コンスタントにブログを更新できない日々が続いております。
私事ですが・・お盆過ぎから会社の仕事量が尋常じゃない事になり、只でさえ身体を使う技術職なのに、屈強を自負する僕でさえそろそろ限界を迎えそうです。
基本毎日3時間4時間の残業に、休日も出勤で更に残業・・・。
そろそろ何とかならんかな。。
こんなコロナ禍で、仕事があるだけ有り難いのかも知れませんが・・・ちょっと極端なんだよな。
断った仕事が転注になるとまず帰って来ないので、やり切るしかないのが中小企業の辛い所ですね。
そんな合間でも、頼まれてるエンジンを組まないといけないとか、クルマが止まっちゃったから見てくれだとか、このパーツ付けて欲しいだとか、様々なニーズに応えなければいけないという実情があります。
チオビタドリンクを一気飲みし、両手で頬を叩き、全盛期の勝俣邦和よろしく「っしゃあ!」と掛け声をかけて単発の依頼を迎え撃っていますw
ちょっと前の内容ですが、会社の知り合いのマークX。
型式はGRX130で、ついこの間絶版になりましたマークⅡ3兄弟シリーズの末っ子の最終型。
ファイナルエディションという奴です。
コイツに機械式LSDを入れて欲しいという事で色々調べてみると、クスコからラインナップがある。
トヨタの8インチという規格なので、今のハチロクとかBRZのデフと共通のようですね。
ただ、どういう訳かRSもMZも即納できないらしく、ハイブリッドデフというシリーズだけが直ぐに出せるという事でした。
ハイブリッドデフとはなんぞやと調べてみると・・・
まず、昨今の自動車の電子制御の統合デバイスによる4輪の監視マネージメントは緻密で厳しく、やたらとガチガチのLSDなどを入れてしまうとしょっちゅう制御が入ってしまってまともに走れないとか、ATへの負担が大きくなり過ぎてフェイルセーフが入ってしまうとか・・・
昔のように「LSDを入れる→楽しく走れる」という簡単な図式ではない模様。
TRCをOFFにしてやれば一時的にそういった制御が介入しないようには出来るが、普段からやたらと制御が入るようでは煩わしいので、街乗り普段乗り程度では制御が介入しない程度の緩めのイニシャルトルクと、しっかり踏んだ先で初めてガチっとロックする機構の独自のプレッシャーリングとカム角が設定された低速マイルド仕様のLSD。
それがクスコのハイブリッドデフ。
と、言う事みたいです。
そこまでマイルドがいいなら、ハチロク純正のトルセンLSDでも流用すれば間違いないのだが、機械式を知ってる人にはマイルド過ぎる。
でもでも、鬼組みのMZやRSではガチ過ぎるみたいな人向けですかね。
まぁ、ATしかないマークXには丁度いいのかも知れません。
そんな訳で、事前に色々相談はされていたものの、話だけだろうと呑気に構えていたら、とんとん拍子に物を全部揃えてしまった様なので、どこかでやらないとね~なんて言ってて。
会社も忙しいから土曜も出勤だし、日曜はフルでやったら死んじゃうしで、考えた挙句・・・
土曜日仕事終わりにデフ降ろして部屋でLSD組み込みで半分。
日曜日午前中にクルマに取り付けしてで半分のまさにハイブリッドなプランで行く事に。
これなら日曜の午後はゆっくり出来るし、家庭内のタスクも守れるな。
みたいなね。。
やらなきゃいけない事の量は変わらないんだけど、最近はいっぺんにやるのが厳しくてね・・デフなんて訳ないだろと思いつつも、初めてのクルマなんかは思ったよりも時間が掛かるし、突貫でやるよりも前後編で分けた方がラクできるんだよね。
そんなこんなでハイブリッドデフ土日半日組み付けのハイブリッドプラン。
こういう日に限って結構な雨。
駐車場は屋根下なんで決行しますが、風が強いとまあまあ吹き込んできます。
クソが!やってやるぜ。
FRのリヤデフなんて楽勝だろうと思いましたが、最近のクルマは細かくブレースバーのようなものが入っていたり、アンダーボディー気流の整流パネルのようなものがやたらと付いています。
それでもまぁ、デフ自体はボルト4本とペラシャのボルトナット、ドライブシャフトの差し込みのみ。
ドライブシャフトは、アーム類の分解が面倒なのでそのまま下げて行って抜けてくるかチャレンジです。
リヤメンバーで留っている12のヘキサゴンボルト前のスペースが狭い・・・。
ソケットは差せても、ラチェもスピンナも取り付け出来そうにありません。
こんなデカいサイズのヘキサゴンのL字なんてもってないなぁ。
少し考えた後、ソケットのヘキサゴンに直接メガネを掛けて回すことが出来ました。(差し代が短すぎるとこれも出来ない)
危ない危ない・・・これがダメなら他に方法が無かったわ。
無事リヤデフは着陸。
ドラシャも下げていくだけで抜くことが出来ました。
ノーマル状態でのバックラッシュを計測。
0.13ミリといった所でした。
