:26:43