
週末に何気なく見たDVDですが、実に渋い映画でしびれました。
この映画が公開されたのは私が高校生の頃、一世を風靡したヴァンゲリスのテーマ曲が(何故か)下校時間を知らせる放送のBGMになっていたのですが、これが夕日の人気の少ない校舎に実に印象的に流れていたのを思い出します。でも、映画自体は(お金がなくて二番館の2本立て800円しか見られなかったwので)当時は見なかったのですが、今回初めて見てみると、当時見なくて正解だったと・・・淡々として描かれる1900年代初めの物語は、それなりに当時の状況を知らないと見過ごしてしまう部分が多いように思いました。
!!!以下ネタバレ注意!!
主人公はユダヤの青年、ケンブリッジ大学に在籍し短距離走の才能をもって周囲の偏見と差別を跳ね返そうとします。もう一人の主人公は、ラグビー選手としてすでに有名な宣教師、神の栄光を走ることで表現しようとします。ユダヤの青年は彼をライバル視して闘志を燃やし、プロのイタリア人コーチに師事します。それをして「品格がない」「アマチュアリズムに反する」と諫めるケンブリッジの教授達(最後にさらにもうひとひねりありますが)・・・クライマックスは二人が同じイギリスの選手としてそれぞれ金メダルを獲得するオリンピック。
ユダヤ、アイルランドとスコットランド、アマチュアリズム、そして信仰といった問題が極めてさり気なく散見され、この映画に深みを与えています・・・ただし、それに気付くには見る方にもそれなりの素養が必要なようで、不勉強な私には実は消化しきれない部分も多いのですが(笑)
この映画を見て思い出したのですが、当時は陸上競技にもプロがいて、賞金目当てのレースに参加していました。昔「アメリカ大陸横断マラソン」なんていうプロレースの小説を読んだことがあったのですが、現在のプロ野球やプロサッカーと同じようなエンターテイメント(と賭の対象)としてのプロアスリートがいたようですね。
この映画「炎のランナー」というタイトルからすると実に地味な映画です。印象的なオープンニングとエンディングのシーン・・・曇天のイギリスの海岸、波打ち際を集団で白いシャツと短パンで走る選手達のシーンは、私には現実ではなく、思い出とか理想とかイデアとか(笑)そういう世界のシーンのように思えました。
実に渋い映画でしびれました。
Posted at 2008/01/22 22:31:18 | |
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