
今回から本題。もう25年以上前だから時効でしょうが、世界トップの某独工作機械メーカの副社長に若気の至り?な、忖度無しの批評をかまして「出禁」を食らった(;^_^A のは馬鹿の勲章w。ほんとドイツ人はプライド高いからw。
それで思うんですけど、ネット界隈でも車業界系の人も、私が思うような事は言っていないんですよね。多分メーカの設計屋さんなら当然気付いていることだけど、恐らくそれを言ったらこの業界では干されちゃうみたいな、何かそういう気もします(;^_^A 「新車発表会での豪華ワイン付きギリシャの走行会」みたいなのに呼ばれなくなるんでしょうね。確かにそれはつらい(;^_^A
と言っても腐っても911は名車ですから、オーナさんは羨ましい限り。なので、別に機械工学的に見たら 云々、であってメーカが品質保証して売っているもので余計なお世話なんです。ただデリケートだな、と知っていて損は無いかと思うだけ。ナイーブな人はこの先読まない方がいいかもです。
個人的にはこの新設計の初代水冷エンジンは
最初に考えるべきスタートポイントが恐らく真逆だったのだろうと思うんですよね、ボクスター由来の996の水冷。
素朴な感想ですが、
「有り得ないがいっぱい」
推測ですけど、ピエヒさん達の意見が全く入っていない、独立したデザインチームがプロジェクトを丸ごと乗っ取って、11年後に丸ごと明け渡した、、のような、これまでのポルシェ的「性能技術オリエンテッド」な系譜ではない。と言うのがこの初代水冷エンジンに対する感想です。そして997後期のMezgerGT2系エンジンも含めて入れ替わった現行新世代から再び戻った感が有ります。つまり空冷→Mezgerターボ系→水冷第2世代と、実は途切れず続いているけれど、
ボクスター系水冷初代のみが「特に911にとっては」異端とも言えます。(経営難?でオタクの意見を聞くな!と株主肝入りだったのかも(;^_^A )
では勝手な推論ですが量産型「水平対向水冷」エンジンデザイナーが図面で最初に考えたであろう、クランク系から取り上げて見ます(開発は1992年頃あたりでしょうか)。
2.クランク支持剛性 (有り得ない:その1)
レースの世界ではすでに水冷ヘッドのエンジンバリエーションは出来ていて、959はその流れでヘッドを水冷化した量産?型でレース由来のものでした。しかし新世代量産型の水冷エンジンは全く設計の優先順位がこれまでとは違ったのだろう、、と思うのが表れているのがこのクランクシャフトの支持構造です。但しNA系のみでターボ系は通称GT-1クランクで別もの。
911だけでなく、ボクスター、ケイマン系にも採用するため最初から「設計命題」が違うものだったような気がします。それゆえ、その信頼性が確立するまではターボ系は実績ある旧構造で引っ張ってた・・・というより無理(レースに使う気無し)だったのでしょうね。
<初代水冷NA系のクランク支持部>
写真のように、クランクケースからクランクベアリング部だけを取り出したケース?のような構造。これを「クランクベアリングブロック」と仮称しておきます。これを水冷化した3連シリンダーをクランクケース?と呼ぶ分割方式とし、空冷由来とは縁を切りました。
ご存じの方も多いでしょうが、簡単に水平対向のエンジンを解説すると、左右のクランクケースがそのままクランクベアリングを構成し、通常の直列やV型のようにベアリングキャップで締め上げる構造にはなっていない。それが強固なクランク剛性を生みます。一方、別な見方をすると水平対向はピストン直径の半分が対向するピストンに被るため、クランクベアリング幅とコンロッドベアリング幅を取り合うと、そのストロークを決めるオフセットピンをつなぐウエブ幅が極薄になるため、ベアリング径を大きくしてジャーナル間のラップ量を確保しながら、メタル面圧を落とし、フリクションが増える部分に目をつぶって、クランクのねじり剛性を確保する必要があります。なので、逆に言えば相手の軸受け側が強固でないと、クランクはふにゃふにゃになると言うことです。半面回転イナーシャは小さく、直六より俊敏なレスポンスが基本的な持ち味。
立ってるものは親でも使え、猫の手も借りたい、、というクランクシャフトの保持剛性。その為スバルは強固な水冷ジャケット一体のクランクケースとし、最大断面係数を確保できる左右シリンダー一体クランクケースを形成します。
<スバルのクランク支持部:FF1000以来、基本変わらず>
スバルの水冷化は遥か昔で、1966年のFF1000には水冷OHCの水平対向4気筒が使われていました
