
今回の本命、新型Cクラス(W205)に試乗して来ました。
(世の動きからは1周遅れな試乗?ですが・・)
巷で絶賛のW205ことメルセデスの新型Cクラス。
これまで、自分の求める車の世界には全く登場しなかったメーカです(庶民には縁が無いですよね(^_^;)。
ところが、アルミを多用したハイブリッドシャーシや、ダブルピボットをもつフロントサス(トヨタもやってますが、へたに複雑フリクションを増やす懸念が有って、「どんなもんかい?」とか、彼らの工場で要求するシャシー剛性が異なるモノコック作りをベンツの工場でみたことから、911ポルシェと通じる「自動車哲学」を感じるところも有り、ヒエラルキーやブランドは全く除いて、純粋に「自動車」の「走りの質感」はどこまで希求されて、実現できているのか、という興味が非常に掻き立てられたからです。
車のあらゆる動きをドライバーのもとに置き、4つのタイヤを感じながらGを楽しむ一つの形を教えてくれたのが911でした。スポーツカーのセッティングとは・・・とあれこれいじって来た目には「吊るしでこれかい!」とその完成度に、これまでいじって来た車のあれこれはなんだったのか、と思わせてくれるほど目うろこでした。ならばBLEで目覚めた「なめらかに快適なドライビング」をドライバーに実現させてくれる基準を持っているとすれば、メルセデスだろうというわけです。(ハンドリングの正確さ、サスペンションの動きなど含めた、とにかく流れるような運転の気持ち良さが、絶対的なスピードを物差しとしなくなったんですよね)。
同じ4ドアセダン比較もここまで来ると、S4とは接点が無くなるほど立ち位置が違いますね(^_^;)。まぁお値段もC180アバンギャルドでは100万円も高くなるわけですが、馬力は約半分になります。それでも相対的に高いとは思わせない魅力を覚えました(まぁ、私には住む世界がちょっと違う感がアリアリですが、車の工学的魅力はツボでした。
ここからは超個人的な試乗の、あくまでも主観的な感想です。もし読んだ方が、「それなら私も一度試乗してみよう」と言う気になったとしたら光栄です。車の売れ行きや、メーカへの要求レベルも高くなるといいかなと(^_^;)。
さて、人生初のメルセデスディーラに奥さんの運転で乗り付けました。さすがに門前払い、、なんてことは無く、ご丁寧にお出迎え頂き駐車場に誘導してもらいました。
まずは展示場のC180アバンギャルドを見学。セールス氏のトークを聞きつつドアを開けたとたんに、あれ?、とおもった瞬間、セールス氏が「ドアのパネルはアルミなんですよ」と言う。「ああ、なるほど!」
運転席でポジションを決めリアシートや、トランクなど実用性を一通りチェック。しかし意外なことに320同等以上?にシートは低く、ドアのウインドラインとダッシュボードにつながるラインが高く、S4の位置関係にも似ているが、得られる雰囲気はまるで違う。囲まれ感が有りつつ、シンプルなしっかりしたインテリアデザインが与えるスッキリ感からか、気に入りましたね。視界性と言う点ではAピラーとバックミラー部の死角はやや大きく、ダッシュボードも高いため、S4のほうが見切りはいいしインを攻めるにも、ですね。思った以上に前席優先のドライバーズカーな配置です。
では早速試乗に、、と車に乗り込みます。車はC180アバンギャルドにオプションのAMGライン仕様と、550万円級に(^_^;)。展示車よりその分以上のスポーティさとエレガントさが有りました(それにしても、もう少し控えめなベンツ感は出せなかったんだろうか(^_^;)。
エンジンはたかだか1.6Lターボと試乗したレヴォーグと同じレベルです。直噴特有のタカタカ音はするものの、ボンネットから漏れてくる音はとても小さく気になりませんし、乗り込んでドアを閉めるともう、静粛さがまた新基準です。
操作関係が少々人力の車ばかり乗って来たので、セールス氏に聞いて判りましたが、コラムの前後上下まで電動とは!。しかしこれだと非常に微妙なとこまで追い込めてイイですね。
さて、とうとうシフトレバーは右側のウインカーのような操作でDに入れて出発です。奥さんには後部座席でチェックを入れてもらいました。
左折で道路に出て直進に戻しただけで、操舵系のしっかり感が半端なく気持ちよい。直4の1.6とは言え、1200回転から最大トルクを出せるだけあって、1.5tが十分な加速。こちらは7速ATですが、パワートレイン全体としての雑味が無く、完成度は高い(ちなみに金属バネ足です)。しばらく街中の交差点をちょこまか抜けて、少しバイパスの屈曲路に案内されましたが、このころには頭の中に「あちゃ~、この車の挙動はなんだろう」と5感に集中するぐらい「これまでに無い感覚」がてんこ盛りに感じられます。不思議なことに、大加速も高G旋回もしていないのに先のBMよりこちらの方がスポーティなことを五感が嗅ぎ取ります「なんで??」
試乗局面が市街地+ちょいバイパス、な少目試乗だったので言えるとこに絞って書きますと、
①フロントサスの操舵系を含めて、めちゃくちゃ高品質。その意味はブレーキングと操舵、戻し、加速の一連のプロセスで、Gのピークが△に出やすいところが、実に丸く円を書ける動きの完成度。おそらく初期の微動から、沈み込んでピークで踏ん張り、また抜けて行く時のロール、ピッチの角加速度が足とハンドルで調整できる感覚と言ったらわかるかなぁ。
