2012年も、あと半日を切りました。
皆様、どんな一年でしたでしょうか?
当方も、色々な中古車を見て乗ってきました。
その中で思ったのは、出来るだけシンプルな構造をした小型FR車にこそ、究極のクルマを操る楽しさがある、ということです。
その思いが、86・BRZが華やかにデビューした後になって、色褪せるどころか、より明確に確信するようになったのは、予想以上でした。
という訳で、1年間乗ってきた中古車の中からベスト5を、プレイバック試乗記として紹介したいと思います。
【第1位】 ’69 日産 サニー 4ドアセダン 1000デラックス 3速コラムMT (45) 13.24(645kg/48.7馬力) 1・13
旧車だから日産だから日本車だからという話は抜きにして、人馬一体となって走らせるクルマとして、小型FRセダンは理想の形である、ということです。
その中でも今回初代サニーを取り上げるのですが、60年代の日本車ともなると、パーツ供給面で数々のハードルがあるものです。
それでもOHVのA型を搭載するサニーの場合、旧車としても走り屋に人気の110系を中心に取り扱った専門店の存在で、パーツ流用でエンジン機関の部品が間に合う、という部分では、比較的維持しやすい旧車である、と言えます。例えば、ラジエーターホースはサニトラ用のシリコン製をベースに長さを合わせて流用したり、ブレーキマスターを新しいツインタイプに変えたり、燃料フィルターは汎用を使ったり…。
確かに、今のクルマと比べるとエアコン・パワステがないのは当然として、ブレーキにサーボが存在しないため、現代車以上に強い踏力でブレーキを踏み必要があること、衝突安全性は皆無に等しく、シートベルトも前席に2点式があるだけで後席には存在しないこと、など安全運転にはより神経を注ぐ必要があるのは、どの旧車に乗っても同じことです。
その中で、ボディの腐りが比較的少なくて、エンジン機関の整備が行き届いた今回の物件だと、クラッチミートしてコラムシフトを操作してシフトチェンジする一連の操作は然程難しいことではなく、今時のイージードライビングに慣れて鈍った運転感覚を取り戻す、又は基本的な運転操作を学ぶというところで、非常に優れた1台である、と確信したくらいです。
パッケージングの話を少しすれば、日本人成人の平均身長が半世紀前に比べると大幅に高くなっていることから、この初代サニーの室内は相当狭い印象ではありましたが、後の70年代でアメ車的スタイリング重視傾向で実用性を落とす道を歩むことを思うと、相当端正なセダンであった、と言えます。
実際に路上に出て試乗してみても、脚が硬いとか柔らかいとかいった違和感がなく、タイヤのたわみの情報もきっちり伝わってきて、クルマの挙動を味わうという意味では、大型車ほど大げさでない分、存分に楽しめる1台であると思いました。
後の110・210・310そしてサニートラックも、基本的な作りは共通ながら、時代に合わせて大型化高級化したに過ぎない、とも思ったのです。
となると、より大型で高級なブルーバードやセドリックの魅力は、FRの楽しさ以外の部分があって、初めてサニーに対してアドバンテージがある、ということになりますよね?
