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2021年07月10日 イイね!

ポルシェの水冷エンジン 5(おまけ)

ポルシェの水冷エンジン 5(おまけ)長々、お付き合いどうもでした。

言いたかったのは初代水冷のメカの話だったのですが、調べるうちに一部の構造的問題というより、経営的な設計方針レベルでの大転換が有ったのだな、、と言うことがわかり、その点も言いたかったし、メカは疑惑のポイントが全て線でつながっていて、「そういうことか~」と腑に落ちてもらえると良いかな、と言うことで5連続にもなってしまいました。(リクエストのインタミを今回入れたのでまた少し長くなりました(;^_^A)



5.信頼性と補修性

昔、930の2.7Lの空冷を組んだ時、組み方がマニュアルでも複数異なる方法がありました。

空冷エンジンでは1気筒づつシリンダとヘッドを独立して締めて組んだ後、片バンク3気筒分が一体のカムホルダーをこれに締結する方法と、もう一つはカムホルダーに3気筒ヘッドを先に組んで置き、3シリンダー分をヘッドとして一度に挟み込む組み立て方法があるようで、恐らくポルシェ工場での量産時には、後者の方法で組んでおり、レースなどより精密な場合は前者のやり方だと私は思っています。私が自分で組むとき、色々締結歪の伝達経路を検討した結果、やはりピストンとシリンダを綺麗に動かすにはヘッドとシリンダーが真円維持で均等に挟まれていることが大事だろう、とこれを優先し、各気筒毎に仮組し、一体型のカムカバーを組み付けてこれとも軽く仮組し、その状態でヘッドボルトを一旦1/2程度締めて、カムホルダのボルトがどれぐらい歪むのか、手回しで確認して、結構あることが分りました。
<1気筒1ヘッドが片バンク3個付いた状態>ネットの拾い物


<一体型のカムホルダーを載せた状態>ネットの拾い物


そこで、ヘッドボルトを順に緩めてカムホルダーをこれまた順に1/3程締めてから、もう一度ヘッドボルトを1/2程仮締めし、しまりの感触を確認してからヘッドをそのまま2回に分けて本締め完了させ、カムホルダを中央の2番(5番)から外へ向けて締めていました。(空冷はクランクシャフトをケースで絞めた時に手で回すと結構渋いものがあるそうで、それはシリンダーまで組んだ時に軽くなる場合と変わらない場合があって、変わらない場合はクランクシャフトに曲がりが出ている恐れあり、と言う気がします。
私の場合は、どちらも軽くムラなく回ったので良しとしました。


カレラなどの初代水冷構造は、左右でクランクシャフトをクランクブロックASSyとも言うべき構造のものを、左右バンクの水冷シリンダー(外観上はこれがクランクケースに見える)をシリンダーヘッドから長いボルトで挟み込む構造です。俯瞰してみればMezger同様にシリンダーをクランク側とヘッドでサンドイッチ構造なのですが、実際は全く力の伝達が違います。

ヘッドに引き上げられる物体が初代水冷はクランクブロックであり、これは縦割りのクランクジャーナルを締め上げた長いクランクブロックを2個のノックピンで3連シリンダー(ケース)に位置決めされます。

GT-1ケースの場合、ヘッドが引き上げるのは同じく水冷シリンダーを挟んだクランクケースですが、シリンダーはクランクケースの各ボアにしっくりハマってセンタリングされます。つまりピストンの運動に対しての保持剛性は物理的に一体のクランクジャーナルと一体化されています。前者はクランクケースのシリンダースリーブはクランクジャーナルを独立させたクランクブロックとボルトでケースに繋がり、そのケースとは一体のオープンデッキとして繋がって居るのです。(ざっくり目検の距離にして、GT-1はほぼゼロ。初代水冷は、ストローク分の70mmぐらいは伝達経路が離れているでしょう。

繰り返しになりますが、初代水冷のシリンダーはいわゆるオープンデッキ構造で、ヘッド側半分は水冷、クランク側半分はオイルと部屋が分かれ、その中間膜とでもいう部分で「シリンダ」は浮いている。実際ヘッドボルトでシリンダーを挟んでも、そのボルト締結力はシリンダーバレルの外側のケースを締めるだけで、バレルそのものは上は押されるけど下は遊んでいます。
これは、熱膨張や応力歪の面からは真円保持に有利と思われるものの、爆発圧及びその反力たるピストンのスラスト力を受けて首振り振動する力を制振、減衰する力は弱かろう、と思われます。
空冷や、GT-1の様にシリンダースリーブ下端をクランクケースで支えておらず、ピストンが上死点、下死点でスラスト反転するところ(上下方向)で誰もスリーブを支えていないんです。

初代空冷のクランクシャフトは下に減速し、カムシャフトが1/2回転となるようにインターメディエイトギアを介してシリンダ頭部のカムシャフトまで掛ける2段掛けが、空冷と初期の水冷ターボの特徴(初代水冷はタイミングチェーン)。また初代水冷はツインカム化したため、一旦エキゾースト側カムシャフトを駆動し、吸気側カムはその排気側からチエーンでつなぐ2重構造化。これでバリオカムを形成、後期では吸排気連続掛けに変更。それが991からの新世代はオイルポンプ駆動を兼ねていたインタミギアをやめて、直接クランク駆動としたうえで、ダイレクトにカムシャフトに巻くためにクランクギヤスプロケットを限界まで小径化し、2倍の径のカムスプロケットにこれを吸排気兼用で巻く構造としています(もちろん左右バンクがあるので、左右で2重のスプロケ構造ではありますが)。



