この記事は、
マツダのクルマ造りの哲学を問う!の中で、言及されている、ターボとNAマルチロータのお話について、ちょこっと勝手に、マツダの代弁?を書いて見ました。
繭形ハウジングにおむすびロータで構成されていることは、ちょっと車好きならご存知のロータリーエンジン。
自動車用量産型として実用化したのは、マツダだけですね。
ロータリーの盛衰の原因は、私の見立ては、2つです。
1)世界中の自動車エンジニア(パーツメーカ含む)対マツダ1社の戦いであったこと。
2)ロータリーエンジンそのもののもつ機構的メリットが、時代の進化とともに低下し、逆に時代が求めるメリットには向かなかったこと。
です。(まだ、マツダは逆転狙って頑張っているかもしれませんが、もしそれが敵うことがあるとすれば、それは
機構的(振動やコンパクト性)なもので無く、燃焼的な優位性が出来た時でしょう。
基本的なおさらいですが、ロータリーエンジンは吸排気工程メカニズムから見ると、レシプロ同様に4つの工程を1サイクルで行う4サイクルエンジンですが、おむすび3辺が連続してこれを行うため、クランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトはロータ1回転で3回転します(4サイクルレシプロ=720度/1サイクルに対しロータリ=1080度/1サイクル)。ところが連続して、おむすび各辺で爆発は3回起きていますから、出力軸のトルク変動は結果1ロータで360度で1回という2サイクルエンジンに相当します。これが2ロータだと、半分の180度となります。180度に1回爆発するレシプロエンジンということは、4気筒エンジン相当と言うことになります。
ここにロータリーマジックの全てが詰まっています。
まず、なめらかな回転
・往復慣性運動がない(偏芯回転は有る)。
・レシプロ4気筒の燃焼工程が爆発間隔180度:膨張工程長180度に対し、2ロータでは間隔180度:膨張270度と長く、爆発が連続してオーバラップするため、6気筒エンジン(間隔120度:膨張180度で次爆発工程とオーバラップする)にむしろ近い特性となる。
小型高出力
・1つのハウジングで3気筒分を構成:当然コンパクトに成ります。レシプロを見るとわかりますが、性能を生み出す心臓部はシリンダーヘッドで、ここに吸排気効率を決定づけるメカニズムが有り、高性能エンジンになればなるほど、大きくなりますが、これがロータリには有りません。ローターが兼用しているからです。
・単室容積が13Bでは654ccで合計1308ccで220PS:となりますが、実際には4気筒分爆発してますから、2600cc相当に成ります。これが、小型高出力の内訳です。
これらが当時、振動や高出力対応ができなかったレシプロへの大きなアドバンテージだったわけですが、一方のネガティブ要素も大きかったのです。
まず、直線シール構成の気密の困難さ。(ホンダのNR楕円ピストンの直線部分のシール技術で苦労した話しひとつでも良く分かる) 円形のピストンリングは実によく出来た代物で、近年最も進化した部分でもあります。昔は分厚く、デッドスペースも大きかったのですが、現在は2輪の技術転用で極薄、低張力でも振動せず、十分な気密が保てるようになり、大幅にフリクションと熱効率が向上しました。一方ロータリの直線シールはインナロータ部、サイドシール、コーナシール、アペックスシールとありますが、特にアペックスシールは工学の極みで作られているけれど、シールが押し付けるハウジング面に対して、垂直に押せないロスに加え、機構上Rで接触せねばならず、シールする面に対しピストンリングのように、エッジで気密出来ません(油幕切れに関しては有利だったと言ってますが)。加えて幾何学的にラビリンスが作れないため、どうしてもガス漏れします。特に低圧縮で燃焼が不安定な、アイドリング時にはバックアップスプリング(ピストンリングの自張力に相当)が無いと十分な気密が保てない。爆発時はその圧力が得られるので大丈夫でしょうが、吸排気の呼吸時にフリクションとの兼ね合いで難しい面があります。コーナシールに至っては、良く考えたなぁ、であり、サイドシールもフリクションは大きいです。けれど動弁系が無いので、トータルのフリクションはそうは負けてはいないと思います。
