e-Golf、約3か月3,000km経過しての所感を記します。
<アクセルペダル操作に対してリニアに反応する>
これは既存のエンジン車においてスポーティであることの要件の1つですが、EVにおいてはこのリニア度合がハンパありません。表現するなら、「右足と直結」ではなく「脳と直結」していると言ってもいいと思います。
将来実装されるであろうインホイールモーターになろうもんなら、一体どんな世界になるのか、空恐ろしい(笑)
バイワイヤスロットル、インジェクション辺りの機構で反応速度に差が出ているとは考えにくい。まさに「いつでもパワーバンド」というモーターの特性によるところです。
感覚的に言うと、エンジン車で「100rpm刻みの繊細な出力コントロール」ができる感じです。
大排気量車やチューンドエンジンにおいては「加速時のリニア度」はありますが、「減速時のリニア度、コントロール性」になるとどうしてもクランクの惰性や微妙な吹け残りなどで意のままには操れません。さらには回転領域によってもその度合いが変わるのでなおさらですが、モーターだと常に一定。
顕著に感じられるのは、アクセルオフで減速し、再加速もしくはパーシャルに持っていきたい時です。減速から加速への切り替わりのラグが極小。路地のクランクを抜ける時や、渋滞時の頻繁な速度調整が必要な際に、絶大な操作特性を見せてくれます。
(※上記は回生ブレーキモードを常に最大設定していることが前提です。日産でいうところのワンペダルドライブ。アクセル全閉で瞬時にモーター回転はゼロになり、駆動は回生ダイナモに繋ぎ変わっています。)
<回生ブレーキとディスクブレーキ>
画像インパネのメーター、頂点がゼロ位置で、アクセルオンで針が右に(POWER)振れていきます。逆にアクセルオフで針が左に(CHARGE)振れて、発電します。
左の発電領域、充電量が多く残っているときは、図示※印のように発電量が限られます。充電量に空きが出てくると図示矢印「MAX」まで領域が拡がります。
さて、とにかく減速のために、ブレーキペダルは踏まずにアクセルオフだけにしますと、発電メーターは伸びます。減速する(慣性が弱まる)につれ、発電メーターは縮んでいきます。また、アクセルペダルを微妙に踏み込むと、発電メーターが若干縮み、発電量は下がります。
そして、ブレーキペダルを踏み込むと、なぜか発電メーターが伸びるのです。速度が10km/h程度にまで落ちると、発電に必要な慣性が得られなくなるようで、発電はしなくなります。
このように回生ブレーキとフットブレーキを同時に使用しているときに耳を澄ませていると、10km/h辺りで「ゴォォー…」とパッドとディスクが擦れる音がし始めます。このタイミングで、減速感に極々微量の”段差”を感じます。しかしながらその段差は、初期には全く気づきませんでした。
つまり、フットブレーキは初期は回生量の調節を担い、速度域が下がって発電慣性が得られなくなってから物理ブレーキを作動させるということが分かります。(速度域が高いときに、より強くブレーキを踏み込むと、発電メーターがMAXに到達しても、それ以上にしっかりと減速しますので、この際も物理ブレーキを作動させていると思われます。が、ひょっとしたら回生抵抗をそれなりに増やしている可能性もあります)
現象から考えられるこの「フットブレーキが回生と物理の双方を、ドライバーに違和感を感じさせずにシームレスに行き来している」という高度な制御について、全く懐疑的でした。
ただ、現象からはそうだとしか結論できませんし、日産ワンペダルドライブのあのゼロストップの際の繊細なブレーキコントロールを考えると、あながち不可能ではないのかなとも思いました。
別件でBOSCHの技術解説動画を好んで視聴しているのですが、これぐらいはやりかねないと思わせる開発力がありますからね。
私にとってのEVの最大の美点は、モーターの特性ではなくこのエネルギー回生システムにあります。既存のエンジン車は、燃料エネルギーを消費して加速し、減速時も摩擦熱エネルギーを消費しますので、加速減速の両方でエネルギーを消費して、慣性エネルギーを全く利用していない。