このため、限界まで攻めたとはいえ、2本のカムピッチが広くGT1ターボ系のヘッドよりバルブはさみ角は広いように思えます。「ポルシェらしい」設計ですが、本当の評価はもう少し先にならないと見えてこないかも。

<カイエンターボのV8>
Mezgerの構造に類似した逆の構成。インタミをギアで上に上げてからカムチェーンで左右バンクに。クローズドデッキでちゃんと等ピッチのヘッドボルト。



ところで、今回の分析は全くエンジンおたくの目線であって、こと「911」と言う車の商品価値に対して「ドライバーが操るRRポルシェ」と言う楽しみからすれば、全く意味のないものだとも思います。 メーカの品質を保証された市販車は、そのノーマルの範囲で大事に乗れば、全く問題なく(ほとんどは)性能発揮してくれるだろう。そういう意味では大事にされたお安く変える中古の個体を見つけて乗るのも、有りだと思うので、そこはお間違えなきよう。

996は目利きできれば、お得な911と思います。
ただし、買う時は目利きが大事で、暖気前の初爆から暖気中の排ガスに青いオイル煙が出ないか、ピストンスラップ音がでないか、クーラントまたはオイルの両方に濁りや白濁が無いか、6気筒の粒がそろっているか、など着目するといいかと思います。ワンオーナで前歴確かだとなお安心ですね。

以下は私なりの気づいた注意点を列記しておきます。
注意点としてはノッキング耐性が低いので
①インジェクターのクリーン化(ノズルクリーナなどでのメンテ)
(但し、直噴ではないのでそこまでダイレクトに効くわけではない)
②点火時期のズレ防止。クランクパルサーの故障やズレは即修理。
③ドライサンプでないので、スカベンジ後の圧送側ポンプに吸われるまでにいかほど消泡出来るのか不安。オイルは消泡性能のいいヤツが望ましいでしょう。
④レッドゾーンは守りましょう。
⑤カムチェーンテンショナーは空冷時代から鬼門だった箇所ですが、油圧式変更後は安定しているようですが、この初代水冷はクランクケースの前後で左右逆に引っ張りますから当然この餃子の皮のクランクケースを前後で逆方向に引っ張ります。最中合わせの薄皮ケースでベアリグが前後で逆のラジアル荷重を受けるわけで、クランクケースのねじれは・・・。エンジン全長分のモーメントですからねー。

<インタミ構造のにわか分析>
現物見て無いから何ともですが、初期のものはこのインタミベアリングの負荷見積もりが、上で述べたように両端で片持ち(絶えず軸が倒れるように)荷重が掛かってる軸なので、静的な見立てではラジアルベアリングでいいけれど、現実は両端ともアンギュラ型でないと駄目でしょう。そのタイプだったとすると、容量がそもそも不足(想定外の合成力)で特にフライホイール側のインタミ用ドライブチェーンの掛る側は負荷が高いのに、アウタ―側をインタミシャフトに組んだ外輪回転型で(軸芯側が固定なのに固定側が組立側でガタを持つ)。回転がクランクの半分だと4000回転MAXぐらいだからイイと考えたんかな?)、インナー側を3点ボルト締めのシール付きインローで固定(つまり設計上はラジアル荷重はインローが受けてボルトは抜け止めと考えた。ところが固定軸が長く、インタミシャフトも長く、M8ボルトにはどう見ても接続点で曲げ荷重が掛かる。D/Lで見てもこのインローでは倒れはは防げない)。

<インタミシャフト駆動側(フライホイール側)のベアリング>


写真のように固定端からベアリングまでの片持ち距離が長いうえに、このインローの隙間と幅を見ると陽動し、オイルシールは有ってもオイル漏れしそうです。ブラケットとインローが一寸しかかからないシャフト入れてM8で締める。



そうすると、このM8ボルトの首下はクランクシャフトからのドライブテンションで常に斜めに曲がった状態で強弱トルク変動で絶えず振れてインタミシャフトを支えているので早晩、疲労破壊で折れるでしょう。そうだとすると対策はベアリングのアキシャル荷重を受けれるタイプかつ厚みのあるものにしてモーメント減らしてインローでの倒れ防止。ボルトのサイズアップで疲労限以下に応力減らす等でしょう。

そう言う構造なので、このテンショナーのダンピング力は重要ですから、古いヤツはインタミベアリングの対策品交換と同時に新品交換が吉でしょう。

⑥長期エンジン掛けてない時の始動を考えると、エステル系など残存油膜の強いのが良いでしょうね、ピストンの首振り時の傷付き防止
⑦エンジンは原則ノーマルで乗りましょう。コンピュータいじって特に燃調と点火時期をパワーアップ側に攻めるのはトラブルの元かと。
こういった点に注意すれば、何でもおせっかい前の空冷的な911時代の乗り味を楽しめる996や997の前期NAタイプは、中古車として魅力的な面はあります。
911はどの時代も、新しくなると何らかの技術が付加され進化しますが、それが必ずしもドライビングプレジャーの増加を担保するものでは無く、失われてゆくものも有るのです
なので、どれも長所に着目し、これを引き出して楽しむことができます。