【第2位】 ’72 スバル R-2 360 スーパーデラックス 4速MT RR (80) 16.48(430kg/26.1馬力) 5・4
こちらのスバルR-2は、岡山県でも兵庫県に近い北東部の作木町の農家より、ヤフオクで出品されている車両になります。
当時物の「岡」ナンバーで継続登録されている車両で、基本的に屋内保存で晴れの日のみ乗るようにして大事に維持され続けている、貴重な車両になります。
オーナーより、「岡」ナンバーを引き継いで維持していただける方を募集している、とのことです。
今回紹介するスバルR-2は、国民車としてスバル360がロングセラーを誇るも、後続のライバルが販売台数を伸ばす中、次第に旧態化しておりました。
そこで1969年8月に、基本コンポーネンツはスバル360を継承しながら、トランススペースを確保したり、ホイールベースを120mm拡大して居住空間を広げたり、アルミ合金製シリンダーブロックやリードバルブの採用したりして、大幅に改良されてデビューしました。
今でこそ判ることですが、名車の後継車開発は非常に困難なもので、先代モデルを改良しただけでは、中々先代同様の人気を誇るには至らず、1972年7月に水冷エンジン専用のレックスを発売すると同時に、スバルR-2はたった3年弱の生産期間で以って終了します。
とかくスバルR-2と言えば、シンプルなグリルレスな外観の方がエンスーに人気があるのですが、今回紹介するR-2は72年式とのことで、むしろ後期モデルに該当。
よって、不評だったグリル付きR-2は、ひょっとすると水冷2サイクルエンジン搭載のLシリーズのみの意匠だったのでは?と推測するのですが、知識ある方からのアドバイスをお待ちしております。^^;
よって、グリルレスで空冷2サイクルエンジン搭載車だったのですが、保管状態が良好でしっかり整備された車両は、例え2サイクル車であったとしても、案外静かなものです。
スバル360の大きな魅力の一つに、全長3m未満全幅1.3m未満の超コンパクトボディに360初期型に至っては400kg以下の超軽量ボディがあるのですが、今回のR-2も基本的にその属性を引き継いだものであり、今回の車両の車検証に記載されている車重も440kgと、かなり軽量です。
軽量ボディの恩恵は何者にも代え難い魅力であり、僅か最高出力30馬力に過ぎないにも関わらず、かなり軽快な走りをします。その分、高速域では非力なのは致し方ないですが…。
そして、クラシックカーとしての値打ちではスバル360に及ばないものの、シートスライドが可能になったり(現車はシートレールが錆付いてグリスが必要でしたが…。)するなど、より実用的に改良が施されており、普段の脚として使うにはR-2の方がまだ適している、という意味では十分以上に価値ある1台に思いました。(それでも、かなりクラシックなクルマなので、別に脚車の確保は必要ですが…。)
1960年代に設計されたクルマだけのことはあり、高速域での安定性よりも砂利道などでもタフに走れるように、基本設計を頑丈にした上で柔らかいダンパーを使うことで、凹凸を吸収するボディ設計になっているため、手で押してもボディが揺れるほどです。^^;
もはや、厳しい排ガス規制で新車で作ることが不可能になった2サイクルエンジン特有の、エンジンサウンド・ガソリンとオイルが混じった香りは、ハマると病み付きになるはずです。
スバル360時代では3速MT+オーバードライブだったのも、4速MTに進化したのもR-2の特徴の一つです。
アクセルワークとして、今時の4サイクル車ならばアクセルペダルを踏み込む量に比例してスロットルが開いて加速する傾向ですが、2サイクルの場合はアクセル踏み込み時に思い切って踏んでは離すといった操作でスピードコントロールする傾向です。
排ガスの問題もそうですが、衝突安全基準が厳しくなったのも、軽自動車が肥大化した大きな要因の一つであり、いくらディーラーがエコカー減税・補助金で着膨れした新車軽四を勧められたところで、
欲しいのは豪華装備じゃなくて、
超軽量コンパクトボディなんだよ!
という心の叫びが大きくなるばかりなのです。
そんな意味で、このR-2を文化遺産として継承することを目的として、セカンドカー以降の脚クルマを考える、そんなカーライフも面白いのでは?と思うわけです。
追伸。
MT前提で開発されていた時代のクルマは、クラッチミートが非常にやりやすくて、むしろ最新型車(スバルBRZも例外にあらず。;;)よりも乗りやすいくらいです。
クラッチペダル踏力を軽くすることが、決して万人に扱いやすいことではない、ということに、少しでも多くの自動車メーカー関係者に気づいてもらいたい、そしてユーザー自身も気づいて欲しい、と願うのです。
【第3位】 ’00 日産 スカイライン 4ドア 2.0 GT 5速MT FR (13.0) 8.77(1360kg/155馬力) 12・13
人間の身体機能に最も近いレイアウトであり、クルマを操る楽しさを持った究極の駆動方式であるFRの良さを、最も生かすのはどんな形か?
