今回はイタリィから、いわゆる60~70年代スーパーカーの一員でもある車です。
【Detomaso mangusta】
「デ・トマソ マングスタ」です。
1967年のデビュー、デ・トマソは1964年~1968年の間にヴァレルンガ(細部はまた別の機会に)という車種を造っていたんですが、ほとんど手作りの少数生産で、排気量は1500ccほどのライトウエイトカー、基本的にはサーキット走行を前提とした車でした。そこで本格的なロードゴーイングスポーツとして

マングスタを開発、発表したのです。ボディデザインは巨匠ジョルジェット・ジウジアーロ氏が手掛けました。
スペック
水冷V型8気筒OHV16バルブ、排気量4727cc、最高出力305馬力です。
車名のマングスタとは?、イタリア語のマングースのこと。何故この名前になったかというと。

シェルビーコブラ、そう、マングースでコブラを喰ってやる!というのが根っこにあります。まあ、実は動物のマングースって蛇を狙って捕食するのは稀だそうですが。だから沖縄にハブ退治のために導入したけど、普段は貴重なクロウサギとか家畜の鶏とかを襲うから現在は害獣扱いで、駆除対象になっていますけどね。ちなみにクロウサギとハブって巣穴を共用する共生関係だともわかったとかw。
さておき、名前がコブラを喰うマングースになったのはデ・トマソ氏とシェルビー氏の関係が険悪になったからとも言われています。細部の理由は不明ですが、車両開発絡みで一悶着あった模様、後述します。

これが搭載されたV8エンジン、フォード製です。デ・トマソがアメリカンV8エンジンを積むようになったのはこのマングスタから始まりました。この後のパンテーラでも排気量をアップしたアメリカンV8を搭載しています。縦置きで搭載位置は車体中央のミッドシップレイアウトです。ただし、重量配分は32:68とミッドシップのわりにはかなりリヤヘビー、コーナリングや直進安定性はかなり問題があるそうです・・・これ、ミッドシップの意味無くね?ww。これならフロントミッド搭載の昔のコルベットのほうが重量配分が良いぞ。
標準仕様のエンジンが305馬力のチャレンジャー289V8(排気量4727cc)、北米向けは公害対策による性能低下を補うためチャレンジャー302V8(排気量4949cc)が搭載されて306馬力です。

最も特徴的なのはエンジンフード、上面がガラス張りでこのようにガルウイング様式で開きます。左右のドアは普通なんですけどね。ただ、これのせいでエンジンの整備性はあまりよろしくない・・・つまり単に邪魔だったという話も、見た目は良いけどダメじゃんw。

こちらがシャシー、いわゆるバックボーンフレーム式で基本的には上記のヴァレルンガがベース、その後造られたデ・トマソP70という試作車両のシャシーを改良して用いています。画像はそのP70の物ですが、ほぼ同じだそうです。

透視図、足回りは前後ダブルウィッシュボーン式、ブレーキは前後共にディスクブレーキを採用、この頃のレーシングカーの基本型を踏襲。5リッターに迫るエンジンを搭載していますが乾燥重量で985kgとかなりの軽量、装備重量で1100kg台と軽さが武器な車です。

内装、本革をふんだんに使ったゴージャスなもの、座席はフルバケットで2シーターです。

インパネ回り、横一直線に計器類が並んでいて、この年代のスポーツカーらしい雰囲気、トランスミッションは5速MTのみでいわゆるH型ゲージがいかにもイタリア車、ランボやフェラーリと同じですね。
上記の通り標準仕様(欧州仕様)と北米仕様があり、違いはエンジンの排気量の他に

こちらが標準仕様(欧州仕様)、ヘッドライトは丸目の4灯でフロントに固定式です。

こちらが北米仕様、丸目2灯ですがなんか変な顔だな。

実は北米仕様はセミ・リトラクタブルの開閉式なんです。

このように開きます、蓋は上部のみで閉じている時はヘッドライト自体は斜め下向きに露出しています。
何故こうなったか?、北米のヘッドライトの位置の規定で欧州仕様のままでは位置が低すぎてアウト、それを稼ぐためにセミリトラクタブル式を採用したんだとか。80年代ぐらいまで北米はヘッドライトの規定が厳しくて、装着位置の高さもそうですが形状も規定があって、丸目か角目じゃないとダメでいわゆる異形の角目はアウトだったんです。わかりやすい例を上げますと

