先日、忙しさの合間を縫って、三度登山へ。
去年位からキャンプに誘って欲しいだとか、登山に行ってみたいだとか、お誘いがある息子のお友達家族。
夫婦ともに日体大卒のアスリート家族である。
上が8歳、下が6歳が全く同じの保育園友達です。
こちらもそれ程頻繁にやる方ではないんだけれども、誘われるのでいい機会だからと行くようになった。
奥さん同士が仲がいいんだよね。
気を遣わないというか・・・ママ友って感じではなく、普通の友達って感じみたいで、いい時はいい、ダメなときはダメって気兼ねなく言えるのがいいみたい。
ヲレはこんななんで、向こうが誰でも問題ないんだけどw
アッチの旦那さんもいつも楽しそうだから、いい関係なのかも知れない。
前回の登山もショートだけど結構上級向けコースだったと思う。
それでももっと欲しがってる感じなんで、久々にちょっとロングのガツンとしたコースに行ってみようと思い、丹沢の玄関口大倉からアクセスする「鍋割山」へ。
丹沢は大昔、塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳と宿泊で縦走しますし、近年でもレーサーやクネとヤビツから丹沢山まで行った記憶がありますが、鍋割山嶺は初めてです。
只の鍋割山ピストンなら4~5時間と言った所ですが、状況見ながらお隣の塔ノ岳を目指すルートを検討してのスタート。
経験も体力もない只の素人のウチの妻が心配ですw
朝8時に大倉バス停周辺の駐車場で待ち合わせ。
身支度を済ませて直ぐに出発です。
畑のある民家の脇から小径に入ると、鍋割山へ続く林道となります。
今年で8歳になった「そう」。
ひょうきんな性格なのか、冗談ばかり言って人を笑わせようとします。
だからなのか、何処に行ってもみんなに好かれている印象。
お友達家族の長男「たけちゃん」も、「そうくんたちと一緒じゃなきゃ絶対に山登りなんて行かない」と言っているらしく、逆にうちらと一緒じゃないと登山そのものが出来ない状況らしい。
保育園時代からそうだった。
勉強が特別できるとか、運動神経が突出しているとか、そういう物は一切ない。
いたって普通の少年なのだが、まわりに人が集まってくる。
友達からも先生たちからも、何故かみんなから愛されている。
そういう能力なんだろう。
れんと同い年のしおりちゃんというのがかなりヤバイ。
体力や運動能力は、この中でもずば抜けているのがこの子だと思う。
お兄ちゃんのたけちゃんも運動神経は素晴らしいが、大人しい性格で、人見知りだったり怖がりだったり普通の子供っぽさがあるのだが、しおりちゃんには弱点がうかがえない。
沢山の沢が登山道を横切っており、飛び越えられる程度のものもあれば、丸太の橋がかかったものもある。
子供たちは、飛び跳ねるようにそれを越えていく。
普段はシャイだというたけちゃんと、ウチのれんも、そうを中心に道中ずっと笑顔でふざけ合っている。
「一番仲のいい友達は誰なの?」と質問すると「そう君」と答える弟のれん。
保育園での事を聞きたかったのだが・・・まぁ、それでもいいかと思った。
彼にとってはそれが事実なのだ。
お兄ちゃんが大好きなのである。
ボランティアの水運びをするというたけちゃん。
よせばいいのに・・などと思ってしまう大人が無粋なだけで、
子供とは基本的に正しい事に真っすぐな、真面目な生き物なのである。
等高線の狭まったキツイ急登攀が続きます。
妻も、所々で足が止まります。
標高を稼いでいく毎に、麓ではまだそれ程でもなかった紅葉の色付きが美しくなってきました。
朱く染まった登山道を、まるで重力など感じていないかのように、トントンと登っていくれん。
山登りなど子供にとっては訳ないのだなと痛感させられる。
初めは、こんな小さな子が大丈夫だろうかとか、途中でおんぶでもする羽目になるのでは?とか心配していたが、全て杞憂であった。
大人の方が余程リタイヤしそうである。
山頂直前の鬼の急階段をクリアした頃には流石にこの表情。
