
タイミングベルト劣化損傷によるバルブクラッシュと判明した11アルトワークス。
半年の不動状態からようやく脱出のプロセスが見えた。
ストックの部品なら沢山あるので、原因さえ判っちまえば幾らでも直せてしまうのである。
外したヘッドを見てみると、
思った程のクラッシュではなく、ギリギリピストンに届いちゃった位の曲がりであった。
当然ピストンも無傷。
作り直したヘッドを搭載すれば走るように出来る。
ヘッドもインテークバルブを交換すれば直りそうだったけど、ストックのヘッドがあるので、バルブ磨きとシール交換程度のリフレッシュをして乗せた方が間違いないな。

という訳で、メタルクリーンでカーボンやスラッジを綺麗にしたストックヘッド。
バルブもきれいに磨き直したので、新しいオイルシールを組んでバルブ周りを組みます。
バルブコンパウンドとタコ棒(ドリルチャックにセットできるパワー系自作治具)で一気に擦り合わせを済ませます。

ロッカーアームなどを間違えないように組みます。
軸の棒を一回左右逆に組んだことがあって急いで組み直した事があった。
間違えるとロッカーアームのジャーナル部のオイル穴が合わなくなるので、焼き付いちゃうかもしれない。
一日だけ運用してしまったが、焼き付いてはいなかったw
(よく後から気付いたな)

シングルカムはタペット調整が簡単でいい。
シクネスゲージがあればドライバーと12のボックスで調整出来ます。
IN 0.14ミリ EX 0.16ミリで揃えておきます。
F6Aが・・・しっかりタペット詰めてもパタパタ煩いのはご愛敬。
これでヘッドは完成。

あとはシリンダーブロック側のガスケット面をきれいに掃除して、ヘッドの装着に備えます。(実はこういう掃除関係が一番大変)
オイルストーンでゴリゴリやるんだけど、車載でやるとブロックの水穴やオイル穴にカスが落っこちちゃうんだよな。
なので、エンジン発電機とコンプレッサーを持ち込んで、
最後はエアーガンの負圧を利用して間口に近い所は吸い出すんだけど、多少は落っこちていくので、エンジンオイル交換を最後にやることで対処。

水漏れがしやすいインマニとの接合部もしっかりきれいにしておきます。

新品のヘッドガスケット。
左右にも裏表にも間違えられるので、注意。
#1#2間にある銅パッキン穴がバルクヘッド側に来てれば大丈夫。

ヘッドボルトを対角締めで決めて、インマニを取り付けます。

インマニガスケット、水穴周りだけ液ガスを塗付しておきました。
本来は要らない筈ですが、丁寧に組んでも水が漏れる事が多いので念の為。
狭いのでボルトナットを閉めるのが大変ですが、色んな工具を駆使してしっかり取付します。

タイミングベルト取り付け。
これまた見づらいですが、クランクスプロケの合いマークとカムスプロケの合いマークをしっかり合わせます。
カムが半周ごとにクランクが一周するので、カムスプロケにある圧縮上死点の印と、排気上死点の印、どちらで合わせても同じです。
6年で駄目になったタイミングベルト。
普通車のように10年10万キロ持つとは思っていませんが、でもまぁなかなか本当に駄目になるケースが珍しいので、びっくりしました。
オイルやクーラントの滲みなどの影響を受けて劣化しやすくなったりする事もありますが、今回はそのケースに当て嵌まりません。
割安な社外品を使ったから劣化が早いなんて事があるのかな?
(純正品ではないとは言ってもちゃんと三ツ星のヤツを使ってます)
大人しく乗られているクルマならここまで早くないのかも知れませんが、割と飛ばす奴に毎日ブンブン乗られている様なシビアコンディションであれば、4~5年5万キロ以内程度でベルト周りを新調するように心掛けた方が良いのかも。
(実際の推奨サイクルはどれ位なんでしょうね・・)

タイベルカバーを付けてクランクスプロケ付けて、レベルゲージのOリングは新調して・・・など、ひとつひとつを丁寧に確実に決めて行きます。
エキマニやタービン周りを組み付けして、新品の補機類ベルトを張り、ガス漏れしていたA/Cコンプレッサーとコンデンサー間のホースを交換。

この辺の配管継ぎ目のOリングは全部新調しました。
さて組み付けも終わったしエンジンオイルとエレメントを換えたら、いざ始動!
と思い、とっくに上がっているバッテリーに対してGC8からジャンプコード接続。
所が、バッテリーが死に過ぎていてセルが中々回らない。。。
死亡バッテリーの低電圧に引っ張られて、相対電圧が12.0V程度にしか上がって来ない。
バッテリーは交換しないと駄目そうだな・・・
だが、取り敢えず今掛けたいんだよ。
問題なく掛かる事を確認して、晴れやかな気分で残りの作業を完遂したい。
ジャンプコードでGC8と繋ぎっぱなしにしてもう30分放置。
アルトの電圧計が13.5V付近まで復活した事を確認し、セルクランキングON!
ブオオオォォォォォォ・・・ンンン!!!!!
半年振り位に無事エンジンが掛かりました。
エンジンさえ掛かっちゃえば、自家発電できるのでジャンプコードを外してクーラントを注いでエア抜きを済ませます。
しっかりエア抜きをしたらラジエターキャップを取り付けて水やオイルの漏洩が無いかチェック。

