ポンさんのGC8が完成し、無事走り出しました。
長かったな・・・本当は去年の夏ぐらいには出来上がってる予定だったんだけど、暇だと思っていた会社が急に忙しくなって全然時間が作れなかったからな。。
それでも何とか去年の内にエンジンを掛ける所まで持っていき、年明け一発目にシェイクダウンと相成りました。
正直言うと、他人のエンジンなんて本当は作りたくない。
散々やってきたから、大丈夫だろうという自信はあるけれど・・・ハッキリ言って何の確証もないからね。
作り方の手順やセオリーに何の間違いも無かったとしても、ベースになるエンジンに測定数値には出ないような致命的な×があったりして長持ちしなかったり、ガスケットが抜けてしまったり、何でだか判らないけれど早々と壊れてしまう事もある。
時間を掛けて完璧に作った積りでも、何故かイマイチ調子が出なかったり、実際に作って使ってみるまで判らないような当たり外れがあり、「賭け」に近い部分がどうしてもある。
新車のエンジンにさえあるんだよ、そういう当たり外れが。
メーカーはそういう時の為にリビルトエンジンを常に準備していて、何十台かに一台そうやって戻ってくるクルマのエンジンをポンと直ぐに載せ替えられるように準備している。
使われ方によっても結果は違う。
Aさんが乗る分には10年でも20年でも壊れなくても、Bさんが乗ったら3ヶ月でブローしてしまったとか。
まぁ、シビアコンディションで壊れるようなのはそもそも論外なんだけど、大丈夫なエンジンとそうでないエンジンとの境目が判断できないケースも多くある。
クランクシャフトなのか、シリンダーブロックなのか、シリンダーヘッドなのか・・・常温で表に出てこない内部応力のようなものが悪さをするのか。
結局壊れた後も判らず仕舞なんてこともよくある。
元々エンジンの設計そのものに問題がある場合もある。
とにかく結果的に判らない事が多い。
ヲレがエンジンや金属の事を熟知していないからなのかも知れないが、当たり外れがあるとしか言えない。
エンジン自体はね、単純な構造さえ理解してしまえば、バラすのも組むのも訳はないんだけど、手間と時間とお金をふんだんにかけても、100%が無い世界なんで、人のなんてやるもんじゃない。
ってのが本音。
壊れたって保証できないよそんなの・・・。
何故かヲレみたいなのを信用していて、それでもいいよっていう変わり者のクルマを、保証なんかしない代わりに殆どボランティアみたいな手間賃で面倒見ているのがヲレな訳です。
プロショップだって本当はやりたくない筈。
仕事でやるなら含み損分を最初に計上して高い工賃設定にしないと成り立たない世界だね。
暇な時間を見つけて自分のエンジンを触ってるくらいが
一番気楽でいいやね^^;
そんな変わり者のポンさんのGC8ですがw
今回作ったエンジンはアタリのニオイがします。
ヲレのGCと比べちゃうからかも知れませんが、エンジンはとっても静か。
アイドリングから回転の滑らか感を感じます。
性能を追求した社外ピストンなどを用いると、静粛性や経済性を犠牲にする事もあるので、エンジンを掛けてみるまで色々と不安はあった。
HKS鍛造ピストン。
ニッケルメッキ&モリブデンコート仕様の豪華ピストン。
少し高いが、これを使っておけば間違いないというか、社外品の中で最も信頼性が高そうだったので採用した。
それでも純正ピストン&ピストンリングを一式買い直すよりは安く上がる。
社外品は軽量化と摩擦係数低減の為にスカートをギリギリまで短縮したりするので、首振り打音を発生させることがあるのだが・・・今回はそういった事は皆無・・・さすがHKS。
ただでさえ頑丈なGDBのセミクローズドデッキブロックの上面を0.08ミリ修正面研し、0.5ミリオーバーサイズのピストンに合わせて掘り直した。
ダミーヘッドによるボーリングでクリアランスは0.035ミリで統一。
更にプラトーホーニングという内壁の表面処理を施したので初期アタリの付き方が格段に良くなるのだという。
高強度と軽量化の両立を図る東名のH断面コンロッド。
EJに多いメタル流れの要因の一つが、コンロッドキャップの変形(若しくはボルトの伸び)と言われているので、これも高いけれど素晴らしい安心材料です。
締めたり緩めたりがこんなに大変なARPのボルトが、勝手に伸びるとはとても思えないw
ヘッドもね、定番的な内容ですが色々と小技を利かせました。
バルブやスプリングこそ純正のままですが、リフターやリテーナーなどの軽量化を図り、慣性重量の低減やスプリング強化と同等の効果を狙います。
ヘッドも0.1ミリの修正面研を実施し、ガスケット抜け皆無を目指します。
バルブリテーナーはGDBのF型に使われている軽量薄型のものを流用。
バルブリフターもGDBCから採用のシムレスリフターを使い再調整しました。
更なるメタル流れの保険は、東名のバッフル&スチフナー。
オイルパン内での片寄りと、シリンダー側への飛び込みを二段階で防ぎ、分厚い鉄板でシリンダーブロック下面の剛性まで上げるという優れもの。
これはヲレも付けてみたい!
