フォレスターはRVブームの中、1997年にインプレッサをベースにクロカンとステーションワゴンの中間的なキャラクターのモデルとしてデビューした。全グレードターボエンジン搭載で、発売前に世界最速のSUVとして世界記録を打ち立てるなど異色のキャラクターを持っていた。2代目ではSTI仕様を追加するなどキャラクターを継承、フォレスター新発売後10年目の2007年に発売された3代目で本格SUVルックを得て現在のキャラクターが完成した。最速SUVの面影は2LターボのXTグレードが守りつつ、量販グレードは2L自然吸気であった。
4代目では更に北米を意識したスタイリングになり、
ハード面ではレガシィで好評を博したアイサイトを標準化。ターボ車のMT仕様が廃止されて、変速機がスバル独自のチェーン式CVTを採用。E/Gは2L自然吸気に集約されたが、他のSUVブランドがどんどん都市へ下山していく中、CVT車には悪路操作性を高めるXモードを設定するなど、フォレスターはその名の通り森っぽさを維持したことで全車ターボの高速クロカンだったデビュー時とは逆にモノコックながら本格派クロスカントリーとしての地位を高めた。
さて、ブランド誕生から21年目となる2018年、5代目となるフォレスターが発売された。かつてのスバルはスバリストなる熱いスバルファンの支持を背景に
ビジネスを続けていたが、現代は様子が異なる。
国内ではアイサイトが一般ユーザーたちから熱烈に歓迎され、マジメさゆえの高い安全性が北米ユーザーに認められて販売を伸ばして以降、スバル車は急速にマニアックさを捨て、大柄なボディをまとい北米ユーザーを意識してきた。
ビジネスが好調に回り、販売台数も多くなると生産拠点が多くないスバルにとっては、商品を売れる市場に照準を合わせるものだ。
そんな中で、
2001年、22308台売れていたフォレスターは
2013年、35166台に販売を伸ばした。
1.5倍も販売台数が伸びたのは日本の一般ユーザーにもスバル独自のステレオカメラを用いた
「アイサイト」が認知され、車両側も流行ど真ん中のSUVで実用性が高かったからだろう。不祥事を重ね、ブランドに傷がついたこの時期ゆえにフォレスターの全面改良は重要な意味を持つ。
今回の目玉はHV技術を投入したe-BOXERエンジン搭載だが、基本的には北米を強く意識しつつも、
ボディサイズ拡大を抑え気味に愚直な車体設計を実施したようだ。
新型フォレスターのグレード展開は価格が安い順に
ツーリング(税抜260万円)、X-ブレーク(税抜280万円)、
プレミアム(税抜280万円)、アドバンス(税抜287万円)の4機種で全て4輪駆動を採用している。
ツーリングをベースにオレンジの挿し色を入れたアクティブな外装、撥水シートなどアウトドアに特化した装備内容のX-ブレーク、SUSベルトモールや18インチアルミ、内外装のレベルアップに加え、アイサイトセーフティプラスが追加される。アドバンスになるとe-BOXERとドライバーモニタリングシステムが追加され、他のグレードと差別化のため内外装がグレードアップされる。
装備表を見ているとツーリングの装備の充実度が目を見張るレベルだ。17インチアルミホイール、ヒーター付本革ステアリング、前後シートヒーター、
歩行者エアバッグ、アイサイトツーリングアシスト、サイドビューモニター、EPBなど充実装備を誇る。
試乗車を見て乗っても、最廉価の引け目を感じさせるほどの懲罰的な廉価装備は無く、充分ファーストカーとして使えそうなのだ。
このツーリングに対し、MOPでスマートキー、前席パワーシート、アイサイトセーフティプラス(運転支援)、パワーバックドアを選択すると、価格が税抜280万円に上がる。
実はフォレスターのOPT価格は巧妙に設定されており、プレミアムなら上記OPTを追加しなくても
パワーバックドア以外は最初から装備されて税抜280万円なのだ。ちなみにプレミアムにパワーバックドアを追加すると税抜285万円。
そうであれば、予算を上乗せして内外装のブラッシュアップされるプレミアムの方がお買い得に見えてくるような巧みな装備設定だ。ツーリングの素の状態で魅力を感じなければOP追加は金銭的には割高感が伴う。
それならばツーリングにパワーバックドアとアイサイトセイフティプラス(運転支援)だけを追加したいと思っても、オプションの組合せ上、設定が無い。もしあれば税抜270万円になるはずだった。それをやらせずにプレミアムに誘導するやり方は、スバルさん、商売上手ですねと言わざるを得ない。
筋力で不利な女性の力では操作が難しいバックドアゆえに、パワーバックドアだけは単独OPT設定すべきではないかと思う。
当初、税抜260万円のツーリング良いじゃん!と思ったものの、OPT追加を通じて結局、税抜280万円のプレミアムに誘導されてしまう。プレミアムに流れるとe-BOXERの恩恵でエコカー減税が適用され、自動車税でも有利な税抜287万円アドバンスに誘導するルートが現れる。(購入時の税金が4万円安くなり、残る3万円は自動車税6年分でペイできる)
アウトドア好きに捧げるX-ブレーク以外は全て上級グレードに誘導するような強い流れを感じさせる。
勿論自動車販売ビジネスであることは百も承知だが、上級グレードに誘導するやり方が露骨に感じた。
今回の全面改良はボディサイズこそ拡大量を押さえたがメイングレードの2.5L化などアメリカナイズが進み、一方でMT車やターボ車など従来のフォレスターらしさを持ったグレードを一斉に整理して合理化を進めたように感じる。
車両からはスバルらしいマジメさを感じたが、北米中心のエンジンラインナップに加え、露骨に上級グレードを選ばせて粗利を稼ぐ販売戦略はかつてのスバルを知る私のような者にとっては少々寂しさが残る。
MTはムリでも、レヴォーグの2.0Lターボを積んだXTを残してくれたら、税制的に有利で2.5L相当のパワーを発揮する1.6Lターボを積んでくれたら、ツーリングのオプション選択をもっと柔軟にしてくれていればとついつい思ってしまう。水平対抗ターボMTのフォレスターに魅力を感じて歴代乗り継いだスバリストも先代フォレスターで、「今回はMTが無いのか。ターボがあるだけ良いか」と妥協してくれたのに、今度は「ターボも無いのか・・・。自然吸気の2.5Lでいっか」と妥協してもらうことになる。段々とスバル味を薄めていくと、顧客のロイヤリティは徐々に低下し、競合車に流れてしまうリスクを持っているような懸念も持った。
見積もりを取ったが、カーナビもナビパックと称して
ETC2.0とバックカメラ抱き合わせになっており、ケンウッド製7インチ21.7万円~パナ製8+6.3インチ24.7万円。7インチ版はカーナビの画面が着て欲しいI/P上端には抱き合わせのナノイー発生器が配置されてナビ画面は下寄りに配置される。およそ自動車メーカーの純正用品として不適当に感じた。結果、3万円の事だから良い方を買おう、というストーリーになっている。
私の場合、ツーリングに好きなMOPを着けて税抜き285万/税込み307.8万円、ベースキット、ナビバック、コーティング含む用品が46.1万円、エコカー減税無し、点検パック、延長保証を含んだ諸費用39.1万円。合計393万円である。ものの本に拠れば平均値引き16.8万円との事。
仮に20万引いてくれても、373万円では焼け石に水だ。
フォレスターも随分と高価な車になってしまったと痛感する。車自体は★4つ着けたいと思ったが、価格設定の面で★3かなぁと判断。