あくまで動画作者の個人的見解ですが、面白かったので上げときますw。今回の初代水冷エンジンを観察した後だと、正に「多分、こうだったんじゃないか劇場」の様に思えました(;^_^A 
時間の無い方は9:40秒あたりから見るといいです。こう思っていた人がデビュー当時もいたんでしょうなぁ。




6.おわりに

今回、水冷に移行したポルシェFLAT6を勉強してみて、改めて根幹の設計センスは、時代と関係ないなと。スタートが構造的内燃機関の完成期となった第2次大戦時の航空機エンジン。この時ほぼ完成したと思う。で、その工学的思想を引き継いでいる系譜にMezgerエンジンは有るなぁ、と思った次第。

長く乗り倒す耐久性を考えるなら996/997世代はターボのみかな。991以降は、大丈夫なんでしょう、ただし車がだいぶGTになってしまってますが。
水冷Mezgerエンジンは、壊れても生き返るレース用途の構造になっているのは魅力。しかしお金のかかった作りなので、OHなどするとどれもパーツが高いだろうな、と思います。普通に乗るだけなら宝の持ち腐れかも知れません。でもそれが魅力なのは確か。
しかしネットで見つけたGT2のパーツ価格だと
クランクシャフト:約150万
コンロッド:1本35万(チタンかな?)
シリンダーヘッド(片バンク):約80万
シリンダー(片バンク)50万
わかりますね(;^_^A、そうみると中古の996GT2安いかも(;^_^A

内燃機関の歴史を飾るようなマニアックなエンジンとして、壊れたら最後はエンジン取り出して、オブジェとして自室に飾って晩年のコーヒーのお供にするのもいいかも、、と妄想するのであった(;^_^A。DIYでいじるならやはり空冷が一番シンプルでいいですね。今後も多くのファンが居るので価格は上がり続けるのかな。
一方、水冷の方はDIYも大変ですし、991後期からは標準でもツインターボが付いてきますから、維持・保守のコストは大きいです。古くなってパーツ交換するのも半導体がいっぱいでどこまで供給確保されるのか?。

そういう意味でも、水冷エンジンは、新しいものを買って楽しむのが王道で、DIYや歴史遺産として楽しむのは、GT1ケースの997前期ターボとGT3まで、、と言う気がします。

現行の991後期(素の911でもツインターボ化)からは、とても理にかなった構造(生産技術が追いついたことでのコストダウン)が実現出来ていると思います。そのため、3Lに縮小しているのは、純粋なターボとのヒエラルキーを脅かすことになるため、小さくしたのだろうと思いますね。なので潜在力は非常に高いと思う反面、整備性維持コストは、きついかと。こちらについては、まだ新しすぎて、情報も少ないので、また面白いことが見つかったら、取り上げるかもしれません。


今回、指摘したようなポイントはメーカのエンジン屋なら誰もが気づいているでしょうし、自動車評論家の中でも、メカに造詣が深い人は知っているでしょう?。しかし見たことも聞いたことも無いのは、業界のアレと言うことなんでしょうか?。福〇〇〇郎氏も、そこまで踏み込むとアウトなのかなぁ。

しかし、ひとつ良い方に考えると、それは「言わぬが花」だと言うことかもしれません。この業界の狭まりゆく趣味車の世界で、また楽しい車を作るために必要な苦い経験、投資?ということで、みんなは次を期待したのかもしれません、「次のために作ったステップ」だと飲み込んで。


もう7年前になりましたが、今回の分析と同じようなモノづくり思考過程を上げたエントリーをリンクしておきますので、少々まとまりに欠ける長文ですが良かったら振り返って頂けると、今回の水冷初代エンジンを理解するにあたって、助けになるかも(;^_^A

<モノづくりに寄せた心の旅路> 


Posted at 2021/07/10 20:50:09 | コメント(5) | トラックバック(0) | エンジン | クルマ
2021年07月07日 イイね!

ポルシェの水冷エンジン 4(オープンデッキにもほどがある)

ポルシェの水冷エンジン 4(オープンデッキにもほどがある)(つづき)
圧力釜の構造になっていない初代水冷エンジンですが、シリンダヘッド(蓋)とシリンダー(お釜)の関係で言えば、華奢な蓋と締め付けボルトに加えて、お釜もオープンデッキでへなへなです。オープンデッキは一番熱を浴びる燃焼室のシリンダ上端部に水路を持ってこれるので、ヒートスポットに強くノックしにくいと言われます。しかし問題はそれ以前です。



4.シリンダーは3個の浮いた底抜けコップ

②シリンダーバレルの剛性が全く期待できないシリンダーブロック構造
通常シリンダーとクランクケースを一体型とする場合、シリンダーの剛性アップが期待できるのに、この型ではクランクケースと見えるものがそうではなく、シリンダ一体型オイルケースと言う感じのクランクブロックを包むだけの「皮」にしかなっておらず、主題に上げた「有り得ない」の正体、つまりシリンダーヘッドボルトとボアの関係が、でたらめとなった理由は恐らくこのクランクブロックをシリンダに締結して一体化するための締結位置にあって、(クランクブロックの構造上、正方形にそのタップが配置できなかった)シリンダーヘッド側と締結する為の「原則」は「無視した?」のでしょう。

