
前回からの続き・・・
非日常の速度域では、また違ったテクを使うのは車でも同じで、タイヤの限界領域を行き来するので、操舵もまた変わってきますね(バイクのメカニズム的に言うと、タイヤのグリップ力を、バンク角で生じるキャンバースラストと舵角で生じるサイドフォースの2つの内向力配分が変わる領域と言えるかと思います)。
<2013年のケーシーストーナ:深いバンク角とフロント舵角ゼロで旋回?>
極めて専門的になりますが、リアタイヤは単純なんですが、フロントタイヤの挙動はバンク角と速度とステムの切れ角とタイヤ荷重というパラメータが相互干渉しながら、非線形で連動するためとても複雑でデリケートです。
※バイクの種類でもカバー範囲、得意領域は変わるので、アメリカン的なバイクは前回の
「車とバイクの違い-①」で述べた①の領域でもセンタリングが強く、低速でもぐらつくことは無いので、ハンドル先行で小径に曲げながらでも減速勝手(バイクが寝ないので)でバランスとっても不安は少ない。それ故ジオメトリ上小回りできないけど。逆にSSではそもそも舵角が切れないのでアレですが、キャスターが起きているので直立力が弱く(モーメントが大きいのでフロントタイヤのサイドフォースを強く誘引するため)、低速だとちょっとバンクさせても、オーバシュートさせてゴロン、と転びやすかったり、フロントからスリップダウンさせたり。つまりバイクのロール制御で間接的にハンドルを切らせる運転だけでは、バランスを取り切れないケースが出ます。なので、この①の領域(約30km/h以下)は練習が必要です。
1回のツーリングで、この辺りの領域を練習する時間割合は極微なので、最初のうちはこのためだけの8の字や、角8の字で集中的に練習するのがイイですね。(角8では定常円はほぼ存在せずに一瞬ですが、そこの旋回バランス点に、ハンドル切ってバンク角を落とし込み、バイクが転倒しないようバランスを「ライダーが取る」と言う点が、他と一番違う所です。この部分は自発的な上達意欲が無いと、いつまでたってもゆっくり足など付きながら向き変えして乗る状況、、、に終わります(;^_^A)まぁ、①と③は少々特殊領域と言えるかもしれませんが。
サーキットでのプロライダーの「操縦技術」は色んなテクニックがある(と思う(;^_^A)のですが、バイクの基本的な物理特性を無視した技は有りません。なぜなら転ぶから(;^_^A またバイクの旋回特性を習熟する為の思考過程は、高速で高荷重状態のサーキット走行も、公道の低速低荷重状態であっても、変わりは無いと考えています。それは結局路面とタイヤのグリップ力の限界(一部特性)の違いであって、公道の低ミューの悪アンジュレーションの路面で安全に引き出せるグリップを探りながら走行するテクニックは物理現象的には同じです。
だから転ばないように操縦する限り、バイクの運動と協調させて、、の範囲を超えることは有りません。車と違ってバイクはあくまでもライダーの間接的なバランス操縦によって、バイクの動きたい方にバイクを誘導する、、ただし「ただ1点、転倒しないバランスが取れるように」という呪縛からは逃れられない運命の乗り物です。
だから、現実には旋回半径が決まったAという90度コーナ単体で考えると、とあるバンク角で、定常円に入るには、そのバイクでのその時の旋回速度はもう、決められている、と言うことです。
バイク+ライダーが織りなすバンク角は旋回半径と旋回速度で起きる「遠心力」に釣り合うバイクのバンク角、となります(この時、バイクのハンドル舵角はバンク角(倒れる)と遠心力(起き上がる)が自動的に釣り合うバランス点に移動するので、ブレーキまたはアクセルでパーシャル速度をそこに作ればピタリと固定されます)。
通常はバイクのバンク角は車速(遠心力)とラインに合わせて作るので、膝を擦るバンク角は、「それに見合う旋回速度が無ければ、そこまで傾かない」となります。
なので、車の運転がうまい人は、進入速度を決めるファクターには、定常円に持っていった場合の最大旋回横Gが、「これぐらい」と体が覚えている感覚で進入速度を読んでいることに成ります。この目測が外れると、オーバースピードで遠心力に対抗するタイヤの踏ん張り余力によっては耐えられず、膨らむ、、ということになります。
バイクの場合は同じカーブでの同じ横Gであっても、バイクは遠心力と釣り合うバンク角で傾いているので、そのバンク角を知りたいのか、遠心力のGの大きさを感じたいのか、がライダーの深層心理なので、耳のセンサを垂直に保てるスタイルで横Gを図り、バンク角は膝か肘(;^_^Aで測っている(公道では普通は必用無いハズで、また横Gは内臓の重力でも感じていると思います)。
それから重要な目線ですが、なるべく遠くの未来点を見ることの意味は、頭が絶えず振動と動きのなかで、相対差を感じ取るためには、動かない固定点を視認する必要があり、そこに視線を置くと、動体の自分が狙いの軸角に合っているのか、が分かるからです。手前を見るとどちらも動いて見えるため、狙いとのずれを感知できないからです。
近年のモトGPは頭を少しでもフロント荷重に回して突っ込みのインの取り合いに飛び込んだ後の旋回Gでフロントが逃げないような独特のスタイルになっていますが、もはや特異な次元だと思います。公道では全く優先順位が違うので、こんなスタイルは不要だと思っています。(公道ではこんなグリップが出ないのでそもそも傾きませんがw)
<ヤマハのファビオ.Q>