「ぐぬぬっ、やられた」と思わす言いそうになりました。
これには操舵系にトルクのかかるAWDとの違いや、フロントサスを贅沢にジオメトリを決められる縦置きFRの贅沢のなせる業かな。

<写真はエアサスですが>
初めて乗るクルマなのに「なめらかにGを回そう」とコントロールに意識を持たせて走らすと、なんとも忠実に制御できます。加えて初めて「ああ、18インチが完全に履けてる」と感じました。普通は考えないんでしょうが、この車を走らせて思ったことは、峠のくだりでは間違いなくメチャ速いな、ということ。ちなみにAMGラインのため、タイヤは前228/45/18と後ろ245/40/18のピレリのランフラットタイヤ。巷で言われる通り、ランフラットのせいと思われる硬さは多少有るもののスポーティとも言える程度。乗る前は17インチノーマルなら完璧だろうと思っていたのだが、あの履きこなしを味わうと、パンクのリスクとトレードオフしてもいいな、と思わる程度の悪化かな。(これはRFの中でもっとも乗り心地が良いと言われるピレリのおかげかも。ノーマル18インチならもう十分なのり心地でしょう。
②車内は十二分に静か、振動も無し。ロードノイズ、風切り音もこれまで最少な感じ。
③とにかく、なめらかな運転がしやすい。それでいて横G限界は非常に高い。
④4スローの4気筒(2Lは8スローのバランスシャフト付き)らしいですがメルセデスにはめずらしい?、綺麗に回る4気筒でした。それとBMより1段少ない7速ATでしたが、ハンドリングに気を取られていたとはいえ、このATは良かった。なめらかに走らそうとするのに、合わせてくれる。タコメータが今どこか、を気にする車ではないし、また見ようという気も起らないけれど、だからと言ってぼんやり流すだけではないところが、う~ん・・と唸らされる。
短い試乗で感じられたことは限られますが、絶対速度の高い領域では所詮156psですから、知れてるでしょうが、シャーシのキャパは半端なく高く、私にはおっさん車ではなく、320が古典的と思えるぐらい新次元の車の動きでした。これはストラットでは無理だよね、と思わせる出色の出来でした。ロングホイルベースとギア比のクイックなハンドルとくわえて大きな切れ角による取回しの良さも大きな美点で、AWDの美点とトレードオフにはなるけれど、総合力としての直進安定性とレーンチェンジなどでの収まりは、破たんしない限り同等の盤石感がありました。
軽快な動きのもう一つの種は、車の中心から遠いパネル類に多用されたアルミボディから来るヨー慣性の軽さによる動質だろうと思います。普通軽くするとどっしりとした懸架装置のうまみは出しづらいのに、重量級のねっとりを残しつつ、車体の軽さを感じる挙動が不思議な感じでした。これはいろいろな場面で振り回してみないと、本当のところはつかめないとは思います。が従来の経験値とズレふ不思議な動質。ブッシュなどダンピングのコントロールが出来にくいもので角を丸めたのではなく、シャーシががっちり動きを決めて、ストロークをしっかりダンパーに要求するレバー比やリンクのジオメトリが設計されているのだろうと推察しました。
このボディ感を言葉にすると、鋼板の硬度を上げて、薄くし厚みで無く断面係数で剛性を稼いだような、「硬くて軽く、薄い卵の殻みたいな感」が有りました。
これは、レベルがたかいなぁと。
エンジンがもっとも非力な1.6Lの4気筒でも、芯の出ているフィールで好感度でしたし、これだけキャパのあるシャシーと懸架だと、AMGの18インチで攻め込むのも、流すのも、、、、という求めている世界に極めて近い「次の評価軸」を感じさせてくれる車でした。久しぶりにこのまま遠くまで行きたい、、と思うクルマでした。
それから、BMよりも飛ばさずにジェントルに走ったつもりだった試乗でしたが、どちらも後席でチェック入れていたカミさんが、帰宅の道中で「メルセデスの方が、スポーツカーみたいだったよね?」と「え、わかったの?」と感想を言い当てたのにはちょっとびっくり(^_^;)。
そう、動きの軽さと余裕を感じさせる動きがBMを超えていました。ゆえに従来からのメルセデスファンには、私がS4に抱いたのと同じ「もう少し重厚感のある溜めと、落ち着きがほしいと言う層が居ると思いました。それぐらい従来のメルセデスとは違うのだろうと思いました。
まぁ私には高嶺の花の領域でも有りますが馬力で無く、「走りの上質=ドライバーの要求に正確」な哲学でコストを振ったら、ここまでのモノが出来ることに相対的には高いと思わせない実力のあるクルマでした。評論家の方の「すごい」がどうなのか、少々嫌味でも、、と思ってあら捜ししましたが、粗が見つけられるには1日乗らないと無理かな。巷のスリーポイントスターに評価バイアスがかかっていたかもしれませんが。これで外観がもうすこしさりげない風情ならいいのにw。
一番の問題は、私にはメルセデスが似合うとは全く思えないところですね(^_^;)。
B4の新型が国内にも導入された場合、その価格と完成度はこの車に勝てるのか。車格の違いなどは有りますが、BMWも含めて極めて競争激化のクラスになるなぁと思いました。
個人的には私のベンチマークがまた一ランク厳しくなった体験でした。
次回は違いの総括編に つづく。