メーカー/モデル名 | スズキ / ワゴンR FX(MT_0.66) (2003年) |
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乗車人数 | 4人 |
使用目的 | レジャー |
乗車形式 | 試乗 |
おすすめ度 |
3
|
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満足している点 |
1.4人乗り軽乗用車として優れたパッケージング 2.最小回転半径4.1mという驚くべき小回り性能 3.ワゴンRらしさを感じさせるデザイン |
不満な点 |
1.手に汗握る動的性能 2.中立付近で摩擦感のあるステアリング 3.何速に入っているか分かりにくいシフトレバー |
総評 |
●軽ハイトワゴンのサラブレッド 過去の様々な感想文で書いてきたことだが、軽自動車は仁義なき戦いが繰り広げられているがゆえ、「何でもあり」の商品開発が繰り返されている。今回取り上げるワゴンRは2003年にFMCされた3代目モデルである。 ワゴンRは1994年に初代モデルが発売された軽ハイトワゴンの再発明車だ。当時のアルトやミラの様な2BOXタイプの「軽セダン」よりも背を高くし、乗員をアップライトに座らせることで限られたスペースを有効に活用し、軽の相場観よりも広々としたキャビンを実現した。 過激なターボモデルによるスポーティネス競争がひと段落し、バブル期の空気を色濃く感じさせる4気筒エンジン搭載が始まるなど、再び軽セダンの上級化が進み始めた中で今まで望めなかった広々とした室内空間やモダンなエクステリアデザインを持ったワゴンRは軽自動車業界に吹く新しい風となった。 それまでの主力車アルトを凌ぐ空前の大ヒットを記録して、後にムーヴやライフなどのフォロワーを多数生んで市場を活性化させた功績もあるが、もともと、FFベースの背高パッケージを提案したホンダライフステップバンを現代に乗用車として再提案した功績も大きい。 ステップバンはアップライトに人を座らせて荷室長を確保し、FFを活かして低く使いやすいローディングハイトを実現した。ステップバン商用車としての使い勝手を優先したモデルであったが、ワゴンRは最初から5ナンバーの乗用車として発売され、広々した空間を乗員のために割り付けた点が90年代的な部分だ。私の親は初代ワゴンRを見て「あんなのステップバンが先にやってた!」とおかんむりだった(笑)。親が話していたことを要約すると、ステップバンはお洒落な若者がカスタムを楽しんでいた、というイメージだったとのこと。親が免許を取った頃にちょうど終売したようなタイミングなので、恐らくステップバンが身近にあったのだろう。 商業的に失敗作だったステップバンだが、その進みすぎた思想の良き理解者は90年代の高塚駅の近くに居たらしい。 軽自動車のスペース効率を極限まで上げていくとフルキャブオーバー式の箱バンにたどり着くはずだが、その走りや乗降性を考えると万人が箱バンを受け入れるとは言えないのは現代の目線でも同じだろう。 ワゴンRは新時代の軽自動車として瞬く間にワイドバリエーション化を推し進めながらスズキの軽自動車のメインストリームとなり、順調にモデルチェンジを重ねていった。 前置きが長くなってしまったが、今回はワゴンRは2003年にフルモデルチェンジされた3代目ワゴンRのFXの貴重な5速MT仕様に6日間試乗出来る機会を得た。 オーナーのばりけろさんは、格安MT車を探した結果、秩父の山奥で老夫婦の足だったワゴンRを手に入れて通勤に使用して来たが、手放す日が近づいてきたため、「乗りませんか?」と声をかけて下さったのだ。 この車がデビューした2003年は私はまだ免許を取って数年の学生だった。 その頃、街ゆくワゴンRは生活の足になって白煙を吐いてたり、エアロ、クリアテール、ビレットグリルで着飾ったヤンキー仕様(この層は後にビクスクへ)の他、いち早くアルバイトでマイカーを手に入れた同級生が買っていた綺麗な2代目が沢山走っていた。