デスビを脱着してるので点火時期がめちゃくちゃ。
なので、先ずはタイミングライトで点火時期を調整します。
しっかり暖機を済ませ、アイドリングの回転数が安定した状態を作ることが大事。
エアコンなどもOFFにして、電動ファンなどが回っていない時を見計らって手早く作業。
バルクヘッドの助手席側にあるダイアグコネクターのC⇔Dを短絡させてECUの点火時期制御が入らないイニシャル状態にし、タイミングライトでクランクスプロケの切り欠きとタイベルカバーの目盛りを見合わせながら、デスビ固定ボルトの長穴
部分で回して調整します。
不経済にもハイオク仕様にしているので、点火時期は10度付近まで進めました。
この調整によりエンジンは軽やかに吹け上り、軽量フラホも相まって8千回転までビュンビュン回るようになりました。
昔のクルマは、ブースト圧やら点火時期位なら自分でセッティング出来たのがいいよね。
今は全部ECU任せ、何を弄るにしても全てロムを書き換えないと何も変えられない・・・そんな時代になりました。

さて、エンジンを掛け、水入れて、点火タイミングを決めたら、最後にエアコンのガスチャージを行います。
専用ポンプで真空引きを行い、低圧側のニップルからガスチャージを行っていきます。
冬場なので気化率が悪く、なかなかガスが入って行かないですが、それでも時間を掛けて二缶半程チャージ。
これでエアコンも冷えるようになったと思います。
さてさて、これで全部終了かとかと思いきや、燃料計の針が上がって来ない・・・
最初ガソリンがもう無いのかな??
・・と思ったが、いや待てよ・・・燃料ポンプを換えた時にかなりタンクが重かった事を思い出す。
あの感じだとまだ半分以上は入っていた筈。
これは配線の接触不良だな。
積み下ろしの際、燃料ポンプやゲージのハーネスが短くて無理してたからな・・
押し上げてボルトで固定する直前で抜けてしまったのかも知れない。
面倒ですが、もう一度燃料タンクを降ろして結線し直します。
陽が落ちると寒くなるからな・・・
明るいうちにやっちまわないと。

確認するとやっぱり燃料ゲージの一極端子が抜けかけてました。
短いんだよな・・・配線が。

なので、ゲージの配線だけ20センチ程延長し、平ギボシの端子も、抜けにくいものに新しくしときました。

エンジンを掛け、燃料ゲージの針が上がってくる事を確認してから
試運転がてらスタンドまで行って洗車機にぶち込みます。
半年放置分の汚れを落とし、タイヤにエアを入れたりして漸く実働車に戻った事を実感。
しっかり水温と油温を上げてから負荷運転をして、機関に問題が無いかなども確認。
まぁ、こんなとこだろ。
このアルトワークス(HA11S型)は、初年度登録が平成10年なので、実はウチのGC8と同級生です。
26年前のクルマですね。
パワーウインドウの上げ下げも苦しくなってきましたし、ボディー剛性もありません・・エアコンの効きも悪い、エンジンもパタパタカチカチ煩いですし、常に何か臭いますw
ですけどね・・何ですかね・・・
圧倒的に楽しいんですよね。
軽くてエンジンにパンチがあって、ビュンビュン走ります。
今回こそ原因の特定に時間が掛かりましたが、日頃から致命的な不具合が多いというような事は無く、殆どが直ぐに直るマイナーなトラブルで済んできましたし、古いからと言ってそれほど緊張しながら乗るような感じではありませんでしたね。
このオーナーもほぼ毎日通勤やお出かけに使い、16年乗って、乗って帰って来られないようなトラブルは1~2回程度でした。
古いし壊れて走らなくなったからと言って捨てるのは簡単ですが、面倒でもこうやって直せば、次の道が開ける。
今回の修理は、錯綜したせいで余計な所も色々とリフレッシュしてしまいましたが、次のオーナーも決まったので無駄ではなかった。
銭金の問題ではなく、やった事が報われたなという気持ちになります。
実際はヘッドのOHと、タイミングベルトの新調で直った筈ですが、イグニッションコイルやプラグコードなどの点火系を新調。
ついでにエアコンガス漏洩個所のホースを交換し、コンプレッサーとコンデンサー周りのOリング、補機類のVベルトも交換。
バッテリー新品。
燃料ポンプもヴィッツ1300用の物に交換したので、必要以上に調子よくなってます。
次の持ち主の所でも元気でな!
買ったのはポンさんだけどな!