消耗品は全て新品を準備し、丁寧に組んだ。
いつものようにアホみたいに突貫でやらずに、時間を掛けてやればいいものが出来るなぁ・・と我ながらしみじみ思った。
仕事と思ってやっていないからこういう事が出来るのかも知れない。
今日中に終わらせないと!とか、何時までに完成させないと!みたいにやってる自分のクルマの方がよっぽど仕事的だなぁ。。
GDBの等長エキマニにツインスクロールターボの流用。
GC8への流用チューンの最たるものがこれである。
そしてサードのメタルキャタライザー。
ほんともう、えげつないほどやり過ぎたなぁ・・・
という位、贅沢に作った今回のGC8のエンジン。
ポンさんがGC8に惚れ込むあまり、一生乗り続けられるクルマにして欲しいと言う切なる希望から、過度なパワーアップやハイチューンを狙わずに基本ノーマルのまま、耐久性を底上げしていく設計図を引いてエンジンを作った。
オリジナルの良さ重視するGC乗りの、悲願とも言える内容なのではないだろうか。
純正のラムコ3連を廃し、デフィの新しいDINゲージを装着。
オプションのコントロールユニットを準備すればピークホールド機能も活かせるらしい。
あとは以前にアルトにも取り付けた、簡易空燃比計機能のあるレブシフトタイマーを装着。
基本的な空燃比が、純正ECUの補正の範囲で収まっているかの確認の為に取り付けました。
これで漸く試運転。
事前にアイドリングで10時間ほどラッピングしてありますが、路上は初です。
新作エンジンで初めて走り出します。
慣らし運転なので初めは低回転縛りでブーストも掛けられませんが、明らかに出だしが違う。
2000回転台でもトルクが随分太い。
GC8と言えば、3500回転位からやっと前に進みだすような低速のスカスカ感が当たり前だったんですが、なんかGDBに乗ってる時のような低速トルクの重厚感があります。
社外のキャタライザーとか入れてしまったから、その辺はあまり期待していなかったんだけど、想定外に出足が良くなっている。
タペットを幾ら軽量化した所で、低速域はそんなに変わらないと思う。
ピストンやコンロッドもねぇ、若干軽くなった所で耐久性がメインだし、フライホイールの重量を半分にする方が余程効果がある。
排気量が1%増え、圧縮が戻ったことによる効果も無視できないが・・
やはり・・・排気系なのかな。
GDBなんかの低速の良さはほぼAVCSの恩恵かと思っていたんですが、ツインスクロールターボによる排気干渉の低減はかなり効果があるんだな。
良い良いと言う話はよく聞くが、半分ウソだと思っていた。
そんなに判る程変わらねえだろと。
だけど、実際作ってみると凄く良い。
エキマニからタービン、フロントパイプまでをまとめてGDBC以降の物にしないといけないので、かなり費用は掛かるが、これは一考の価値ありだな。
色々チューンと名の付く事をすると、大概部分的に突出する事はあっても全体的に良くなることは殆どない。
概ね、低速を犠牲にして上を取るみたいなね。
後付けのパーツが基本構造の全体を底上げするようなことは無い。
上を犠牲にせずに低速が良くなった事なんて今まで正直無かったからね。
でも、今回の等長エキマニ&ツインスクロールターボの流用というのは基本構造そのものの刷新とも言える内容なんだね。
センセーショナルだ。
こうやってね、ひとのエンジンを作りながら、
何が一番効果的で、自分のクルマへのフィードバックに向いているかを常に探っている。
自分の予算ではこのエンジンにしたことの半分も実行できない。
だから費用対効果の高い部分だけを厳選して、何とか安くていいエンジンが出来ないかと・・・ノウハウだけ盗んでやろうと睨んでいるのだ。
今回はかなりいい勉強になった。
今は低排圧で回せるタービンが数多くある、ターボ車なんて大きいタービン付けてしっかりセッティングすれば、せこく軽量化だの排気干渉低減だのとやらなくてもドカンと400馬力だの500馬力だのと狙っていける。
一発勝負ならそれもアリだが、EJ系はそもそもエンジンのキャパシティーが低いので、長く大事に乗っていきたい人には向かない方向性。
VABあたりの207が幾ら丈夫になったとは言っても、基本的な設計は変わってないからね・・・例えば400馬力を狙ってセッティングしたら、ノーマルのライフの半分も持たないだろうね。