ネットではワゴソ尺などと表記されていたのが懐かしい。 メッキパーツと丸目ヘッドライトのクラシック仕様で新境地を見いだした軽セダン系と比べれば比類無きユーティリティを誇るハイトワゴンは、当時広く普及したミニバンを感じさせる軽自動車として人気の中心にあった。ダイハツのムーヴは少しやんちゃなカスタム意匠で真っ向勝負を挑んできており、前年の2002年にはP/Fを一新した3代目がデビューして更に上級指向を明確にしていたが、スズキの答えはキープコンセプトであった。 「様々なユーザー、様々な使用シーンに対応した万能型ワゴン」を商品コンセプトとして全体的に先代からの信頼を失わない様に伝統の箱形スタイルを堅持し、居住性(特に後席の快適性)を演出し、機能性を高めている。 技術的にはP/Fを一新。スバルと共同開発したFrサス(L型ロアアーム)を採用してホイールベースは延長されたが、Rrサスは伝統のITL(アイソレーテッドトレーリングリンク)を継続使用するあたりにスズキの厳しい庶民感覚が窺える。 エンジンはNAとターボに大別されるが、従来から設定のある実用域のトルクと燃費のバランスを取ったMターボ、従来通りのPFI(ポート噴射)Sターボに加えてDI(筒内直噴)ターボが追加されて3種類のターボが設定されるという充実ぶりを見せる。 今回試乗したFXは自然吸気のMT車である。運転した感覚は現代の目では時として少々厳しい動力性能であるが、免許取り立ての頃、炎天下に窓を全開にして生ぬるい2Lペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら同級生と走らせた軽自動車のようにエンジンの全域を余すところなく駆使して走らせる感覚は私にとってはノスタルジーに浸れた。 3代目ワゴンRからは商品に対するズスキの確固たる自信が伝わってくる様だった。普通車を食う存在としてのハイトワゴンの代名詞でありながら、軽自動車の庶民のゲタとしての本分を忘れていない。 家族4人をアップライトに座らせるから無理なく快適に座れて、シートスライドを活用すれば週末のまとめ買いも可能なほどラゲージも広い。軽トラに匹敵する小回り性を駆使して狭い路地でも臆せず突っ込め、すれ違いも余裕綽々。更にA/Cを使用していても市街地なら普通車と何ら変わりなく走れるのだから日常生活の相棒としての完成度は非常に高いレベルにある。 一方、背高パッケージに非力なNAエンジンを組み合わせているため、山坂道やハイウェイの安定感は余裕は明らかに苦手な事実は隠しきれず、その分だけ普通車の棲み分けは明確であった。 このように軽自動車としてのバランス感覚に秀でたワゴンRであるが、同年デビューしたダイハツタントは更に広々したキャビンにこだわる為にハイトワゴンの相場観を超える全高1700mm超とし、Aピラーの前にA'ピラーを設けることで更にルーフヘッダを乗員から遠ざけた「スーパーハイト」というジャンルを生み出した。 その後、2007年の東京モーターショーにてダイハツは左側にピラーレススライドドアを採用した2代目タントを、スズキは対抗車種として低床フロアに両側スライドドアのパレットを送り出して完全にユーティリティ重視の軽自動車の本流がスーパーハイトに移行した瞬間であった。スーパーハイトの流行後、ハイトワゴンの二大巨頭であるワゴンRもムーヴも少し元気が無い。 ワゴンRが新ジャンルを確立して、それまでのスタンダードを過去のものにした以上、いつかは更に新しいコンセプトに凌駕される日が来ることも仕方の無いことである。スーパーハイトワゴンこそが軽自動車のボリュームゾーンになって久しい2022年、その源流であるタントが世に出た同時期に当時の軽自動車界の覇者であった2003年デビューのワゴンRに試乗できたことは大変意義深い。 オーナーに(色々と)感謝申し上げたい。 |
デザイン |
4
3代目ワゴンRはキープコンセプトの外観デザインである。すなわち背高パッケージでロングルーフ。エンジンコンパートメントは小さく、1.5BOXスタイル。ボディ同色のピラーをハッキリ配置してグラスエリアの連続感よりも、柱が持つ堅牢さをイメージさせて軽が持つヤワな印象を力強さで上書きするかの様である。
