●コンセプトは変わるが、変わらず時代を良く見ている
「小さく見えて大きく乗れる」デミオも
発売から18年を経て「人車一体」を謳うようになった。
かつては3ナンバー化を推進したマツダだが、
過去の教訓からかデミオはしっかり5ナンバーを死守。
初代はオートザム・レビューの車台を活用して作られた
フォード・フェスティバ5ドアのようなモデルだ。
NBAのプレーヤーであるスコッティ・ピッペン氏をCMに起用して
バブル崩壊後の傷ついたマツダを救う一台になった。
キープコンセプトでブラッシュアップさせた
2代目ではフォードの車台を活用。
伊坂幸太郎の小説ガソリン生活の主人公にもなった。
比較的地味なモデルであったが、兄弟車のベリーサは
長く売られる隠れたヒット作となった。
3代目となる新型は、「New target」というコピーからも分かるとおり、
廉価な実用車というキャラクターを脱し、軽快なパーソナルカー路線へ
シフトした。その決意は日本国内の車検証の車体形状が「ステーションワゴン」
から「箱型」へと変わったことでもわかる。
3代目デミオは居住性や積載性をある程度犠牲にして
軽量でスポーティなZOOM-ZOOMなキャラクターを打ち出しつつも、
NAミラーサイクルにCVTを組み合わせた燃費訴求グレードを用意した。
モデルライフ後半で第三のエコカーの先駆けとなる
スカイアクティブエンジンが追加された。
13-SKYACTIVと名づけられた新グレードは
圧縮比14という超高圧縮比のエンジンを
レギュラーガソリンで普通に走らせたのが立派。
燃費は10・15モードで30km/Lをたたき出し、
当時のFITハイブリッドと並ぶ燃費を出しながら
135万円からという低価格も両立した。
専用装備が専用アルミやエアロパーツという
マニアックなグレードであったが、
実際に試乗してみるとCVT特有のフィーリングも相まって
非力さを拭いきれなかったのも事実だった。
(i-DMが搭載されたのもデミオ13-SKYACTIVが最初だった)
マツダがデミオでエンジンのみのSKYACTIVを追加した後、
エンジンとATをSKYACTIV化したアクセラを発売、
ボディも含めてフルSKYACTIV化されたCX-5が発売されると、
マツダの評価を一気に押し上げる原動力になった。
その後、魂動デザインがアテンザに採用され、
アクセラも維新され、自ずとデミオへの期待も大きくなった
今年の6月、マツダは4代目デミオに新開発の1500ccディーゼルエンジンを
搭載し、170万円台で販売すると発表した。
欧州ではずいぶんと前から小型ディーゼル乗用車が
重要なポジションを占めていたが、
日本に居ながらにしてついに欧風本格ディーゼル乗用車を
味わうことができるとあって自動車ファンの熱い注目を浴び続けていた。
日本の自動車販売が頭打ち傾向が見られ始め、
各社ともに焦りが見られる中でマツダは小規模メーカーらしく、
独自路線を貫き、「広島の欧州車メーカー」になろうとしている。
個人的にも日本に軸足を置きつつ、
欧州を向いたマツダが放つ4代目デミオは
VWポロを始めとする欧州勢の方を向いた顧客層を
取り戻してくれるのではないかとも期待している。
●選択と集中の内外装
ディーラーで新型デミオと対面した。
写真で見たときほどではないが、
全幅1700mm未満に収める為、魂動デザインは少し窮屈そう。
それまでのゆったりしたサイズのマツダの新世代商品群と比べると
獣のような顔つきは小鳥のように見えた。
特に上級グレードに装備されるLEDヘッドライトは
円弧状に光るシグネチャーLEDランプを装備し、
夜間、遠くからでもマツダだと分かる目つきとなった。
リアビューも同じく円弧状に光るリアコンビランプが採用され、
統一感の確保も忘れていない。
全体的にスポーティでパーソナルユース重視。
全長拡大分も主にスタイリングのために使ったとのことで、
大きく乗れることはさほど重要視されていない。
サイドから見て、
