オバマ氏広島訪問の舞台裏

原爆のキノコ雲の下には米兵もいた。

オバマ大統領と抱擁する森重昭さんのこのシーンは人々を感動させた。
彼は単なる被爆者というだけでこの場にいた訳ではない。

原爆犠牲者の中には、１２人の米兵捕虜も含まれていた。森さんは、40年以上を費やし、被爆米兵のことを調べ、遺族を探し当てるという偉業を達成した人なのだ。


【門田隆将の新聞に喝！】

　


確かに、米国大統領が広島に歴史的訪問をしたという美談のみを伝えるだけでは不十分だと思う。事情を知らなければヒーローはオバマ大統領だけになってしまう。

広島被爆米兵の名前を刻んだ日本の歴史家／nippon.com

1945年7月末。日本の巡洋艦を爆撃中に撃墜され、パラシュートで降下し生き残った１３人の米兵は捕虜となり広島の中国憲兵隊司令部に護送された。
うち、一人は尋問のために東京に送られた。
そして、１２人の米兵が被爆した。うち９人が即死(記事では１０人）したという。
残る２人も日本人医師が加療するも１３日後に放射線障害で死亡する。その後宇品憲兵隊員の手で埋葬されたという。

終戦前後の混乱期、米軍部は広島で拘留されていた捕虜がどのようになったか知るよしもなく、家族には行方不明だと伝えるのが精一杯だった。
そして1983年になってやっと米政府は、渋々と米兵捕虜が広島で原爆の犠牲になったことを認めた。

「被爆米兵の名前を初めて平和記念資料館に登録できたときには、思わず涙が出た」

「誰にも言われたわけでもないし、誰も手伝ってくれなかった。みんな上手くいかないと思っていたけれども、私は何としてもやり遂げようと思っていました」

１999年、森さんは、12人の被爆米兵捕虜の銅製記念碑を中国憲兵隊司令部の跡地に建てた。2012年の広島原爆記念日には、原爆投下を命じたトルーマン大統領の孫と一緒にこの記念碑を訪問し、献花をして弔意を表した。

そして、この森さんの功績があったからこそ、今年のオバマ大統領の広島訪問が実現した理由であることは間違いないだろう。

しかし、米国には相変わらず原爆投下の正討論が根強く残っていることを考えれば、核廃絶を訴えノーベル平和賞を受賞し、かつ、任期が残りわずかなオバマであるからこそ広島訪問が実現したのではないだろうか。

以前にはオバマの訪問を素直に受け止めることにしたと言ったけどね・・・

まぁ、核兵器なき世界が理想であることは疑いようがない。
しかし、現実問題として、わが国が近隣諸国の核の脅威にさらされていることも事実だ。