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2021年07月01日

ポルシェの水冷エンジン 2(基本構造の違いについて)

ポルシェの水冷エンジン 2(基本構造の違いについて) 今回から本題。もう25年以上前だから時効でしょうが、世界トップの某独工作機械メーカの副社長に若気の至り?な、忖度無しの批評をかまして「出禁」を食らった(;^_^A のは馬鹿の勲章w。ほんとドイツ人はプライド高いからw。


それで思うんですけど、ネット界隈でも車業界系の人も、私が思うような事は言っていないんですよね。多分メーカの設計屋さんなら当然気付いていることだけど、恐らくそれを言ったらこの業界では干されちゃうみたいな、何かそういう気もします(;^_^A 「新車発表会での豪華ワイン付きギリシャの走行会」みたいなのに呼ばれなくなるんでしょうね。確かにそれはつらい(;^_^A

と言っても腐っても911は名車ですから、オーナさんは羨ましい限り。なので、別に機械工学的に見たら 云々、であってメーカが品質保証して売っているもので余計なお世話なんです。ただデリケートだな、と知っていて損は無いかと思うだけ。ナイーブな人はこの先読まない方がいいかもです。

個人的にはこの新設計の初代水冷エンジンは最初に考えるべきスタートポイントが恐らく真逆だったのだろうと思うんですよね、ボクスター由来の996の水冷。

素朴な感想ですが、「有り得ないがいっぱい」

推測ですけど、ピエヒさん達の意見が全く入っていない、独立したデザインチームがプロジェクトを丸ごと乗っ取って、11年後に丸ごと明け渡した、、のような、これまでのポルシェ的「性能技術オリエンテッド」な系譜ではない。と言うのがこの初代水冷エンジンに対する感想です。そして997後期のMezgerGT2系エンジンも含めて入れ替わった現行新世代から再び戻った感が有ります。つまり空冷→Mezgerターボ系→水冷第2世代と、実は途切れず続いているけれど、ボクスター系水冷初代のみが「特に911にとっては」異端とも言えます。(経営難?でオタクの意見を聞くな!と株主肝入りだったのかも(;^_^A )


では勝手な推論ですが量産型「水平対向水冷」エンジンデザイナーが図面で最初に考えたであろう、クランク系から取り上げて見ます(開発は1992年頃あたりでしょうか)。


2.クランク支持剛性 (有り得ない:その1)

レースの世界ではすでに水冷ヘッドのエンジンバリエーションは出来ていて、959はその流れでヘッドを水冷化した量産?型でレース由来のものでした。しかし新世代量産型の水冷エンジンは全く設計の優先順位がこれまでとは違ったのだろう、、と思うのが表れているのがこのクランクシャフトの支持構造です。但しNA系のみでターボ系は通称GT-1クランクで別もの。

911だけでなく、ボクスター、ケイマン系にも採用するため最初から「設計命題」が違うものだったような気がします。それゆえ、その信頼性が確立するまではターボ系は実績ある旧構造で引っ張ってた・・・というより無理(レースに使う気無し)だったのでしょうね。

<初代水冷NA系のクランク支持部>


写真のように、クランクケースからクランクベアリング部だけを取り出したケース?のような構造。これを「クランクベアリングブロック」と仮称しておきます。これを水冷化した3連シリンダーをクランクケース?と呼ぶ分割方式とし、空冷由来とは縁を切りました。



ご存じの方も多いでしょうが、簡単に水平対向のエンジンを解説すると、左右のクランクケースがそのままクランクベアリングを構成し、通常の直列やV型のようにベアリングキャップで締め上げる構造にはなっていない。それが強固なクランク剛性を生みます。一方、別な見方をすると水平対向はピストン直径の半分が対向するピストンに被るため、クランクベアリング幅とコンロッドベアリング幅を取り合うと、そのストロークを決めるオフセットピンをつなぐウエブ幅が極薄になるため、ベアリング径を大きくしてジャーナル間のラップ量を確保しながら、メタル面圧を落とし、フリクションが増える部分に目をつぶって、クランクのねじり剛性を確保する必要があります。なので、逆に言えば相手の軸受け側が強固でないと、クランクはふにゃふにゃになると言うことです。半面回転イナーシャは小さく、直六より俊敏なレスポンスが基本的な持ち味。

立ってるものは親でも使え、猫の手も借りたい、、というクランクシャフトの保持剛性。その為スバルは強固な水冷ジャケット一体のクランクケースとし、最大断面係数を確保できる左右シリンダー一体クランクケースを形成します。