フロントマスクは縦長のヘッドライトがワゴンRらしさを感じさせるが、最もワゴンRを感じさせるのはサイドビューだ。プレスドアを活かしたカッチリしたサイドビューは水平のドア上部に折れ線がハイライトとなって前後を貫くので感覚的な大きさ(長さ)と逞しさを感じさせる。初代ワゴンRだとベルトラインより下、ドア中央付近に前後を貫くキャラクターラインが入っていたが、2代目ではこれが消えてしまって、曲面によるボリューム感を見せるデザインに変わっていた。この折れ線はサイドドアからエンジンフードまで繋がっているが、特にフードはラインを平面視でラウンドさせることでスクエアなデザインの中に丸さを同時に感じさせている。 室内を広く取ろうとするとドア断面がペタペタに平たくなる。ワゴンRの場合、実際の断面は薄くとも、ハイライトをうまく使って弱々しく見せない工夫は素晴らしい。 リアビューは先代の様に縦長のRrコンビネーションランプを採用し視認性とハックドア開口幅を両立している。スッキリとした印象で、樹脂ワイパーアームや角を残したバックドアガラスなど初代や2代目よりもプレーンな印象でまとめられている。 個人的には初代ワゴンRのオリジナルの良さがデザインとしてベストだが、グッドデザイン賞の次点を選ぶなら3代目である。 インテリアはエクステリアと正反対で3代目のオリジナリティが与えられている。最大の特徴は弓なりのインパネと大小二つのメーターである。 インパネは車体中央にボリュームがあり左右の端に行くにつれて細く絞られている。錯視効果で圧迫感を減らし広々と見せる。その表面は当時としては珍しく幾何学シボがあしらわれ、部分的にシルバー塗装のワンポイントも施されるなど当時のリッターカークラスでも上級グレードに匹敵する質感を確保している。 面白いのは大小二つのメーターで、大きい方はスピードメータで小さい方はタコメータである。パッケージング的にレイアウトがきつい軽自動車はついついステアリングコラムやペダルレイアウトがシート中央からズレてしまいがちだ。真面目な会社はシート中央位置をボディの中央に配置し直して物理的諸元を改善するのだがワゴンRの場合、 このメーター配置がうまいことステアリングセンターのズレを視覚的に誤魔化してくれる気がする。同一サイズのメーターを置くとステアリングに被ったり、どうしてもセンターズレが分かり易くて気になりがちなところ、サイズ違いにしたことで指示も見易く良いことずくめである。 3代目ワゴンRはベストセラーらしく、良い意味で冒険はしていない。道具としてのグッドデザインを目指した感があり素のデザインをスッキリし上げて後はグレード間の加飾で対応していくという感じが好ましい。 |
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走行性能 |
3
●初日~オーナーを駅まで送迎~
試乗初日、オーナーがワゴンRでやってきた。自分の車を会社の駐車場に止めて早速私が私がワゴンRのステアリングを握ってオーナーを駅まで送迎した。 ミニキャブブラボー以来、久々のMTの軽自動車の運転を経験したが積載性が重視されて2名乗車+フル積載でも一定の斜度の坂道で発進出来なければならないわけでどうしてもローギアードにならざるを得ない箱バンと比べればワゴンRは断然乗用車ライクな雰囲気を残す。 発進し、4000rpmを少し超えた当たりで2速へシフトアップ。3500rpmで3速へ、その後3000rpm位で40km/hに達する。普通車の感覚だと引っ張り気味だが、4000rpmまで使うことで周囲の流れに伍して走ることが出来る。普通車のMTと比べればまだまだローギアードだが、660ccNAのエンジンは54ps/6500rpm、6.4kgm/3500rpmという 大人しいスペックで810kgという車体を引っ張らねばならないのだから仕方が無い。 