<クランクブロックのヘッドボルト位置>

※これを見るとわかるように、シリンダーブロックの根元より深いクランクブロック位置までタップを移動させると対向バンク側のコンロッド大端部の回転軌跡に干渉するので、最適位置が成立しなかったと思われる



しかもピストンのサイドスラストに耐えるシリンダーのリブが(上下に無い)
普通、水路を邪魔しないように、、とは言いながらトップは繋いで剛性確保するものです。

<スバルやその他>



<初代水冷の煙突型シリンダー>

ご覧の様にぐるりと何も支え無し。写真はネットの拾い物なので、破損部分は気にせずに(;^_^A

つまり、水とオイルを分けるシリンダーの約中央付近のアルミの床?にシリンダーは浮いている状態で、オイル室側はクランクブロックに圧着されているわけではなく、浮いているのです。つまりヘッドボルトでクランクブロックを締めてゆくとシリンダのヘッド端に掛った締結力はシリンダ上端を押して、それは水とオイルを分けた中央の床?で受けるのです(-_-;)。

上下オープンなシリンダは燃焼室側を不当ピッチの剛性の低いヘッドで押され、下に沈むでしょ。しかしシリンダケースの外枠はヘッドとクランクブロックを挟むわけでつっかえ棒になっています。その上で、クランクシャフトがショートストロークの水平対向=スラストの掛かるピストンを剛結できていないシリンダが支えるわけです。
水平対向に限らず、高過給、ハイパワーエンジンはクローズドデッキが定番ですが、生産性からオープンになるものでは、リブ入れて補強してあります。
これではピストンの首振り共振や、シリンダーのボア端面がガスケットに不当圧で押されているだけの固定方式なのですから、油膜切れは致命傷。

<Mezgerタイプ996/997前期ターボのヘッドボルトピッチとシリンダーバレル端の位置>


次の世代エンジンまでの橋渡しに使われたGT-1クランクと呼ばれるMezgerの水冷は極めて凝った構造で、狭いボアピッチの間にウエットライナ―のスリーブを通して薄い水路を成立させています。シリンダーの上部と下部にOリングを配して水密していることから、スチールライナだと思うのですがわかりません。(初代水冷のシリンダはアルミブロックにシリンダー内面のみの溶射か、複合メッキ性と思われ傷が入れば、全体交換ですが現実にはボーリングしてドライライナ―を冷やし嵌めで補修するすべが有るようです)、

<ハヤブサの4気筒シリンダー>

CBRは今のトリプルRになってクローズドデッキになってますね

名機ハヤブサのエンジンは、今年3代目の新型が登場しましたが、1999年デビュー以来ずーっと同じ構造でクランクケース+シリンダ+シリンダーヘッドの分離構造です。私の見立ては、これは水冷故にスクエアなシリンダーブロックを基準剛体として、クランクとヘッドでサンドイッチとする締結構造でMezgerタイプと同じ思想です。

なので、ポルシェは最初からこれは「ターボには使えん!」とわかってて開発したのか?、あるいはテストして色々やったが、耐久性が出せなかった?。ま、GT-1クランクをターボには使っていたことから、最初からわかっていた線が濃厚です。

しかしこれではレースに使えないと言うことで、NAとターボの共用化(市販ではNAが存続しない未来も見据えて)あまりにもGT-1クランクエンジンは手間暇、コストが掛かって大変だったものをきっちり見直したのが997後期のPDKと組み合わされるMA-型のエンジンとなるのでしょう(ボクスター/ケイマンだと981型から)これは見るからにポルシェのエンジンぽいです。

この初代水冷の狙いを総括しておきたいと思います。
これまで、性能追及の目線で批判してきましたが、当該エンジンの設計リーダの目線で逆解説してみたいと思います。

①特異なクランクブロック構造
②クランクケース一体型シリンダ
③剛性の低いシリンダーヘッド

という点を解説しましたが、恐らく実際は以下の順番だったと思います。

新たなポルシェのラインナップ構想から、ボクスター/ケイマンそしてカイエン/パナメーラと911からいわば上下に幅を広げる事業構想があり、このポルシェ入門ラインをカバーする新エンジンを開発する。この際、911のブランドを使う意味からも水平対向6気筒とする。
では、どうやって水冷フラット6を安価に作るか、しかも生産数量が多いので量産性が求められる。このエンジンは911のNAに広く使うが、レース用は別建てとする。従って性能追及は必要ない。

この方針から出てきたのが金型鋳造によるシリンダーブロックの上下ダイキャスト製法。同じくシリンダーヘッドもダイキャスト化。これを成立させるために、シリンダーとクランクジャーナルを分離する必要があり、シリンダーブロックを簡単な構造にしたのです。



その為、シリンダーはオープンデッキのリブ無し構造(抜けない構造は不可)。
そして、このために作ったクランクブロック構造では、シリンダーヘッドボルトを均等配置できなかったし、シリンダーからも遠くなった。しかし、最新CAEシミュレーションでこれでも成立することが分かった。ただし筒内爆発圧は〇×まで。ピストンの首振りスラストから回転数は〇×まで、、、というように。
(あくまで個人的な推定です。マツダの複雑なSKYはこんな中子パズルで作ります。)