<スバルのクランク支持部:FF1000以来、基本変わらず>


スバルの水冷化は遥か昔で、1966年のFF1000には水冷OHCの水平対向4気筒が使われていました

ポルシェは独立シリンダのメンテナンス(交換利便性)を優先(航空機由来)した構造ゆえにクランクケースのみで成立させています。にもかかわらず、初代水冷はせっかくの水冷シリンダーを剛体利用せず、クランクベアリングブロックという断面係数の小さい箱にしてしましました。加えてこのブロックを片バンク3気筒一体のシリンダの皮(ブロックと呼び難い)を挟んで、シリンダーヘッド間で締め付けることで成り立っています。

この3連シリンダーは水側も、オイル側もオープンデッキ構造のシリンダー一体型クランクカバー?。餃子の皮のようなクランクカバー?で出来ており、おせいじにも剛性が高いとは言えない。兎に角安い金型で上下にすぽっと抜きたかったんでしょうね。(ひょっとしたら中子無しかも)左右ケースでこのクランクベアリングブロックを挟み、シリンダーヘッドボルトがシリンダーを貫通して挟まれた「クランクブロックのタップを締め上げます。せっかく締めたクランクベアリングブロックを引きはがすようにヘッドボルトで絞める構造も??。

水冷エンジンは、シリンダーブロックをいわば「親」としてこの一番大きい部品にみんなしがみついて構成されます。故に大黒柱たるシリンダーブロックの頑健さ、がチューンドの限界を決めます。

<市販最速バイク、ハヤブサのシリンダー>


バイクでは珍しくシリンダー独立構造を取っているハヤブサのエンジン。綺麗な4連シリンダーブロックが頑強なつくりであることがわかります。これに腰下とヘッドがしがみつく構造です。

水平対向ではピストンピンとコンロッドをどの段階でつなぐか、組立性が問題になります。それは、対向する構造ゆえ、クランクシャフトとシリンダの間をつなぐピストンとコンロッドをどうやって組み込むか、が難問だからです。片側だけの直6だと、シリンダーの反対、オイルパン側から簡単にコンロッド大端部を組むことができます。

その為、自動化困難。そこで水冷新エンジンは水冷のシリンダを従来で言うところの「クランクケース」から分割し、先にクランクベアリングブロックとして一旦サブアセンブリ化しておこう、と言うことなのでしょう。
このクランクブロックの左右いずれか側のシリンダークランクカバー?と剛結(ノックピン入り)させてまずは直列エンジンの様に3気筒分を組み立てます。次に逆バンク側はピストンを先に入れたシリンダ側とブロック側から出た小端部をピストンピンでつなぐため、シリンダーバレルの下端にサービスホールが開いています。その後左右シリンダーがクランクブロックを固定することになります。

一見ごつい「クランクベアリングブロック」が最初にありきで、これを左右からクランクケースで挟むと言うアイデアですが、水平対向のメリットでもあり、必須でもあるクランクシャフト保持剛性は、大変低いと思います。なので最初からレース用などのパワーアップは考えていなかったと思われます。それは華奢なシリンダーの構造からも明白。

<シリンダー外側から:クランクケース>


<シリンダー内側から:クランクケース>


あと、目立つ特徴のカム駆動部ですが、クランクシャフトから1段下のインターミディエイトシャフトにサイレントチェーンで落としこれにカムシャフト駆動チェーンをなんと、左右バンクの前と後ろに振り分けて駆動。シリンダーのオフセット分を利用して全長を詰めたつもりなんでしょうが、本末転倒。不当間隔トルク変動のあるカムドライブをこんな前後に振り分ける苦労がわかりません(だからこんな太いパイプシャフトになった)。前後長の短縮にそこまでする優先度が有るとは思えません。

<90度回してインタミをオイルパン側(正面)から見たところ>


加えて前述したように、このクランクケースは餃子の皮です。これでインタミシャフトを支えているわけで、そりゃ、どうなるか、、オイル漏れの要因でもあります。ま、それは枝葉の話。


以上述べたように、よく知られているクランクケースの基本構造の違いが、水冷初代の特徴です。しかし、一番の問題は次回述べる部分が本題というか、ポルシェが997後期から変えた理由。裏返せば直噴化を可能にするためだったと言うこと。

ここでそもそも論ですが、「そもそも、なぜ水冷にしなければならなかったか?」と言えば引き金は過給と4バルブ化です。それは高出力、高回転化も有りますが、排ガス規制も要因。なので、レース用4バルブヘッド化=イコール水冷ヘッド必須だったわけです。

次回はいよいよ、初代水冷エンジンの本質に迫ります。
(3に続く)
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Posted at 2021/07/01 17:58:23