ポルシェは独立シリンダのメンテナンス(交換利便性)を優先(航空機由来)した構造ゆえにクランクケースのみで成立させています。にもかかわらず、初代水冷はせっかくの水冷シリンダーを剛体利用せず、クランクベアリングブロックという断面係数の小さい箱にしてしましました。加えてこのブロックを片バンク3気筒一体のシリンダの皮(ブロックと呼び難い)を挟んで、シリンダーヘッド間で締め付けることで成り立っています。
この3連シリンダーは水側も、オイル側もオープンデッキ構造のシリンダー一体型クランクカバー?。餃子の皮のようなクランクカバー?で出来ており、おせいじにも剛性が高いとは言えない。兎に角安い金型で上下にすぽっと抜きたかったんでしょうね。(ひょっとしたら中子無しかも)左右ケースでこのクランクベアリングブロックを挟み、シリンダーヘッドボルトがシリンダーを貫通して挟まれた「クランクブロックのタップを締め上げます。せっかく締めたクランクベアリングブロックを引きはがすようにヘッドボルトで絞める構造も??。
水冷エンジンは、シリンダーブロックをいわば「親」としてこの一番大きい部品にみんなしがみついて構成されます。故に大黒柱たるシリンダーブロックの頑健さ、がチューンドの限界を決めます。
<市販最速バイク、ハヤブサのシリンダー>
バイクでは珍しくシリンダー独立構造を取っているハヤブサのエンジン。綺麗な4連シリンダーブロックが頑強なつくりであることがわかります。これに腰下とヘッドがしがみつく構造です。
水平対向ではピストンピンとコンロッドをどの段階でつなぐか、組立性が問題になります。それは、対向する構造ゆえ、クランクシャフトとシリンダの間をつなぐピストンとコンロッドをどうやって組み込むか、が難問だからです。片側だけの直6だと、シリンダーの反対、オイルパン側から簡単にコンロッド大端部を組むことができます。
その為、自動化困難。そこで水冷新エンジンは水冷のシリンダを従来で言うところの「クランクケース」から分割し、先にクランクベアリングブロックとして一旦サブアセンブリ化しておこう、と言うことなのでしょう。
このクランクブロックの左右いずれか側のシリンダークランクカバー?と剛結(ノックピン入り)させてまずは直列エンジンの様に3気筒分を組み立てます。次に逆バンク側はピストンを先に入れたシリンダ側とブロック側から出た小端部をピストンピンでつなぐため、シリンダーバレルの下端にサービスホールが開いています。その後左右シリンダーがクランクブロックを固定することになります。
一見ごつい「クランクベアリングブロック」が最初にありきで、これを左右からクランクケースで挟むと言うアイデアですが、水平対向のメリットでもあり、必須でもあるクランクシャフト保持剛性は、大変低いと思います。なので最初からレース用などのパワーアップは考えていなかったと思われます。それは華奢なシリンダーの構造からも明白。
<シリンダー外側から:クランクケース>
<シリンダー内側から:クランクケース>
あと、目立つ特徴のカム駆動部ですが、クランクシャフトから1段下のインターミディエイトシャフトにサイレントチェーンで落としこれにカムシャフト駆動チェーンをなんと、左右バンクの前と後ろに振り分けて駆動。シリンダーのオフセット分を利用して全長を詰めたつもりなんでしょうが、本末転倒。不当間隔トルク変動のあるカムドライブをこんな前後に振り分ける苦労がわかりません(だからこんな太いパイプシャフトになった)。前後長の短縮にそこまでする優先度が有るとは思えません。
<90度回してインタミをオイルパン側(正面)から見たところ>
加えて前述したように、このクランクケースは餃子の皮です。これでインタミシャフトを支えているわけで、そりゃ、どうなるか、、オイル漏れの要因でもあります。ま、それは枝葉の話。
以上述べたように、よく知られているクランクケースの基本構造の違いが、水冷初代の特徴です。しかし、
一番の問題は次回述べる部分が本題というか、ポルシェが997後期から変えた理由。裏返せば直噴化を可能にするためだったと言うこと。
ここでそもそも論ですが、
「そもそも、なぜ水冷にしなければならなかったか?」と言えば引き金は過給と4バルブ化です。それは高出力、高回転化も有りますが、排ガス規制も要因。なので、レース用4バルブヘッド化=イコール水冷ヘッド必須だったわけです。
次回はいよいよ、初代水冷エンジンの本質に迫ります。
(3に続く)
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エンジン | クルマ
Posted at
2021/07/01 17:58:23