ネットが崩壊して一ヶ月半が経った・・・いまだに原因が究明されないことに、多くの人々の間で非科学的な憶測が流れるようになった。曰くネットに住み着いた地縛霊の恨み、怨念のせいだ、とか、地球外生命(しかも人類より大幅に知的な生命)からのメッセージなのだ、とか、2012年の地球終末の前兆だ、とか。
ただし、どの憶測も爆発的に広まることはなく、影響力もなかった。そもそもその手の都市伝説に類するものは、小さな種から始まり、人から人へ伝わる過程でインパクトを増し、枝葉のように少しずつ付け加えられるディティールが伝説をリアルにしていく。しかし、都市伝説を育むもっとも豊潤な土壌であるインターネットは機能を失っている。
ただし、唯一、一つの都市伝説が世界的規模で広がりつつある。
China Syndrome
アジアのある政府は長年「国民を有害な情報から守る」という大義を掲げ、インターネットの検閲、遮断を行ってきた。その過程で自動的にネット上の(政府が考えるところの)有害情報を遮断するソフトを開発した。そのβテスト段階で実際にネットにそのアプリケーションをリリースしたところ、それは制御を離脱し勝手に増殖し、対策を講じる間もなくネットを飽和させた。
そういった根拠のないうわさ話に対して、先週その政府は会見を行った。その国の外務省報道官はいつにも増して毅然とした態度で声明を読み上げた。
今回の事態に関し、我が国にに責任があるとする、いわれなき政府と国民への非難は、到底受け入れられない。我々もまた今回の事態によって損失を受けている。我が国は各国と協力しつつ原因の究明に努めている。
しかるにこのような非難を流布している者こそ疑われるべきである。我が国の政府も、世界の皆様と同様、インターネットを全く利用出来ない状態にあるのだ。 と。
しかし、この会見に対する世界の反応は冷ややかだった。世界はスケープゴートを求めていた。この会見は世界がそのヤギを見つけるきっかけになったに過ぎない。「やっぱりあの国のせいか」と吐き出すことで、多くの人々がストレスを発散したかったのだ。
それは、世界的ヒステリーが招いた、全くの誤認だったのだが・・・
・・・だが、ほんの少し、その国は嘘を付いていた。
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Posted at
2010/06/10 23:50:55