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この記事へのコメント

2021年7月1日 18:37
めっちゃくちゃ面白いです。ありがとうございます。
勉強になりました。クランクベアリングのところはあんな構造になってたんですか・・・GT1クランクへの拘りは逆にスタンダードがあまりにもアレだから・・・てことですか (^^; 初めて知りました。チューナーとかは分かってるんでしょうね。タダで公開するような情報じゃないですしね。。。
コメントへの返答
2021年7月1日 18:51
コメントありがとうございます。

私も調べて唖然、おっしゃるようにGT-1クランクが云々、、ではなくノーマルNAがマージン無しのカタログで性能使い切りの、ある意味すごい設計だったという感じです(;^_^A

なもんで、個人的にちょっとためらう部分もあって(;^_^A

このシリーズ翻訳されて拡散されたら、名誉棄損で訴えられるかも(;^_^A 
2021年7月2日 8:41
おはようございます。
むちゃくちゃ勉強になりました!

996~997前期のスタンダードモデルは、シリンダーに傷が入るので有名ですが、なんとなくぼんやりとクランク保持剛性が足りてないんだろうな…と考えていましたが、読んでいて納得の内容でした。

実際に買う流れになった時、個人的にはなんらかエンジン開けて補強したらいっかw
程度に軽く考えていました。

まだ実際に買う流れになっていないので、細かい話しは知らないんですがどうも改善する方法は開発されたっぽいです。
どこのショップでもできるという内容ではないみたいですけれど。

エンジンに不具合があって尚、996と997には惹かれるものがあるのです。
同年代の有名なスポ車は、類稀なコーナリングパフォーマンスを持っていますがロアアーム形状に問題があってハイグリップタイヤ履いて走っているとロアアーム先端が折損するなど、なんだかんだ問題を抱えている車種が多いのも特徴です。
そのロアアーム折損する車種はエンジン側にも少し問題がありますw
みんなソレを改造して問題ないように解決していって乗っています。
それは911系でもやればいいんじゃないの?とぼんやり考えています。

タイヤの進化の速さにボディ側やエンジン側は対応できていても、サスペンション構成やサスペンションリンクは取り残されている。
というのは某サスペンションの神様の論ですが、正にその通りだなと感心していまして、そういう視線でみると911やボクスター・ケイマンはそういった点で問題が出にくい構造になっているんです。
悪いところばかりじゃないんですよね。

ただ、このエンジン構成だけは本当にいただけませんねw
しかし今乗ると、いい味出しているんですよねー。
コメントへの返答
2021年7月2日 18:28
コメントありがとうございます。

本題はこれからなんですが(;^_^A、初代水冷は従来のポルシェエンジンとは全く価値観が違う作り方になってると思いますね。

しかし、おっしゃる通り911はその時代に応じて、どれも長短持ち合わせており、どれも良いとこが有ります。

なので、設計意図に沿った範囲で楽しむのがいいと思いますね。私の乗った空冷も930では最悪と言われた5枚ばね+サーマルリアクタという罰ゲーム車でしたが、前オーナがキチンと排ガス関係をごっそり76年以前に対策してて、軽量、ノンサーボの硬派なナロー型930の最後の型で面白かったです。

不人気だと、程度のいいお得な出物も期待できるし、事前知識が有れば、有りだと思います。

991からはカッチリエンジンにはなったけど、直噴化やターボ化、PDKのみとか、また現代GT化と高価格化など、違う側面がありますし。


2022年5月3日 22:57
興味深く考察を読みました
アキレス腱として知られているインターミディエイトシャフトの前後でのカムシャフト駆動ですが なんと左右のバンクのシリンダーヘッド共有化の為のようです

※「ネコ・パブリシング:水冷ポルシェ・パーフェクトブック:M96-01
/M97-77エンジン完全分解解説」にヘッド共有の記載がありました

又 ネット記事ですが「ポルシェAGは1990年代初頭に、創業以来最大の危機に見舞われた。そこで当時のポルシェAGのCEOが、トヨタの元社員を本社にコンサルタントとして招いた」とのこと
”カイゼン”の結果の産物ということでしょうか
コメントへの返答
2022年5月4日 0:24
初めまして、コメントありがとうございます。
駄文に「イイね」いただき恐縮です。

初代水冷911のエンジンは、徹底した量産性とコストダウンと言う点は間違いないですね。インタミ構造は、ヘッド共通化と言う餌に食いついて、結果虻蜂取らずになった感がありますね。 

設計チームが全く別と言う気がしてます。従来の設計員は誰もアドバイスしなかったんでしょうね、そんな気がします。

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