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ドカーンと雷に打たれるような感動ではありませんでした。でも、ひたひたと感動が増していき、気付けば「自分史上最高傑作」でした。
でも、本当に“凄いもの”に触れた時って、案外そういうものです。それこそがホンモノ。









ストーリーそのものも名著として名高いようですが、原作が発表されたのは1974年。同様レベルもしくはこれ以上の複雑さのものは最早多数あります。そこに良さがあるのではなく、“役者が映像の中で表現する”“役者やセリフが無いのに、シーンだけで物語る”という、映画の機能性を究極レベルまで緻密に作用させたという点です。

結末が既に広く知られてしまっている著名な原作だけに、ストーリーそのもので勝負するつもりは全く無かったようで、時系列は前後しまくり、あった方が分かりやすいであろう解説やセリフ回しも極限まで削ぎ落されており、初見では大変難解でした。結末や全体像はかろうじて理解はできたのですが正直初見では20％程度しか製作者の意図を汲み取っていませんでした。なので、改めて解説を読みたいと思いとあるサイトを読んでみたら、上述したような奥深い表現があらゆるところにちりばめられており、驚愕しました。
むしろ、時系列の組換えによって、解説などを削ぎ落すことによって、演技や映像の力、脚色の力を十二分に引き出して原作には成しえない付加価値を構築したのです。

例えば、「じゃあ何なのだ？！」というとても短いセリフの中に、とてつもない量の意図が込められていたり、なるほど、短いがこれ以外のセリフは有り得ないし、もしこれ以外のセリフだったら作品全体の価値を損なう可能性もあるだろう大変重要な一幕であったことに気付き、その一瞬のセリフにそれだけの意図を込めて演じ切れる役者の凄みを感じたり…。

ゲイリー・オールドマンやベネディクト・カンバーバッチというキャスティングだけに飛びついただけだったのですが、いやこれは大穴でした。