いつもは通勤鞄の中にフォードのカタログを一冊忍ばせているのに、今そこにあるのはフォードではなくてVWのID.4のカタログです。少し前に地元のVWディーラーへ出向いて展示車にも触れていたのが、昨日は早々に職場ビルの地下駐車場にいるのを目にしました。実は来週から同じビル内でID.4のイベントが開催される予定なので、その関係の車かもしれません、豊橋ナンバーでしたし。ちなみにそのイベントにはID.Buzzの実車も出展があるようです。
ブログで折に触れ述べてきたように今のVWのことが好きでないけれど、ID.4については関心を持っていて、それどころかなかなか良いのでは?とさえ感じています。関心の理由はもちろん、この車の電動車専用プラットフォームであるMEBを欧州フォードが活用する計画になっていて、来年登場予定とされる欧州フォード開発の新型BEVも、このID.4と共通のプラットフォームを伴うことになるからです。つまりID.4を見ていれば、来たる欧州フォード初のBEV像がぼんやりと見えてくる・・のではないか?と。少なくともホイールベースは共通になるだろうし、SUVになることは確かなようだから、新型車両全体のディメンションもほぼID.4に近いのではないか、と想像しています。
一方で、展示車をそれなりにじっくりと見た限り、ID.4に対しては専用設計の純電動車として真っ当な商品内容が備わるように感じられました。既出の各社のBEVが「新奇性を打ち出そう」「今までと違う体験をユーザーにさせよう」的な意図が明らかだったり、高コストのBEVを正当化するかのようにプレミアム志向が強かったりと、感覚的に受け入れづらい車種が多かったこともあってさほど関心が湧かずにいた中で、ID.4には適度に、これまでの乗用車との「連続感」が備わっていることに好感を覚えます。車両内外の各部が内燃機関車からのスイッチが自然にできそうな、違和感の少ないインターフェイスになっており(感心したのがドアハンドル。いたずらにフルフラット化させず指が入るスペースが確保され、緊急時に外からのアクセスが一応成立しうる構造になっている)、そこは人々がなるべく戸惑わずにBEVにアクセスできるよう、純電動車の普及を本気で進めようとするつくり手の良心のようなものを感じ取りました。ID.4は試乗まではしていないのですが、おそらく某車のロケットスタート的な演出めいた仕掛けなどもないのでしょう。
テスラのように、車を買うという行為から始まるすべてを、それまでの常識を覆すことで急進的なユーザーを引き寄せる方向もありだと思いますが、BEVが皆そうした極端な指向性では理解と共感の範囲が限られます。これまで培われてきた作法やコードを適度に尊重しつつ、新しい内容を盛り込んだID.4のあり方は、「多くの人々のためのクルマづくり」を担うVWのような立場だからなし得るわけです。そうした立場として導き出されたプラットフォームを共用してBEVを作ろうとしているフォードも、やはり「多くの人々のためのクルマづくり」を担う一員として、適正なBEVをもたらしてくれることを、ID.4を見ながら期待しています。
Posted at 2022/12/10 11:26:05 | |
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