Frドア前端見切りからホイールアーチの距離が長いことが特徴。
私のように旧い人間は「BJファミリア」を思い出した。
右ハンドル車のドライビングポジション適正化を狙ったらしい。
一般的にFF小型車はキャビンを広く設計したいため、
ダッシュにタイヤハウスがめり込む形をしている。
左ハンドル車の場合はめりこんだタイヤハウスを
フットレストとして活用できるが、
そうして組みあがったパッケージングを右ハンドル車に転用すると
アクセルペダルが左にオフセット配置せざるを得ず、
ステアリング中心に対してずれた姿勢となる。
参考のため典型的なFF小型車であるminiの写真を掲載するが、
ホイールハウスの影響でペダル類が
左側にオフセットしていることが分かる。
新型デミオの場合、
Frホイールを80mm前方に追い出して足元スペースを拡大し、
アクセルペダルとブレーキペダルの
中間地点に右足が来る自然な配置にこだわったという。
更にAピラーも80mm後退させたことで
ロングノーズショートデッキのプロポーションが完成した。
コンパクトカーでありながら、このプロポーションとなると
パッケージング的には明らかに前席優先といわざるを得ないが、
もとよりパーソナルカーとしての資質を優先したデミオにとっては
そのことは特に欠点にはなっていないと感じた。
インテリアも進化している。
握りやすいステアリングと三眼式のスピードメーターは
明らかにマツダデザイン。
初代の打ちっぱなしのプラスチック一体成型の
インパネからは遥かに進化した現代風のインパネが目を引く。
インパネの中央にはマツダコネクトの液晶画面が鎮座している。
従来の考え方では画面の位置を正にしてそこからインパネの面が
溶け込むようにデザインすることが定石であったが、
デミオのインパネはそこから脱却。薄型液晶を配置しながら、
それとは関係なくインパネ面を張った。
この処理のメリットは、従来ありがちな液晶画面が
インテグレートされたインパネと比べて
開放感のあるすっきりした印象が得られる事だ。
外装のスポーティで軽快なイメージを内装がスポイルしていない。
AUDI風の丸型の空調吹き出し口はなかなか魅力的。
助手席前のオーナメントは上級グレードでは
柔らかい表皮にステッチが入った他、
中級グレードでは幾何学シボ塗装を施して
欧州のプレミアムブランド風のチャレンジが見られるが、
一方で割り切り箇所も見られた。
ライバルでは当たり前のサイドガラスのUVカットガラスが装備されず、
収納数も比較的少ない。
サンバイザーのチケットホルダーは夏場にびよーんと伸びそうな
軽自動車のような頼りなさ。
更にグローブボックスもダンパーが省かれて
ロックを解除したとたんフタがガタンと外れて
膝を直撃する振る舞いは優雅さには欠ける。
後席も重要視されていない。
Rrアシストグリップが省かれているほか、
ドアガラスのディビジョンバーも廃止。
アームレストも前席と同形状ながら硬質樹脂であった。
最も、サイズ的にはヘッドクリアランスも十分で
シート自体がケチられている印象は無かった。
とは言え、価格も大切なファクターであるBセグメントは
何かを輝かせる為には何かを犠牲にしなければ成立しない。
だから、選択と集中が重要でデミオは大きくは外していない。
しかし、それでも気になるのはセンターコンソールだ。
賛否両論のマツダコネクトのコントローラーが配置されているが、
パームレストに手のひらを置いて操作する際に、
少し力を入れて押し込む操作をすると、
簡単にセンターコンソールがたわんでしまう。
センタートンネルとの合わせの部分が口開く。
運転席側から横方向に押して見るとグニャグニャたわむ。
取り付け始点が前後一箇所ずつしかないのか、
コントローラー付近の剛性感が不足しているのだ。
ディーラーにはアクセラやCX-5があり、
該当部位を手で押して見たが、デミオだけたわみがひどい。
恐らく、軽量化のため板厚を削ったのではないだろうか?
