
スバルの新しいセダン、B4後継車を味わえるには、もうしばらくの辛抱が必要ですね。しかしながらその興味の大半、いわば核心部分はレヴォーグの2.0DITの試乗が叶えば、ほぼ評価が出来るだろうと思うのです。その核心部分とはズバリ、CVTの出来 だから。インプレッサStiの後継を待たれている方には6速MTのWRXStiがあるので、そちらは実車が出るまで評価できないだろうけど。
と言ってもエンジンは最終インプレッサSpec-Cからのキャリーオーバであり6速MTもほぼ同様。シャシー性能はレヴォーグから推定できるだろう。ということで逆にStiには、あまりサプライズは無いかもしれない。(値段がびっくりだったりして(^_^;))
オーストラリアの記事では、新型WRXの買い付け量そのものが大幅に増加していることもそうだが、それ以上にこの手の車に50%ものCVT比率となっていることに「誰が買うんだ?」と驚いている記事があった。当然エンドユーザが認めたからこそのDラーの仕入れであったわけだから。
ということから、もはや従来のAT機構別の仕分け=低燃費用CVT>コンフォートなステップAT>スポーツ走行用のDCT、、、という概念は完全に払しょくされ、むしろ良くできたDCT以上の評価になっているようなのだ(それは眉唾だがw)。もちろん、サーキット走行のようなタイムを削ることに重きを置いたり、変速ショックや渋滞でのしつけを重視するなど、どこをどう採点するかでこれは変わるでしょう。しかしながら、半数ものWRXファンがCVTを選んだ過程には2つの理由が考えれると思う。
一つは、WRX+CVTがもたらすスポーティ+コンフォートの新たな顧客を獲得したという事実だろう。なぜなら、従来からの過激な走りを望むユーザはStiに行くはずだから。次に旧来のWRXファン(A-Line)でありながら、日常のオールマイティスポーツが魅力でもある4ドアセダンの新たな快適性を、失われなかったスポーツ性ゆえに評価した層が居たということでしょう。
これは、私が現在のBLE代替候補と思っているポジションそのものです。そして、新たなCVTが本当にスポーティな走りをスポイルしないのか、その1点がこの車の価値を決めるように思うのです。
さてここに至って、スバルのスポーツリニアトロニックが新たな世界を切り開いた事実を認めなければならないかも知れない。実際私のスバルに対する近年の思いの変遷は以下のようなものでした。
『とうとうATは全てCVTに統一されるらしい。あらたなトルコンATは無くなる。』
→ スバルでスポーツ走行したいなら、今後はMTを選ぶしかない。
→レガシィのような、コンフォートを求める車にはMTは設定されない(アイサイトとの相乗効果でスバルは囲い込みを狙っている)。
→40kg・mにも耐えるCVTを完成 「レガシィ2.0DITデビュー」
→試乗:なるほど、トルコンAT並みのドライバビリティには来た。しかしS#で峠を走りたいとは思わんなー。。であった。
→フォレスターの新型2.0DITに試乗する。
→ちょっと待て、CVTのこの変速レスポンスとクロスレシオの8速ステップ変速は面白い。 アクセルワークでのトラクション制御がもっとダイレクトな直結感が出れば、行けるかも
と、
CVTに対して少々考え方を改める。
→スバル技報の8速ステップ制御開発の話を読む。みんな愛車はMT車だという。そしてMTのドライブファンをものにしたいと開発中。
→レヴォーグの開発に当たりMT無しを知る。
完全にCVTの狙いが「低燃費、なめらか」だった指標から、DCTに負けない究極のスポーツATに変わったと思った。だからこそ1.6DITのインテリジェントCVTとの2本立てになったことがわかる。
とはいえ、世界中でCVTを2ペダルMTに勝るスポーツATに出来る、と考えたエンジニアは世界中に居なかったのではないだろうか?。(けれど、実際にはトルク切れ無しの連続加速状態を考えると、実はCVTこそタイムを削る用途に向く素養はあるのだが・・)
実際、そう考えていたかはわかりませんが。
さてもはやAT車はCVTで作るしかない!、そう決まるとCVTに対して行われた開発指針がどこの会社もやっていない方向に向いたことは容易に想像出来る。だってスバルの走り好きエンジニアには「CVT」しか無いのだ。何とかしてこれを自分でも楽しめるATにするしかない!と思ったのではないだろうか?
あるいは、ユーザである走り好きのMTマニアだけがスバル車に残り、私のような家族車の役目を果たしつつ、大事な人を送迎したり、休日のドライブで出くわした峠では・・・と運転を楽しみにしているユーザには「まぁ、嫌ならいいから、買わなくて・・」とは言えないと思ったに違いない。
おそらくCVTのアドバンテージを生かしたまま、DCTに負けないスポーツミッションとすべく、徹底して欠点をつぶす作業を進めただろう。
①トルク切れを起こさない変速
②固定変速でのダイレクト感の追及
(ロックアップクラッチの大容量化:たぶんスタートと異常時以外は切らない)
③パワーバンドを外さないクロスレシオの8速
(たぶんレシオカバーの全域を使わないのではないか?)
