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2021年07月03日

ポルシェの水冷エンジン 3(基本構造の、有り得ない)

ポルシェの水冷エンジン 3(基本構造の、有り得ない) (つづき)
現実の商品はメーカとして仕様を満足したものなので、とやかく言う筋合いはないのですが、設計上「ここが、キビシーよね」と言う部分は見えるものです。言わばエンジン設計上の基本特性。後でも述べますが911に乗せるつもりではなかったのかもしれません。とは言えそれでもポルシェ、NAで355PS/3800cc(93PS/Lと立派なもん)、これを上限に見切った上での設計だったのでしょう。ともかく水冷4バルブヘッドを作りました。これが問題です。




現代の直列エンジンでは一般的なクランクケースとシリンダが一体構造のエンジンは普通ですが、空冷ポルシェは大型ディーゼルや、航空機空冷エンジンのような1筒独立シリンダ構成で、空冷はヘッドも独立構造と言う恐らく乗用車用では唯一ではないかな?、の凝った構造です。メリットはヘッドガスケット抜けが起きにくく均質で気密性が得やすいということ。また異常燃焼等では破損の1気筒の交換で他の気筒に影響を及ぼしません。裏を返せば、空冷エンジンの熱歪で気密保持する構造として、航空機で実績の高い構造を採用したと思います。




空冷では容易なこの構造(組み立て生産性は非常に悪いですが)も水冷となると水路の構成が厄介です。
加えて高出力で吸気効率の良い4バルブにすると、燃焼室中央のプラグホールとバルブシートの間が狭くなり、熱応力と金属疲労で、亀裂が入るためで、バリ伝のグンちゃんの愛車ホンダの空冷CB-F750もチューンするとクラック入った。特にターボでは排気バルブの冷却が追いつかず、ナトリウム封入バルブで熱伝達しても尚、足りない(バルブシートが冷えないから)

ノーマルは耐えてもレースは無理。ポルシェもわかってて空冷由来のターボ化も、ついに1974年のレース用の934ターボ(930/71型)で初のヘッドを水冷化したエンジンを投入していました(以後935が席巻するGr5の時代が私に取ってのポルシェ黄金期の記憶ですね(;^_^A)。そのポルシェが初代水冷の構造で過給するわけない(;^_^A。
ポルシェは4バルブ化の水冷市販エンジンとして、ボクスター(1997~)に投入、続いて996シリーズに送り込んだわけですが、その流れからして不穏です。

3.シリンダーヘッドの気密耐性(最大の有り得ない)

シリーズ1回目の写真で出した宿題ですが、気が付いた人いたかな?。
私は他では見られない設計ポイントに気が付いて、二度見しました(;^_^A

<各時代のシリンダー取付ボルト位置>


これまで述べたポイントは水平対向エンジンを構成する上で、一番重要と思われるのが、先に述べた「カミソリクランクシャフト」をどうやって支えるか?です。見た目に分かりやすい特徴ですよね。しかし大事なのはその前。
もっと基本の基本、「内燃機関は圧力容器」だと言うことです。スタートラインが180度逆だった、と言うのはこれもそうなんです。

まずパワーを絞り出すには、如何にでかい爆発パワーを得るか、、ですね。ガソリンエンジンはディーゼルのように高圧縮で自着火(=ノッキング、違いは想定内着火か、想定外着火か、の違い)しませんが、特にピストンの下降に伴って均一な燃焼速度が得られるようにしたい、けれど直噴は混合気の濃淡ムラがあり、部分的過早着火が起きやすい。なのでトヨタのように、ポート噴射と直噴を使い分けるエンジンが有ります。
また脱線するので、興味のある方はリンク先を見てください。昔ほど条件が単純ではないので、様々な要因が絡み合っている一旦が垣間見れます。

要するに内燃機関とは、スタートは「爆発有りき」で力が発生し、これを回転運動に変換するメカがクランク機構と言うわけで、まずスタートラインは「頑丈な圧力容器」なんですね。この燃焼室=圧力容器の設計こそが、内燃機関設計の要でしょう。それがチューニングする土台のエンジンのポテンシャルを決めます。ですが初代水冷はこれが二の次(つまり、チューンする余地無し)。

恐れ多くもポルシェのエンジンデザイナーとここを突いた議論すると、私は生きては帰れんなぁ、と想像できます。だって、彼らは絶対間違いを認めませんからねw。このことからM96系の初代水冷NAエンジンは、なぜポルシェがこの設計にOK出したのか、その理由は恐らくボクスター、ケイマンの量産普及市場の創造。買いやすい価格。それを流用して911の利益率を上げる、てなとこだろうと推察します。

そして、ちょうどCAE技術の発展期でもあり、全て解析で行けるという判断だったのでしょう。インタミベアリングなどは、原因もわかっているし、補修も出来るのであえて言えばベアリングの選定が甘かったまたは取付ブラケット側の剛性か、その両方か。