お母さんを待ちながらなので、先頭組(友人夫婦+そう)からやや遅れたものの、無事「鍋割山」山頂へ到着。
みんなこの山荘で提供している鍋焼きうどん(1500円)を目的に登ってきているらしく、登山客は殆ど例外なく外でうどんを啜っていました。
お山価格なのは判るが、1500円は高いねぇ。
僕たちは自分で昼飯を準備してきているので、頼みませんw
ここまできて食べないのかよwww みたいな。
山頂での協議の結果、折角ここまで来たのだから塔ノ岳の山頂を踏んでいこうという事になり、ピストンルートを取らずに奥の尾根を進むことになりました。
既に昼を回っていたのでぶっちゃけ時間的には厳しい。
塔ノ岳がお隣とは言っても、1時間半は掛かりますし、そこから大倉まで降りていくルートも、3~4時間の道程。
明るいうちには降りられない予感がしましたが、一応ヘッドライトなども準備してきましたので、何とかなるでしょう。。
ブナの原生林を駆け下っていくしおりちゃん。
神奈川のバックスクリーンとも言える丹沢山地。
都心からも最も近い人気の登山エリアである。
だが近郊と侮るなかれ、その山容は実に険しく奥深い。
ツキノワグマやニホンカモシカなども生息しており、手つかずの自然が色濃く残る国定公園である。
この大自然に憧れ、中学一年生の頃に友人と東西に縦走したことが私の登山の始まりである。
ヤビツ峠から入って最高峰蛭ヶ岳に至るまで2泊も掛かった。
当時は子供だったので国定公園内で野営が出来ないという事を、山小屋の人に聞くまでは知らなくて、小屋の裏手に秘密でテントを張らせてもらったというエピソードがある。
そんな青春の思い出の地に、妻や子供たちと訪れる日が来るとはね。
一番山に訪れたい時期なのに、秋ごろっていつも忙しい事が多いから、なかなかこれまで登山出来ないでここまできた。
お友達家族の誘いがなければ、結局日々のつまらない煩雑さに紛れて終わってしまう筈だったこの季節。
別に連休でもない只の日曜日に、普通に「行こうよ」と誘われたことが寝耳に水だったのである。
きっと子供たちにとっても一生モノの大切な時間になる。
少しくらいの予定は動かしてでも、「行こう」そう思えた。
ぶー垂れている割にはフィジカルに問題がある訳ではなく、その都度おやつを提供するだけで復活する単純なれん。
足元の丸太の陰に「きれいな花があるよ」と教えてくれた。
よくみるとあちこちに竜胆(リンドウ)が咲いていました。
ふと見上げると、冷たく透き通った風が紅や黄色の梢を吹き抜けていく。
今この瞬間、ここに居るというだけの事が、言葉に出来ない程素晴らしい事だなと、こころで感じている。
丹沢は新緑が美しいが、落葉のこの時期も本当に美しい。
こういう事を理屈抜きで共有できる相手とでないと、一緒に登山というのは出来ないだろう。
このママ友夫婦も、こういう事が心の底から好きなんだなと感じる。
鍋割山から塔ノ岳までの尾根は、見晴らしがよくてとても気分がいい。
南側を見下ろせば、秦野平野と相模湾を一望し、北側を覗き込むと蛭ヶ岳や檜洞丸が座する奥丹沢が待ち構えている。
お隣とは言ったものの結構歩きました。
しっかり一時間半掛かってしまった。
360度視界が開けると、海抜1491メートル塔ノ岳山頂です。
鍋割山からは見えなかった富士山がしっかり見えています。
雲海の上に聳える霊峰富士。
最後にこれが見られただけでもここまで来た甲斐があったというものだ。
塔ノ岳は丹沢で恐らく最も人気のある山ではないだろうか。
大山方面からの縦走も出来るし、今回のように鍋割山、雨山からの目的地となる事も多い。
奥深い丹沢の中で、日帰りで行ってこようと計画するとだいたい塔ノ岳が限界だからともいえる。
完全に360度のパノラマ眺望があるのもこの塔ノ岳だけである。
ここから更に奥の丹沢、百名山丹沢山を経て最高峰蛭ヶ岳や、檜洞丸などへ至る起点ともなっている。
塔ノ岳登頂の感動もそこそこに、一同はさっと下山の途に就きます。