同じくらいの値で調整できればいいけど、シムも全種類などは準備していないのでどうなりますかね。
取り敢えず、クルマ側の作業は本日は終了。
オーナーのBさんにはお帰り戴きます。
さて、帰って飯食って風呂に入ってもまだ寝られません。
本日中に調整まで終えてフタを閉めないと接着剤が乾きませんからね。
さて、組み込み前にハイブリッドデフの中身を確認しておきます。
1WAY用クロスシャフトをプレッシャーリングが挟み、それをさらにフリクションディスクとプレートが挟んでいるのは従来のLSDと変わりませんが、その外側に見慣れないリングとRSに使っているようなコイルスプリングが見えます。
ほう。
仔細を見ていくと、プレッシャーリングにはRSスプリングが入れられる溝が切ってあり、クロスシャフトのカムもレスポンスのいい深い角度に変える事も出来る。
要するに共通部品と言う事だ。
イニシャルトルクを掛けるためのスプリングはRSのように内側からではなく、新設のリングを介して外側から掛ける事で、プレッシャーリングの押し広げを遅らせて、日常使用領域でロックしないようにしている模様。
このリング機構のお陰でフリクションプレートの枚数は片側最大12枚から6枚に減少してしまっているが、極端な効きを落として更にマイルドにする為なのだろう。
逆にこの部分を無くしてフリクションプレートやディスクを入れ、コーンプレートかRSスプリングを入れてやればタイプMZにもタイプRSにもなるという事ですね。
要するに中身の組み換えだけで上手い事やってるな!
って話でしたw
よく見ると、片側6枚にまで減少しているクラッチプレート群にも関わらず、さらに内爪と外爪が重なっている物がありますね。
最大7面の摩擦面を出せる中で、3面が無駄になる配列です。
これでは本来の6割位しかロック力が出せない。
ただでさえMZやRSの半分の枚数なのに、そこから更に6割では折角の社外機械式LSDも勿体ないと感じてしまうヲレ。
(まぁ、コンセプトに合わせたセッティングなんだろうけど)
イニシャルトルク自体は新設のプレッシャースプリングという物で出しているようですし、プレッシャーリングのカム角も浅い方を選べば、しっかり踏まないとロックが始まらない構造ですから、最大のロック率は高めてもそれ程問題は無いハズ。
100%で組んでおきましたw
オーナーも、即納できればRSでもいいやと言っていた位なので、そこまでフォーマルな性能に拘ってはいない筈。
出荷状態のセッティングでは逆にガッカリさせてしまうかも知れないので、これは正解だと思う。
しっかりフタを閉めてと。
キャリヤ側からノーマルのオープンデフを取り出します。
ここで肝心になるのは、サイドベアリングアウターレースの外側に1枚づつ入っているバックラッシュの調整用シム。(リヤデファレンシャルサイドギヤシャフトワッシャという部品w)
左に3.05、右に2.85という物が入っていました。
元々入っていたデフを外して戻すだけなら、リングギヤのバックラッシュは変わりませんが、今回のようにデフそのものが社外などに変わってしまう場合は、結構隙間が変わってしまうので、シムを交換して調整が必要になります。
元々入っているシムの厚みはバラしてみないと判らないので、事前にドンピシャのシムを準備出来ません。
通常、ショップなどではここで一回作業を中断してシムの発注に入るか、仮組でまあまあ値が良ければそのまま行っちまえで組んじゃうんでしょうけど、狭すぎると熱膨張時にギヤが届いちゃってブローするし、広すぎてもインパクトで割れたり、ギヤが偏摩耗して音が出たりとあまりいいことがない。
バラす前が0.13ミリだったのなら、やっぱり0.13前後で戻してあげたいところ。
ですが、この土日しか時間がないので一発で決めなければなりません。
かと言って、50種類くらいあるシムを全部購入する訳にはいかないので・・・
こういう時はヤマ勘でだいたい当たりを付けて20枚くらい注文して勝負するという方式を取っています。
41334Cリヤデファレンシャルサイドギヤシャフトワッシャ
2.80から3.28ミリの間で約50種類のラインナップがありました。
1枚400円弱。
全部買えば間違いないでしょうが、えらい金額になります。
20枚程度なら1万円弱。
自宅ガレージで時間が掛けられるなら、バラしてから2~3枚注文して済ませられますが、1日で終わらせることがマストなので、これは仕方がない出費ですね。
3.00ミリを真ん中に、前後10枚づつ程度準備しました。
これでヤマ勘を外すとかなり残念な事になりますが、これでイケなかった事は無いですね。
(適当だけど・・・)
この辺の煩わしさを見ると、スバルのリヤデフのバックラッシュが薄いシム数枚の組み合わせだけでやりくりできる構造は素晴らしい。
