FF車のCDセグメント攻略の方程式はあるか? (AWD化編-2)
前回、FFとFRベースの車体構成の違いから、狙いとした運動性の違いが有るのだろうか、という考察から見た場合、それはほとんど無い、と述べました。同時に最も重要な違いはそのAWDの構成差にあると。
実際、FF車とFR車での違いは一部を除いてFF車はほとんどが横置きエンジンを搭載し、メリットであるパワーパックを前軸前に集中させ、ミニクーパみたいなコンパクト車を可能とします。ところがそこから後軸を駆動するためには一旦車軸を90度曲げる必要が有り、通常はFFベース車両はトランスミッション出力がそのまま前軸デファレンシャルとなっており、センターデフを組み込むには特別なミッションを別に開発する必要が有ります。
なので、軽量低コストなラインナップにAWDを加える場合、マツダやCLA(写真はCLA)のような90度曲げるトランスファーが必要です。
トランスミッションの出力をまず前軸デフに入れて、同一回転数を後軸に持って行きますが、前後軸の回転差動機構は無く、カップリングによるスリップ逃がしだけ)。 一方フルタイム形式を主とする縦置きAWDタイプはトランスミッション出力がまずセンターデフに入り、ここから前軸と後軸に振り分けられます。
これが、フルタイムAWDとカップリングAWDの大きな違いです。その違いをピックUPしたのが下の表です。

※表は架空の一例を表したものです
表は例えば、で書いてますがトランスミッション出力を10回転として、フルタイムでは通常前後に10+10で伝わりますが、前後回転軸は合計20回転になるという方程式(デフの機構)から逃れることは出来ません。直進状態の前後同回転数から、旋回時は遠回りする操舵軸が旋回軌跡分多く回転し、その分回転数の減った後軸は近回りして、釣り合い、合計回転数は常に同じです。これによりメカニカル結合のまま、4輪が理論上スリップ無しに走行できます。
一方、カップリングAWDでは、前軸(BMWは後軸)が、トランスミッション回転と常に1:1の同数で回り、カップリングはフリーの後軸が路面からの入力で見かけ同回転数で空転しており、カップリングのクラッチ面では直進時はたまたま同一回転でお互い回っているけれども、連結されておらず、トルクは伝わっていません。
そして前輪の空転や、電子制御の指令でフルロックの直結までの間を締結強さを可変することで「トルクスプリット」と呼んでいますが、実体は回転数差を考えればわかるとおり、FFベースの場合、トランスミッション回転数と連動している前軸回転数に、後軸回転数が追いつくだけで、けして追い越す事はありません。そしてトルク伝達比は前軸が100~後軸に奪われる(後輪の負荷トルク分)の最大50までを「基本は路面のグリップ差」で伝達配分されるに過ぎません。
☆カップリングタイプの動作
直進=フルアクセルを踏む→前輪が空転する→すかさずカップリングが締結される→後輪と前輪が同一回転となる(後輪にトルクを食われて前輪のトルクが減る)直結AWD状態になる→前輪スリップが無くなる→FFに戻る。
旋回①=コーナでアクセルを踏む→前輪が空転する→すかさずカップリングが締結される→後輪の回転数が少ない(内回り軌跡)ので、前輪が引き戻される。前輪のスリップは一瞬消えるが逆に前後軸回転差によりプッシュアンダーになる(タイトコーナブレーキング状態)→前輪のスピンは止まるので→後輪の締結が緩む→プッシュ力が消える→FFに戻る。
ドリフトを試みる=コーナでブレーキング前荷重でフロントから巻き込ませると同時にリアが抜けて外に膨らむ→スピンしないようにカウンタを当てつつ、アクセルを入れる→前輪が空転する→直結になる→ヨーが収束する→カウンタが利きすぎて逆モーションに成り掛ける→アクセルを抜く→FFに戻り、エンブレが利く→後軸荷重が抜けてスピン?。(・・・なので、くれぐれもAWDではカウンタは進行方向までしか入れないこと)
旋回②=コーナでアクセルを踏む→前軸内輪が空転する→とたんにトルクが抜けてグリップが回復する。もしくはカップリングが締結される→後輪の回転数が少ないので、前輪が引きもどされる。プッシュアンダーになる(タイトコーナブレーキング状態)→ハンドルを切り増す→後軸の締結が緩む→プッシュ力が消える→FFに戻る→タックイン気味になる?。
