
GC8が走行中にエンストし、走行不能になった。
整備手帳でも上げたが、その一部始終をブログにも纏めておこうと思う。
土曜日の夕方、長男が習っているバスケの練習会があるのでクルマで送ってきたのだが、その帰り道にGC8はエンストし、始動できなくなった。
午後七時前、雨の降りしきる暗い夜道であった。
旧いクルマに乗っている人間が常に気にして恐れている事がある。
こういう出先での突如の不動トラブルである。
やはりいつも気にしているのだ、走行中に急にエンジンが止まってしまうかも知れない、急に電源を喪失して何も出来なくなってしまうかも知れない。
いつでもキーを捻れば好きな所へ走っていく事が出来、照る日も雨の日も快適に目的地へ連れて行ってくれる愛車が、突然ただのお荷物になる。
万が一直らなければ只の鉄くずになってしまうのである。
そんな不安を払拭すべく日々状態を把握し、人一倍のメンテナンスを、予防整備を心がけてきた積りである。
だからこそ定期的に燃料ポンプや各種センサー等を交換し、状態によってはエンジンをオーバーホールしたり、常識の範囲で出来る事はしてきている。
10年目、15年目くらいはそれでいい。
しかし、20年、25年目となるとそれだけでは駄目だ。
定期的に駄目になる消耗品の交換だけではどうにもならない予想も出来ないトラブルが顔をのぞかせ始める。
トラブルシュートの難易度が一気に上がってくるのである。
ヲレのGC8は1998年生まれのE型である。
初年度からもう26年目となるので殆どクラシックカーの領域である。
だが、出先で動けなくなるようなトラブルはクラッチレリーズベアリング破損という非常識な機械的トラブルの時のみで、これはもう事故みたいなもんだけど、原因不明の立ち往生というのはこれまで一度も無かった。
多少のエンジン不調という事はあっても、原因不明でエンジンが掛からない!走れない!という状況はヲレの21年の所有の中ではまだ経験していない。
経験したくないからこそ、相当先回りをしてメンテナンスをしてきた訳で、遂にその準備と心掛けを追い抜かれてしまった訳である。
走行中突然エンジンが失火したのが判った。
アクセルを踏んでも加速をしていかない瞬間に、もうそのまま走行が出来ないという事が判る。
ギヤを繋いだままだとどんどん減速してしまうので、クラッチを切って冷静にニュートラルに入れるが無情にもエンジンは停止し、メーター上の各種チェックランプが点灯する。
幸いクルマ通りの殆どない裏山の路地裏で、惰性の空走のままたまたま空き地に逃げ込むことが出来た。
エンジンが停止した車内では時代遅れながら、iPodとの接続で慣らしているカーオーディオがCHAGE&ASKAの名曲を鳴らしている。
ふん、こんな事は初めてだが、今のクルマ(まだ最近のクルマだと思っている)を舐めるなよ?ECU制御の自動車というものは、何がダメでもちゃんとログが残って読み出せるのだ。
そんな風に強がって、
最近新設したダイアグ(自己診断装置)スイッチをONにして何が原因でエンストしたのか読み出す事にした。
メーター上のエンジンチェックランプが等間隔で明滅している。
という事は正常・・・つまりエラーコードが残っていないのである。
・・・どういう事だ???
エンジンの始動不良に関わる部品で、ダイアグノシスで読み出せないのはフューエルポンプくらいだという事は認識している。
あとはベルトのコマ飛びなどのタイミングずれなどの機械的なトラブルである。
エンジンの始動を試みると、一度はエンジンが掛かるが数秒でエンスト。
数回繰り返すと、始動もしなくなってしまった。
一見ガス欠のような症状である。
燃料はメーターで1/4程度、まだまだガス欠するような量ではない。
フューエルポンプだろうか・・・しかし昨年GDBのポンプ新品を奢ったばかりである。
キーオンでの数秒間の燃圧の充実音は問題なく聞こえている。
やはりポンプの不動は考えにくい。
エアフロメーターやクランク角センサーでも同様の始動不良が起きる。
この辺をストック品に替えてみて、点火系なのか燃料系なのかを確認する所からがスタートだろうと、真っ暗な車内でぼんやり考えている。
10分程度落ち着いてあれこれ思案してから再度クランキングを試みると、あっけなくエンジンは始動。
何となく、あと僅かな距離の家までは帰れるような気がしたので、一か八か走り出してみると、無事自分の駐車場までは帰ってくることが出来た。
そのままアイドリングで様子を見ていると、程なくしてエンスト。
何度クランキングしても、もうその日は始動することが出来なかった。
最後のチカラを振り絞って家までは帰してくれたのかよイプ太郎。。
しかしエンジンさえ掛かれば、回転などに澱みは無くきれいに吹け上がる所を見ると、タイベルのトラブルなどでもなさそうである。
再びダイアグを確認するものの、やはりエラーコードは示さず。
正常そのものだとECUは宣っている。
かなり深刻な事態に直面したのだな、とはっきり判った。
そもそもバスケに送った長男は、妻が迎えに行く予定だったので、GCが動かなくても大丈夫なのだが、直ちにトラブルシュートを開始したいという衝動に駆られていた。
既に頭の中に数多く並んでいるタスクをひとつでも減らしておきたい。