ノーマルデフからリングギヤを移植して、準備しておいた新品のサイドベアリングを圧入します。
ネットではリングギヤは焼き嵌めなどとの記述をみましたが、冷間でも抜けますし、嵌りますね、特に問題ありませんでした。
先ずは元々入っていたシムで組んでみて値を見ます。
大体0.17~0.18ミリでした。
標準値が0.13~0.18なので、ギリOKっちゃOKなんですが、広い方にギリってちょっと嫌だなぁ。
まだ登録から2年程度の新車なので、狭い方で組んであげたい。
折角いっぱいシムを買ってあるので、しっかり調整してみます。
0.05ミリ程度リングギヤを近付ける方向でシムの選定をします。
今回もヤマ勘は大体当たりましたが、危なかったよ。
薄い方に寄せたのが正解でしたけど、厚い方に寄せた20枚だったら2.80ってのは入ってこなかった。
近くの段ボールなんかに書きつけながら何度か組み直します。
デフ自体が別物ですし、サイドベアリングも新品なのでそもそもの全幅が変わってきますから、左右の厚みの変更量が同じになるとは限りません。
元のシムの厚みの合計だとややキツキツだったので、片方を少し減らして調整しました。
数回調整して、バラす前と同じ0.13~0.14ミリという値にまで持っていくことが出来ました。
これならアクセルON/OFF時のギクシャク感も出ないでしょう。
バックラッシュさえ決まっちゃえば、あとはキャップの本締めを確認してキャリヤの蓋を閉めて終わりです。
気が付いたら夜中の3時くらいになってた。
やっと寝られる・・・。
でも翌朝は午前中に終わらせたいので、早く起きなきゃな。
結局、7時頃起きようと思ってたけど、10時過ぎ・・・。
まぁ、しょうがねえか。
デフ玉運んで車体に取付します。
しかし、200馬力以上を受け止めるデフは結構重いな・・・。
インプのR180に慣れているヲレにはトヨタの8インチ(ていうか、まだこのデフ玉使ってんのかよ・・・)とかR200とかってのはやっぱりデカい。
アンダーボディーのフラット化の為に、窪んだ所がないように色んなパネルが付いている。
デフの両サイドにもレゾネーターのような樹脂のパーツが付いて、徹底的なフラット化がなされていました。
近年のスポーツカーから大型のウイングが廃されてきたのも、こういったディフューザーがしっかりしてきたからで、偏ったピッチングを生み出す大型ウイングやフロントリップスポイラーなどよりも、アンダーボディーの整流化によるダウンフォースの方が効果が高いのだという。
全部カバーリングされちゃって整備する方は大変だけどね、こうやって時代と共に機能パーツやトレンドが変化していく。
いいものは古いクルマにも取り入れてみたいし、色々と参考にはなりますね。
降ろすときは何とか抜けてきたドライブシャフトのインプットですが、入れる時は突っ張っちゃってなかなか難しいね・・・。
苦労しそうだったので、削られる前に素直にロアアームの片側を外しました。。
これなら一発で入ります。
調整のない部位ですのでアライメントは大丈夫でしょう。
無事搭載し、デフオイル充填。
オイル量は1.2Lなので、チビ缶ひとつじゃ足りませんよ。
最初の500キロくらいで一度交換が望ましいので、多めに準備しておきましょう。
古いクルマなら、ウマに載ったままギヤを入れて駆動させたりして最終点検するんですが、今のクルマでそれをやるとABSとかEBDが誤作動を検知してチェックランプが点きっ放しになったりするので、実際に走ってチェックするだけです。
まず走り出してクッと踏むと、チャッと言う感じのプレッシャーリングが押されてプレートが密着する時の音が割とハッキリ聞こえる。
不快ではないが、素人には聴きなれないだろう。
アクセルを踏まない惰性の旋回では殆どイニシャルトルクに寄る抵抗感はない。
車庫入れなどでのフル転舵でも引きずるような引っ掛かりは全く感じなかった。
しかし、カーブなどで意図的に大きくスロットルを開けると、駆動両輪は瞬時ににズザザとロックを開始し、面圧の低い内側のタイヤが無様に空転するという事は一切おきそうもない。
純正トルセンなどよりも明らかにレスポンスが良く、機械式LSD感は充分に感じる。
片側6枚プレートと、クスコにしてはマイルドなLSDではあるが、充分ではないかと思える能力がある。
超ハイグリップタイヤを履いてジムカーナとかになったら判らんが、このオーナーも、そもそもガチじゃねーし、たまに峠や高速を流すだけなら、普段乗りで不快感が無い分最高のLSDではないだろうか。
今回このLSDの構造を理解するにあたり、イニシャルトルクの調整やあり方について新しい視点で考察できて、いい勉強になったかな。
低イニシャルで高いロック率を出せる社外LSDはいいなぁと思いました。
やっぱ走るクルマにはLSDは絶対必要!
純正のホイールがやたらとカッコいいな・・・。