
現オーナーになり既に10年が過ぎたHA11Sアルトワークス。
初年度登録より20年が経過したスズキ旧規格の軽自動車である。
これまで散々あちこち直して弄り倒してとやってきたが、どれだけメンテナンスして完調でも不満が残る唯一の弱点がブレーキであった。
フロントブレーキがゴミレベルに効かないのである。
近年の乗用車のブレーキは、最後にはABSの介入があるせいか、前後バランスで言うともの凄くフロント寄りの制動力となっている。
チョン掛けのブレーキで深くノーズダイブするので非常に初期制動が良いと感じるクルマが多い。
スポーツ走行をするクルマなんかだと、リヤもそれなりに効かないとうまく旋回姿勢が作れなかったりと問題もあるのだが、今はそんなことする人は殆ど居ないので全く問題は無い。
そんなスポーツ走行寄りのセッティングなのかどうかは判らないが、最近のクルマのブレーキに慣れ過ぎているとびっくりするほど止まらないアルトのブレーキ。
もう少し初期制動が欲しいと感じてしまう。
ディスクを新品にしてブレーキキャリパーをオーバーホールしても、マスターシリンダーをオーバーホールしても、不満を解消するには至らずで、前後プロμのメタル系のパッドを入れて漸く最初よりはまあまあ止まるようにはなったかなという程度。
まあ、出来ることはやった・・・と言う感じでまとめていたんだけど、サスペンションにエンジンにと一通り大きいのが落ち着いたところでやはり最後にやはりブレーキの問題が出てくる。
新しいエンジンもパワーが出ているので尚更ブレーキが止まらないと感じる。
やはりオーナーもこの辺で何とかしたいというハナシ。
そこでそろそろ、古いスズキでは定番らしい新規格ブレーキの流用というものに着目する。
まぁ、ヲレのクルマじゃないんでちゃんと調べたことは無かったんだけどw
昔からチラホラ聞く話ではあった。
ナックルアームが絡んでくるので、あまり大掛かりになるとメリットだけでなくデメリットもあったりするのがブレーキの流用チューンであるが、色々調べてみるとほぼポン付けでイケる組み合わせもあるようで、少ないリスクで適度なスープアップが図れるとみた。
不満なら簡単に戻せるし、ココは一丁やってみようか。
良さそうだと思ったのが、旧規格のNA車用ナックルアームの流用というもので、ハブは勿論同一、ストラットボルトの取り付け部分なども同規格なのでジオメトリーなどの変更は無いのだが、ブレーキキャリパーボルトの穴間ピッチだけが新規格のものと同一となっており、新しいブレーキキャリパーが流用可能となっている。(キャリパーの製造会社が同じ模様)
それに伴ってソリッドディスクがベンチレーテッドディスクに変更となりカロリーのキャパシティーも大幅に向上する。
ハブは旧規格となるので、走る人には泣き所のベアリングなどは新規格となりませんが、この辺を丸ごと流用しようとするとかなりの大掛かりになってしまうので却下です。
オーナー走らないんで大丈夫。
いいグリス使って定期的にオーバーホールしていれば全然問題ないでしょう。

早速仕入れたHA系NA用ナックル。(キャリパーボルト穴間12センチがNA用の証)11も21も同じだと思われる。
オーバーホールをして流用に備えます。

同規格の二つのベアリングがスペーサーを挟んで内外それぞれから打ち込んであります。
スペーサーをややずらしてピンポンチなどで反対側から打ち出して交換します。
スペーサーは再使用、片面シールのベアリングを新しいグリスを充填しながら交換します。
グリスは高いけどウレアが一番いいです。

ナックルアームやバックプレートはやや錆が目立ったので、カップブラシなどできれいにして再塗装してあります。
ベアリングも交換して完璧。

見てください!まるで新品の様ですが、段付き摩耗をサンダーで研磨して再塗装しましたw
全部新品で揃えると部品代がかなりいってしまうのでね・・
取り敢えず中古でくっついてきたノーマルでどれくらいの効きかってのを確認の意味もあります。