今までのセンターコンソールとは違い、
デミオのセンターコンソールはマツダコネクトの
コントローラーがあるため、従来のモデルより
H高さが高くなり、ボディとの締結位置からも離れる他、
ユーザーの手がセンターコンソールに触れる機会も多い。
過去の評価基準で設計しているとこのようなことになる。
せめて試作品ができた時にこの問題に気付くべきでは無かったか。
更にパーキングブレーキの配置も右ハンドル車では
操作しにくい左端にオフセットされている。
右ハンドル車のためにドラポジを改善してくれたのかと思いきや、
パーキングブレーキまでは手が回らなかったのだろうか。
デミオのようなコンパクトカーは車両センターにレバーを配置すれば事足りるが、
マツダコネクトの場所取りがあるのでどちらかにオフセットせざるを得ず、
結果的に販売数が多くなる左ハンドル車を優先せざるを得なかったのだろう。
これが思った以上に惜しい部分だ。
●EPSセッティングに異議あり
私が試乗したのはガソリン車の13S-L PKG。
ガソリン車の最上級グレードだ。
とにかく5ナンバーサイズらしい取り回しの良さが魅力。
市街地での運転フィールは軽快に回るエンジンのおかげで
かったるさを感じることはない。
特に新採用の6ATが素晴らしくCVTでは味わえない
「自動車らしい」走りが楽しめる。
アクセルを踏み込むと絶対的なトルクは必要十分の域を出ないが、
乾いたサウンドが響かせながら、自然な加速フィールを見せてくれる。
一足速くディーゼルに試乗した営業マン氏曰く、
「瞬発力はガソリンの方が上でキビキビ走ります」とのこと。
スペック的なトルクも出力も特に見所は無いが、
そもそもこのクラスはエンジンを
しっかり使い切って走る性質がある。
その意味ではガソリン仕様はエンジンを回して走らせたい。
ご自慢のオルガン式アクセルペダルは気持ち車両外側にある印象。
普段、ペダルオフセットのきつい車に乗っている為、
適正配置を謳うデミオのペダルレイアウトが逆に外に感じるのだ。
また、AペダルとBペダルの段差がきつい為、
踏み変えに違和感があるが、このあたりは慣れが解決してくれるだろうか?
ハンドリングで気になったのはEPSの処理。
小舵角のステアリングの戻りが悪すぎる。
ステアリングに力を入れて操舵した後、
手の力をスッと抜けば直進するのが正しい挙動だが、
デミオの場合、手の力を抜いた後真っ直ぐ走らない。
ニュートラル状態から握りこぶし一個分の領域の摩擦感が過大だ。
都市部の市街地走行や高速道路走行などは
普段大きな舵角ではステアリング操作をしない。
直進と言いつつも微妙なカーブを走行することが多い。
本来、手の力を抜けばスッと直進状態に戻れるのに、
デミオは元の直進する舵角まで
ドライバーがその分だけ常に筋力を使って
ステアリング戻さないといけないのは不自然かつ疲れる。
まるで免許取立ての初心者の様に絶えずステアリングを操作して
車が真っ直ぐ走るように仕向けないといけないのは何とも残念。
パワステがなかった時代は、車軸のキャスターを効かせて
自己復元性を確保していたが、どういうわけかデミオは
直進付近に来ると何らかの制御でこの自己復元性をキャンセルしている。
このようなEPSの制御はデミオに限らす近年の実用車では
よく出くわすフィーリングなのだが
一体誰がこれをやれと命じているのだろうか。
マツダはプレマシーの様なミニバンにも
電動油圧PSを採用するくらいステアリングフィールを
大事にしているはずの会社なのに・・・。
ディーゼル車もほぼ同じ特性と予想されるが
重量が違う分だけ何かが違っていて欲しいと言う
祈りにも似た気持ちが私の心には残った。
●ウンチクが語れる営業マンに天晴れ
私はこの感想文を書くために複数の県の複数の店舗を訪れ、
デミオに試乗させていただき、営業マンから貴重な情報も伺った。
共通してマツダの営業マンはデミオに対してウンチクを語りたくなるようだ。
私も雑誌などで入手した情報と被る事もあるが、
マツダの複数の営業マンはデミオのアピールポイントをたくさん知っている。
私は一般の車に興味がない人よりもたくさんのディーラーを回るのだが、
他社の営業マンでマツダほど商品知識が豊富な営業マンは少ない。
「・・・ちょっと細かい点は分かりません、
スタッフマニュアルを取ってきます・・・」
「この車はCVTエンジン?なので燃費がいいです」とか
「このパドルシフトはF1技術の転用です」とか
噴飯物の商品知識しか持ち合わせていない営業マンは多く居る。
少なくとも自分が販売する商品の正しい知識や、
アピールポイントを勉強しないということは、
もしかしたら彼らがそれを学ぶ機会を与えられていないのかもしれない。
「私なんかよりお客さんの方が車に詳しいもんですよー」
という常套句を客へのお世辞に使うだけなら良いが、
本当に取扱商品の知識に乏しいのは少し寂しいと私は感じるのである。
これを読んで下さっている人の中には異を唱える方も居るかもしれない。
「別にマニアじゃないんだし、保険商品と、人柄が良ければ良い」
という人も居るかもしれないが、それだけでは十分ではないと感じた。
一例を挙げるとマツダの営業マンがデミオのドアを開けて
「見てください。デミオのドアトリムのここ、すごく綺麗だと思いませんか?
