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2017年03月13日

トルクベクタリングを考える(その2)

トルクベクタリングを考える(その2)
※この回は、お友達のタッチさんの 「ホンダが迷走しているように見える:其の四」におけるガンさん(黒沢元治氏)のNSX評に対する分析を兼ねてエントリーしてみました。





2.ドライビングスタイルによる有用性と限界
 実は、この部分はトルクベクタリングとは別な切り口で取り上げたい話なんですが、一旦記述を試みます、うまく伝わるかわかりませんが(;^_^A
 
 
私は初代セブンで遊んでいたとき、トラクションのかからないFR車で前に進むには、LSDが不可欠で、今と違ってメカクラッチ式の4ピニオンLSDを組んでました。クラッチスブリングの強さを加減することで、作動制限率を決めるのですが、公道ではダメでしょ!、のぎりぎり状態で高めに組んでました。ガソリンスタンドでバキバキいう程度、ハンドル切ってクラッチ繋ぐとスピンターンが決まるぐらい、、というとわかるでしょうか(;^_^A
さて、これによってハンドルによるヨーとアクセルによるヨー制御を手に入れました。使い方は学校の掃除で遊んだような、ほうきの柄を手のひらに乗せて、倒れないようにバランスを取るアレです。進行方向にちょっとハンドルを切る、その方向に車体の軸線が乘るようにアクセルワークでケツを振る。なるべく小さなスリップでなぞれるように、旋回円に対してハンドル舵角を未来の接線方向に読んで合わせる、、うまく行くとほとんどアクセルワークのみで回れる感じですね。ドリフトしながら定常円旋回に乗せる。雨の駐車場で練習したあの感覚。

これは、後輪駆動のフォーミュラーを乗る感覚の運転スタイルだと思っているんですが、ハンドルはアライメントから来るグリップ限界を探る感じ、そして後輪は旋回遠心力で食われるフォースをいかに加速方向と折り合いをつけるかをライントレースしながら操る。。そうやってドライビングを組み立てるスタイルのドライバーには、ざっくり旋回の3つのステージそれぞれに対して、
①旋回に入るヨーを旋回ラインに乗せる初期旋回操作
②遠心力とコーナリングフォースをバランスさせる定常円旋回操作
③クリッピングに乗せてヨーを減らし、加速のトラクションを引き出す脱出旋回操作
それぞれの段階でタイヤのコーナリングフォースの使い方は時々刻々変わってゆきます。

簡単に言うと、フロントに減速Gを最大使って曲がれるだけのコーナリングフォースに移し替えるアプローチを行う初期旋回の前軸と、減速で抜けたトラクションからコーナリングフォース最大に向けて荷重がかかって行く後軸。遠心力でバランスするタイヤのコーナリングフォース。旋回Gが減って、縦のトラクションにタイヤの能力を移し替える脱出旋回。同時にフロント荷重が抜けてコーナリングフォースが減ってアンダー成分が顔を出す、、と言ったタイヤにかかる荷重変化と車体にかかる加減速、旋回Gのバランスそのいずれもがタイヤの摩擦円の最大値を使いながら走行ラインを完成させる、、というのがサーキットにおけるレーシングドライバーの仕事だと考えるわけですが、ガンさんのドライビングインプレッションはほぼ、この理論に乗って展開されていると個人的には考えていて、故にタイヤのグリップを縦と横で話をするし、ハンドリングとはタイヤに与えるGコントロールの正確さ、を要求しているし、ハンドルの手ごたえはグリップ限界の探りやすさを評価していると思います。

これとは別に、私はスバルのAWDに乗るようになって、ドライビングの理想論が上記から変わってきました。いまでもフォーミュラ的なリアタイヤをミリ単位で重心に合わせて行くスタイルも好きですが、スタビリティの高いAWDを操るドライビングのスタイルはかなりこれと違うことに気がついたからです。