オーナーから各種注意事項を伺いながら駅に向かって走らせる。 駅に到着して、オーナーを見送った後、A/Cをオフにして窓を全開に下ろしてみた。まず驚くのはパワーウィンドウの速度がめちゃめちゃ速いことである。せっかちな私には大変便利に感じた。 市街地を走らせるとK6Aが一層元気になった様に感じた。軽自動車ともなれば大人一人分の重量増加やちょっとしたコンプレッサー駆動抵抗が馬鹿にならないのである。シフトを最大限駆使して信号が多い市街地をキビキビと走らせるのは心地よい。 ここで気になるのはシフトレバーの長さが私の手の長さでは不足気味なことだ。もうちょっとノブが手元に来ると言うこと無いのだが、恐らくレバーそのものを延長するとその分、自分や助手席に干渉するので、対策するにはシフトレバーの土台ごとをかさ上げしてやらないとダメだろう。(或いは大型水中花シフトノブをぶち込むか…) また、何速に入っているのかが曖昧なので3速なのか4速なのか5速なのか分からなくなったことが数回ある。 この辺りは最新型ワゴンRなら改善されてるのか、そもそも保有母体が少なくて、ワゴンRに対するブランドロイヤリティも高いだろうから不満の声が上がることすら無いのかも知れないが。 乗り心地はソフト志向である。荒れた路面を走っても155/65R13タイヤの分厚いサイドウォールの恩恵なのかソフトに感じる。ただ、橋の継ぎ目などでハーシュネスの悪さ(ブッシュの堅さ)は感じる。 ●二日目~通勤に使用~ 朝、ワゴンRで出社する。通勤にはちょっとしたワインディングを走らせる必要がある。少し暑いがA/Cを消して窓全開で走らせた。アップダウンがあると周囲の交通に伍して走るだけでもスロットルを大きく開けて低めのギアで引っ張ることになる。 5速50km/hでも平坦路なら大体2000rpmに留まり騒がしさは感じないが、通勤路では4000rpmあたりまで使って走らせるのでエンジンの音はよく聞こえる。ただ、軽自動車なのだからそこに目くじらを立てることは無いかなと思う。それよりも小排気量マニュアル車が持つ適切なギアを選んであげる楽しみは確実に存在している。 アイポイントが高いからコーナーが連続する場所でも見通しが良く、しかもコーナーが連続しても 小振りな車体のおかげで車線内での自由なライン取りが容易だが、少しペースを上げたとき、操舵に対して前輪が負けそうになる傾向を感じさせず、敢えて旋回中に追加操舵してもそれに反応してインを向こうとするのは意外だったが、後輪が横力で巻き込む様な挙動を見せたのは万人の為の便利な足というキャラクターにはそぐわない。更にコーナリング中に段差を乗り越えるとクルマが横飛びする様な挙動も見られたが、これは経時変化でサスチューニングのレシピが崩れてしまっていることが原因かも知れない。 ワゴンRには2代目から既にEPSが採用されているが、EPSのせいなのかキャスター角が足りないのか摩擦感があってステアリングの戻りが悪く、直進状態に戻す為に常に手で操作してあげないと真っ直ぐ走れないのは、軽だからと大目に見ることが出来ず、今回の試乗全体を通じて気になった部分だ。 キャスター角を立てればスペース効率も良く、EPSの出力も小さく出来る(ステアリング操作力が軽くなる)から作り手の経済性などを考えれば立てた方が好ましい性能もあるから作り手にとっては悩ましいところだ。 1名乗車だと、動力性能・制動性能・コーナリング性能が釣り合う感じで普通に走っている限り普通に走り続けられる事だ。それだけならアルトで良いじゃ無いかという意見もあるだろうがワゴンRにはパッケージ的余裕がある。見晴らしが良く、死角も少ない。そしてヘッドクリアランスがこぶし3個分あり、ピラーが立っているから例えば飲み物を最後まで飲みきろうとしても容器がピラーやルーフヘッダーに干渉して飲めなくなることも無い。ミニマムトランスポーターとしての軽自動車界にちょっとした自由度を与えたところがワゴンRの価値なのだろう。 ●三日目~家族を乗せてお出かけ~ 休日、ワゴンRを休日のお供にする。まずは息子の習い事へ送り迎えだ。