ブレーキキャリパーはMH22SワゴンR用。
これもオーバーホールして使います。
やや固着していてエアを使ってもなかなかピストンが抜けてこなかったですね。
こういった足回りの部品は直ぐに固着してしまうので、定期的なオーバーホールは避けて通れません。
ブレーキホースは、元の捻じ込み式からバンジョーボルトに変更となるのでキャリパーに合わせたものが必要になります。
切られずにキャリパーに付属している物を探して買うか、新品を用意しましょう。

エンジンのヘッドカバーに塗ったようなブルーに塗って欲しいというので、パナロックで適当に調色。
メタリックなのでちゃんと2液のクリヤーで塗装します。
耐熱塗料?
街乗り車のブレーキキャリパーごときにそんなものは必要ありませぬ。
普通の2液塗料でも200℃位までは大丈夫ですよ。
知り合いのスカイラインなどは、この塗料でも10年間無変色w
逆にしっかりした耐熱塗料であっても、サーキットなんかでガンガン走ってローター真っ赤にしていたら結局焼けちゃうので無駄です。
お洒落は走らないクルマでやりましょうww

一昼夜乾かしてマスキングを剥がし、リペアーキットで組み直します。

出来ました。
中古キャリパーに付いてきたブレーキホースがきれいだったので、ほぼほぼ新品の仕上がりですね。

さて、ナックルとブレーキキャリパーが出来たので車体の作業です。
一見対向キャリパー風の元のブレーキ。
シングルピストンの片押しキャリパーなんですが、形で恰好を付けたせいか、動きが悪く均等に押せてないしそもそもキャパが小さすぎるんです。
20年間ご苦労さま。

30ミリのソケットとロングスピンナでバキっとアクスルナットを解き、ナックルアームを外します。

あらあら、ドラシャのブーツが切れてるじゃんよ。
これは準備してなかったので、取り敢えずスルーだな。。
応急処置だけして後日交換ですね。
しかし何つーか・・・軽ってブーツ関係よく切れるなぁ。

外したナックルからハブを外して、新しいナックルに打ち直します。

10ミリ厚のホイールスペーサーを使うために、ロングボルトに打ち換えてあるのです。

改めてコレで流用部品が揃いましたね。
あとは取り付けしていくだけです。
ブレーキパッドも付属の中古品ですが、山もあるしサンダーでペーパー掛けして平滑にしてあります。

新規格キャリパー&ベンチ化完了。

ホースはストラットとの固定位置や固定方法が合わないので、ロングボルトでオフセットさせてボルトナットで固定しました。
これなら車検も大丈夫でしょう。

11っぽくない足回りになりましたねw
ベンチディスクに男らしさを感じます。
カッコいい!

ただ、着地してみると結構なトーアウトになりました。
ブレーキキャリパーの取り付け以外全く同じかと思ったらそうでもない。

タイロッドの調整をして、トーとステアリングセンターを合わせました。
特に切れ角が変わるといった事はなさそうです。

試走しながら調整していましたが、初めはブレーキの当たりが全然付いていないので大丈夫かなぁという位踏み代が深かったのですが、段々当たりが付いてきました。(当たりが悪いとノックバックみたいになっちゃう)
エアはしっかり抜いてあるのでパッドとディスクの当たりの問題だけです。
早めに当たりを付けようと、近所の人通りの少ない道をブンブン走り回って強めにブレーキを当てていると、かなりタッチが出てきましたが、それでもややストロークがある感じ。
これはマスターシリンダーの能力に対してキャリパーピストンの押し出し面積が大きくなる事への変化ですね。
キャリパーを大きくすると今までより沢山フルードを送り込まないといけないのでペダルストロークは増える傾向にあります。
ただ、今まではタッチそのものはカチっとしながらも、全く制動力が立ち上がらず、そこから思い切り踏み込んで奥の奥で漸く止める!といった感じだったので、マスターバックの能力不足感も否めなかったですが、今回のブレーキはややストロークは深いものの、軽いタッチで最大制動力に到達します。
ストロークの増加は感覚的には10%~15%位かなぁ。
タッチの変化は慣れで充分に対応できる範囲だと思いますが、もう少ししっかりパッドの当たりが付けばもっとカチっとするかな。
全然気にならないレベルになると思います。
破れたドラシャブーツは、自己融着テープで応急処置。
ブンブン走り回ったけどまだ切れてないなw
それでも不足ならスイフトのキャリパーステー&ディスクの流用かな。