●プジョー208 アリュール
「乗れたらエライ 操作する未来(メーカー違うし)」
2012年9月に欧州発売。11月には早くも国内で販売が開始された。
かつては205と言う天才ハッチバックをルーツにもつプジョーの2シリーズである。
3ドアと5ドアの二種類のボデータイプ、
それぞれ新開発1.2L×5MT、1.6Lターボ×6MT、
1.6L×4ATの3種類のパワートレーンが選択できる。
私自身がシトロエンのDS3に乗っていることもあり、
興味深々でディーラーへ向かった。
●外観
一目でプジョーとわかるネコっぽい意匠。
DS3と比べるとカウルの高さを感じさせない処理が
スポーティでかっこいい。
DS3はフードが少しずんぐりむっくりしている印象がある。
後発の208はヘッドライトを細身にしてグッとスマートだ。
こういう期待を裏切らないデザインセンスは
日本のメーカーも非常にうらやましく思っているだろう。
(たぶん国産メーカーの某モデルも
こういうプロポーションを目指していたんだろうなと思う)
近年の欧州車は高級感のある処理に力を入れているが、
208もそれに倣い商品力強化に余念が無い。
フォグランプ周りのメッキ処理もさることながら、
5ドアモデルではDLOの全周SUSモールが走っている。
またドアフレームガーニッシュにもピアノブラックが使用されていて高級感が高い。
3ドアモデルはベルトラインモールだけがSUSだが、QTRウィンドゥ後端は
ティアドロップ形状のチャーミングなモール意匠となっているが、
この部分は車両から飛び出している。
こういう処理はちょっと難しいがプジョーはそれをやってのけた。
ヘッドランプの見切りがフードと凹凸になっていたり、
建付け上非常に難しい処理を行っている。
ディーラーで見たところ問題がある車両は無かったが、
ちょっとした製造バラつきが見栄えに与えるインパクトは小さくないだろう。
展示車のサイドドアの建付けが悪くベルトラインモールがずれていたので、
外野の勝手な心配ではあるが個体差が非常に気になるところだ。
●内装
内装もクラスを感じさせないスタイリッシュさを感じる。
小径ステアリングの上方から計器盤を見る
「初代ラクティス方式」のメーターパネルはとくに視認性に影響を及ぼさない。
シートもDS3と共通の骨格ながら
グレードによっては本革を効果的に使い、安っぽさは皆無。
レバー類やアームレストなどはDS3と共通の部品が使われている。
絶対的な高級感はという観点で見ればDS3と比べると、
ベーシックな性格から推察するとおり一段落ちる。
それでもソフトパッドを使ったインパネ、ステッチ入りのドアトリム、
豊かな形状のシートなどコストという紐でボンレスハム状態の
国産ライバルと比べると悲しいほどの差がある。
メッキやソフトタッチ素材の使い方がうまいので
国産ライバルと比べるのがかわいそうなほどだ。
欧州では同じ価格帯で売られているとはにわかに信じがたい。
前席に座ると見晴らしがいい事に気づく。
ウインドシールドガラスが大きく、仰角が大きい。
シトロエンC3のゼニスウィンドゥにはかなわないが、
ここにも凹凸モチーフが活かされていて他の車には似ていない。
後席は165cmの私なら座れない事も無いレベルでDS3レベル。
国産某モデルのように私の頭がルーフヘッドライニングに接触することは無い。
●試乗
3ドアの1.2L×5MTのアリュールというグレードに試乗した。
価格はシリーズ中最も安く199万円(税抜き189万円)。
かつての306の最廉価グレードのスタイルも同じような価格でMTが選べた。
モデルライフ後半でエンジンがDOHCになり、
フレンチハッチのMTが格安で楽しめるというプジョーの良心的グレードであった。
208アリュールの場合、決して最廉価グレードという引け目を感じさせない充実装備が目を引く。
主要装備としてLEDポジションランプつきのヘッドランプ、
外装のクローム加飾、16インチアルミホイール、
内装も革巻きステアリングとシフトノブ、シートも部分的に本革となるほか、
タッチスクリーン式オーディオまで標準装備される。
かつてのスタイルと比べると、かなり充実した装備内容だ。
シートポジションをあわせて市街地を走ります。
普段乗っているDS3と比べると、扱いやすく感じる。
ステアリングが軽く、ブレーキや速度調整がしやすい。
1.2Lの3気筒エンジンはバランスシャフトがついた高級な3気筒エンジン。
国産ライバルのようなNVを放置した3気筒ではないところが真面目だ。
(国産ライバルの3気筒はNVが悪いので
最初から対策部品をつけないというひどい割り切りがなされる例も事実として存在する。)
市街地走行では全く力不足を感じさせない。
DS3のターボに乗っている私からすると、
普段ターボに助けられているんだなぁと痛感した。
DS3と比較するよりも、国産ライバルと比較すれば全く遜色がない。
車重が1070kgで82ps/118Nmという性能では絶対的には速くない。
小気味良く5MTをシフトチェンジしてやる必要があるが、
残念なことにシフトフィールは期待したほど洗練されていない。
節度感が無く、ストロークも大きいのでなんだかオーバーアクションだ。
DS3のシフトフィールもそんなに良い方じゃないと思っていたが、
DS3はあれでもキチンと手当てされていたのか・・・・。
これは同じ6MTが選べるGTグレード
(DS3スポーツシックと同じパワーとトレーン)と比較してみたい。
208というクルマを考えると小さめの排気量をシフトワークでカバーしつつ
キビキビ走らせるのがおしゃれでかっこいいだろう。
私も昔乗っていた初代ヴィッツのユーロスポーツを思い出した。(3ドア、1.3L×5MT)
DS3に乗っていることから全体的な包まれ感や操作感は大差がない。
しかし、細かい静粛性や重厚感、スポーティなキビキビ感に違いがあり、
208とDS3の住み分けがしっかりされていることが分かった。
価格帯も異なるが、DS3と208で顧客を食い合うことは無いだろう。
私はDS3の方が好みだ。208が良過ぎてがっかりしなくてよかったー(笑)
ただ、フットレストのL位置の自然さとドアミラーの鏡面形状には
確かなる改良の痕跡があり、ここは非常に悔しいポイントだ。
●お勧めはアリュールかプレミアム
欧州製のお洒落なハッチバックに乗りたいという方には208はピッタリな1台だと思う。
どうしてもATしか乗れないと言うのなら5ドアのプレミアム(218万円)がいいと思う。
1.6L×4ATという組み合わせはC3やDS3と同じだが、特に動力性能に不満は無い。
5ドアというのもつぶしが利いて良いだろうし、ルーテシアよりも設計年次が新しく魅力的。
(マニュアルエアコンになるが価格の安いC3も競合するかも)
もしMT免許を偶然持っていたらアリュール(199万円)を薦めたい。
扱いにくいMTとは違い、208はMTでも扱いやすい部類だ。
3ドアだがパーソナルカーとしては決して不便ではない。
私は数年3ドアのハッチバックに乗っているが決して不便ではない。
GTはDS3と同程度の余裕ある動力性能だが、
258万円(DS3の10万円安)という価格を考えると、
DS3の方がお買い得レベルは高いと私は考える。(細かい部分の高級感が違う)
真のスポーツ派の方は今年夏ごろにデビューが噂される200PSのGTIを待つべき。
6MTと組み合わせられるはずでDSGのポロGTIに対して強烈なアンチテーゼとなろう。