
私が4年半前に星撮りにハマったキッカケがポータブル赤道儀(ポタ赤)でした。
みんカラのお友達などからポタ赤について聞かれたり、それ以外でも尋ねられ
るので、ここに自分の体験とそれに基づく機材の選択についてまとめておこうと
思います。
無駄な投資の歴史というような内容ですが、これから始める方が少しでも無駄を
省くためのお役に立てればと思います。
まずは私のポタ赤遍歴から。()内は所有期間です。
(ポタ赤の画像はメーカーから拝借しました。)
タイトル画像は、今現在メインで使っているポタ赤の画像です。
以下では青色の文字は当該製品のサイトへのリンクになっています。
1. Vixen ポラリエ (2012/11-)
2012年8月に初めてのデジイチ(D800E)を手に入れて主に風景を撮っていましたが、「ポラリエ」というポタ赤の存在を知り、
天の川くらいは取れるのではと考えて、その年の冬にニコンのタイマーリモコンとともに購入しました。
最初は広角レンズで撮ってみて、ISO800、SS=120-180sで天の川が写ったので、気を良くして70-300mmズームのテレ端で
オリオン大星雲も写ります。ただ、フルサイズのカメラに望遠レンズだと2キロ近い重量で、ポラリエの2つのネジで固定する
ターンテーブルが度々ズレるので、アフターマーケットの強化パーツを投入しました。
また、極軸合わせの精度を上げるために、サードパーティの極軸望遠鏡も導入するなど、かなり実用になる状態にすること
ができました。しかし、結果的には本体以上の投資をすることになりました。
最近はVixenが純正で使いやすいパーツ類を出しているので、そちらの方が無駄なく強化できると思います。
昔の画像を探してみたら、2012年12月にD800EとTamron 70-300mmで撮った画像が出てきました。(この時期は、まだ
強化する前の素の状態だったと思います。)合成しない1枚ものです。
今見るととても拙くてお見せするようなものではありませんが、初心者でもこのくらいは撮れるということの参考に。
2, Kenko スカイメモRS (2013/10-)【生産中止】

ポラリエ自体は小型軽量で、単3電池2本で動くので携帯するには便利なのですが、70-200mm F2.8などの1-2kgを越す
レンズを使うときの安定性と、極軸望遠鏡の精度がネックになり、もう少ししっかりしたポタ赤としてスカイメモRSを購入しました。
これは追加でバランスウェイトがあり、300mm F2.8でも運用できますし、短い焦点距離のレンズでも長時間露光ができます。
その後、2014年7月から赤道儀と望遠鏡をを使った撮影を始め、しばらくはスカイメモとの2台体制が続きます。
3. iOptron SkyTracker(2016/7-2017/5)

これはポラリエを一回り大きくしたものですが、ターンテーブルを3つのネジで固定し、極軸望遠鏡や微動経緯台(赤道儀の方位と
高度を微調整する雲台)が最初から付属していて$299で購入しました。購入した時期は中型赤道儀と小型赤道儀にポタ赤の
3台体制を始めようとしていた頃で、スカイメモと付属パーツで場所と重量が嵩むのでポラリエより少し大きいくらいでしっかりした
ものをと導入しました。
iOptronの赤道儀を使っていて、その極軸望遠鏡の使いやすさと精度を知っていたので国内では知名度は低いのですが、迷わず
これに決めました。去年の夏以降の星野写真は全てこれを使って撮っています。(下の画像も)
4. iOptron SkyGuider Pro(2017/5-)