と、こんな案配で、FFベースの場合にはあくまで常にFF状態が消える事は無く、カップリングONの時に後輪が前輪回転数まで増加する、、と言うことになります。ので、アクセルいくら踏んでも、リアがパワーオーバーでケツを振る、、なんてことにはならないはずです。
一方、センターデフ経由で前後軸に伝達する場合はどうか?。
★センターデフタイプの動作
直進=フルアクセルを踏む→一番グリップの弱いタイヤが空転する。→トルクが全輪から失われて空走する→タイヤがグリップを取り戻す→再び全輪に駆動力が掛り直進する。 このように通常のセンターデフでは1輪空転するだけで全て(実際はフリクション分の駆動力は残るが)の駆動力が失われるため、ヨーが発生せず車はその時の状態のままとなる。これが北陸自動車道の豪雨轍の車線変更でいずれかのタイヤがハイドロプレーン起こしても平行移動して復帰する安定性になります。
旋回①=コーナでアクセルを踏む→一番グリップの弱いタイヤが空転する→トルクが全輪から失われて空走する→タイヤがグリップを取り戻す→再び全輪に駆動力が掛り旋回する。従ってアンダーか、オーバかの特性は、前後重量配分と、左右デフのLSD有りなし、などにより決まる。
ドリフトを試みる=コーナでブレーキング前荷重でフロントから巻き込ませると同時にリアが抜けて外に膨らむ→スピンしないようにカウンタを当てつつ、アクセルを入れる→4輪の一番グリップの弱いリア内輪が空転する→全輪からトルクが抜ける→トラクションが抜ける→ちょっと膨らむが速度が落ちてグリップ走行になる。
これがリアLSDの有るWRXだと、リア内輪が空転するが、後軸のトルク配分が大きいため、結果外輪がパワーオーバで空転する。前輪もLSDによりホイルスピンしつつ車がドリフト状態を維持する。。。となります。
ここで、カップリングの簡素で有利なメリットが見えます。FFベースでは前1輪が空転しても、直結のリアが駆動力を与えてくれる事です。また直結状態で後1輪が空転しても前軸は100%トルク発揮できるということです。センターデフが有るとそうは行きません。
ところが高速走行直進時は上で述べたようにグリップ中は4輪がヨーダンピングを作り出してふらつかず、タイヤがスリップしてもヨーが生じないので進路が乱れません。一方カップリングタイプでは直進中はFF。1輪空転するとトルク抜けますがすかさず直結で後輪が押します。旋回中だと・・・・多分強いアンダーになるので同時にブレーキを使った安定制御が介入するんでしょうね。
機構的に複雑でコストアップという部分を納得すれば、旧ファミリアのAWDや、ランエボのように横置きFFベースでもミッション内にセンターデフ経由出力とし、前後軸配分したフルタイムAWDは存在します。一段とフロントヘビーな傾向が強くなりますが、積極的なアクセルステアを望むならセンターデフタイプである必要が有ると思います。
一方、BMWは当初はXドライブでセンターデフ有りだったのに、アクティブカップリング式となってしまいました。BMWの場合にはFRで常の後輪駆動であり、カップリングで前輪に0~50%分配する事になります。この場合基本FRで、伝達しきれないトルク分をフロントに横流しする日産アテーサタイプとしたわけです。これはやはり基本はFRの振り回せる車としたかったからでしょうが、同時にセンタ―デフ式AWDのスタビリティは無くなったわけです。
次に、ちょっと
プロパガンダなAWD比較VTRを2本紹介しておきます。各社のAWDで脱出力を見ようという
宣伝VTRで、これはスバルが作ったのか?不明ですが、スバルだけが合格します。けれどこれはシンメトリカルAWDだから可能なわけではありません。それぞれ異なるカラクリが有るのです。それは今回の解説を理解しただけではさらに??となるかもしれませんがwww。
と言うところで、、からくりの種明かしはまた次回でw。
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私的なミニ哲学の泉 | クルマ
Posted at
2013/01/30 23:27:03