そこで、やや雨が小康状態になった夜半。
始動不良やエンジン不調のデパートであるエアフロメーターを取り敢えず交換してみた・・・が、特に変わらず。
エンジンは沈黙したままである。
こうなると各種センサー類を疑っていく事になるが、完全に始動不良に陥るセンサーは限られている。
カム・クランク角センサーとISCVくらいだろうか。
O2やノックセンサーなどの不良は、吹け上りの悪さや失火の原因にはなるが、エンジン自体は問題なく始動できる。
ISCVもアクセルを開けてクランキングすれば始動くらいはする。
翌朝から細かい所を見ていくしかないな・・・。

幸い雨はすっかり上がり、眩い日差しの中での点検となった。
本当はこの日は、同じような始動不良で止まってしまっているアルトワークスの点検に行く予定だったんですが、それどころではなくなってしまったな・・・。
まずはGC8を直さねばならない。

初めに点火のチェック。
最も判りやすいのは、プラグコードを一本引っこ抜いて適当なスパークプラグを取り付けし、エンジンに直接アースさせるやり方。
#1、#3なら手が届くので、クランキングしながら指先でビリビリを感じることが出来る。
クランキングすると、その時はたまたまエンジンが始動。
「痛てててて!」手に持った指先から反対側の手の指先までビリビリと電気が走る。
だが、程なくして点火は弱まり、エンジンは停止してしまった。
始動時の点火は行われているようだが、何らかの理由で点火が途切れてエンジンは止まってしまう。
うーむ・・・。
始動はするのだから燃料は来ている、点火もしている。
だが途中でエンストしてしまう。
このアナログチェックでは点火が先なのか燃料が先なのかを判定する事が出来なかった。
ECUの制御があるので、燃料が途絶すれば火も飛ばなくなるし、火が飛ばなければ、インジェクターは停止するようになっている。
無駄な点検だったな。

点火信号が不安定なら、同様の症状は出る可能性がある。
クランク角センサーとカム角センサーをストック品に取り替えてみる。
日本車だとあまりこれらが壊れたというのは聞いた事が無いのだが、症状だけ見ると筆頭に上がる部品である。
ワーゲンとかアウディとかの欧州車はしょっちゅう壊れて不動車になってしまっている。
しかし、やはりと言うか、どちらを換えてもエンジンは掛からず。
この辺が違うとなると、もう結構お手上げに近づいている。

エンジンアースが不良だとプラグに火が飛ばなかったりする。
まぁ、その理屈だとセルモーターも回らなかったりするのだけど、セルは回るが火までは飛ばない、みたいな面倒でグレーな事例もあるらしいので、一応ジャンプコードでバッテリーマイナスとシリンダーブロックを直接接続してみる。
が・・・特に変わらず。
バッテリーのマイナスを外してECUリセットを実行し、ついでに基板の目視チェックをしておくか。

明らかに駄目なECUは目視で判るほどの異常がある事が多い。
ECU自体がダメでもダイアグで確認することが出来ないし、電気系トラブルを消去法で潰して行った際の最後の砦となるECUだが、実際にECUが駄目という事例は実は少ない。
駄目なECUは基板上に焼けがあったり、電解コンデンサーが破裂して液漏れしていたり、ああ、やっぱりなという状態になっている場合が多いのだ。