④ステップ変速速度の高速化
これらを追求して行ったらどうなるか?。
DCTのクラッチ接続タイムの大中小といった選択モードとは全く異なる、CVTの選択モードは①自動(Iモードアクセルワークに応じたコンテニュアス⇔ステップ変速)、②ステップモード(Sモード:6速=従来トルコンATの代替)、③クロスレシオシーケンシャルモード(S#:8速=DCT以上のスポーツAT)と言った世界が広がるのでは?。
渋滞路での高級セダンといったジェントルな振る舞いから、6速トルコンATのような自然な走り。そして新たに獲得した競技車両的なパワーバンドを探る走り。
無段変速という存在理由ともいうべき観念を消して、全く新しい電光石火の変速を楽しむ変速機が実現出来たら、もはや機械の形式などどうでも良いだろう。「スポーツリニアトロニック(長いなwww)」と覚えておけばいいんじゃない!。
この記事は、実はレヴォーグ1.6の試乗後に、インスピーレーションと期待を込めて書いたものです。2.0DITに試乗後、ある程度確信が持てたらUPするつもりでした。けれども、当面試乗のチャンスも無いし、この後で入手したレヴォーグのカタログから少しわかったことも有ったので、追加して期待を膨らませておくことにしましょう(^_^;)、ということでUPしちゃいました。
図1:2.0のCVTのSモードとS#モードの変速比の違い
これを見ると、上の③で述べたことがやはりな、と分かりました。
Sモードの6速はいわゆるオーバドライブの高速低燃費用であり、S#モードではこれを切り捨て、
S#の8速がSのおよそ5速あたりに設定されていることがわかります。
つまり、スタートギアの1速とODの6速を除いた4段分を7段のクロスミッション設定としています。これはDCTなどのギアだと9速DCT相当の細やかさになりますね。
そして逆に2速を下げて、通常の峠ヘアピンで1速では吹け切って、2速では高すぎるという良く出くわすタイトターンで2速が使えるところまで下げています。まさに8速クロスミッションになっています。
次に、1.6と比較するためにファイナルまで合わせた総減速比でグラフ化してみます。
これで判るのはやはり排気量差のトルクをカバーするために、1.6の1速は減速比が低くなっています。しかし2速、3速とその差は縮まり、6速で2.0のSモードと同じになります(高速巡航時は同じと言うことですね)。
そして、ここが大事なところですが、2.0のエンジン性能曲線と重ねてその意味を調べます。
(引用グラフが適当でなかったので、修正しました)
すると、FA20DITのトップエンドを500回転伸ばした事の意味もよくわかります。
S#モードはバトルモードですからおそらく8速ギアでのリミットが最高速度の出るポイントでしょう。エンジンパワーと走行抵抗のバランス点でエンジンがレブリミットにピッタリかな(通常はトップは燃費ギアになっているので、吹け切りませんから。だからこそ8速のギア比を自由にプログラムできるCVTのなせる業ですね)。
そしてこの3速から8速までの間隔をざっと調べると、それぞれ6400rpmでシフトして行くと2速から3速で4976回転に、3速から4速で5285回転、4-5で5213回転、5-6で5241回転、6-7で5318回転、7-8で5445回転にドロップして繋がります。これがどういう意味かと言えば、トルクカーブがフラットになる前までで繋いでいることがわかります。これは車に負荷が掛かって回転が落ちるとトルクはむしろ上がるという、いわゆる「トルクライズ」の領域にあるため、エンジンが非常にパワフルに粘るのです。これがフラット域あるいは左下がりの領域までドロップすると、負荷に負けて回転が落ちるとトルクも落ちるため、ズルズル回転が落ちて失速します。
このように、CVTのステップモードは一般的にはトルコン6速ATを日常では味わいながら、峠ではレース用のクロスミッションに取り換えたかのように、スイッチ一つで載せ替えてしまうのです。あと、変速時に本当にトルクを絞らずフルパワーで変速して行くとしたら、、、。
ただ、0スタートはやはり苦手でしょう、けれどこの年になるとローンチスタートしたいとは思いません。機械への負担がわかるだけに気持ち良くないのです。と言うわけで車が30km/h程度には速度を持っているところからスポーツ走行に入れば、おそらくCVTと言うことは忘れてしまうのでは、、、と妄想しているところです。
スバルの設計陣と「これならOK」と認める実験部隊に大いに期待しています。
(しかし、これまで聞こえてきたプロの評論家の試乗記では1.6でも良い出来だが2.0はさすがにパワフル、、」と言った声しか聞こえてこない。 評論に値しないふつうの「CVT」だったのだろうか。その答えは後1か月ぐらい?。これらをもし、レヴォーグの2.0DITの試乗で感じることが出来たなら、その時は
「なるほど、スバルがトルコンATを捨ててCVT1本に賭けた理由がわかった。」
と思うでしょう。また多少の到達点の足りなさの問題であるならば、それは時間が解決してくれるのではないか?。問題はそういった方向を目指して開発しているか、否か、、の確認がしたいんですけどねぇ。