全開時間も長く取れなくなるし、場合によっては一発で壊す可能性もある。
チューニングと言うのは命を圧縮して戦闘力に代えていく作業なのである。
だから今回のように、耐久性を損なわずに不足していた低速だけを補うような方法があることが画期的だった。
寧ろ元よりも遥かに頑丈になっている。
今回のエンジンOH内容。
GDBCシリンダーブロック流用
Φ92.5HKS鍛造ピストン(160g軽量)
ナプレックダミーヘッドボーリング
ナプレックヘッド修正面研(0.1㎜)
ナプレックシリンダーブロック上面修正面研(0.08㎜)
東名H断面コンロッド(160g軽量)
クランクピン&大端ベアリング純正
東名バッフル&スチフナー
GDBCオイルパン
1.5㎜メタルガスケット(GC8E純正)
GDBCシムレスリフター(240g軽量)
GDBFバルブリテーナー(100g軽量)
GDBC水冷オイルクーラー流用
GDBC等長エキゾーストマニホールド&ツインスクロールタービン流用
GDBC用サードメタルキャタライザー
総排気量2016㏄
回転系&動弁系合計660g軽量化
まだインタークーラーの変更や、点火系の強化、その他若干作業が残ってはいますが、それは慣らしが完全に終わってからでいいでしょう。
取り敢えずこの状態で一回目の慣らし運転をしてもらいます。
回転数は3千、ブーストは大気圧までという縛りを守ってもらい、次回のオイル交換までに1000キロは走ってもらいます~
なんて言って2週間後にオイル交換に来たら、もう3000キロも走っちゃってました。(ガソリン代幾ら使ってんだよw)
全てが滑らかに回っている感じがするアイドリング音。
角が取れた様な、ガサガサした感じがしない。
社外ピストンで心配な打音もしないし、パチパチというタペット音も皆無。
良い感じだ。
初めてのオイル交換。
結構どきどきする瞬間である。
何か事件が起きていれば全てオイルに出る。
真っ黒ならクリアランスが不適切でブローバイが多いのかな?とか、きらきら金属粉ならまだしも金属片とか出てきたりすればぞっとするが・・・
そんなものは全て杞憂と言わんばかりに、濃い目のハチミツくらいの清浄度のオイルが出てくるって言う・・・。
フルオーバーホール一発目にしては衝撃的にきれいな排出オイルでした。
初期馴染みが相当良かったんだな。
下回りチェックでもオイル滲みや水漏れなどは見受けられず。
なかなか優秀。
マフラーをGDBとGC8で入れ替えて欲しいというので、ジャッキアップついでにGCのマフラーをおっ外すと・・・
定番の中間パイプ上面崩落。
元気な音のマフラーだなとは思っていたけど、只の排気漏れだったw
ヲレのGCの中間パイプもこれで捨てたんだった。
GDBから取り外したフジツボのRM01のフルチタンという超軽量マフラーをGC8に装着。
めちゃくちゃ軽いマフラーだなこれ。
中間パイプとテールまで一本の構造なんだけど、片手で持てますね。
流石にGDBに穴あきパイプを付ける訳にはいかないので、棚の奥から引っ張り出してきたサビサビの純正マフラーを戻しておきます。
ていうか、GDBが最早ただの部品取りになりつつあるww
さてさてこれで慣らし運転のフェーズⅡに入ってもらって、ブースト0.5まで解放、回転は5千程度までOKとしまして、あと2000キロ位走ってくれれば二回目のオイル交換。
これで慣らし運転は完了ですかね。
ヲレはポンさんのGCから引きずり降ろした207をベースに作る次のエンジンの計画でも立てますかね。(セミクロはもう高くて買えないですね。)
最後にポンさんがヲレのGCを運転させてくれ、というので勝手に乗ってきていいよ~と、ひと回りさせてみる。
自分のGCとの比較が見たいのだろう。
ヲレのGCはE型だからね、207ではなく20Kなんだけど、数字上のスペックとしては全く同じものです。
2015年頃に付け替えた、確か8万キロ台のシリンダーブロックで、メタルなどだけ新品で組みました。
あれから約7年で8万キロくらい使ったのかな?
シリンダー的には16万キロ使用という感じです。(経年の基準が最早安定しないw)
戻ってきて一言。
「思った程悪くはなかったよ。」
WWW
舐めるなよw
一応運動会を走っても、未だにまあまあの戦績を残せる戦力はある。
ただ、踏むと黒煙が出て、水やオイルが減っていくってだけよ。
まぁ、そろそろダメだよな。。