EVではこの加速時に生み出した慣性エネルギーを回収することによって減速しますので、非常にエコロジーでクリーンです。素晴らしい。ドライブ中もとにかく回生量を最大化することを愉しみとして操作しています。
<「出力MAX」とは?>
インパネメーターの「POWER」100%を超えたところに、「e-MAX」として5ゲージ存在します(赤丸)。走行可能残距離が100kmを切る辺りからこのゲージが減って、70kmぐらいで無くなります。
このゲージがまだある際に、全開加速をすると、ゲージが減ります。が、数秒で元に戻ります。
取説を調べると「出力を全開にするとバッテリー温度が過熱するので、その際には出力を抑制する」ことを示すゲージとのこと。残走行距離が少なくなった際にも、航続距離を無闇に減らさないようにするために、このゲージがゼロになる。
いわゆる「オーバーヒート」対策ということですね。エンジン車ではサーキットで全開走行を長時間しない限りは気にすることはありませんが、EVではこれがかなり頻繁に起こります。ただ、完全に不動になる訳でもなく、通常走行はできますから、問題とまでは言えません。
<なぜ変速ギアを設けない?>
スピードメーターは160km/hまでしかありません。
確かに日常使用では変速ギアがなくても全く支障を感じません。
でも、エネルギー効率を考えるなら、1速で160km/hまで回るモーターであっても変速ギアを介する方が向上するはずです。重量増が問題になるのかもしれませんが、2速まで(オーバードライブ的な設定でも可)なら効率向上を相殺するほどの重量増にはならないのでは?
しかしながら、「マニュアルミッションの愉しさを」とはいかないと思います。“オールウェイズパワーバンド”ですから…(笑)
<暖機運転が不要>
タイヤやブレーキ、サスペンションなどの暖機はいずれにせよ必要ですが、エンジンやクラッチにスムースさが出てくるまで様子を窺うということが無くなりました。その気遣いをしなくても瞬時に発進できるようになった今、開放感を感じています。
エンジン暖機で顔色を窺うというのも、それこそクルマに愛着を生む要素ですけどね。
<ラジエーターが存在する!>
これは取説に記載がありました。EVにおいて高熱を発するのは、まずバッテリー、次にモーターです。以前バッテリー冷却システムの有無をディーラーで聞いたところ、「ハウジングの金属をやや伝熱性の高いものにしている可能性はあるが、サービスマニュアルを見る限りは存在しない」とのことだったので、モーターを冷却しているのかな?
<タイマー充電時の注意事項>
出発時間を設定しておけば、その時間には充電が完了するようにアンペアをコントロールしてくれます。バッテリー劣化を抑えるための機能でしょう。
最近のバッテリーは「80%~20%の間を使用するようにしないと容量減少という劣化を促進する」ので、それに対応した「充電上限の設定」という機能もあり、このタイマー設定の一項目として存在します。
他方で、不思議な項目があります。
「充電の下限設定」
上限設定がありながら、「充電の下限」とは???
とにかく物は試しに使ってみようとして、「100%」に設定してみました。すると、上限は90%に設定していたのに、満充電してしまっていました。
ここで取説を読んでみると、「バッテリー残量がかなり減少している状況で充電した際の充電上限」ということでした。そのタイトルが「充電の下限設定」…。理解不能です(汗)
<ヒートポンプエアコン>
通常のコンプレッサーではなく、ヒートポンプが備わっています。
解説にあるとおり、「1の電気と6の大気熱で、7の熱エネルギーを生成する高効率システム」です。
概略を読んで、最初は分かるようで分からなかったのですが、とにかくは「大気との温度差を利用する」ことがポイントで、なかなか面白い発想だと思います。
クーラーとしては既存タイプと遜色ない冷房能力があります。エンジン出力を拝借しないので常に安定しています。冬場の暖房能力としてはやや脆弱という評判を聞きますので、シートヒーターに頼ることになるかと思います。
とにかく、低消費電力という部分がメリットなのでしょう。
あ、そうそう、この一文で色んな意を汲み取って頂けると思いますが…
「納車してから一度もボンネットを開けて観察することがありません」
(笑)