インパネのデコレーションパネルと模様を合わせてあるんです。
ここは、マツダがとてもこだわって普通の車ではやらないような部分なんです。
研修でも開発者がここをアピールしてくれ、と言っていたんです。
他の車でこんな細かいところまで気にしてる車は少ないですよ」
と私に説明してくれた。
確かにアームレストの下という
普通なら見向きもしない部分に
光沢のある塗装されたパネルが着いていた。
個人的にこれが無くてもデミオの評価は特に変わらないが、
営業マンのアピールでそんな小さな部品にスポットライトが当たった。。
確かに他車ではそこは打ちっぱなしのドアトリム一般面にするのが常識。
わざわざ別部品を増やしたのはコダワリを感じ、
他社よりも秀でているように感じた。
これは営業マンの資質が特別にマツダだけ良いという事ではなく、
メーカーとしてのマツダがしっかりと商品の魅力やコダワリを
伝えられているということなのではないかと推測した。
デミオに限らず、どんな車にも開発者が居て、彼らは何か理由なり
想いがあって線を引いている。理由の無い線なんて部品には存在しない。
決して銭勘定をして期日に間に合わせただけではないはずなのだ。
名も無き開発者たちがそういう車の細部に込めた思いが、
ディーラーで営業マンの言葉から伝わってくることは稀有だ。
新型デミオには競合に見劣りする部分も存在する。
しかし、熱心にウンチクを語る営業マンの話を聞いているうちに
なんだか「デミオはすごい」という感じが沸いてくるから面白い。
蛇足だが、デミオのカタログがクラスを超えている。
一般的な中綴じではなく無線綴じ。
私がカタログを集めていたころは「うわー、高級!」と
感激するようなクオリティだ。
ページをめくると、比較的詳しい技術解説で埋まっている。
確かに車に興味がない人にはチンプンカンプンで無意味と
言う考えもあるが、「理詰めの車」という
新型デミオのキャラクターを考えるとキャラクターどおりだ。
マツダは商品によるブランドイメージの改善は一巡したので、
今後は販売店のリニューアルを行って
ブランドイメージ向上に着手すると新聞記事で読んだ。
(ブルースクエアが好きな人は早めに写真を撮っておくことを薦める)
●ガソリン車のベストグレードは13S
デミオといえばディーゼルに注目が集まることは仕方ない。
特に1500ccをラインナップから外し、
1300ccに絞ったガソリンモデルは
手抜きの廉価グレードという印象すら沸きかねないが
数多く居る既存のデミオユーザーはガソリン車に乗っており、
大半は次もガソリン車も選ぶであろうから、実は重要だ。
ガソリン車のラインナップは以下の通り(価格は税込み)
13C 135.0万円
13S 145.8万円
13S L PKG 171.7万円
最低価格の13Cはヴィッツ1.3F(145万円)、FIT13G(129.9万円)と
ちょうど両車の中間の価格設定だが
デミオはライバルには装備されないプッシュ式スターターや
シートリフター、時間調整式間欠ワイパー、
AM/FMラジオ、テレスコ、15インチタイヤが装備される。
実用上、困るような装備が着いていないことはないグレードだ。
(初代デミオの最廉価は清々しい装備水準だったことが懐かしい)
メイングレードの13Sに相当するライバル車の価格は
ヴィッツ1.3F(145万円)、FIT13G-F(142万円)。
デミオの場合、内装のデコレーションパネルに塗装が加わるほか、
サイド+カーテンエアバッグ、Rrダークティンテッドガラス、
タコメーター、Rrシート6:4分割、マツダコネクト、ステアリングスイッチ、
スマートシティブレーキサポート(近赤外線)など
13Cとの価格差以上に一気に装備水準が上がる。
ライバルと比較するとヴィッツにはサイド+カーテンエアバッグ、
ステアリングスイッチ(オーディオ)、スーパーUVカットガラスがつかない。
FIT13G-Fは更にオートエアコンやスマートキー、
ドアミラーウインカーが装備される。
デミオにはPKGオプションがあり、
ファッション派のためのアルミ+本革が選べるスポーティPKG(7万円)、
LEDヘッドランプ、アドバンスキー、コンライト、雨滴感知ワイパー、
オートエアコンなど上級装備が着く
LEDコンフォートPKG(8.6万円)の用意がある。
13SにLEDコンフォートパッケージを選択すると154.4万円。
ヴィッツにLEDヘッドランプ(7.6万円)、
