
ただただ素晴らしかった…。
都会で辣腕をふるう悪徳弁護士が、ひょんなことから生まれ故郷に戻ることになり、厳格で純朴な家族と再会するも、長年判事を勤めてきた父親とは決定的に埋まらない溝があることも再確認してしまう。
ほどなくして、その父親に殺人容疑が掛り、その弁護を手掛けていく過程で、父親との関係性や自己の内面にも様々な変化が起こり始める。
裁判の行方とともにこの親子の切っても切れない絆がどのような結末を迎えるのか…?
この映画に対する批評としては、「平板すぎる」といったネガティブなものが4割ほどを占めているということでした。それは確かに、法廷モノとしてはまさにそうだと思いますが、作者が重きを置いたのは決してそこでは無いことは明白です。
厳格な父親が、頭脳明晰ながらも破天荒すぎる主人公を冷たく突き放し、平凡な兄弟にはごく普通に接する。突き放される主人公はそれを恨んでいたが、ではなぜ恨むのか?
親子はいがみ合いながら裁判は佳境に入り、証言台で窮地に立たされた父親を主人公が尋問する。そのクライマックスで明かされる父親の主人公に対する心境。
親子関係という、法廷で審理されていることとはまったく関係が無い内容のはずなのに、それがしっかりと審理に必要な「証言」となっている。こんなストーリーの組み込みができるとは、絶句のうえ脱帽です。
男の子を持つ父親、もしくは父親を持つ男性であればこの映画にあるメインテーマに必ず共感するはずです。
僕はそのテーマについて、どちらかというとポジティブには捉える事が出来ないでいましたが、この作品のお陰で理解フェーズが一つ変化しました。
今は純粋無垢に触れ合ってくれている息子に対して、今から伝えるべきか、いや臨終の間際で伝えるべきか…
「キミが大人に成長したとき、確実に私と衝突するだろう。でもそれは、表面的で浅薄な関係ではなく海より深い絆と愛情があるからこそであり、また、互いが男としての矜持を携えているからこそであり、そしてそれが真の和解を迎えるのは虚しいかな、“父性が死ぬとき”である」
Posted at 2018/01/27 05:43:23 | |
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