私の従来の評価軸からみるとBLEのハンドリングは
①AWD故にハンドルにグリップ限界が分かりにくい、特に加速側で消失する。
②アクセルワークでの車体のヨーが鈍い、(粘るというか、ハンドルと合わせ技でないとヨーが出にくい、故に切り離した操作が出来ない)
③タイヤのグリップ限界の定常旋回が出来ない(加速でバランスはできるが、滑空では怖い)
という感じです。

AWDは特にセンターデフの有る車両では、4輪のヨーダンピングが有るため、縦剛性の高いタイヤを履くと、本当に吸い付くような走行感が得られます。裏を返せばキビキビしたヨーが出しにくく、後軸を振ってヨー制御をすることが苦手です。これをWRCカーのようにするためには、FR同様、リアに強力なLSDを与えてわざと左右駆動輪によるスリップからのケツ流しを与える必要が有ります。しかしAWDの強みはあくまでもパワーを加速に生かせることで、リアを流すパワーが有るならフロントに回せ、ということで、フロントにもLSDを与え、イン側のトルク抜けを防いで、前から引っ張りつつ脱出ラインに乗せるヨー制御をドライバーが行います。

このような、公道ラリースタイルのドライビングは旋回初期に正確なコーナリングラインやクリッピングが設定しにくいため、タイヤのグリップ限界よりも脱出ラインに乗せる姿勢制御が先で、そのためにはプラスとマイナスの両方に振れるだけのマージンが必要です。なのでタイヤのグリップ限界はドライバーが基本アクセルで生み出すどちらかと言えばパワードリフト的な状況が多く見られます。以前ガンさんのインプレッサの試乗(消されてますが)に触れた過去エントリ

で、このインプいいけども、もう少し正確なステアリングインフォメーションと、限界を抑えたような部分を解き放って、限界を探れるようなハンドリングにしてほしい、、趣旨のことを言ってました。これは、やはりフォーミュラー的な乗り方を是としているからでしょう。その代表車としてNSX-TYPERをガンさんや、佐藤琢磨氏、中谷氏などがベストカーとして所有していたと記憶してますが、これはなるほど~とわかる気がする(;^_^A)



さて、本題(;^_^A

前述した旋回の3段階におけるトルクベクタリングを考えてみます。
新型NSXのSH-AWDを表すこちらのPVをまず見て、イメージしてみます。



んで次に、ガンさんに成り代わって、シミュレーションすると、


まず、ブレーキングでタイヤの減速G最大を得て、予測するコーナリングGのグリップ限界まで速度を殺した後、車体に旋回Gを与えて行く。当然、ドライビング職人のテクニックでは、前軸は
タイヤのフリクションサークル限界(とガンさんは呼ぶが)を前後左右と使い切る。
①減速時、前軸は縦Gで使い切り、のち旋回ヨーを作る分だけブレーキを抜く。
②後輪は旋回Gで車体質量と遠心力の慣性を吸収する最大コーナリングフォースで使い切る。
③フロントはクリッピングすぎると加速で抜ける荷重に負担できる分の旋回フォースと後輪は
 旋回Gが減る分を加速分に回す、、

とこういう塩梅にタイヤに余力残さず遠心力と闘うぎりぎりをドライバーが制御してます。
すると、、、、余ってる余裕のあるタイヤに加速側のトルクベクタリングを与えようとすると、あれ?。

前軸外側は既に目一杯で余力無し、イン側は若干あるかも、だが能力の絶対値が荷重抜けて低い、し、こっちにトルク回すとアンダー方向・・。旋回の初期と中盤は前軸側はほとんどトルクベクタリングさせる余地なし。んで脱出旋回になったらリアの外側にトルク配分を多めに、、、ってそもそも最大旋回Gを与えた上で、旋回の抜き勝手で加速分に置き換えてるのに、ベクタリングする余地は無い、がイン側ならちょっとある?、でもこれまた逆方向。

