
「だ い ちゃん~あのさ、今週あたり自分のクルマ、オイルクーラーやりたいんだけど・・・。」
クネ太郎より整備の催促。
駄目駄目、近場の紅葉は今週がピークなんだから、
それどころじゃないんだよ。
無下に断る。
ヲレにとっては大事な時期なのだ、
判ってもらうしかない。
群馬、埼玉間を、県道45号→国道299号というルートで戻り、
あちこち寄り道しながら、静かに錦秋を巡りたいと密かに計画していたのだ。
クルマなんぞ直しとる場合ぢゃない。
「今週カミさんもいないしさ、やることないんだよ・・・。」
誘ってもらいたそうだ。
とっても早起きして行くんだけど・・起きられるなら連れてってやるけどどうする?
「俺、生まれてこのかた、紅葉を観に行ったことなんて一回も無いよ。」
そういう事をしようという発想がなかったという。
四季の彩りの美しさをこころが要求しないなんて、
どうしようもなく情緒の浅い野郎だなぁ、となじってみる。
「仕方ないだろ、自分ちの近くなんて、街路樹以外の自然なんて一切無いんだから・・・。」
そんなの関係ないだろ、ヲレだって幼少期は世田谷で育ったんだぜ?
とは言ったものの、ヲレの友達でも桜がキレイだとか、紅葉狩りの季節だなんて言ってる奴は
殆どいなかったなぁ。
ヲレがオッサン臭いだけなのだろうか。
ヲレは子供の頃からこんなカンジだよ。
他の何を差し置いてでも、これだけはヲレは間違ってないw
関越をトバし、群馬は下仁田より旅は始まる。
秋も深まる妙義山の荒々しさに、クネ太郎もやや感動気味だ。
ちゃりんこもシャカシャカ上がってくる。
土曜日に出掛けてよかった、天気も結構良かったしね。
日曜は寒い位だったもの。
妙義をあとにし、県道45号から山あいに入り、秩父を目指します。
近年、トンネルのバイパスが出来て旧道になった、
塩ノ沢峠のルートをとります。
道路脇の一本モミジに立ち止まります。
小さな祠を擁き、何ともいえない風情がありました。
谷にへばりつくような農村を抜ける長閑な旧道。
ほんの数年前までは、まともな峠越えはこのルートしかなかったので、昔はよく通った。
昼間にのんびりドライブするのが良かったんだ。
通行量僅少、信号も無いただひたすらな一本道。
ホームに似てるかな。
でも、もっともっと山深く、コースは険しい。
単車でツーリングとかは最高の道だよ。
落葉する針葉樹カラマツの黄色も美しい。
やわらかいホンワリとした光が辺りを包むよ。
なんという美しい世界。
楓にブナに、桜にモミの木。
薄暗い杉桧の植樹山林と違って、広葉樹の山肌は明るくあたたかい。
そして、志賀坂峠からルートを秩父湖方面へと変えて、
八丁峠という難所越え。
ここの美しさも尋常ではなかった。
紅や黄色のトンネルを抜けるたびに、溜め息が出るようだ。
クネも感動しているようだよ。
あまり経験したことがないだけで、感じる心が無いわけではなさそうだw
こういうものを観て何にも感じないような人とは、
ヲレはちょっと仲良くなれそうもない。
感じるだけで計算しなくていい世界というものがある。
こういうものを尊重できないひとは、
きっとひとの気持ちも判らないだろうと思うのだ。
美しい日本の秋。
刹那の彩りは隆盛を極めている。
八丁峠を下りきると、中津峡と呼ばれる秩父最大の深山幽谷へ出る。
その渓谷の外れには大規模な石灰岩採掘のニッチツ鉱山があり、今でも稼動を続けている。
廃社宅の残棟。
かつてはもっと多くの廃屋が軒を連ねていたようだが、
その多くは撤去され、今では数えるほどの建物しか見学できない。
少し中に入ってみたが、有名になってしまったが為に結構荒れてしまっている。
稼動中の設備への不法侵入も多くなってしまったらしく、
殆どの建物は、侵入を固く拒む注意書きがある。
安全衛生上から見ても、徐々に解体される運命にあるようだ。
現在でも、国内有数の石灰の採掘量を誇る秩父の採掘事業所。
廃墟と現役設備が混在し、独特の景観をもった不思議なエリアでした。
しっかりと今目の前にある空白とでもいうのかな。
少しだけ、
風越 龍さんの気持ちが判ったような?
気がしました。
暮れなずむ山あいの中津峡。
点在する見事な朱に、しつこくしつこく、クルマを停めてしまう。
迫る宵闇が鮮やかさを際立たせる。
美しい朱。
紅葉のメカニズムは、寒くなってくると、落葉の準備のために、葉から枝への養分を遮断するようになる。すると、葉で作った糖分は葉に留まっていく。
緑のクロロフィルが低温で壊れると、その下にある黄色のカロチノイドが発色し、
さらには、葉に残る糖分が、アントシアンという紅い色素に変色していくのだという。
糖分が多ければ多いほど、気温が低ければ低いほど、強い真紅に発色するようだ。
すっかり日も落ちて、露天の出店でしし汁を一杯。
日本酒をやれないのが口惜しいな。
一日じゅう動き回ったなぁ。
久々に趣味だけの旅。
クネも退屈することなくなかなか満足そうだった。
運転を任せて指示や撮影に専念できたので、ヲレとしても良かったな。
これで、付いてくるだけのクセにうわの空だったり文句ばかりを言うようだったら、
もう誘う事はないだろうが、そういったことは一切無かった。
写真の旅というものは、興味のない人にとってはとっても退屈なものだから。
気持ちの判る奴となら、旅も楽しくなるね。
やっと気持ちが落ち着いたよ。
Posted at 2010/11/15 02:18:01 | |
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