と言うわけで

>恐れ多くもポルシェのエンジンデザイナーとここを突いた議論すると、私は生きては帰れんなぁ、・・・

と書きましたが、実際は「君、何青臭いこと言ってるんだい(笑)、オタクに付き合っていたら、会社は大きくならないんだよw。どうせ誰もがサーキット走るわけじゃない、六本木で送迎に使うだけだろ?。ダイカストでたい焼きの様に、量産できるんだぜ。それこそが開発命題じゃないか。ガハハハッ、、」とゲルマンが笑ったかどうか知りませんが、ま、そんな感じ?(;^_^A。

冒頭述べた
「スタートラインが180度逆だった、」の意味は、

①開発命題は、レース性能ありき、ではなく「安価な大量生産」
②高い耐ノック性、高出力対応の「燃焼室」ではなく、ダイカスト金型で作れるクランクケース構造だったわけです。

その狙い通り、過去に上げたシリーズの「911のポルシェからポルシェの911」のようになりました。

見事な会社発展の成功だったと言えるでしょう。


しかしレース用のGT2やGT3が別物となると、また市場で色々起きると、「ポルシェブランドに傷がついた?」のも事実ではなかろうか?。その問題も身に染みたはずです。
そして、直噴化やライトサイジングターボ化はCo2排出量や、燃費規制、排ガスで避けては通れない技術となって、伸び代ゼロの設計はやり直し。それが水冷第2世代のエンジンに見て取れます。結局水冷第2世代は、Mezgerのいいとこどりでもあり、(スバルと一緒じゃんは、言うとまた喧嘩(;^_^A)
はキチンとポルシェらしい設計だと思います。

次回で終わりにします、長すぎて飽きますね(;^_^A。結局最後の巻だけでいいかもしれん、、と思いだしました。
(5に続く)
Posted at 2021/07/07 18:23:29 | コメント(2) | トラックバック(0) | エンジン | クルマ
2021年07月03日 イイね!

ポルシェの水冷エンジン 3(基本構造の、有り得ない)

ポルシェの水冷エンジン 3(基本構造の、有り得ない)(つづき)
現実の商品はメーカとして仕様を満足したものなので、とやかく言う筋合いはないのですが、設計上「ここが、キビシーよね」と言う部分は見えるものです。言わばエンジン設計上の基本特性。後でも述べますが911に乗せるつもりではなかったのかもしれません。とは言えそれでもポルシェ、NAで355PS/3800cc(93PS/Lと立派なもん)、これを上限に見切った上での設計だったのでしょう。ともかく水冷4バルブヘッドを作りました。これが問題です。




現代の直列エンジンでは一般的なクランクケースとシリンダが一体構造のエンジンは普通ですが、空冷ポルシェは大型ディーゼルや、航空機空冷エンジンのような1筒独立シリンダ構成で、空冷はヘッドも独立構造と言う恐らく乗用車用では唯一ではないかな?、の凝った構造です。メリットはヘッドガスケット抜けが起きにくく均質で気密性が得やすいということ。また異常燃焼等では破損の1気筒の交換で他の気筒に影響を及ぼしません。裏を返せば、空冷エンジンの熱歪で気密保持する構造として、航空機で実績の高い構造を採用したと思います。




空冷では容易なこの構造(組み立て生産性は非常に悪いですが)も水冷となると水路の構成が厄介です。
加えて高出力で吸気効率の良い4バルブにすると、燃焼室中央のプラグホールとバルブシートの間が狭くなり、熱応力と金属疲労で、亀裂が入るためで、バリ伝のグンちゃんの愛車ホンダの空冷CB-F750もチューンするとクラック入った。特にターボでは排気バルブの冷却が追いつかず、ナトリウム封入バルブで熱伝達しても尚、足りない(バルブシートが冷えないから)

ノーマルは耐えてもレースは無理。ポルシェもわかってて空冷由来のターボ化も、ついに1974年のレース用の934ターボ(930/71型)で初のヘッドを水冷化したエンジンを投入していました(以後935が席巻するGr5の時代が私に取ってのポルシェ黄金期の記憶ですね(;^_^A)。そのポルシェが初代水冷の構造で過給するわけない(;^_^A。
ポルシェは4バルブ化の水冷市販エンジンとして、ボクスター(1997~)に投入、続いて996シリーズに送り込んだわけですが、その流れからして不穏です。

3.シリンダーヘッドの気密耐性(最大の有り得ない)

シリーズ1回目の写真で出した宿題ですが、気が付いた人いたかな?。
私は他では見られない設計ポイントに気が付いて、二度見しました(;^_^A

<各時代のシリンダー取付ボルト位置>


これまで述べたポイントは水平対向エンジンを構成する上で、一番重要と思われるのが、先に述べた「カミソリクランクシャフト」をどうやって支えるか?です。見た目に分かりやすい特徴ですよね。しかし大事なのはその前。
もっと基本の基本、「内燃機関は圧力容器」だと言うことです。スタートラインが180度逆だった、と言うのはこれもそうなんです。

