この回はちょっと特殊で、GSX-Rというより、車やバイクといった乗り物のパッケージデザイン(設計)についての考察になります。あくまで個人の持論ですので勝手に述べます。
以前、軽自動車は「税金」が作った車だと書いたことがあったと思います。リッターカーなどBセグの車は、人と国の交通環境が作ったパッケージであるけれど、軽自動車はレースカーのレギュレーションと同じく「税金上のレギュレーション」に沿ってパッケージデザインされている。
レーシングカーは、参戦するカテゴリーの規格によって、既知の事はがんじがらめで、「どうでもいいのか?!」というグレーゾーンの化かし合い。しかし、天才はこの「未定のグレーを突いて」有効なアドバンテージを創造する。すると、また牙を折る規定が作られると。まぁそういうわけでなぜ「牙を折るか」と言えば、金たんまりもらっているスポンサーが裏から手を回すとか、観客が興奮するプロレス的な興行にするためとか、まぁこの世の仕組みっていうやつです。
しかし戦争の武器、例えば第2次大戦中の戦闘機を考えると、パッケージングは戦略と戦術目的によって、「機種」が揃えられ、戦闘機の機能・性能にあれこれ注文が付く。これらを最適化するパッケージデザインには、コストや、調達できるエンジンと言った多くの制約、国家工業力の総力あるいは知見の広いディレクター的企画屋が、重要かもしれません。
ところが、あの「時代」を形作る、根底のインフラには、内燃機械、プロペラ、ジュラルミン、といった様々な先端技術(比較優位な工業力)があり、それらを手に入れて設計すると、不思議と世界中で似たようなディメンションのデザインに落ち着く。それでも相当に国によってばらつき、個性が生まれますが、それは知見の断絶(秘密)が働いているからで、現代に置き換えると、耐久性→高出力→低燃費→排ガス、、と言った時代のニーズを掲げて達成する手段の開発に明け暮れていたものが、ハイブリッド化、EV化が現実化してくると、NA機関の開発は、ほぼ終局に近づき、今の評価軸では「無駄」とされてしまうようなドライバビリティや官能性は、まさに「趣味や道楽」と切り捨てられつつあり、逆にそれが得られる限られた人向けの嗜好品扱いになろうとしています。
その境目が大体1990年代最後から2010年あたりまでかなぁという感じ。開発時間軸で紐解くとね。
何が言いたいかと言えば、純粋に「公道」をフィールドとし(法規はナンバーが取れる縛りは当然踏まえたうえで)、ライダー、ドライバーの肉体的諸元からデザインしてみると、、、、レースレギュレーションや税金が全く縛りにならないならば、、、、
さて、排気量は?、車体質量は?、と自由にデザインしたならば、一体あまた有るカタログモデルのどれがそれに一番適合しているだろうか?。もちろん乗る側の技量や嗜好も幅広くあるわけですが、それを自分の嗜好で絞り込んでゆくと、、、
まずは、サイズと重さ。
それが私の体験上では、ある程度グレーゾーン走り(;^_^Aで想定外の挙動が起きてもそこに踏み込める制御下に置ける(気がする(;^_^A)・・自信が持てる感覚が有るのは、ターマック上なら体重の3倍ぐらいまでだと思う。とすると現在は、体重62kgx3=186kg迄となる。
★車重(装備質量上限):186kg前後
次に、運動性能として物足りなくは無い・・排気量の毒を感じたのは、過去の経験上バイクの場合はトルクウエイトレシオで20以下は欲しい。これは186kg/20=9.3kgmのトルクが必要。
そうすると、排気量は大体900cc前後あたり。
GSX-R1000K5=乾燥166kg+装備23kg/12kgm=15.75
GSX-R750K5=163kg+23/8.8=21.1
というあんばい。
しかしこれは静的質量であって、実際に乗った感じはこれでは決まらない。そのことを一番よくわかってパッケージしたのがスズキの開発陣だと思う。これは勝手な推測ですが、GSX-Rの開発の歴史は、最適パッケージのデータベース作りだったと言ってよく、H社のように脈略無くすべて刷新したM/Cを繰り返す幅広いデータベースではなく、ある程度絞り込んだ、「金脈のマスターディメンション」に落とし込むデータベースを積み上げてきたからこそ分かったことだと思っている。
