
3日間程、山に篭っておりました。
長いネタなんで、お時間の少ない方は後回しにすることをお勧めします。
場所は群馬県吾妻郡六合村にある、野反湖(のぞりこ)という人造湖。
上信越高原国立公園内にあたる、国道の最果ての高原です。
高速から遠く、国道405号の終点にあたる辺境であり、冬季は完全閉鎖の豪雪地帯が故に、観光地化を免れた地域。
50年ほど前に利水のために作られたダム湖ですが、手付かずの自然が色濃く残っています。
リアルに熊との遭遇を警戒すべき地域であり、オコジョやニホンカモシカが頻繁に観察される素晴らしい環境。
約300種類の高山植物と、珍しい昆虫類。
こんなに心が躍るのは、随分久しぶりのことです。
早朝の2時に出発して朝靄のなか現地到着。
片道だけでも、祝日の高速1000円に引っかかる為です。

あいにくの曇り空の中、というより、雲の中、野反湖の玄関口富士見峠着。
真っ白の霞がまだ全貌を明かさない。
時折見せる水面に期待の溜め息が漏れる。
早めにベースキャンプを張って、今日はゆっくりしたい。
キャンプを拠点に、周辺の野山を散策することが目的なのだ。

キャンプサイト設営を済ませ、まったりモード。
左は相方のコーヘーで、20年来の幼馴染だ。
今回テントを買い替えまして、初めて実戦投入しましたモンベル社のムーンライトⅡ。
設営の早さと使い勝手、耐久性は折り紙つきで、デザインも秀逸。
向こう15年は使うことになると思いますw

早起きの反動で夕刻まで寝てしまっただ い 。
とりあえずご飯の準備の為に焚き火をおこしています。

飯を食ったら満足そうな顔をしてさっさと寝てしまった相方。
自分は、残りのワインをやりながらもう少し起きていたい気分。
昼寝坊して眠くないだけだったりして・・・

テントに降り注ぐ満点の星座たち。
ボーっと眺めているだけで、数分に一回は流星を捕捉できる。
何万光年も昔の天体の光を、こんなにちっぽけな僕が黙って見上げている。
それってどういうことなのだろうと、少し酔った頭で考えながら、
折りたたみチェアーで小一時間ほど眠ってしまった。
一日目の終わり。

深酒をした割に、朝は早くに目が覚めます。
ウグイスやヒバリが鳴きだすので、
睡眠時間が充分な辺りのレム睡眠時にイヤでも目が覚める。
でも頭はスッキリ、全く酒が残ってないのが不思議。
高原ではよくあることなのだけど、酔いにくいし、すぐ抜けてしまう。
何故なのだろう?

朝食はパンとコーヒーとベーコンエッグ。
外で作ると何でも旨そうに見えるのも、不思議。

今日は、到着時濃霧で出迎えてくれた富士見峠へクルマで戻ってみることに。
相方の愛機ヴィッツRSは、高い運動性能と燃費を両立した
素晴らしいコンパクトカー。

オジサン、いい写真は撮れましたか?

富士見峠から野反湖を見下ろす丘を金色に染めるのは、季節の花ニッコウキスゲ。
この場所ではノゾリキスゲと呼ばれているのですが、固有種ではなさそう。
日光はニッコウ、野反はノゾリだと主張したいのでしょうね。
確かに、群落の規模と美しさでは日光に負けてない。
ニッコウなのにノゾリか~なんて呼び名の謎に思いを馳せていると、
周囲の登山客らからざわめきが起こる。
みんな空を見上げているのだ。
「あっ、コーヘー!今何時だ???」
「11時回ったところだけど・・・」
そうだ、今日は部分日食の日ぢゃないか!
もしかしたらと思った。
あっ!本当に欠けてる!!
全く期待していなかった為に、すっかり忘れていたので、
何とも棚からボタモチな気分。
偏光フィルターも無ければ、専用メガネも持ってない。
晴れでも雨でも見られない算段だったのが、絶妙な花曇りが僕たちに日食という天体ショーをプレゼントしてくれた。
ラッキーなオマケが付いた。
しかし、今日はこの後も幸運が続く。
本日のメインは湖畔の周辺散策。
登山道に近い周遊歩道があり、結構な距離を歩く。

周遊道の外れに突如現れる弁天様。
祠に祀られていたのは、なんともつややかな天女様でありました。
「こりゃ、どうも・・・今回の旅を温かく見守って下すってありがとうごぜえます
・・・いろいろオマケまでつけて頂いて・・・。」
などと頭を下げると
「別にアタシじゃないわよ。」
なんて言われたような気がしましたw
しかし、この後の散策でまた思わぬ幸運が。

ギョリンソウという珍しい高山植物を発見しました。
魚鱗草・銀竜草と書くこの花は、葉緑素を持たない真っ白で不思議な植物で、
菌類の菌糸から栄養分を奪って生きています。
なので、ジメジメと薄暗くキノコが生えるような環境でしか育ちません。
数日で枯れ、溶けて跡形も無く消えてしまうことから
幽霊草などとも呼ばれるそうです。
初めての発見にテンションが上がってしまい、撮影しながらヤブ蚊にたかられまくってしまった・・・
イヤァッ(ノ≧∇≦。)ノ))

充実した二日目の太陽も沈む。
二日目は日本酒を投入。
キャンプには相応しくない大吟醸酒を持ち込んで、こんな風になりましたwww

飛んで火に入るミヤマクワガタ。
やや小ぶりだけど立派な男の子ですな。
クワガタとしては珍しい昼光性の昆虫なんですが、
夜灯りには飛んでくるんだね。
カッコイイ~

雨が降ると大型のヤマアカガエルが出てきた。
立派な個体だなぁ。
「あのっ、これからドチラへ行かれるんで?」
と、挨拶も半ばに、、
素晴らしい跳躍力で一瞬で視界から消えてしまった。

3日目の朝。
久々の青空が清々しいので、水際を歩き回ってみる。

妹に仕掛けを作ってあげているお兄ちゃん。
うむ、いいオトコになりそうだね。

この高原での生活もこれで最後。
帰るのが惜しいなぁ。
また必ず来ようと誓ったキャンプサイトは、ここが初めて。
イワナ釣りでも楽しみながら、紅葉キャンプなんか楽しいかも知れないね。
僕たちはこんな風に、憧れの自然環境のなかで野営をするという、
至高の遊びを20年近く続けてきています。
登山をまじえたり、海や川遊びをまじえたり、形は様々だけど、
これ以上の命の洗濯は無いかなと思う。
中学生位の頃から全く変わらないライフワークなのです。
これまでの20年間、このストイシズムに溢れる趣味に違和感無く随伴できたのは、
相方のコーヘーだけだ。
たまにもう一人二人いても楽しいのではないかと考える事もあるけれど、
恐らく、他の香具師では難しいでしょうね。
装備・準備の問題、
食事の問題、
便所の問題、
風呂の問題、
虫の問題、
山での常識の問題、
何もない荒野で、これらを独りでも解決できる能力が問われるし、
こういう事を意にも介さず、愉しめるかどうかが全て。
客観的に考えても何故こんな事が楽しいのかワカラナイ。
アウトドアとは何なのか、考えてもよく判らない。
でも、間違いなく好きな事に一生懸命で、
楽しいと感じている。
生きてるって感じがする。
人生の全てがこうあるべきだと、我儘を言ってみる。
長くにお付き合いくださってどうもありがとう。
充電完了だ!