まずパワーを絞り出すには、如何にでかい爆発パワーを得るか、、ですね。ガソリンエンジンはディーゼルのように高圧縮で自着火(=ノッキング、違いは想定内着火か、想定外着火か、の違い)しませんが、特にピストンの下降に伴って均一な燃焼速度が得られるようにしたい、けれど直噴は混合気の濃淡ムラがあり、部分的過早着火が起きやすい。なのでトヨタのように、ポート噴射と直噴を使い分けるエンジンが有ります。
また脱線するので、興味のある方はリンク先を見てください。昔ほど条件が単純ではないので、様々な要因が絡み合っている一旦が垣間見れます。

要するに内燃機関とは、スタートは「爆発有りき」で力が発生し、これを回転運動に変換するメカがクランク機構と言うわけで、まずスタートラインは「頑丈な圧力容器」なんですね。この燃焼室=圧力容器の設計こそが、内燃機関設計の要でしょう。それがチューニングする土台のエンジンのポテンシャルを決めます。ですが初代水冷はこれが二の次(つまり、チューンする余地無し)。

恐れ多くもポルシェのエンジンデザイナーとここを突いた議論すると、私は生きては帰れんなぁ、と想像できます。だって、彼らは絶対間違いを認めませんからねw。このことからM96系の初代水冷NAエンジンは、なぜポルシェがこの設計にOK出したのか、その理由は恐らくボクスター、ケイマンの量産普及市場の創造。買いやすい価格。それを流用して911の利益率を上げる、てなとこだろうと推察します。

そして、ちょうどCAE技術の発展期でもあり、全て解析で行けるという判断だったのでしょう。インタミベアリングなどは、原因もわかっているし、補修も出来るのであえて言えばベアリングの選定が甘かったまたは取付ブラケット側の剛性か、その両方か。

シリンダーとピストンが作る燃焼室の気密を保持するうえで最重要なヘッドの組付け。この時、通常は1気筒を4本のボルトで均等に締めます。圧力容器の設計などやったことが有ると当たり前ですが、ボルトで締め上げるテンションが均一なことが重要で、均一に弱ければ、漏れにくいものの、どこか1か所が高く、バランスを崩すと圧力は一番弱いところに集中し、歪も一番弱いところに集中します。

従って、等圧で頑丈なシリンダとシリンダーヘッドの気密を構成し、その頑丈に作った部分を土台にクランクジャーナルを支える、、というのが神様のセオリー。
強固にクランクシャフトを左右から挟んだクランクケースから、長いテンションボルトで軸力変動を軽減させて、ボアの直近からシリンダーバレルを挟んでヘッドを締め付けます。
Mezger型の場合は、空冷と類似構造で独立したシリンダスリーブをOリングを介して3連シリンダーケースに収める構造で、何かあっても、スリーブとピストンをその1気筒分のみ交換で済みます。これはレースやチューニングなどでとても合理的な構造。ゆえに産業用途のエンジンではこういった分割構造がほとんどです。

このように、1気筒を圧力容器とみた4本のフランジボルトが均等に締め上げる構造はとても美しいと思っています。写真で紹介したように唯一初代水冷NAエンジンのみがそうではない。(しかし内燃機関でこんなの、見た記憶がないけどな)。

<初代水冷のシリンダーヘッドボルトの不当ピッチ構造>

※ベントレーのW12気筒の片バンクを載せてますが、これで分かるように、シリンダーヘッドボルトの均等配置に合わせてシリンダーを並べているわけです。
クランクシャフトのジャーナルピッチもこれに倣っている。


①ヘッドボルトが正方形の等長ピッチで無く、しかもバレル端より外側と内側のアンバランス構造。当然ながら締結ピッチの広いボア中央の水平方向、馬力あげたり、点火不調でノッキングしたりすると、恐らく1,3,4,6の中央端から吹き抜けるだろうな。
水平ピッチは狭く、しかも1-2と2-3間は2本超狭いピッチで2本ある。従って水平方向には1ー2・3-4・5ー6の不当ピッチで、上下には一番長いピッチで締結される。当然一番ピッチが広いところから逃げますな。材料のヤング率は普通等方性でアルミは鉄の半分。GT-1のスリーブは鉄系の様に見えるのですが文献が無い。シリンダー端の輪っかの面圧をシリンダーヘッドが受けるわけですが、述べたように鉄系ボルト(熱膨張率を調整してある)が不当ピッチだと材料の変形量は距離に比例しますから、当然ボルトピッチの長い部分が変形量が大きい。しかも過給を考えていないからでしょうか、このヘッドが薄い。枠は厚いのですが、バルブやプラグの付く実ヘッド面は薄いうえに縦横のリブ構造が分断され(カムホルダー)は別構造でボルト締め。どうしても金型鋳造のダイキャスト製法で生産性あげたかったんでしょう。GT1では頑丈なカムキャリアがヘッドのリブに重なるように縦横補強してます。

<初代水冷のヘッド構造とGT1構造の違い>


あれだけデリケートに塑性域締めするヘッドボルトがシリンダボアに対してこれだけでたらめに配列してあれば、昔ならアイデアデッサンの時点で赤ペンだらけだっただろううに、3次元CADで構造化し、組立CAEでの変形・応力解析で「大丈夫」と剛性設計したのでしょう。だけどボルトフランジの座面から圧力変動、振動含めた動的解析が出来たとは思え無いけど、現物の動力試験し始めたら案外、うまくいったのかも。それが量産では、使われ方の軽重によって、問題が出たのかもしれない。
Mezgerはヘッド自体が精密中子で形成されたモノコックブロックになっている感じ