それは、ドライバーが心地いいと感じられる範囲内での速さがあり、テールが流れても安定してドリフトコントロールできるだけの、強靭な脚とボディを持っていること・・・。
この条件を最も満たしているのは、最新の86でも歴代BMWでもなく、むしろ今回紹介するR34スカイラインの2L+5速MTではないか?と思うのです。
先日、33用16インチアルミに履き替えた2ドアモデルを紹介しましたが、今回はタイヤ・ホイールまで純正15インチのままで4ドアモデルです。
はっきり言って、基本パッケージングは新車当時でも相当に古臭く、小型車枠いっぱいで作られてた時代を引きずったもので、全幅が狭い割には全長が長く、とてもじゃないけどスポーツカーの理想とは言い難いボディ形態であり、また水平基調・富士山型キャビンの昭和の日本製セダンの典型をした形であるためボディサイズの割には相当に室内は狭く、今や軽自動車にも負ける居住空間の狭さで、セダンとしてもパッケージングは最悪の部類です。
でも、50年代のアメ車にアメリカンドリームを抱いた世代にとっては、この形こそが小市民的豊かさの象徴であり、当時の世代にとっては、最もカッコいいクルマと言える形なのです。
そんなパッケージングとしては最悪な34スカイラインですが、ボディは力だ!と当時のCMで謳うだけのことはあり、宣伝に負けないボディ剛性の高さに裏付けられた脚の強さで、若干路面が濡れた道でテールが流れたとしても、お釣りが来ることなくドリフトコントロールがしやすい特性に仕上げてたのは見事でした。
これが、12年落ち中古になっても、歴然と残っていたのですから・・・。
とはいえ、2Lで5速MTが選択可能だったのは、この34が最後で、後の35以降は北米市場を意識した大柄なセダンとなり、排気量も2.5Lからで殆どATしか選択できないものとなってしまっただけに、ターボ付きでないからこそ貴重な4ドアスカイラインである、と思ったのでした・・・。
FRだのドリフトだのに興味ない人にとっては、ただの古臭いセダンにしか見えなかったとしても・・・。
【第4位】 ’91 シボレー コルベット クーペ 5.7 ベースグレード ガラスルーフ 3速AT FR (78.0) 6.40(1600kg/250馬力) 12・27
対して、一転してハイパワーなFRスポーツカーであるコルベットの出番です。^^
今回乗ったのは、C4と呼ばれる4代目モデルで1984年から1996年まで生産され、L98エンジン最終年の中盤モデルに該当する1991年モデルが、今回紹介するものです。
後にデビューするLT1エンジンでは更なるポテンシャルアップを果たすのですが、現状のL98エンジンでも?というのも失礼な程、日本車やドイツ車では有り得ない超トルクフルで、かつトラック勢では有り得ない高回転域まで持続するパワー感は桁外れでした。
正直言って、色々なクルマに試乗して、これ程にパワフル・トルクフルでアクセルを踏むのが怖いクルマは初めてでした・・・。
というのが、C4で一新されたと言われるサスペンションが相当にショートストロークな設計で、フロントだけはかのフェラーリF40のように、カウルごと開ける形でボンネットが開く構造です。
タイヤが純正よりもインチアップされて18インチになっていること、社外小径ステアリングに換装されていることに加え、ホイールアライメントが十分に合わせられていない、タイヤの磨耗が進んでいた、などで荒れた路面で直進性を失う傾向が強く、故に痛快なエンジンフィールを味わい切れないという弱点はありました。
それと、因みにブレーキ弱いです。911と比べたら遥かに・・・、国産とでも劣るくらい・・・。
ですが、それが決定的弱点とはなり得ず、エコカーブームで忘れ去ったクルマが持つ真の面白さを、カルチャーショックのような形で教えてくれた1台として、むしろ褒めたいと思ったのでした。
先のギャラン(’73モデル)と比べちゃうと、こちらは相当に劣化が進んだ内外装ですが、それでもシートの経たりを感じさせにくいしっかりとしたシート設計でありながら、ドイツ車のようなカチカチの堅さではなく、ある程度クッションを厚くしたもので、スポーツカー故に厚みは制限されるものの、それでもアメ車ならではのシート設計で、ATでレッド内装で軟派な仕様にも関わらず、スポーツドライビングに十分に対応する快適なシートでした。
後のC5以降であれば、ニュルブルクリンクを走らせてテストするようになったせいか、相当に欧州車勢に負けないサスペンションの接地性を身に着けたようですが、ポルシェ911以上にスポーツカーらしい迫力に満ちたコルベットが、100万円以内で手に入るのって、凄くお買い得だと思いません?