息子が居ない間に買い物をするので家族四人で乗車。Rrシートは広々しており、子供達の評判も上々で助手席の妻もシートを後方にスライドさせても子供とぶつからないし、脚も伸ばせると好評である。 自宅から隣町の教室まで走らせるが、炎天下の為A/Cは常用した。付近は丘陵地帯なので途中何個か丘を越えるが、流石にフル乗車だと動力性能がきつい。上り坂で失速しそうなのでシフトダウンしたり、発進加速で高い回転域を使わざるを得ないがA/Cを利かせていると変速時の回転落ちも速いので、その辺りも繊細な操作をしてやらないと家族からのクレームが入ってしまう。 ルート上、くの字型に折れるカーブを通過する。重量が増える為ロールが大きくなり家族から「倒れそう」とクレームが。運転しているとそんな感覚は全然無いのだが…。 丘を下り、制動しながら段差を乗り越えるとドシンと強めに入力が入る。1名乗車ならソフトな乗り心地と言えてもフル乗車だと流石に厳しい。 そんなこんなで隣町の市街地に入り、息子の通う教室へ到着した。教室の駐車場が本当に狭く、アルファードやノア、セレナがごった返す中、シエンタとデイズルークスの間に駐車。クルマはどんどん大型化しているが、だからこそコンパクトな軽自動車の機動性は痛快である。タイヤ切れ角がものすごいので狭い場所の切り返しも最小限。軽自動車の場合、車幅が決まっているのにこぞって大径タイヤを履かせる為に最小回転半径が大きくなりがちな昨今、ワゴンRは軽自動車の持つべき本分をよくわきまえているなと感じる。 習いごと終了後は、子供らのお昼寝タイムも兼ねて高速道路を使ったドライブを企てた。 ETCゲートを抜け本線に流入する。40km/h制限解除されたから全開加速で挑む。3代目ワゴンRが発売される3年前の2000年に制限速度が80km/hから100km/hに引き上げられている。当然このワゴンRも高速道を100km/hで走らせる確認くらいはしていると想像する)100km/hのエンジン回転数は4000rpmであるからミドルクラスの普通車の2倍、大衆車の1.3倍は多く回っている。この時聞こえる騒音はエンジンノイズより風切音がメインであり、高回転ゆえのネガは無い。 駐車中に確認したところ、現代の普通車の様にエンジン音をダッシュで遮音するため、エンジンルーム側とキャビン側それぞれにサイレンサーが装備されている。さらに右側ドライブシャフトにダイナミックダンパーが奢られていた。ちょっと前の軽なら考えられない装備だが、そういう部分にお金をかけている効果は出ている。 過去のキャブオーバータイプの軽自動車と比べれば、ワゴンRはFFゆえに安定感が高い。横風に煽られて進路は乱されるがステアリングをしっかり持ってアクセルさえ踏んでいれば直進してくれる。ただ、この速度域でダブルレーンチェンジみたいな動作を入れる勇気は無い為、周囲の交通状況が良いときに100km/h巡行が可能なレベルに留まる。 動力性能的には、自然吸気ながら追い越し車線も試せるのは立派だが、4人乗車でのロングツーリングは適用範囲外です!と遠慮がちにワゴンRから言われている様な気がした。 自然吸気ではMTと言えども、絶対的性能はちょっと辛い。例えばターボで四駆なら高速道路も安定してクルーズ出来るだろう。その意味であと少しの性能アップが期待できるMターボは気になる存在だった。 結論として今回のワゴンRの走行性能は満足はしないが充分に納得はできる。 |
乗り心地 |
3
|
積載性 |
4
ワゴンを自認するワゴンRだからこそ、人や荷物を載せることは軽としては得意中の得意である。