メルセデス・ベンツの80年代のW116モデルのSクラス、これは欧州向けで異形の角目ヘッドライトですが。

こちらが同じ時期の北米仕様、丸目の4灯に変更されています。この頃の北米にありがちなビッグバンパーも装着、つまり欧州仕様みたいな異形の角目はダメ、真四角の角目はOKという変な規定があったのです。他にはトヨタのAE86レビン・トレノも北米にカローラGTという名前で輸出されていましたが、ヘッドライトはリトラクタブルのみでつまり日本でのトレノだけでした。この時期の北米規定で形が変になった欧州車や日本車はまだまだ沢山ありますよ。
最終的に401台ほどが生産されて1971年に生産終了、実質4年間ほどの短めな生産期間で台数も少ないです。レース等への公式な参加はなかった模様

後継車はそう、デ・トマソ パンテーラですね、こちらは24年間ほど生産販売されています(紹介済)。
さて、中古市場
生産台数が401台と少なく希少です。現存車両は何台あるのやら?、よって長期間生産販売されたパンテーラよりかはかなり高額になります。1台国内に欧州仕様の売り物がありましたが応談(ASK)、海外のオークションに出品された北米仕様の落札価格が2000万円台だったそうですから、それ以上の価格になると思われます。3000万ぐらいは行くかも?。

デ・トマソが初めて本格的に生産販売をしたロードゴーイングスポーツ、アメリカンV8エンジンをミッドに搭載した2シーター、大きなエンジンを搭載しているわりには軽量で運動性能も高く、ジウジアーロ氏による流麗なデザイン、生産台数は少なかったですがそれなりにはセールスは良いほうで、次のヒット作であるパンテーラにバトンを渡した車、それがデ・トマソ マングスタです。個人的にはパンテーラのプロトタイプといえるんじゃないかなと思います。
所有・・・無理無理ゲーw、でもパンテーラもそうですがアメリカンV8のおかげてエンジン回りは部品が出る・・・らしい。個人的には欧州仕様のライトが好きですね。スーパーカー気分を味わうなら北米仕様かな。なんにせよ希少ですから改造はご法度でしょうね。

こんな風にカラーリングで楽しむのが吉かと、本当はこれすらもダメかもですが。
日本にも数台居るみたいですが、まずは見てみたいなぁ。
さて、上記したシェルビーとデ・トマソとの確執

こちらのマングスタ、実はシェルビーによるチューニングが施されています。本生産に先駆けてデ・トマソが1966年に試作した一台をフォードへと送り、そこでキャロル・シェルビーがカスタムしたのがこの個体だそうです。つまり、最初は販売前にマングスタをベースにしたレーサーをシェルビーの手で造ろうとした模様、ただ、このプロトマングスタの納期が大幅に遅れてシェルビーさんブチキレ、販売前のプロモーションのためにレースに出すんじゃなかったんかい!とね。シェルビーさんキレちまったよと。販売1年前じゃあねぇ、ただ、両者の上司ともいえるフォードがとりあえず造れ!とシェルビーさんに圧をかけたらしくそれで「しぶしぶ」造ったのがコレだとか、つまり「納期とパワハラのツインターボ」状態だったわけですかねw。だからシェルビーのカラーであるブルーに白のレーシングラインにはしなかったようで、これはシェルビー氏のフォードに対するささやかな反抗(というかブチキレ💢)の証らしいです。これがデ・トマソとシェルビーの確執の概ねの内容だとか。
ちなみにこのシェルビーマングスタはオークションにかけられて3600万円以上になったそうです。
いつの世も海外でも納期とクレームのツインターボとか上司の圧力のダウンフォースとかはあるもんなんですね。
その車は、身を捩るように走るという。納期とクレームのツインターボ、上司の圧力のダウンフォースの社畜のプロ(ピー)ックス、人事、俺の声が聞こえるか・・・。
VS
湾岸の黒い会社(の社員)、パワハラでボディ(肉体)を切り刻んで軽量化、ブラック(企業)バードことA(ピー)バン

社運をかけた戦いが始まる・・・