それは「直列4気筒」を搭載する場合の「エンジンミッション系」の動的ロール軸・慣性力だと思う。レースなら、サーキットタイムの削り方、という軸でディメンションを追求できる形に「パワープラント自体が変形させられる」場合もあるだろう。V型やパラツインといったエンジン形式も大いに影響するだろう。
だけれども、日本車が世界を席巻した「直列4気筒DOHC4バルブ」のエンジンを柱に据えるならば、、という前提条件を置いた場合、それが750ccにベストバランスが有るということだと思う。これがタイムを削る、、ならば当然1000ccか、あるいは900ccあたりが良いかもしれない。 しかしユーノスロードスターのような「車体の動質」を手の内において「公道を」走る道具、としてパーツを集めた場合は?。
4気筒の幅広なクランクシャフトの回転ジャイロ(それも13000回転も回すとすると)「回転軸保存性」という長所としての安定成分(車体がふらつかない)と、スパッと入るロール軸の倒しこみと旋回への変換効率は、「直列4気筒、高回転高出力+公道」を使う場合、750ccがベストなんだと思う。
それに短い公道では、直4特有のち密で甲高い咆哮と伸びる加速感を味わうベストバランスだと思うのです。
だから、スズキだけが未だにナナハンというカテゴリーを持っている。
(GSXR1000のK5はSSエンジンとしては異例のロングストロークでコンロッドボルトサイズから逆算すると、750ccの1.5倍以上1.8倍ぐらいのジャイロを持っていると推察している。他社のビッグボアはこれより小さいだろうが、回転数が14000rpmレッドなど、今や750cc並みの高回転だから、その差は小さくない))クランクピンセンターが直径46mmで回るのと、59mmで回るのでは全く違うので、カタログ上の乾燥重量が同等であっても乗り味は全く別物である。
2ストロークなら、500ccぐらいで8000rpmぐらいを使うバイクでも身軽で8kgmぐらいのトルクがある。これを直4で再現すると、パワーとトルクは750ccぐらいで出せるが、そのクランクシャフトの生むジャイロはやはり大きい。
これが、私が直4なら750ccにこだわっている理由です。つまり「公道を」「日本が誇る直4で」気持ちよく走りたい、、という思考過程でパッケージ条件から的を絞った結果です。(実際、程よい伸びと咆哮の高揚感がとてもいいです)
なお、林道や酷道など、タイトターンのつづら折れや、細かいアップダウンの織りなす峠なら、私はパラツインがベストだと思っています(Vツインは縦の質量が分散していて、ピッチングモーメント軸が薄い気がする。なので、もう少し高速寄りで直4の領域にかぶってくる。ロール方向は有利なんだけど)。そしてその蹴りだしトルクやパワーを考えると900ccぐらいがベストと考えていて、ちょうどNUDAのパラツイン900ccとGSX-R750の直4の750ccは、「公道」のAとBのベストを追求したサイズだと思っているのです。
ただ問題は、公道では合法的に味わえる快感領域が、おのずと高速寄りにシフトしてくることで、日本的酷道の領域と、ある程度整備された農道や有料道路などのステージとに分かれるものの、現実にはサーキットに行かないと、そのほとんどの能力を持て余すことです。
このイメージグラフのように、実際の公道で使える領域を見れば、パラツインの方が、楽しめることは明白。しかし直4ならではの伸びを楽しむことは出来るわけで、これが1000ccや1300ccになってくると、上昇角度が立って、高速域の使ってはいけない領域が伸びてゆくだけで、楽しめるゾーンが増えるわけでは無いと感じています。40km/hぐらいから120km/hぐらいまでを行ったり来たりする領域がとても重要だと思います。
20年もたてば、そろそろクラッシックの領域に近づくわけで、GSX-Rの余生を楽しむじーさんが、趣味で眺めてコーヒー飲むには
ちょうど良い「光と影と、毒」を感じることが出来て、20年ぐらい若返った気がするwww。
春の交通安全週間ですね、おとなしく格納しておきます(;^_^A
続く