前席も後席もこぶし3個分の余裕があり、不満を感じることは無いだろう。横方向は軽自動車として標準的だがMT故にセパレートシートが採用されており、少々小振りではあるが私は許容範囲内に収まっている。足元スペースもサイドウォークスルーが出来るくらい広々しており、メガガンマ的な背高パッケージ的正しさをこれでもかと言うほど見せつけてくる。 その恩恵は後席によく現われている。Rrシートスライドとリクライニングが備わった5:5分割可倒式シートに座れば下手な小型車を軽く凌駕する広々とした空間が広がっている。 センターアームレストも備わった豪華な後席の広さは脚を組めるほど!で済めば良いのだが、室内長を広く見せたいという煩悩のせいなのかRrシートを最後端に合わせると、脚引き性は成立しているがシートベルトが肩から浮いてしまう。クオーターガラスに押される形で前に位置するCピラーに スリップジョイントがあるのでどうしてもこうなってしまうのだが、2008年まで後席シートベルト装着が義務化されておらず、当時はこれでも良いと考えられていたのかも。我が家の場合子供をCRSに座らせるので問題ないが、大人を乗せるときは 肩ベルトが成立するまでシートスライドを前に動かして調整することをお薦めしたい。 また、シートバックの上部が後方にのけぞるように逃げており着座すると肩が背もたれから離れがちな点も、室内長の数値に過度にこだわった弊害であると見受けられる。現代のいびつな軽自動車のそれよりは遙かに健全であるが実際の心地よさと購入検討客に向けた定量的なアピールのバランス取りは悩ましい。 ラゲージスペース当時の軽セダンと比べると遙かに広く、ライバルのムーヴとも便利合戦を繰り広げていた。ワンタッチで倒せるリアシートはリンク機構でデッキと面一になる様に工夫されており、助手席を倒すことで長尺ものも難なく積み込める当たりは軽自動車の常識を越えている。 また、伝統の助手席シートアンダーボックスも利便性が高いアイテムだ。実は初代から現行型まで採用が継続されている伝統の収納アイテムなのだがこういう伝統を地味に守っている点も面白い。 前席パッケージングはアジャスタブルベルトアンカーの採用など、素性の良さを活かしており★4 後席は思想的な良さをスポイルする諸元の為★3 積載性は軽乗用車として5★ |
燃費 |
3
レンタル中の燃費は基本A/C使用条件で15.5km/Lであった。
県内郊外に住むオーナー曰く20km/Lを超えることが多いそうで、今回の使用条件じゃワゴンRには少々不利な条件で走らせたからかも知れない。 カタログ値は23.5km/Lであり、オーナーの乗り方ならカタログ値に正直と言えるし、私の場合は達成率66%に留まった。 |
価格 |
4
資料によると、2輪駆動のFX(5MT)の車両本体価格は88万円(税込92.4万円)である。
これは安い!と思ったが、マイナーチェンジ直後の現行モデルだと110.7万円(税込121.8万円)であるから、実質的に横滑り防止装置や衝突軽減ブレーキなどの安全装備の充実分だけの差額とも言える。 3代目ワゴンRに話題を戻すが、この内容で込み込み100万円+αで購入できるならかなりお買い得な部類だが、これは当時ワゴンRがベストセラーであり軽自動車が普通車との棲み分けがキチンとされていた時代ゆえの現象である。 メーカーからすればスライドドアを採用したスーパーハイトの方が粗利率が高く商売としてウマいのは当然だが、個人的には欲張りすぎない節度有るユーティリティを誇るワゴンRを評価したい。 この個体を含めて未だに現役で街中を走る姿を見かけるが、機械としての寿命どころか商品としての寿命もかなり長いと言える。それは虚仮威しや装飾に走らず、普遍的な価値をシンプルに表現しているからだろう。 |
故障経験 |
借りてきてすぐ気づいたのが、Rrドアのドアオープニングフランジを隠すオープニングトリムが外れていることだ。 普通ここは外れないのだが、ワゴンRの場合は簡易的な遮音性能を持たせようとしたらしく、リップ形状がつけてあり、ここがドアインナーと干渉し、リップの倒れ込み方向がフランジから外れる方向に作用している様だ。 組み付けてからRrドアをバンバン開け閉めを繰り返すといとも簡単に部品がズレてくる。これは明らかに設計ミスだ。フランジへのくわえ込み力を強めに設定するか遮音の為のリップ干渉設計を慎むべきである。 |
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