30年前の無謀な時代
機構的な欠点は上記のシール技術ですが、重大なもうひとつの欠陥は「回る燃焼室」です。過早着火には有利なものの、熱を広いロータ面にばらまきながら、嵐の燃焼室で、燃料粒子が遠心力で偏る中で、均一に燃やす??。馬鹿か!と言いたくなる燃焼室で、それでもシミュレーション技術を駆使してタンブル流を作ったり頑張りました。が、熱効率の悪さはいかんともしがたい。プラグ穴で一瞬ガスが逃げるとか、2サイクルエンジンのようにオーバラップがでかく、排気が吸気に回り込むとか、んで吸気がサイドポートになり、レネシスでは排気までサイド排気になりました(水漏れするなぁと思ってたら、やはり初期品は苦労したようですね)。
回転数に応じてバルタイを変えるVVTや、リフトを変えるVTECみたいなことが出来ず、吸気管のファンネル長をかえる技術ぐらいですかね。ま、排気はヤマハのEXUPみたいにやれないことは無かったかと思いますが。そのように、燃焼温度の低さからくるNOXの少なさは一時は有利に、でも最終的には熱効率の低さは残りました。
以下の話は例題として、マルチロータは13Bの3ロータNAを、ターボは13Bターボを対決させた場合の話です。
で、まずはターボの話ですが、NAマルチに対する効果は一長一短です。 オーバーラップのせいで排気が吸気に回り込む分はタービンの圧が吸気にかかることで減少出来、ターボ自体はバルブ通さず、強烈にブレードに当たるのでレスポンス良く回せました。過早着火に対する耐性も良いかに見えたけど、現実は細長い嵐の燃焼過程で、高回転域では非常に部分的デトネーションが起こり、アペックスシールを吹き抜けました。ゆえにブーストの上限を上げるにはただでさえ低圧縮なロータリーをさらに低圧縮にせねばらならず、街乗りの燃費が・・・なのはわかりきったことでした。けれどパワー的には300馬力なら、十分な耐久性を出せました。
ロータリーのターボ化は他のハイパフォーマンスレシプロが次々ターボ化でハイパワー化するため、追従せざるを得なかった面があります。(言い方はアレですが、速い、安い、のロータリーがその地位を守るために)
一方で、NAの高出力化は3ロータのコスモがありますね。レース用とは異なり、2個いちにしたようなエキセントリックシャフトではありましたが、NA3ロータは、レネシス換算だと、300馬力は出せたと思います。けれど、それは3924ccのガソリン車です。コスモなので、単純比較できませんが、NAだったとしても、13Bターボ以上の燃費は微妙だったと思います。ロータリーは負荷が低いと燃費が良いのは、低速トルクの無さゆえ、知らずにアクセル踏み込みが大きいことに因ります。なので軽い車体で3ロータのトルクなら、熱効率的な問題ではなく、運転技術の実燃費においては、ターボより良かった可能性はあります。けれどライバルのレシプロターボには勝てなかったでしょう。高速バトルという限られたステージでなら逆転出来たとは思いますが。
実は、私はデファレンシャル風ケースを設計してワンオフで作り、13Bブリッジチューンを2機対向で繋ぎ、つないだべベルギアから縦にプロペラシャフトを取りだして、スバル的な水平4ロータ400馬力の7を考えてました(なんだ、考えただけかよ!という突っ込みは置いといて(^^;)。寸法的に理想を言えばリアシート部にミッドシップレイアウトでリア駆動したかった。それは難しい4ロータ化をするよりも、完成された13B2ロータを2機掛けした方が、はるかに信頼性があるからです。電装関係は片側1個しかいらない。フライホイール接続部にべベルギアを付けて、向かい合わせるだけですから、大したギアケースではないのです、トリプルクラッチぐらいの小径フライホイール部は必要ですが、ベルハウジング部をポルシェターボのミッションハウジングに合わせて設計すれば、そのまま流用で見事なミッドシップ4ロータの完成です。
テキトーに書いたヘタ絵(恥ずかし(^^;)でもイメージはわかる?。)
この方法論でいけば、さらに2機縦につなげば8ローターでNA800馬力は簡単です。これで場積的にはポルシェの8気筒ぐらいでしょうか。(ロータリは組めばわかりますが、エキセントリックシャフトを考えると2ロータが一番組みやすく、案外ロータベアリングのフリクションは大きくて、ねじれ剛性を考えると重くなるのです。)