シリンダーとピストンが作る燃焼室の気密を保持するうえで最重要なヘッドの組付け。この時、通常は1気筒を4本のボルトで均等に締めます。圧力容器の設計などやったことが有ると当たり前ですが、ボルトで締め上げるテンションが均一なことが重要で、均一に弱ければ、漏れにくいものの、どこか1か所が高く、バランスを崩すと圧力は一番弱いところに集中し、歪も一番弱いところに集中します。

従って、等圧で頑丈なシリンダとシリンダーヘッドの気密を構成し、その頑丈に作った部分を土台にクランクジャーナルを支える、、というのが神様のセオリー。
強固にクランクシャフトを左右から挟んだクランクケースから、長いテンションボルトで軸力変動を軽減させて、ボアの直近からシリンダーバレルを挟んでヘッドを締め付けます。
Mezger型の場合は、空冷と類似構造で独立したシリンダスリーブをOリングを介して3連シリンダーケースに収める構造で、何かあっても、スリーブとピストンをその1気筒分のみ交換で済みます。これはレースやチューニングなどでとても合理的な構造。ゆえに産業用途のエンジンではこういった分割構造がほとんどです。

このように、1気筒を圧力容器とみた4本のフランジボルトが均等に締め上げる構造はとても美しいと思っています。写真で紹介したように唯一初代水冷NAエンジンのみがそうではない。(しかし内燃機関でこんなの、見た記憶がないけどな)。

<初代水冷のシリンダーヘッドボルトの不当ピッチ構造>

※ベントレーのW12気筒の片バンクを載せてますが、これで分かるように、シリンダーヘッドボルトの均等配置に合わせてシリンダーを並べているわけです。
クランクシャフトのジャーナルピッチもこれに倣っている。


①ヘッドボルトが正方形の等長ピッチで無く、しかもバレル端より外側と内側のアンバランス構造。当然ながら締結ピッチの広いボア中央の水平方向、馬力あげたり、点火不調でノッキングしたりすると、恐らく1,3,4,6の中央端から吹き抜けるだろうな。
水平ピッチは狭く、しかも1-2と2-3間は2本超狭いピッチで2本ある。従って水平方向には1ー2・3-4・5ー6の不当ピッチで、上下には一番長いピッチで締結される。当然一番ピッチが広いところから逃げますな。材料のヤング率は普通等方性でアルミは鉄の半分。GT-1のスリーブは鉄系の様に見えるのですが文献が無い。シリンダー端の輪っかの面圧をシリンダーヘッドが受けるわけですが、述べたように鉄系ボルト(熱膨張率を調整してある)が不当ピッチだと材料の変形量は距離に比例しますから、当然ボルトピッチの長い部分が変形量が大きい。しかも過給を考えていないからでしょうか、このヘッドが薄い。枠は厚いのですが、バルブやプラグの付く実ヘッド面は薄いうえに縦横のリブ構造が分断され(カムホルダー)は別構造でボルト締め。どうしても金型鋳造のダイキャスト製法で生産性あげたかったんでしょう。GT1では頑丈なカムキャリアがヘッドのリブに重なるように縦横補強してます。

<初代水冷のヘッド構造とGT1構造の違い>


あれだけデリケートに塑性域締めするヘッドボルトがシリンダボアに対してこれだけでたらめに配列してあれば、昔ならアイデアデッサンの時点で赤ペンだらけだっただろううに、3次元CADで構造化し、組立CAEでの変形・応力解析で「大丈夫」と剛性設計したのでしょう。だけどボルトフランジの座面から圧力変動、振動含めた動的解析が出来たとは思え無いけど、現物の動力試験し始めたら案外、うまくいったのかも。それが量産では、使われ方の軽重によって、問題が出たのかもしれない。
Mezgerはヘッド自体が精密中子で形成されたモノコックブロックになっている感じ

一筒一ヘッドの空冷では、各気筒4本のボルトで絞めますが、4気筒エンジンでは一体ヘッドの外周は個別に2本ですが2,3,4の間は2本を共用し、ボアピッチが狭いこともさることながら、爆発毎の負荷を円筒を囲む正方形の等ピッチに設計します。その際、クローズドデッキならまだしも、オープンデッキなら必ずシリンダのフランジをボルトピッチ間が上を通るように近接させます。なぜならシリンダーヘッドの圧力歪をボアの当たり面(ガスケット)に均等で有効な面圧を掛けるためです。それでも爆発の瞬間はミクロン単位でピクピク膨らむわけで、それを吸収しているのがヘッドガスケットです。そのヘッドガスケットの面圧がバレルに均等に負荷できるように見えますか?

次なる問題のオープンデッキについては、長くなったので次回へ。
文章下手で、アレですがクランクもヘッドもシリンダ(オープンデッキ)も実は全部つながった話なんですが、それは最後に分かる?。
(4に続く)
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Posted at 2021/07/03 19:03:26

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