弁当箱を開けてまじまじと確認してみるものの、綺麗なものである。
直感的にコイツではなさそうだなと思う。
うーむ・・・スイッチングを行っているICの内部までは判らないが、もしそうだとしたら取り替えてみないと判らないので、本日のこれ以上のECUの追求は無駄である。
他の可能性をもう少し追求してみなければ。
こういった点検には直感的なひらめきが大きなカギになってくる事が多いが、それらは隈なく点検して消去法で余計な分母を減らしていった先での事である。
「あとはココとココしかない。」
みたいな所まで追い込んでようやく、症状に見え隠れする特有の要因をどちらかに当て嵌めるのである。
ざっくりだが、ECUまで見てみた。
眼で見て判るような整備不良は今のところ見当たらない。
センサー類やエンジンに近い補機類は恐らく正常。
相変わらずダイアグには何も検出されない。
迷ったときは、基本に立ち還るという大原則を思い出す。
「機械は嘘をつかない」
結局これが全てなのである。
ダイアグで出ないのだから、エアフロやクランク角センサーではないのである。
まず、初見でどう思ったか。
「ガス欠っぽいな」と思った事を思い出す。
ダイアグで検出されないのはフューエルポンプなのである。
やはり一度見ておこう。
最近交換済みである事と、駆動音が聞こえるという時点で候補から除外してしまっていたが、状況証拠から検証すると燃料系しか考えられないのだ。
リヤシートを取ったりと確認が面倒くさい事もあるが、もうこの辺しか考えられない。
インジェクション車用の燃圧計を準備しておけば良かった。
フューエルポンプのON/OFF確認だけなら要らないが、ポンプは回るが燃圧が足りないなどのトラブルも考えられる。
そうなれば、フィルターの詰まりや燃圧レギュレター不良などの確認と、次の点検項目が見えてくるのである。

先ずは問題無さそうではあるが、大元から。
フューエルポンプリレーのチェック。
運転席足元から覗き込んで右上にあるグリーンのカプラーのリレーである。
手で触ってイグニッッションをON/OFFするとカチカチと作動音と振動が伝わってくる。
それに伴ってジーというポンプの作動音が後ろから聞こえてくる。
リレーは問題ない。

あとはそのままフューエルポンプまで問題なく電気が行ってるかどうかである。
リヤシートを取って、ポンプ直上のボディー側の蓋を開ける。
単純にこの状態でポンプの音を聞いてみる。
イグニッションオンでジーと言うか、ギューと言うか、ポンプの音と言うより燃料を高圧でホースに流す音が聞こえているという感じ。
ポンプそのものの音は、モスキート音に近いようなヒーンという高音域のか細い音で結構判りにくい。
イグニッッションオンで確認できるのは数秒で、一定の圧力が掛かると、一旦ポンプは止まってしまう仕組みのようである。
ここからセルモーターを回すと再びポンプへの出力が再開し、ポンプは回り続ける。
少し時間を置き、フューエルポンプのカプラーを外してキーオンにすると、「12.3V」動力ラインの出力が確認できた。
14V以上あるバッテリー電圧から比較すると少し低い値ではあるが、バッテリーからの距離を考えると仕方が無いのかも知れない。
少し乱暴だが、そのままポンプへカプラーを取り付けると、ギューンと配管に燃圧が充実する音が響き、数秒で音が停止した。
この状態でカプラーの電圧を測るともう出力は途切れている。
ここまでは正常だという事は判っている。
ポンプ直前のカプラーまでの電気が正常に来ている事が判った。

という事は、あとはポンプ本体しかないのか?
本体を取り出して、単体で動作チェックをしなければならないが・・・
カプラーを接続して今一度キーを捻ってみる。
「キュルル・・ブォン!!!」
暫く掛かる気配が無かったエンジンが、何事もなかったかのように始動した。
でも、たまたまかも知れない。
直ぐにまたエンストしてまた振出しに戻ってしまうのではないか。
でも、何となくそうではないような気がした。
カプラーの接触不良も視野に入れていたからだ。