私的には、そもそも公道で使う最大バンク角は大体40度ぐらいまでで、マージンとしてさらに5度ぐらい使えるかな、、、と言う哲学です(考えるとわかる通り、物理的ジオメトリから引き出せるグリップと、セルフステアの精度低下を考えるとそうなる。メーカも分かっているので、SS系のバンク角は、ステップ下にバンクセンサーとしてバーを出して、大体バンク角45度程度になっていると思います)。また、バイクが持つ最大コーナリング速度は、公道のμとタイヤグリップで作れる定常円旋回能力で決まりますが、この状態を身体が覚えこむことには意味が有りますが、公道をバイクで走る場合は、その「最大G一定」状態の優先度は低くて、大事なことは「リスクを減らす組み立てにフォーカスすることです」。
直立からバンク角が増えてゆくとタイヤの縦荷重は減ってゆき、横荷重は増えて行く。サイドのキャンバースラスト力が増大すれば、旋回半径は小さくなり、遠心力の増大でバイクを起こす力と倒れこむ力も増大し、タイヤのグリップ限界を超えてしまうと、起き上がろうとする力が抜けて、スリップダウンします。
つまり、0~45度までは倒すほどに舵角も付いて、タイヤが路面に押し付けられる力も増えて行ったが、45度を超えると増減が反転し、バンク角で生じるキャンバースラストは大きくなるが、タイヤに掛かる地面鉛直の荷重は減り、遠心力と逆向きのサイドフォースは増大すると言った具合に、バンク角45度はそれまでの制御パラメータの変曲点となる感じ。また、遠心力が1Gに達するためにはタイヤの生むμも1.0が必要になるため、公道のアスファルトμを0.8とすると、バンク角は45度以内で釣りあうはず。
リッターSSに乗る場合、既にそれはポルシェのGT3レベルの車を乗るに等しいスポーツ性が有ります(GT3に乗ったことは無いですが(;^_^A)。公道では使い切れないポテンシャルが有り、文字通り使い切れません(;^_^A。 それは繰り返し述べているように、車と違ってバイクは急に何かを変更することが苦手です。なので最大横Gを出そうとクリッピング速度を上げて行くと、車では前後のグリップ限界を先に超えたタイヤがスリップして膨らむ、、で済みますが、バイクの場合は、同時に転倒のバランスを取り直す必要が有り、その制御が大変(特に前が滑った場合)
限界手前であったとしても、バイクの「定常円」の状態から、遠心力で起こしてゆくのはリーズナブルですが、障害物をよけようと、新たな旋回半径を与えるには、もう一度バンク角を設定しなおす必要が有り、これを咄嗟にできるためには身体が、反射的に「ハンドルを切る」では無くて、「切らせる」という間接操舵が先に出来ないと、固まることに成ります。(この時の、特にフロントタイヤの使い方はには踏み込みません)
なので、そこからの動作の工程をいち例として記すと(状況に応じて色んな手は有るけども、)、まずは
旋回中ながら軽くフロントブレーキを掛けて、バイクを起こす力を利用し、バンク角を一旦浅くしながらラインを外に膨らましながらも、速度は落ちて行く。この時もハンドルのセルフステアを維持しながらバイクにバランスは取ってもらいながら、向き変えを入れます。そしてもう一度落ちた速度(=小さい旋回半径が取れる)でハンドルをインに切り直させて、障害物を避けて、元の定常円に復帰して脱出となります。
この「先にバイクの姿勢を操縦して、舵角を思ったラインに切りなおさせて、、」からやっとバイクはその方向に曲がるからです。
車のように、「ハンドルを思った方に物理的に切る:反射動作」では曲がりません。もし、車のようにハンドルを先に外側に切った場合、バイクはイン側にさらに倒れこむことになり、体はアウト側に、バイクはイン側にと「シンクロ率0%」となり、そのまま倒れるでしょう、もしイン側に行こうとして、ハンドルをインに切ったならば、バイクはアウト側に起き上がり膨らむため、心はイン側に、バイクはアウト側に同じくシンクロ率0%となり、無理にインに引き込めばハイサイド的に外側に吹っ飛ぶか、握りゴケ的に、フロントタイヤが舵角方向と旋回方向のズレ過大でサイドスリップとなり、イン側にこけますね。
もし、イン側に向けたいなら、バンク角と舵角にマージンが有るなら、そのままインにバンク角を増やして切れ込まさせるか、少しハンドルのイン側を押すか、アウト側を引いて倒れこませてバンク角を増やし、キャンバースラスト力を増やして旋回円を小さく補正します。この場合、バイクの行きたい方に「
*体を合わせられていれば、」バランスはバイクが取ってくれるので問題なく曲がれます。しかし公道でならば、まずは軽くブレーキを当てて速度を落としつつ、バイクが起き上がる力をフロントのグリップを上げる方に使って、イン側にバイクを引き込んで定常円半径の変更を行います。
公道だと、同じワインディングの同一車線側で、前のバイクが転んだ場合、転んだバイクは外に滑って膨らむのでイン側に逃げるし、反対車線のバイクが転んだ場合は未来を読んでスペースのできる方にハンドルを「切らせます」。
80年代の峠小僧の時代には、そう言った訓練風景があちこちで展開されていましたねぇ、、遠い目www。
ちょっと脱線しましたが、上のラインの代え方を読んで、ちゃんとシミュレーションできた人はイイですけど、そうでない人は、「*」の方法がイメージできないはずですので、やめておきましょう。素直にできるだけブレーキをそっとグリップ範囲でしっかり掛けて(;^_^A 速度を落として障害物を避けましょう。
まだ続く(;^_^A
肝心の事を伏せて周辺事情だけで書くと、冗長で難解ですね。