マツダがエンジン単体でなく、新たな車体も見直してロータリの生きる道を探れば、スーパーカ―への提供と言う道はあったかもと思ってます(重く信頼性に欠けるV12より、よほど軽く静でやすい。アラブでは燃費気にしないし)私がアメリカで遊んでいたのなら、実現したかもしれません(お金持ちだったらですが)。
信頼性、パワー、トルク申し分なかったと思いますが、燃費は・・・・でょうね(笑)。
燃費に関しては、ロータリーのオーバラップの欠点を生かしたのがルマンエンジンです。意外かもしれませんが、この時代、他社がハイパワーターボでガソリンの気化冷却で燃費が悪かった時、実はマツダのNAロータリは低燃費だったのです。レース用の領域で回る限り、シール漏れも極小で、燃焼も制御出来た。結果、その重量とパワーあたり燃費でレシプロターボのそれに勝っていました。それは使用回転域が限られているという条件に因るものと思っています。今でもロータリは小型軽量高出力を生かした分野で生き残っています。軍用だったりしますが、無人偵察機のエンジンだったり、小型高出力発電機のエンジンだったり。
それらは、常に使用レンジの回転数が設定でき、幅広いレンジや、過渡応答を求められません。ゆえに燃費の差よりも有益なメリットの方が上回る使われ方なのです。私も自分のチューンしたサイドポート13Bはメータ読みですが、140km巡航で14km/lを記録しました。真っ白な乾いたマフラーが自慢のエンジン。ですが、アイドリングとストップアンドゴーの町なかはやはり7km/l前後でした、車重1トン級なのに。
つまり、GT-Rなどのレシプロ2.6lターボの出力比に対しては、マルチロータではロータリーも小型軽量高出力が生かせ無くなる。なので、ロータリーも絶対パワーを求める点ではターボの方が理が有り、耐久性と燃費を考えると、NAになるけれど、それは限定された回し方をした場合であり、一般の道路を走るオーナーCARとしては、重量、コストを増したNAマルチロータよりも、完成された2ロータターボの方が、現実的だったからだと思います。その真の理由はRX-7という良くも悪くも2ロータと一体で設計された車体に有ります。
RX-7のディメンションは2ロータの13B有りき、で構成され全ての動質がフロントミッドシップの方法論で3代に渡ってに詰められた(悪く言えば脱皮しなかった)車です。上で書いた妄想のように、ミッドシップレイアウトにすれば、マルチロータは有り得たでしょうが、GTRより高価なカウンタックのようなポジションの車になったでしょう。
だから、私は有り得たとすればターボではなくリショルムスーパーチャージャの2ロータで、アイドリングからオーバラップの弊害をなくすために常時正圧の吸気室とし、後は今のダウンサイジングエンジンのように、小排気量化とリニアブーストで実質圧縮比14辺りで回せるような、ストローク量の大きいエンジンだったなら、、と。
16xのようにストロークUPは賛成、燃焼室幅狭も賛成ですが、排気量UPはやはり熱効率の低下につながります。ハウジングに3本程度直噴インジェクターで燃焼の同時性を担保して行けば、だいぶ良くなると思います。けれどもガソリンを燃料とする限り、ロータリーの復活はないのでは、、、というのが私の現時点での感想です。それは結局ガソリンの燃焼メカニズムとロータリの回る燃焼室は熱効率を上げることが難しいことに因ります。
SKY-Dの圧縮比14のディーゼルをロータリに持ち込んだら。。。と妄想してみてはいますが(笑)。
ただの空気を詰め込むだけなら、漏れたって関係ない。盛大に排気ガスをEGRで吸気にぶち込んで、リショルムで押し込む。で低圧縮13ぐらいでマルチ噴射でロータの先行側からちびちび燃やす。んで排気遅閉じで燃焼270度の特徴を生かして高温化すれば、結構ガソリンとディーゼルの中間特性みたいなエンジンにならんもんかなと。ま、燃焼の衝撃からシールをどう守るか、結局燃焼制御技術のブレークスルーが必要なんですが(ディーゼルであってもレーザ点火プラグ着火とかね)。
以上、イイね の少ないプログより、ロータリーの与太話でした