久しぶりのブログ更新になります。
週末のサイクリングも、都合が合わなかったり天気が良くない日があったりで
いつもより距離が伸びませんでした。
例年ならこの時期は飲む機会が多いので、その分、運動するようにしていますが、
去年・今年と忘年会&新年会がないので、運動も低調でした。
来年こそは、気兼ねなく飲み会をしたいですね。
さて、星撮りの方は、新月期に天気が優れず出動機会がありませんでしたが、
平日に自宅で2台体制で撮影をする日がありました。
タイトル画像は、最も明るい時には肉眼でも見えたというレナード彗星です。
今月上旬は明け方に東の空、下旬は夕方日暮れ時に西の空に見えるのですが、
明け方は気温が下がり、湿度が上がって雲が多くなり、結局見られたのは、
23日の夕方でした。霞んでいて肉眼では見ることができず、赤道儀に
焦点距離450mmの望遠鏡とZ6IIを載せて、SkySafariで導入して撮影した
ものです。
今の時期は上空の気流が早くて長焦点撮影に向かないので、彗星を見た23日
も含めて短めの鏡筒で星雲を撮影していました。
まずは自宅の敷地内で撮影した写真から。
自宅の北側は低いところに電線がある以外は視野が開けていて光害も少ないので、北天の星雲を狙います。
朝まで晴れるという予報の5日は、小型赤道儀に載せた焦点距離200mmのBorg 55FLにZ6IIを付けて、
カシオペアざの星雲と星団を撮っていました。
このブログでも紹介したことのある「ハート星雲」「ソウル星雲」と二重星団の3つの天体を1フレームに入れます。
電線にかかった写真を除いて、明け方近くまで撮影した画像を合成しました。
ドームでは、この日の夜から3日かけて1つの天体を撮影していました。
その対象は、おうし座・ぎょしゃ座にある「シメイズ147」と呼ばれる、大きく淡い超新星残骸です。
ここ3年ほど毎年チャレンジしていますが、暗くて天候が良くないと中々撮れない対象です。
これのために今年導入した焦点距離318mm F3という明るい望遠鏡で、デュアル・ナローバンドフィルタを
つけた冷却カメラでSS=600sを200枚近く撮影し、雲のかかっていない100枚を使いました。
海外では「スパゲッティ星雲」とも呼ばれているように、長いフィラメントが絡まったようにも見えます。
この星雲の元になった超新星爆発は10万年以上前に起こったとされているので、大きく広がっていて淡いわけです。
次の機会は13日でした。
この日も、自宅の北側で小型赤道儀に初心者の頃に買った348mm F4.9の屈折鏡にZ6IIを付けて放置プレイでした。
対象は、北天ではなく、0時頃に天頂の少し南を通過する2つの星雲です。
冬の天の川のオリオン座から北に昇ったふたご座の「クラゲ星雲」と「モンキー星雲」です。
去年はどちらも長い焦点距離で撮影していましたが、初めてツーショットで撮りました。
ギリギリ自宅の屋根にかからずに子午線越えができたようで、明け方前に曇るまでのカット40枚ほどが使えました。
ドームではこの夜と翌日の2晩かけて、1つの天体を使った機材テストでした。
天文機材も年末セールというのがあり、そこで初めて「モノクロカメラ」を購入しました。
「モノクロ」というと時代に逆行しているようですが、本格的な天体写真ではモノクロカメラとフィルターが使われます。
デジカメのイメージセンサーは光を電気信号に変換するもので、本来は光の強度(明るさ)しか記録できませんが、
Kodakのベイヤーさんが考案した方法でカラー画像を作り出しています。
デジカメのセンサーの前には赤外カット、ローパスのフィルタの他にカラーフィルタ・アレイ(CFA)があります。
これは4つ1組の画素の1つずつにRGGBのフィルタを置いて、RGB毎の光の強度を12〜16bitで記録します。
こうしてできるのがRAWファイルで、現像ソフトでは1つのピクセルに対して、周辺の情報まで含めて計算して
RGB各色16bit (TIFF)を割り当てます。JPEGはそれを各色8bitまで落としたものです。
CFAに使われるカラーフィルタは、下のKodakのCCDの例のように、汎用性を持たせるために透過波長域が広くなっています。
つまり、4000万画素のセンサーでもRGGBのセットは1000万しかありません。
1ピクセルにRGBを割り振るアルゴリズムも工夫はされていますが、実際の解像度は4000万画素分もないのです。
天体、特に特定の光を放つ星雲などはその光を全画素を使って記録する方が良いので、ナローバンド(6〜12nmのバンド幅)
フィルタを使って撮影します。
今回、星雲が放出する光の大半を占めるHα、SII、OIIIという3種類の輝線を透過するフィルタを使いました。
以下の3つがその透過スペクトルです。
これだけ細いので感度を上げたり露光時間を長くする必要がありますが、月明かりや光害があっても、あまり問題になりません。
今回購入したモノクロカメラは、QHY268MというAPS-Cサイズの2600万画素の冷却CMOSカメラです。
初撮影の対象はオリオン座の馬頭星雲です。
各フィルタで30~40枚撮影して、それぞれで合成すると次のようになります。
上からHα、SII、OIIIです。
青緑のOIIIでは馬の頭はよく見えませんね。
これら3つの画像をブレンドしてR, G, B画像を作り、それらを合成してカラー画像にします。
余計な光が少なく、スッキリした印象を受けます。
今回撮影した3つのナローバンドの画像は、カラー画像を作るというよりは、星雲の構造を見やすくするために
別の色にマップすること(ハッブル・パレットなど)に利用されます。
長くなりますので、それについては別の機会にでも。
初めてのモノクロカメラ+ナローバンド・フィルタでの撮影でしたが、満足できる画像が得られました。
長時間晴れる時でないと、中々、各バンドの枚数を揃えられないので、毎回とはできませんが、対象によっては
また利用したいと思います。
そして、今年最後になる対象は、おうし座の超新星残骸「かに星雲」(M1)です。
これは平安末期の明月記などの記録に残る有名な超新星の残骸です。
爆発(爆縮)の後、中心には中性子星が残され、今でも強いX線を放っています。
焦点距離2000mmの反射鏡にセミ・ナローバンド・フィルタを使ったカラーCMOSカメラで、月の明るい22、23、25日
に少しずつ撮り溜めて60枚を合成しました。
小さい対象なので、出来上がりの画像をAPS-Cサイズ相当にクロップしています。
機会があれば、これもモノクロカメラで撮ってみたい対象です。
これが今年最後のブログになると思います。
今年も当ブログを訪れてコメントやイイねをいただいた方々、ありがとうございました。
良い新年をお迎えください。