ガンさんが、「意味ない」という理由でしょう。
フォーミュラースタイルの乗り方だとこうなってしまうんでしょうね。少しずつ旋回速度をあげて行ってタイムを削り取るレーサ指向でなく、アベレージとしては余力のあるタイヤの使い方の範疇で乗るスポーツカー場合、旋回後半の脱出でパワースライド的にリアにトルクを掛けた場合、アンダーが出ないようにトルクベクタリングでアウト側を多めにトルクを出すと、パワースライド的にリアが流れ、それを抑える感じにフロントは引っ張る余力が残っているので同じくヨーを増す方向でアウト側が多めにトルクを掛ける。(しかしながらうまい運転でフロントが限界状態だと、フロントモータは仕事をすることが出来ない)

つまり、トルクベクタリングが有効に働くためには、旋回初期のフロントを助けるようにリアが先にヨーが出る様なトルク配分で侵入、、と机上で考えた時、実はリアがフロントを助けた分、限界が低くなっており、その余力でリアが低い分ケツが出るのを前が引っ張る、、ってあれ?。どこに利得が有りましたっけ?。となるのだ。もちろんこれはドライバーが極まっている人ならば、、という話で、一般人ならアベレージで4輪のフリクションサークルを限界まで使うことはできないので、「速度=タイム」ではなく、「脱出姿勢」につぎ込む場合は価値がある。つまり、私のような下手なドライバーだとタイヤに余力のある分をトルクベクタリングが最大まで使えるように配分を変える、、とも言える。要は下手な人もタイヤを最大限使うように破綻させずに加速を補正することが出来るからだ。

突き詰めるとドライバー側が最適なフリクションサークル最大状態に持ち込んでいる、、という前提が無く、これが出来ていない状態、あるいは崩れたものをその状態にトルク配分することで補う、、というのがトルクベクタリングなのではないだろうか。(その1)でコメントを頂いたradius-meganeRSさん言うところの「一歩手前」で操縦する、という感覚はタイヤに余力を残した状態で旋回しないと、トルクベクタリングは利かせられないのだ。


カートのようなシンプルな物理現象のマシンを、アクセルとハンドルを操って制御することのスポーツ性という視線で見ると、トルクベクタリングは余計なお世話なのだ。

だから、フロント左右独立モータによるトルクベクタリングのドライビングスタイルを、ドライバーが最初からタイヤの限界グリップ領域に持ち込むスタイルの評価軸で、新型NSXを評価すると、「ん・・・?」となるのは仕方ないですなw。



・・・ではトルクベクタリングは無意味?、と言い切るには疑問も実はあるのです。それがAWD的なドライビングスタイルからの視点です。私はレガシィで走っていて、それまでとは違う運転の面白さを見出した気がしています。次回はそこから・・。
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Posted at 2017/03/13 20:55:23

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この記事へのコメント

2017年3月14日 14:22
こんにちわ。
ひとつ前のブログを拝読して、もしかしたら?と思っておったのですが、予想通りでしたA^_^;)。
ホンダのSH-AWDにはボクは少し思い入れがあるのですが、神様・黒澤氏の主張も全くその通りで、困ったものです(苦笑)。

恐らくホンダが主張する効能と、黒澤氏の主張する無意味論と、両者の間のどこかに真実があるのだろうと思うのですが、それが本当にクルマに「新たな価値」と呼べるようなモノを提供し得るものなのか?(^^;

というワケで、AWD的ドライビングなる次回作を拝見してから、ボクもちょっと書こうかなw
コメントへの返答
2017年3月14日 21:33
面白いテーマなので、取り上げました。
スマホだと無理で、やっと帰れたのでw。

次回と次々回まで待ってもらった方がイイかも、、というほどうまく書けないかもですが。
また期待してます(^^)/

車に合わせた運転と考えると、答えは一つではないかも・・。

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