ここから大倉方面までは降りていくだけでもまだ3時間弱は掛かりますので、15時過ぎにここに居るという時点で、下山中の日没が避けられない事が確定。
17時頃には、西日は箱根の山々に没してしまうので、山林の中は漆黒の闇となります。
登山が好きな人が「そろそろ飽きてきましたね」って聞いたことがないので、こういう一生やりそうな趣味を一緒に出来る家族ってなかなか貴重である。
ガチ登山だけは、なかなか付き合いだけでは付き合い切れないだろう。
陽も傾いてきた。
光量は充分で陰影が深くなる時間帯、写真家としてはいい時間である。
次男「れん」が5歳と11か月での塔ノ岳登頂。
同時刻に降り始めた登山女子たちも、「あんなに小さい子が・・・。」という顔で見ている。
れん本人たちにとっては何のこともないと言った感じであったが、大人の感覚からすると、なかなか立派な事だなと思った。
私でさえ、初めてここに立ったのは中学校一年生の夏だ。
やっとの思いで登ったという記憶がある。
れんだけではない、8歳のそうとたけちゃん。
競い合うように凄まじい速力で駆け下っていく。
とてもついてはいけない。
子供が凄いのではなくて、大人がだらしがないのだなと思った。
前回の棒ノ折山の時には何度も下りで転んでいたれんとそうだけど、今回は転ばなかった。
転ばずに安全に降りていく身体の使い方を学んだのである。
杉林の中を抜ける木道を降り切ると、突然広がる黄金色の世界。
真っ赤に燃える夕陽が紅や黄色の広葉樹林に降り注ぎ、
ため息が出るようなワンシーンとなっていた。
今にも箱根の外輪山に沈まんとする刹那の残光が、この世でも最も美しいのではないかと錯覚するような、山岳の美術を創り上げている。
この時間にここに居なければ、
見る事の出来ない絶景がそこにはあった。
後ろから、しおりちゃんと降りてきていたたけちゃんのお父さんが、
足を止めて見上げているのが見える。
これには誰もが感動してしまうのではないだろうか。
この眩いような陽光の芸術は、ほんの10分程度であったのと思う。
程なくして周囲には帳が降り始め、宵闇の登山道となった。
昏くなるのが思ったよりも早い。
準備しておいたLEDのヘッドランプを使う。
地図で位置確認をしてみるが、現在地が正しければまだ40分以上は歩く筈である。
自分は先頭集団となっている子供3人に付いて歩いているので、彼らの足元を照らしながら歩いていく。
全員で固まって降りていないので、後ろのお父さんや、やや遅れてきている奥様同士のグループが心配でしたが、どうやらスマホのランプで照らしながら降りてきている模様。
よくよく見上げてみると、私たち以外の下山者もみんな、
ヘッドランプや懐中電灯などではなく、スマホのランプを片手に歩いているようだ。
時代だな・・・。
ちゃんと準備してきてるのヲレだけかよ・・・みたいな。
漆黒の林道を下り切り、18時過ぎにようやく麓の民家の脇に出ました。
朝8時からスタートして、休憩込みで10時間超の周回路でした。
かなりキツイしかも長いコースでしたが、みんなよく頑張ったな。
ハッキリ言って上級者コースです。
子供たちに関しては、体力的な心配は最早していなかったけれど、途中で飽きたりして駄々を捏ねるような事になれば面倒と思っていましたが、そんな心配もいりませんでしたね。
友達同士で最後まで楽しそうに登山を終えました。
何の問題もないな、もっと上級者コースでも大丈夫そう。
ていうか、大人の方が大丈夫かなって感じ。
でも、ウチの妻も最後まで、それほど遅れる訳でもなくちゃんと付いてきた。
舐めてたけど結構出来るんだな。
登山も、行く度に今回はラクだったとか、キツかったけど楽しかったとか、あまり文句のような事は聞いたことがないし、自覚がないだけで意外とこういう事が好きなのかも知れない。
それよりなにより、家族同士で登山やキャンプが出来るというかけがえのない仲間が出来たことが何よりもうれしい事なのかも知れない。
尊いです。
殆ど筋肉痛にならないヲレもなかなか素晴らしいw