これは先月発売され、最近購入したものです。SkyTrackerと同じくiOptronの製品で、パッケージは一回り大きい程度ですが、
バランスウェイト・経緯台など全て含んで$428です。スペースを取らない割には、カメラの固定方法に工夫がしてあり、
構図の自由度もSkyTrackerより大きく、さらに重い機材(ウェイト除いて5kg)の運用もできます。
SkyTrackerをこれから星野・星景写真を始める知人に譲って、このポタ赤を購入しました。
1軸ですが、オートガイド端子もついています。これだとスカイメモの代用もできます。
(3, 4はアメリカのB&Hで購入しました。私が調べた中では最も送料がお徳だったので。)
ポタ赤を選ぶときのポイントは、
A.携帯性、B.積載性能、C.極軸合わせの精度 です。
モーターやギヤといった駆動系の精度も重要ですが、ここに挙げるポタ赤は300mmまでのカメラレンズを使う限りは大きな差は
無いでしょう。あまりに小さいと駆動系の精度が悪かったり、積載できる量が少なくなり、AとBは相反する面があります。
追尾精度はこの駆動系の精度と、
極軸合わせの精度で決まります。
自分が使ってきた機材で、この3点を評価すると、次のようになります。
A. 携帯性: 1 > 3 > 4 > 2
B. 積載性能: 2=4 > 3 > 1
C. 極軸合わせ: 4 > 3 > 2 > 1
ポタ赤には10万円を超えるものもありますが、購入する方の予算が5万円程度だとすると、私が使ったもの以外で
お勧めできるのは次の3つです。
(1) iOptron SkyTracker Pro
これは超小型で、山登りをする方などには最適かと思います。積載重量が制限されるのは致し方ありませんが。
(2) Kenko スカイメモS (SkyWatcher Star Adventure)
Syntaという中国メーカーのブランドSkyWatcherの製品のOEMです。国内で販売されているので入手しやすく、オプションも
充実しています。性能はSkyGuider Proと同等かと思います。SkyGuider ProはスカイメモSをターゲットに開発されたと思える
くらい似ている点が多く、後で買いそうなオプションを全て含んで上記の価格なので、かなり戦略的です。
(3) Kenko スカイメモT (SkyWatcher Star Adventure mini Wifi)
これもSyntaのOEMで、スカイメモSを小型化したものです。積載重量は3kgとSkyWatcher Sの5kgよりは劣ります。
携帯性を重視した赤道儀です。
どのポタ赤も通常のカメラ三脚を使います。また
追尾速度は、
恒星時に対して1倍、0.5倍、月追尾、太陽追尾が備わっています。
恒星時0.5倍は、星空と地面(風景)を同時に撮る際に使います。どちらも流れますが、両方の流れを最小にするためです。
極軸望遠鏡は、ポラリエ以外は最初から付属しており、私はiOSのPolarScopeAlignというフリーのアプリを使って合わせています。
その画面に各メーカーの極軸望遠鏡のスクリーンが表示され、どの位置に北極星を導入すればよいかが一目でわかります。
この北極星を導入するときに、
ポタ赤を載せる微動経緯台(ギヤ雲台のように方位と高度を独立に微調整できます)
が必要で、
iOptron以外の製品はオプションかサードパーティの製品が必要になります。
最近、三脚メーカーのスリックが
SMH-250という製品を出しています。3kg以下ならこれでもよいでしょう。
いかに極軸望遠鏡が良くても、調整しにくいと極軸を合わせられないので微動経緯台の使いやすさも重要です。
今どれが買いかと問われたら、携帯性を気にしなければ、
SkyGuider Proが、最後発だけあって性能と価格で
頭1つ抜けています。海外通販に不安がある方なら、割高になりますが国内で買える
スカイメモSですね。
それと、初めて極軸望遠鏡に北極星を導入するとき、空がクリアであるほど星がたくさん見えて、どれが北極星か分からなく
なることがあります。(私も最初にありました。)
そんなときには、微動経緯台にある高度目盛りを観測地の北緯緯度に合わせれば、高度は大体合います。それにコンパスが
あれば(偏角を知った上で)、方角も出せるので極軸望遠鏡の視野に北極星を入れることができます。
中型赤道儀1台買えるくらいの投資をしてしまい高い授業料でしたが、まぁ本人は色々と楽しめて知識も付いたので
よかったかと思っています。強化された最初のポラリエとスカイメモRSは今でも所有していて、興味を持つ初心者に
貸して一緒に星空を撮りに行くこともあります。
これから星野・星景写真を始める方のご参考になれば幸いです。