どんなに不人気な911だって、最低100万円台後半はどこの中古車販売店だってします。
911云々以前に、迫力で言えばフェラーリやランボと比較しても・・・と思った程だったのです。
軟派なAT仕様で、クルマに操られて完敗状態でしたが、次こそはもっと上手く乗ってやる・・・とリベンジ精神を掻き立てるのも、米国スポーツカーの頂点に立つコルベットだからこそ・・・でもあるわけです・・・。
【第5位】 ’87 スバル レックス 5ドア 0.55 SG 2速AT FF (39.8) 18.67(560kg/30馬力) 12・6
足るを知る・・・。
この言葉をクルマの形にしたかのような、そんなシンプルだけどエアコン・オートマは付いてて、最低限の快適装備は付いているという、昭和末期の軽四の典型であるレックスです。
今回紹介するレックスは3代目で、FFになってからは2世代目になるのですが、前モデルと大きく変わったのは、パッケージングがスペース効率重視で室内の広さが劇的に増したことと、オートクラッチのセミオートマだったのを、スズキ製かどこかのを積んで2速フルオートマチックになったこと、そして5速MT仕様のエンジンが3バルブになって若干だけどパワーアップしたことなどです。
今の時代からすると、パワステないしパワーウィンドーも集中ドアロックも付いてないシンプルそのものですが、これでも当時は最高額グレードで、新車当時ではラジアルタイヤやフロントディスクブレーキ・シガーライター・トリップメーターが付いた豪華?仕様だったのです。
しかも、この物件エアコン付きで一通りの修理が施されてバッチリ効くようになっているのです。
確かに、今の基準からするとボディ剛性は無きに等しく、安全装備も後席は2点式シートベルトに留まり、リアヘッドレストも未装着で貧弱そのものですが、これが乗ってて我慢してる感覚じゃないんです。
と言うのも、ボディ剛性が無きに等しいと言えども、車重560kgの超軽量ボディで30馬力しかないエンジンなので、タイヤかた伝わる入力が極限に少なく、結果スペックの割には軽快な走りをするのです・・・。
パワステなしのステアリングも、重さを実感するのは駐車場などでの据え切りの時のみで、一定のスピードが出た領域になると、パワステの必要性を感じないどころか、パワステなしだからこそ伝わるステアリングインフォメーションの高さを実感できるのです。
と言っても、2速ATとの組み合わせなので、勾配のきつい坂道での失速は免れないでしょうが、当時は軽四で自動変速で横着が出来るだけでも、相当に有り難い時代だったのです。
万が一、五体満足で走りと低燃費を求めるなら、素直に3ペダルMTにして・・・という状況でした。
それが今や、MT車探すのに困難で、多数のMT難民を生み出す結果となっているのですが・・・。
そんな足るを知るレックスですが、唯一にして最大の弱点と言えば、運転環境がストレッチポジションを前提とした設計であることがミエミエで、ステアリングコラムが低くてシートバックが上体を反らせた形状で、必ずしも実用車として理想的だったとは言い難いことです。
とはいえ、ほんのじ10数年前なら代車として使われて、車検切れて不具合箇所が増えるとスクラップいなることが多かっただけに、こうしてワンオーナーで状態良く現存しているだけでも、相当な価値がある、と思うのですが、その価値に気づくのは、相当にカーライフの経験を積んだ中年以降のエンスーに限られるケースが多く、結果中古車市場に反映しにくいということ、よって旧車としての価値が付きにくい、ということです。
なので、非エンスーな人からすると、何でこんな古くてダサい軽四に?と思うところでしょうが、これがエンスーだけが知っている、今時のエコカーが失ったプリミティブな実用車の美しさなのです・・・。
(以上)
思えば、2012年はスバルオリジナル軽自動車が完全に途絶えた年でもあり、ついにサンバーがダイハツOEM供給となり、当方で企画したワーストカーオブザイヤーでは、1次選考で1位・2次選考で2位の大ブーイングとなりました。><
そんなスバル軽への思いが、今回中古車ベスト5に2台選考された所以と思っております。
ここではランキングできなかったけど、120系クラウンとかミニERAターボ、DC8インテグラ4ドアタイプRなど、色々ありました。
来年以降の中古車選びで懸念しているのが、20世紀車のタマ数が劇的に減って、中途半端に環境対応された2000年代車が中心になってくることで、中古車でも純粋にクルマを操る楽しさが満喫しにくい状況になりかねないことです。
厄介なのは、2000年代に入るとキャブレター車がほとんどなく、電子機器が増えることで経年変化によるトラブル発生率が高くなり、また修理が効かなくて部品交換でコストが高くつくリスクが高まっていることなのです。
今後は、状態のいい昭和車が益々貴重になり、2000年代の低価格中古車は、言わば使い捨てのような使い方がなされるケースが、非常に増えるような、そんな気がしてならないです。;;
そんな中で、せめて来年も楽しく中古車と付き合えたら・・・と思うのです。