一筒一ヘッドの空冷では、各気筒4本のボルトで絞めますが、4気筒エンジンでは一体ヘッドの外周は個別に2本ですが2,3,4の間は2本を共用し、ボアピッチが狭いこともさることながら、爆発毎の負荷を円筒を囲む正方形の等ピッチに設計します。その際、クローズドデッキならまだしも、オープンデッキなら必ずシリンダのフランジをボルトピッチ間が上を通るように近接させます。なぜならシリンダーヘッドの圧力歪をボアの当たり面(ガスケット)に均等で有効な面圧を掛けるためです。それでも爆発の瞬間はミクロン単位でピクピク膨らむわけで、それを吸収しているのがヘッドガスケットです。そのヘッドガスケットの面圧がバレルに均等に負荷できるように見えますか?

次なる問題のオープンデッキについては、長くなったので次回へ。
文章下手で、アレですがクランクもヘッドもシリンダ(オープンデッキ)も実は全部つながった話なんですが、それは最後に分かる?。
(4に続く)
Posted at 2021/07/03 19:03:26 | コメント(0) | トラックバック(0) | エンジン | クルマ
2021年07月01日 イイね!

ポルシェの水冷エンジン 2(基本構造の違いについて)

ポルシェの水冷エンジン 2(基本構造の違いについて)今回から本題。もう25年以上前だから時効でしょうが、世界トップの某独工作機械メーカの副社長に若気の至り?な、忖度無しの批評をかまして「出禁」を食らった(;^_^A のは馬鹿の勲章w。ほんとドイツ人はプライド高いからw。


それで思うんですけど、ネット界隈でも車業界系の人も、私が思うような事は言っていないんですよね。多分メーカの設計屋さんなら当然気付いていることだけど、恐らくそれを言ったらこの業界では干されちゃうみたいな、何かそういう気もします(;^_^A 「新車発表会での豪華ワイン付きギリシャの走行会」みたいなのに呼ばれなくなるんでしょうね。確かにそれはつらい(;^_^A

と言っても腐っても911は名車ですから、オーナさんは羨ましい限り。なので、別に機械工学的に見たら 云々、であってメーカが品質保証して売っているもので余計なお世話なんです。ただデリケートだな、と知っていて損は無いかと思うだけ。ナイーブな人はこの先読まない方がいいかもです。

個人的にはこの新設計の初代水冷エンジンは最初に考えるべきスタートポイントが恐らく真逆だったのだろうと思うんですよね、ボクスター由来の996の水冷。

素朴な感想ですが、「有り得ないがいっぱい」

推測ですけど、ピエヒさん達の意見が全く入っていない、独立したデザインチームがプロジェクトを丸ごと乗っ取って、11年後に丸ごと明け渡した、、のような、これまでのポルシェ的「性能技術オリエンテッド」な系譜ではない。と言うのがこの初代水冷エンジンに対する感想です。そして997後期のMezgerGT2系エンジンも含めて入れ替わった現行新世代から再び戻った感が有ります。つまり空冷→Mezgerターボ系→水冷第2世代と、実は途切れず続いているけれど、ボクスター系水冷初代のみが「特に911にとっては」異端とも言えます。(経営難?でオタクの意見を聞くな!と株主肝入りだったのかも(;^_^A )


では勝手な推論ですが量産型「水平対向水冷」エンジンデザイナーが図面で最初に考えたであろう、クランク系から取り上げて見ます(開発は1992年頃あたりでしょうか)。


2.クランク支持剛性 (有り得ない:その1)

レースの世界ではすでに水冷ヘッドのエンジンバリエーションは出来ていて、959はその流れでヘッドを水冷化した量産?型でレース由来のものでした。しかし新世代量産型の水冷エンジンは全く設計の優先順位がこれまでとは違ったのだろう、、と思うのが表れているのがこのクランクシャフトの支持構造です。但しNA系のみでターボ系は通称GT-1クランクで別もの。

911だけでなく、ボクスター、ケイマン系にも採用するため最初から「設計命題」が違うものだったような気がします。それゆえ、その信頼性が確立するまではターボ系は実績ある旧構造で引っ張ってた・・・というより無理(レースに使う気無し)だったのでしょうね。

<初代水冷NA系のクランク支持部>


写真のように、クランクケースからクランクベアリング部だけを取り出したケース?のような構造。これを「クランクベアリングブロック」と仮称しておきます。これを水冷化した3連シリンダーをクランクケース?と呼ぶ分割方式とし、空冷由来とは縁を切りました。



ご存じの方も多いでしょうが、簡単に水平対向のエンジンを解説すると、左右のクランクケースがそのままクランクベアリングを構成し、通常の直列やV型のようにベアリングキャップで締め上げる構造にはなっていない。それが強固なクランク剛性を生みます。一方、別な見方をすると水平対向はピストン直径の半分が対向するピストンに被るため、クランクベアリング幅とコンロッドベアリング幅を取り合うと、そのストロークを決めるオフセットピンをつなぐウエブ幅が極薄になるため、ベアリング径を大きくしてジャーナル間のラップ量を確保しながら、メタル面圧を落とし、フリクションが増える部分に目をつぶって、クランクのねじり剛性を確保する必要があります。なので、逆に言えば相手の軸受け側が強固でないと、クランクはふにゃふにゃになると言うことです。半面回転イナーシャは小さく、直六より俊敏なレスポンスが基本的な持ち味。