見る限りでは、端子部の焼けや周辺が溶けたりというような事は無かったのだが、単なるカプラーの抜き差しで解消してしまう程度の接触不良が起きていたという事なのだろうか。
一度エンジンを止め、カプラの端子部をパーツクリーナーでしっかり洗浄したのち、クレ2-26(接点復活スプレー)を塗付。
これで再びキーを捻って再始動。
そのまま20分程アイドリングで放置してみたが、止まったりぐずついたりという事は一切なく、何事も無かったような運転状況となった。
試運転で路上へ出て、ブーストを掛けてしっかり加速したり、高G状態を作ってみたりしたが、何の不具合も見せる事は無く。
すっかり以前の元のGC8に戻ったという感じがする。
あれだけ始動が叶わず、立ち往生でどうにもならない状態だったのに、カプラの洗浄だけで直ってしまったようである。
まぁ、本当にこれでちゃんちゃんかどうかは怪しいので、リレーからポンプまでのハーネスの損傷の点検と極端な電圧降下がないかどうかは調べる必要があると思っている。
調べてみると、やはり貧弱な純正ハーネスを経由しての電圧降下を問題視するケースが多いらしく、バッ直リレーを用いたポンプ用の強化ハーネスというものが売られているくらいである。

原因が判って見れば、何だそんな事だったのかと簡単に考えてしまいそうになるが、場合によっては泥沼で何か月も不動になっていた可能性もある。
原因が判らなければ廃車になっていても全然おかしくない深刻な事案である。
先行投稿した整備手帳を見たクネから直ぐに入電があり、「自分のクルマだったらと戦慄した」と吐露していた。
「よく一日で原因が判ったね」と感心までされてしまった。
雪山などで遠征中に止まってしまえば、それだけでも恐ろしい事だが・・例えばそのまま長野スバルまでレッカーしてそのまま預けて、賢明なメカニックに当たればいいが、実際は3ヶ月も4か月も預けて、あれも換えてこれも換えてで30万円くらい掛かって、結局直りませんでしたも全然ありうる話だと思う。
・・・と、そう考えたらぞっとするという話をしていた。
まぁ、そう言う事もあると思う。
うちの近所の知り合いのおじさんが長いこと乗っていたワーゲンのパサートも最近廃車にしたらしく、やはりエンジンが掛からなくなってワーゲンの正規ディーラーで原因を追究してもらって色々やってもらったんだけど、結局直らなかったのに26万円だけ請求されて廃車にしたという話を聞いた。
ひとつづつ原因を潰していかないと判らないというのは判るけど、結果的にどれだけ掛かるかという金額や期間を提示していって、それでも直らない可能性があるけど、その上で修理を続けますか?という引き際の提案を段階的にしてあげるべきだとヲレは思うんだけど・・・
そういう事も無く、まだ判りませんまだ判りませんで3ヶ月くらい預けて、結局直りませんでしたけど、やった事の分だけは請求します。
という話だったようで、可哀想だなと思った。
でも・・殆どの車屋はそんなもんだと言う事をヲレは知っている。
昔は売る側、直す側に居た訳だから言える事だが、原因不明の不具合を直してくれと持ってこられたら、見ない訳にはいかないしとにかくやれることはやる。
それだって勿論タダでは出来ない訳で、
ただまぁ、古くて市場価値が無いようなクルマに何十万円も掛けて直すというのは無理があるので、大きく掛かりそうなら相談は持ちかけるべきだけどね。
15万円で買えるクルマに30万円掛けて直しますか?
ってね。
うちの子は幸い直ぐに原因が判ったけど、たまたまだったなという思いもあり未だに不動のままであった可能性も充分にあった。
ダイアグや予防整備に胡坐をかいているだけではトラブルを完封出来ない年代になって来ている。
もっと深い領域にまで意識を潜行させ、内側からのひらめきがもっとスムースになるようにしないと解決できない事案が増えていきそうである。
電気の流れなどは特に図面が無いと判りにくいので、整備解説書や電気配線図などは、やはりこの先持っていないと駄目だなと思うような事件でした。
(まだ持ってないのかよ)
みんなのマシンでこれまでにどうしても原因の判らない故障、これはマイッタというトラブルは何かありますか?
さて、まだ直ってないクルマもある・・