スマートエントリーセット(4.6万円)、
サイド+カーテンエアバッグ(4.3万円)を選択すると
価格が161万円に跳ね上がるがオートエアコン、衝突軽減ブレーキは着かない。
FITにLEDヘッドランプと安心PKG(衝突軽減ブレーキ、サイド+カーテンエアバッグ)
を選択すると159.4万円とお買い得度が逆転する仕組みになっている。
最上級グレードの13S L PKG(171.7万円)は
13Sのフルオプション(161.4万円)に対し、
本革シート、合皮デコレーションパネル、
カラードグリル、マフラーカッターが装備される。
ライバルの最上級グレードはヴィッツ1.3U(169.8万円)、
FIT13G-S(165.9万円)となる。
ヴィッツUはホイールが15インチになりアルミがオプションで選択できる。
本革ステアリング、スマートキー、オートエアコン、
快適温熱シートとアームレストが備わるほか、
内装が布目調オーナメントがついたり、静粛性向上が図られている。
FIT 13G-Sは13G-Lに加えてRS風外装と
フォグランプ、アルミホイール、パドルシフトが着く。
デミオの場合、本革内装がアドバンテージになる。
装備表と睨めっこして分かったのは、
デミオのガソリン車は上級装備を選んだ方がお買い得ということだ。
RSグレード的なスポーティさは得られないが、
国産車離れしたシックな高級感はデミオが一番だ。
こうして比較すると、
FITのグレード展開は低価格から上級、スポーティまで満遍なく
カバーしており、ヴィッツはメイングレードのお買い得感は高いが、
上級、スポーティを選ぶと途端に割高になってしまうことが分かる。
デミオは13SのLEDコンフォートPKG(154.4万円)が最もお買い得に思えるが、
1300ccガソリン車として考えると、価格自体は高いと感じざるを得ない。
個人的にはアルミと本革が欲しいので13Sの全部着き(161.4万円)を選ぶだろう。
しかしながら、1300ccのハッチバックの上級グレードが160万円を軽く超えてくるとは・・・。
13Sの全部着きで残念なのはグリルが素地色であること。
L PKGのようにボディ同色にならない点だけが残念。
2代目デミオのカジュアルグレードの素地グリルの評判が悪くて
一部改良でボディカラーが挿された歴史を思い出して欲しい。
なぜ13S L PKGを選ばないのかという意見もあるだろうが、
助手席前の白いデコレーションパネルのステッチ色が気になってしまったからだ。
どうせなら赤や黒のステッチを入れた方がステッチが引き立ち縫い目も目立たない。
デミオのハイライトの一つが革内装だが私はあえてこれを選ばない。
FITの13G-Sは魅力的だが、RS外装が私にはオーバーデコレーションだった。
●まとめ
新型デミオにマツダは期待をかけていることだろうが、
実は私たち自動車ファンも新型デミオに対して並々ならぬ期待をかけていた。
驚くことに私の趣味の友人たちである業界人もデミオに注目をしている。
昔から技術オリエンテッドな会社ゆえに競合他社にもマツダファンは居るのだ。
私の15年来の友人も新型デミオに期待している。
彼は某機械メーカーで乗用草刈機の電気関係の設計をしている。
欧州への出張が多く、出張先では自ら
クリーンディーゼルのMT車を運転してひたすらに走り回っているそうだ。
彼はプライベートでR2(MT)に乗っており、
ポストR2にデミオのディーゼルはピッタリだと私に話してくれた。
お金がかけられたアテンザやアクセラと違い、
デミオはあくまでもBセグメントモデルとして
理想と現実の現実の側面が非常に厳しかったのだろうと想像する。
かつてのマツダを支えた安くて便利な車を求める声にも応えなくてはならない。
私は新型デミオに対し、上質かつ男性的な
パーソナルカーという印象を持った。
見て座って走らせても、マツダらしく自動車ファンの
期待に応えようとした痕跡が見えた。
一方で、細かい部分のクオリティ不足もさることながら、
EPSの直進性不足というドライバーズカー
としては看過できない課題も確認された。
何らかの意図があってのチューニングだと思うが、
乗り味に関わる部分なのでここは個人的に相容れなかった。
価格を考えると何かを犠牲にしなければならなかった事は
十分に理解できるがここは犠牲にしてはいけなかったのではないか。
少し歯切れの悪い締めくくりになるが、
ディーゼル車にしっかり試乗して新型デミオの商品力を判断したい