立ってるものは親でも使え、猫の手も借りたい、、というクランクシャフトの保持剛性。その為スバルは強固な水冷ジャケット一体のクランクケースとし、最大断面係数を確保できる左右シリンダー一体クランクケースを形成します。

<スバルのクランク支持部:FF1000以来、基本変わらず>


スバルの水冷化は遥か昔で、1966年のFF1000には水冷OHCの水平対向4気筒が使われていました

ポルシェは独立シリンダのメンテナンス(交換利便性)を優先(航空機由来)した構造ゆえにクランクケースのみで成立させています。にもかかわらず、初代水冷はせっかくの水冷シリンダーを剛体利用せず、クランクベアリングブロックという断面係数の小さい箱にしてしましました。加えてこのブロックを片バンク3気筒一体のシリンダの皮(ブロックと呼び難い)を挟んで、シリンダーヘッド間で締め付けることで成り立っています。

この3連シリンダーは水側も、オイル側もオープンデッキ構造のシリンダー一体型クランクカバー?。餃子の皮のようなクランクカバー?で出来ており、おせいじにも剛性が高いとは言えない。兎に角安い金型で上下にすぽっと抜きたかったんでしょうね。(ひょっとしたら中子無しかも)左右ケースでこのクランクベアリングブロックを挟み、シリンダーヘッドボルトがシリンダーを貫通して挟まれた「クランクブロックのタップを締め上げます。せっかく締めたクランクベアリングブロックを引きはがすようにヘッドボルトで絞める構造も??。

水冷エンジンは、シリンダーブロックをいわば「親」としてこの一番大きい部品にみんなしがみついて構成されます。故に大黒柱たるシリンダーブロックの頑健さ、がチューンドの限界を決めます。

<市販最速バイク、ハヤブサのシリンダー>


バイクでは珍しくシリンダー独立構造を取っているハヤブサのエンジン。綺麗な4連シリンダーブロックが頑強なつくりであることがわかります。これに腰下とヘッドがしがみつく構造です。

水平対向ではピストンピンとコンロッドをどの段階でつなぐか、組立性が問題になります。それは、対向する構造ゆえ、クランクシャフトとシリンダの間をつなぐピストンとコンロッドをどうやって組み込むか、が難問だからです。片側だけの直6だと、シリンダーの反対、オイルパン側から簡単にコンロッド大端部を組むことができます。

その為、自動化困難。そこで水冷新エンジンは水冷のシリンダを従来で言うところの「クランクケース」から分割し、先にクランクベアリングブロックとして一旦サブアセンブリ化しておこう、と言うことなのでしょう。
このクランクブロックの左右いずれか側のシリンダークランクカバー?と剛結(ノックピン入り)させてまずは直列エンジンの様に3気筒分を組み立てます。次に逆バンク側はピストンを先に入れたシリンダ側とブロック側から出た小端部をピストンピンでつなぐため、シリンダーバレルの下端にサービスホールが開いています。その後左右シリンダーがクランクブロックを固定することになります。

一見ごつい「クランクベアリングブロック」が最初にありきで、これを左右からクランクケースで挟むと言うアイデアですが、水平対向のメリットでもあり、必須でもあるクランクシャフト保持剛性は、大変低いと思います。なので最初からレース用などのパワーアップは考えていなかったと思われます。それは華奢なシリンダーの構造からも明白。

<シリンダー外側から:クランクケース>


<シリンダー内側から:クランクケース>


あと、目立つ特徴のカム駆動部ですが、クランクシャフトから1段下のインターミディエイトシャフトにサイレントチェーンで落としこれにカムシャフト駆動チェーンをなんと、左右バンクの前と後ろに振り分けて駆動。シリンダーのオフセット分を利用して全長を詰めたつもりなんでしょうが、本末転倒。不当間隔トルク変動のあるカムドライブをこんな前後に振り分ける苦労がわかりません(だからこんな太いパイプシャフトになった)。前後長の短縮にそこまでする優先度が有るとは思えません。

<90度回してインタミをオイルパン側(正面)から見たところ>


加えて前述したように、このクランクケースは餃子の皮です。これでインタミシャフトを支えているわけで、そりゃ、どうなるか、、オイル漏れの要因でもあります。ま、それは枝葉の話。


以上述べたように、よく知られているクランクケースの基本構造の違いが、水冷初代の特徴です。しかし、一番の問題は次回述べる部分が本題というか、ポルシェが997後期から変えた理由。裏返せば直噴化を可能にするためだったと言うこと。

ここでそもそも論ですが、「そもそも、なぜ水冷にしなければならなかったか?」と言えば引き金は過給と4バルブ化です。それは高出力、高回転化も有りますが、排ガス規制も要因。なので、レース用4バルブヘッド化=イコール水冷ヘッド必須だったわけです。

次回はいよいよ、初代水冷エンジンの本質に迫ります。
(3に続く)
Posted at 2021/07/01 17:58:23 | コメント(3) | トラックバック(0) | エンジン | クルマ

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